「学び」を楽しむ心を見出す 聖ヨゼフ学園中の総合・グループワーク型入試
好奇心旺盛な生徒を求める聖ヨゼフ学園中学校。同校が7年前から実施している「総合・グループワーク型入試」を2月1日(土)午後に取材しました。〈取材・撮影・文/福原将之〉

同校の「総合・グループワーク型入試」は、従来の教科型入試とは異なり、教科横断型の「総合」試験とグループワークを通じて、受験生の「学ぶ力」と「協働する力」を多面的に評価する特色ある入試です。国際バカロレア(IB)中等教育プログラム認定校として、探究的な学びとグループワークを重視する同校の教育方針が反映された入試といえます。
温かな出迎えで緊張をほぐす受付

『総合・グループワーク型入試』の集合時間は14時30分。今年は過去最多の20名の受験生と保護者の方が同校を訪れました。受付では中学3年生と高校3年生の在校生がお手伝いとして受験生を温かく出迎えていました。さらに、中学1年生による手作りの応援メッセージカードも用意され、これから試験に臨む受験生たちの心を和ませていました。学校全体で受験生を歓迎する雰囲気が感じられ、緊張の中にも和やかな空気が漂っていました。
知的好奇心を刺激する「総合」試験

45分間の総合試験では、SNS時代の「通信」をテーマに、自然科学や社会科学の要素を織り交ぜた問題が出題されました。文章やデータから情報を読み取り、自身の経験と結びつけて考える力が問われます。同校では15年前から教科横断型の入試を実施しており、その集大成として現在の形に発展してきました。
問題自体が学びの機会となるよう工夫されており、解答のヒントが随所に散りばめられています。特筆すべきは、単なる知識の有無を問うのではなく、文章やグラフ、表から必要な情報を読み取り、思考を深めていく構成です。後半には絵本を一冊読むような感覚で取り組める問題も用意され、受験生たちは最後まで真剣に取り組み、問題を楽しみながら解いている様子が印象的でした。
グループワーク前半:個人の意見を伝える

グループワークは5人1組に分かれ、各グループが別々の教室へ移動して行われました。今年から新たな試みとして、受験生同士の距離感を近くするため机を撤去。さらに、発声練習の時間を設けることで、緊張していた受験生たちもリラックスした様子でした。
試験前半(10分)では「小学1年生から6年生まで楽しめる競技の考案」というテーマについて、個人の考えを発表する時間が設けられました。1分ほど考える時間の後、考えがまとまった受験生から順に挙手をして発表。小学生にとって身近なテーマということもあり、どの受験生も堂々と自分の意見を述べていました。
グループワーク後半:協働して新しいアイデアを生み出す

試験後半(10分)は、前半で出されたアイデアをもとに、グループ全体でより良い競技を考案していく時間です。まず司会役を決めることから始まったのですが、グループワークが好きな受験生が多かったため、複数の立候補者が出てジャンケンで決めるグループも見られました。
試験としての緊張感がある中でも、発声練習と机の撤去による効果で、すぐに活発な意見交換が始まりました。中には試験であることを忘れるほど議論に熱中している受験生の姿も。

評価はルーブリックを用いて、積極性・論理性・協調性などの観点から行われます。特に重視されるのは、他者の意見に耳を傾け、そこから新たな提案を導き出す力や、思いやりのある発言ができているかという点です。聖ヨゼフ学園として大事にしている価値観が反映された評価基準となっています。
保護者にも配慮された温かな入試運営
おわりに

「総合・グループワーク型入試」を通じて入学した生徒たちは、入学後も優れた成果物の作成や素晴らしいプレゼンテーションを行うなど、着実な成長を見せているとのことです。当初は近隣の公立中高一貫校との併願を意識した入試でしたが、現在では「受験勉強を始めたのは遅かったが、好奇心は旺盛な受験生」や「話し合い・グループワークが好きな受験生」が多く集まる特色ある入試として定着しています。
聖ヨゼフ学園の「総合・グループワーク型入試」は、単なる選抜の場にとどまらず、受験生が新たな気づきや学びを得られる機会となっています。知識の量ではなく、知的好奇心の強さや学ぶことへの意欲、他者への思いやりを重視する同校の教育方針が、入試の形にも明確に表れています。グループワークを通じて、すでに同校が大切にしている「協働的な学び」を体験できる点も大きな特徴です。新しい学びのスタイルに挑戦してみたい受験生、対話を通じた学びに興味がある受験生は、聖ヨゼフ学園を志望校に加えてみてはいかがでしょうか。
- この記事をシェアする