2/2八王子実践中のプレゼンテーション入試のユニークさ!
すでに2019年から従来の「4科・2科」の教科型入試を廃止し、プレゼンテーション入試と適性検査型入試のみで、新しい中学入試の形を切り拓いてきた八王子実践中学校。6年目を迎えた今春2024年入試でも、ユニークなプレゼンテーションの数々を受験生の皆さんが見せてくれました!〈取材·撮影·文/北 一成〉
自分が頑張ってきたこと、これからも頑張りたいことをアピール!
すでに2019年から従来の「4科・2科」の教科型入試を廃止し、プレゼンテーション入試(自己表現型・英語型・プログラミング型)と適性検査型入試のみで、新しい中学入試の形を切り拓いてきた八王子実践中学校。6年目を迎えた今春2024年入試でも、ユニークなプレゼンテーションの数々を受験生の皆さんが見せてくれました。
今年も2月2日午前と2月4日午後に行われた八王子実践中のプレゼンテーション入試。この2月2日の第1回に出願したのは、18名の受験生。そのうち英語型を希望した1名の欠席を除き、17名がこの日の入試に集いました。
ちなみに2月4日午後の第2回のプレゼンテーション入試は15名の出願となっていました(そのうち3名が受験に訪れたといいます)。
それぞれに個性的なプレゼンテーションを披露!
八王子実践中学校のプレゼンテーション入試では、「自己表現型」・「英語型」・「プログラミング型」のいずれか1つを選択して、個々のプレゼンテーションを披露します。
今回の取材に訪れた2/2(金)当日には、計17名の受験生が参集。この日は「英語型」の受験生はいませんでしたが、「プログラミング型」の1名と、「自己表現型」の16名の受験生が、それぞれに個性的なプレゼンテーションを見せてくれました。
各受験生のプレゼンテーションのテーマ(タイトル)は、「ミュージカル・書道」、「ミュージカル」、「そろばんの歴史」、「ダンスについて」、「小学校生活で頑張ってきたこと・アスレチックプロジェクト」、「小学校生活の中で私が積極的に取り組んできたこと・英語・茶道」、「漢字検定とピアノ」、「僕のテニス道」、「私とスピードスケート」、「プログラミング」と様々。
そのほか最も多いのが、高校・中学ともに全国優勝を目標に掲げる女子バレーボール部への入部希望者で、計7名の女子受験生が、「バレーボールについて」のプレゼンを見せてくれました。なかには「叶えたい夢(オリンピックへの道)バレーボール」とタイトルに堂々と謳う受験生も!
廊下から様子を伺う先生方も笑顔や拍手でプレゼンを応援!
受験生の発表の方法(形式)も様々です。パソコンでの発表、紙芝居発表、スケッチブック発表、模造紙(プレゼンポスター)発表、賞状や色紙の披露、タブレット発表、プログラミング作品の発表など、それぞれのアイディアで準備をしてきます。
それに加えて、英語で歌う、ダンスの披露、音楽室に移動してピアノを弾く、テニスの素振りなどの実技もプラスして、面接官の先生方はもちろん、試験会場の廊下からそっと様子を伺っている、理事長・校長先生をはじめとした多くの先生方をも「自己表現ワールド(?)」に惹き込みます。
ミュージカルについての紙芝居発表の後に、よく通る歌声で英語の歌を披露してくれた女子受験生が歌い終わると、廊下の先生方から拍手が沸き上がる場面も…。
学校側からは「お題」を課さずに自由に自己表現!
このプレゼンテーション入試「自己表現型」の受験生は、事前に提出したエントリーシートの内容でプレゼンテーション(発表)を披露します。
この日の受験生にはいませんでしたが、「実用英語技能検定」3級以上の取得者を対象にした「英語型」の受験生は、出願の際に検定の合格証のコピーを提出します。
ジュニア・プログラミング検定Scratch部門、Bronze(3級)・Silver(2級)・Gold(1級)の取得者を対象にした「プログラミング型」の受験生は、この日は自分でプログラミングしたゲームを披露してくれました!
中学入試にプレゼンテーションを導入する私立中は年々少しずつ増えていますが、なかでもこの八王子実践中のプレゼンテーション入試の「自己表現型」は、あえて学校側からは「お題」を課さずに、自由な内容で自己表現のプレゼンをさせてくれるのも特徴であり、受験生にとっての魅力のひとつです。
従来の「入試観」「学力観」の変化を促す先駆的な入試方法
その後、この2月2日午前の第1回プレゼンテーション入試では、受験生17名全員が合格。2月4日午後の第2回プレゼンテーション入試では、受験生3名全員が合格できたと公表されています。
現在の大学入試でも、いわゆる「年内入試」と呼ばれる総合型・推薦・AO入試の募集定員が過半数になっているという「教育と入試の変化」の節目を迎えているいま、この八王子実践中のプレゼンテーション入試は、従来の「入試観」、「学力観」の変化を促し、大学入試の変化に先駆けて「中学入試の変化」を体現した、先駆的な入試のあり方でもあります。
このプレゼンテーション入試に挑戦し、合格できた受験生は、自身がこれまで頑張ってきたこと、打ち込んできたことを認めて、それを評価してくれた学校ということから、自己肯定感が高いまま入学して、その後も学校生活全般に積極的に取り組んでくれる生徒がほとんどだと言います。
そうした意味で、「偏差値で傷ついていない」入学者が増えたことで、中学校生活がさらに明るく、活気あるものになったことが、この新たな入試の大きな副産物だと先生方も感じています。
バレーボール以外のスポーツ・芸術・習い事でもがんばりたい!
