数ある英語入試のなかでもユニークな、聖セシリア女子中の英語表現入試
「英語入試」を実施する学校は年々増加傾向にありますが、そのなかでも、聖セシリア女子中で2022年から導入された身体を使って英語で表現するB方式「英語表現入試」は、他に類を見ないユニークな英語入試として注目されています。今春も、2025年2月3日(月)午前に行われた同校のB方式「英語表現入試」の様子を取材させていただきました。〈取材・撮影・文/中曽根陽子〉
B方式では2種類の「英語入試」を実施
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英語入試を実施する学校は年々増えていますが、聖セシリア女子中学校はその中でも、かなり以前から実施している学校の一つです。2科4科だけでなく、英語を勉強してきた小学生にも受験の機会を設けるために、筆記型のB方式「英語入試」を行っており、英語が好きで同校の本格的な英語教育に共感した受験生の多くが、一次・二次の「2科・4科入試」と併願受験します。
この筆記型のB方式「英語入試」は、今年も2月2日(日)午前に実施され、43名が出願、40名が受験しました。このB方式「英語入試」には、英検など資格優遇制度がありますが、「受験生の英語レベルは年々上がっている」と同校の大橋貴之先生。
今回取材した2月3日(月)のB方式「英語表現入試」は2022年から導入され、今年で4回目。2日までの入試ですでに合格した場合来る必要はありませんが、「英語表現入試」のみ受ける受験生も含めて昨年同様志願者は「29名(昨年は30名)」、このうち昨年を上回る11名の受験生が参集しました。
英語を使って自分を自由に表現する英語面接
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この日の集合時間は9時30分。受験生と保護者の控え室となっていた講堂で全体の説明を受けた後、受験生は待機室に移動。自分の順番が来るまでそこで待機して、呼ばれると一人ずつ廊下を挟んだ向かい側の多目的ルームに入って、面接を受けます。
「英語表現入試」では、まず、1:1の英語面接が行われます。ここでは、英語による自己紹介(1分程度)と英文暗唱(歌詞、名文、著名人スピーチ、絵本、自作話など1分程度)が科されています。
英語表現入試の面接官は、聖セシリア女子中の授業「イングリッシュ エクスプレス」を担当している小口 真澄(こぐち ますみ)先生。都内で英語芸術学校MARBLESを主宰する演出家で英語劇のスペシャリストです。
受験生が試験会場に入ってくると、小口先生が明るく英語で声をかけ椅子に掛けるように促します。小口先生とテーブルを挟んで1対1の面接ではありますが、その雰囲気は堅苦しいものではなく、この日のために準備をしてきた受験生の英語の自己紹介に、先生は終始笑顔で耳を傾けていました。
自己紹介が終わると、先生からそのプレゼン内容についてさらにいくつか質問があります。中には、うまく聞き取れず答えに詰まる場面もありましたが、その度に先生はやさしい表現に言い直したり、例を出したりして受験生の回答を促します。受験生の緊張を解きほぐし、少しでも会話のキャッチボールができるようにという配慮を感じました。
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質問も含めた自己紹介が終わると、課題の自己表現です。好きな歌を歌う生徒。自分の好きなことについてスピーチをする生徒。それぞれが準備してきたことを発表するのですが、この時に小口先生からはリクエストが。
「私にではなく、もっと向こうにオーディエンスがいると思って、その人たちに届けるように話してみて」と英語で促します。この指示に最初は戸惑う受験生も、先生のジェスチャーに促され、ダンスをしたり、体全体を使ったプレゼンをしたり、中には手拍子を求める場面も。そんな受験生のリクエストにも笑顔で応じる小口先生。受験生の緊張を解きほぐしながら、受験生の表現力を引き出そうとしているようでした。
ミュージカルの楽曲を歌う人、ダンスを披露する人。中には、自分の好きな食べ物の作り方を説明した受験生がいたのですが、その際には会場にいた他の先生や取材者の私も加わり、生徒の説明に従って手順を再現するように促されました。これによって、自分の表現が相手にちゃんと伝わるのかを受験生も確認できたと思います。これは、すでに英語表現の授業を受けているようなものだと感じました。
「英語面接」の最後には、先生も立ち上がって受験生と握手をして終了です。聖セシリア女子中の英語面接は、英語演劇のスペシャリストならでは。他校で見たものとは一味も二味も違っていました。
同校の授業「イングリッシュ エクスプレス」の入学前体験!
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全員の個別「英語面接」が終わると、休憩を挟んで、「身体表現」の時間です。「身体表現」はグループで行い、与えられた英単語や英文に、ジャスチャーやダンスを交えて、自由に表現するもの。先ほどの「英語面接」が行われた会場に受験生全員が入室すると、また小口先生がボディーアクションを交えて英語で語りかけます。
まず、全員で輪になり、先生のリードで、アイスブレイク的に身体を動かす時間から始まりました。最初は硬かった受験生の動きも、小口先生のリードと声かけによって、身体を動かしていくうちに、表情も柔らかになっていきます。
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次に輪から2列になり、ペアを組んでエクササイズする場面からは、受験生が奇数で一人足りなかったため、若手の先生がグループに加わり、一緒になってアクティビティに参加。後の英語劇につながるセリフと動作を繰り返します。開始5分後くらいからは、徐々に動きも早くリズミカルになって、受験生の声も体の動きも大きくなっていきました。
聖セシリア女子中では、中1と中2で週1時間「イングリッシュ エクスプレス」という授業があります。授業では、「英語で自分を表現する」ことを目標にして、英語の歌を歌い、英語の台詞を覚え、ダンスも加えて、仲間とともに年2回、英語でのミュージカル発表を行います。語学とともに、表現力や協調性を育むプログラムです。このプログラムが導入されたきっかけは、ICUに進学した卒業生の推薦だったとか。
その授業を担当しているのが面接官の小口先生です。つまりB方式「英語表現」は、聖セシリア女子中学校に入学できたときには授業で受けられる「イングリッシュ エクスプレス」の講座を、入学前に体験できる貴重な機会なのです。
「桃太郎」のミニ英語劇。身体を動かし大きな声で台詞を発声!