このプレゼンテーション入試「自己表現型」を選ぶ受験生のなかには、全国的な強豪校である女子バレーボール部をめざす受験生以外にも、自分ががんばってきたスポーツや芸術、各種の習い事や文化的な活動について、プレゼンテーションをしてくれる挑戦者が毎年数多くいます。
この日も、テニス、スピードスケートなどのスポーツや、ミュージカル、ダンス、茶道、そろばん、ピアノ、英語、漢字検定などの芸術、習い事、文化的な活動でがんばってきた男女の受験生がそれぞれいました。
これまで取材させていただいたプレゼンテーションでも、そのほかサッカーや剣道・柔道などの武道、バレエ、チアリーディング、絵画、民族舞踊の和太鼓などの実技を披露してくれた受験生がいました。
小学生の継続力や集中力、潜在的な資質や将来への可能性を評価
幼児期から小学生時代まで、受験生自身が好きで打ち込んできた様々な習い事やスポーツ・芸術・音楽などの活動をプレゼンテーションすることで、その継続力や集中力、潜在的な資質や将来への可能性などを見出して、評価してもらうことができます。
最近の子どもたちには、幼少時から各種の習い事やスポーツ、芸術、音楽などに親しんできた小学生が数多くいます。自分自身が好きで、これまで打ち込んできたこと、これからもがんばっていきたいことをプレゼンテーションして、その前向きな姿勢を評価してもらえれば、必ずしも八王子実践中学校・高等学校にはない部活や種目でも合格し、入学することができます。
だからこそ、多彩な資質や活動歴をもつ、多様な小学生と出会うことができる、ユニークな入試となっているのでしょう。
自分が頑張ってきたことを認めてもらえる「オーディション入試」
その意味では、八王子実践中学校の「プレゼンテーション入試」は、言い換えると「習い事入試」や「オーディション入試」と言い換えることもできる、ユニークな入試です。
毎年の取材で、それぞれの受験生が個性的なプレゼンで、とても“愉快な”入試風景を見せてくれて、先生方もそのプレゼンを楽しみにしているという、いわば「ウェルビーイングな入試」でもあります。
音楽室に移動したピアノ演奏を披露してくれた受験生のプレゼンテーション(ピアノ演奏)では、面接官の先生方の資料として、エントリーシートが置かれていて、そこには「僕が頑張ったことは二つあります」として、ピアノ以外にも「漢字検定」4級取得のことが書かれていました。
実はプレゼンテーション入試を導入している他の私立中の先生方に伺うと、「(プレゼンのメインにした)一芸だけではなく、二芸、三芸を持った受験生が多い」という話をよく聞きます。
何かひとつの言に打ち込める小学生は、それ以外のことにも興味や関心を持って、様々な活動に積極的に取り組める資質をもった子どもたちが多いということなのかもしれません。
「適性検査型入試」の人気も高まり、中学募集は年々上向きに!
こうして、自分の打ち込んできたこと、これからもがんばっていきたいこと、その姿勢を表現したことを認めてもらえた(=合格できた)受験生は、みな一様に自己肯定感が高いまま、八王子実践という学校を好きになって入学してきてくれると言います。
そうして入学した中学生が、これまで中学校はまだ各学年20数名の小規模な中高一貫体制とはいえ、高校は大規模の八王子実践中高全体を、大いに活気づけてくれているそうです。
さらに今春2024年入試では、都立南多摩中等教育学校の志望者にとって、格好の「力試し」やトレーニングにもなる八王子実践中の「適性検査型入試」の志願者が、3回の合計で「のべ59名」となり、初めて50名を超えました。実受験者も54名、そのうち合格者は23名で、なかなかハイレベルな入試になったといいます。
もしかすると入学者数は当初の予定を上回り、中学校が初めて2クラス体制になる可能性もあるということでしたが、果たしてどうなったでしょうか?
子どもの特性や得意分野の力を知る「MI(=8つの知能)理論」
図は、1980年代半ばに米・ハーバード大学(当時)のハワード・ガードナー教授が提唱した「多重知能(Multiple Intelligences(マルチプルインテリジェンス)=MI)」理論をモデル化したもの。「8つの知能」と訳されることも。人間に備わる多重な知能の表現したもの。子どもの特性や得意分野の力を知る手がかりにもなります。
従来の「4科・2科」の教科型のペーパーテストが、この図の「右上45度」の範囲の力(「数学・倫理的なことが得意」と「文章・言語が得意」)を主に試すものだとしたら、すべての人間には、それ以外の「135度」の力が備わっており、それらを試す入試があっても良いのではないか、というのが私たちの理解です。
プレゼンテーション入試をはじめとした中学受験の「新タイプ入試」は、こうした小学生の持つ多様な力に光を当て、評価しようとしてくれる入試なのです!