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今回の英語劇のテーマは、「桃太郎」。桃太郎・きじ・さる・いぬの配役に別れて鬼退治に出かけるストーリーを演じていきます。小口先生の身体を使った表現や、英語の声かけ、歌声に合わせて、エクササイズは楽しい雰囲気のなかで続いていき、受験生の表情はますます笑顔になり、心が開放されていく様子が見てとれました。
身体表現の時間は約20分。最初のエクササイズで行なっていた身体の動きや英語の表現が、そのまま劇中で使われ、英語のセリフや表現も板についてきた受験生たち。指示や説明ではなく、動きの中で英語を理解して表現し、最後には作品を演じている。自然の流れで英語表現を覚えていく仕掛けです。その様子を見ていて、私も物語の世界に引き込まれていくのを感じながら、楽しい気持ちになっていきました。
演劇が終わる頃には、すでに受験生は仲間に!
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入試問題は学校からのメッセージと言われますが、この身体表現は、まさに聖セシリア女子の「イングリッシュ エクスプレス」の授業そのもの。「0時間目の授業」でした。演劇が終わる頃には、すでに受験生は仲間になっていました。
そして、最後に輪になって手を伸ばし、全員で気をひとつにして同時に声を出す締めのエクササイズが行われます。1回目は先生も入って行いますが、次は受験生だけで合図なしに見事に一つの声になり、拍手が湧き上がりました。入学したら一緒に学ぶことになる受験生。春に再開したらすぐに仲良くなれそうでした。
受験生全員から「楽しかった」「またやりたい」などの感想が!
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終了時には、この「身体表現」の体験を振り返ります。小口先生の「いま感じたことを、ひと言で!」という問いかけに、受験生が一人ずつ答えていきます。「楽しかったです!」、「またやりたいです!」「新しい言葉も覚えられてよかった」などの感想のひとつひとつに、小口先生は「グレイト!」、「イエーイ!」と相槌を打ちながら答え、受験生一人ひとりにエールを送っているようでした。
私はこれまでもさまざまな新タイプ入試の取材をしてきましたが、こんなに受験生が楽しそうな表情を浮かべる入試風景は初めてでした。演出家であり英語劇スペシャリストである小口 真澄先生のお人柄と力量によるものは大きいと思いますが、それだけでなく、その様子を見守る先生達もとても嬉しそうで、この学校に伺うといつも感じる暖かさが、この入試にもあふれていました。
英語表現入試にチャレンジしようと思った理由は?
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最後に二人の受験生がインタビューに応じてくれました。
山本展代さんと檜垣樹さんです。実は二人とも前日の英語入試ですでに合格していたのですが、英語表現入試にも出願していて、これまで準備してきたことを披露したくて参加したそうです。
英語入試に関しては、二人とも「筆記試験とは違って、表現する上での自分の実力も知れて嬉しかった」「ワークの中でどう表現すれば相手に伝わるのかを考えたり、新しい単語も覚えられたのが良かった」等、前向きな感想が聞かれました。
英語入試にチャレンジしようと思った理由について聞くと、国語や算数より英語の方が得意なので、自分の好きなことでチャレンジしたいと思ったそうです。
二人とも帰国子女ではなく、4歳から英会話教室に通って英会話を勉強してきたそうですが、英語入試の対策としては、筆記試験は英検のテキストや過去問を解き、表現入試は3ヶ月前から毎日鏡を見ながら練習をしたり、お母さんと一緒に面接対策をしたりしたそうです。
最後に二人に中学校に入学したらやってみたいことについて聞きました。檜垣さんは、「英語は好きなので中学生になっても頑張りたいし、音楽が好きなのでクラブ活動でも生かしていきたい」山本さんは、「英語に力を入れている学校なので、英語も頑張りたいと思っているけれど、野球が好きなのでソフトボール部に入りたいと思っている」そうです。
好きなことを生かして受験をし、入学後の生活に希望を持って思いを馳せている二人をみていて、最高の合格を果たしたのだなと嬉しくなりました。
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英語入試実施校は今後も増えていくと思われますが、学校によって入試で求められる英語力の基準も変わりますし、英語入試で受験した場合、入学後どのような授業を受けることになるのかまでよく確認して、自分に合った学校を選ぶことをお勧めします。
いずれにしても、最近の英語入試は、習い事として英語を学んできた人にとって、新たなチャンスになっていることは確かです。英語と一般入試対策を同時するのは簡単ではないかも知れませんが、チャレンジしてみてはどうでしょうか。
※聖セシリア女子中学の「英語表現入試イメージ動画」は、同校公式Webサイトの「受験生の方へ」→「生徒募集要項」のコーナーで紹介されていますので、関心のある方はそちらを参照していただくと良いでしょう。