八王子実践中の愉快なプレゼンテーション(自己表現&英語&プログラミング)入試
八王子実践中学校〈東京・八王子市。共学校〉では、2/2(日)AMに「自己表現入試」と「英語入試」、そして今春2020年入試から新設された「プログラミング入試」が行われました。昨年2019年入試から、あえて従来からの「4科・2科入試」を一切廃止し、「適性検査型入試」、「自己表現(プレゼン型)入試」、「英語入試」の3種類の新タイプ入試だけを実施したユニークな私立中です。〈取材・撮影・文/北 一成...
あえて従来からの「2科・4科入試」をすべて廃止!
八王子実践中学校〈東京・八王子市。共学校〉では、今春2020年には2/2(日)AMに、同校の4種類の入試のうち「適性検査型入試」以外の、「自己表現(プレゼンテーション型)入試」と「英語入試」、そして今春2020年入試から新設された「プログラミング入試」が行われました。
昨年2019年入試から、あえて従来からの「4科・2科入試」を一切廃止し、「適性検査型入試」、「自己表現(プレゼンテーション型)入試」、「英語入試」の3種類の新タイプ入試だけを実施することによって、新たに多様な小学生を迎え入れようと決断し、それに踏み切った同中学校は、これまでの中学入試の常識を覆したユニークな存在です。
この”常識外の“決断と実施によって、八王子実践中学校は昨年度、同中学校を開校して以来最多の、20名の新入生を迎え入れることになりました。
この数年、私立中学受験生が減りつつあるといわれてきた八王子エリアでは、従来の中学受験における人気校とは違った意味で、最も注目される存在になっています。〈取材・撮影・文/北 一成)
※本記事中の写真に写っている受験生は、その後、八王子実践中に合格し入学する予定の受験生です。ご本人と保護者のご承諾のうえ、写真掲載させていただいたものです。
今春2020年入試では、さらに「プログラミング入試」を新設!
さらに八王子実践中学校は、今春2020年入試からは、新たに「プログラミング入試」の導入に踏み切り、注目を集めています。
首都圏の(おそらく全国の)中学入試では、一昨年2018年入試から大妻嵐山中学校〈埼玉県・比企郡嵐山町。女子校〉が初めて「プログラミング入試」の導入に踏み切り、昨年2019年入試では、駒込中学校〈東京・文京区。共学校〉、聖徳学園中学校〈東京・小金井市。共学校〉、相模女子大学中学部〈神奈川・相模原市。女子校〉が、「プログラミング入試」を新設しました。
そして今春2020年入試では、今回ご紹介した八王子実践中学校と、聖和学院中学校〈神奈川・逗子市。女子校〉が、やはり「プログラミング入試」の新設に踏み切りました。
八王子実践中の新設「プログラミング入試」は、同校のプログラミング教育に協力しているサーティファイ情報処理能力認定委員会が主催・認定する「ジュニア・プログラミング検定Scratch部門」の検定を取得している場合は、実技検定が免除され面接のみになりますが、取材に訪れた2月2日(日)に「プログラミング入試」を受験しに来たなかには、自身でつくったゲームを実際に動かして披露し、面接官の先生を感嘆させた受験生もいました。
今後のトレンドになる4種類の「新タイプ入試」!
今春2020年入試の動向として顕著になり、来春2021年以降の中学入試の動向にも受け継がれていく傾向と予想されるのが、①公立中高一貫校の増加や募集定員増と、さらには国立大学附属中の動向にも見られる「適性検査型(非教科型)入試」の増加、②小学校での英語の教科化にともなう「英語(で受験できる)入試」の増加、③今後の新たな大学入試における各大学の個別入試で導入されるプレゼンテーション力を問う「プレゼンテーション入試」の増加、④小学校で今年2020年度から全面実施される新『学習指導要領』に謳われた”プログラミング必修化“にともなう「プログラミング入試」の増加、の4点ではないかと首都圏模試センターでは考えています。
すでに八王子実践中学校は、この”新たな時代のトレンド“ともいえる新タイプ入試を、すべて実現しているところに注目したいと思います。
今春2020年入試では、第1回として2月1日(土)に、第3回入試として2月5日(水)に行われた「適性検査型入試」以外の3種類の入試は、第2回入試として2月2日(日)に、第4回入試として2月15日(土)に実施されました。
これら4種類の新タイプ入試は、いまなお中学入試で年々増加しつつある「午後入試」ではなく、いずれも午前の時間帯に行われる点と、第4回入試が2月15日という、年々入試日の前倒し傾向が進む首都圏の中学入試では最も遅い日程で実施される点も、従来の”中学入試の常識“を覆しているという意味で注目されます。この2月中旬の入試日程ならば、都内や神奈川の公立中高一貫校を受験し、その合格発表後に私立中の入試をしたいと考えた小学生でも、慌てずに受験することが可能です。
2019年から学校を“Wonder Innovation”
八王子実践中が、都内の私立中学校では最も学費が安いという点や、本人の進路希望によっては、中学卒業時に他の高校(公立・私立)を受験することも可能という点も、公立中高一貫校の志望者には歓迎されるはずです。
ちょうど教育の転機ともいえる大きな変化の節目に、従来の中学入試の常識を破り、中高一貫教育と中学受験に関心をもつ、すべての意欲ある小学生と保護者に門戸を開いた八王子実践中は、新たな“希望の私学”といえるでしょう。
ところで、併設の八王子実践高等学校は、東京都内で最も人気の高い(志願者の多い)私立高校のひとつです。スポーツの世界では、日本の女子バレーボール界と日本代表チームに、最も多くの選手を輩出してきた超名門校で、現在も女子バレーボール部は、高校も中学も全国優勝をめざして日々、練習に励んでいます。
しかし中学入試であまりその名が知られてこなかったのは、これまでは女子バレーボール部への入部希望者と、近隣にお住まいで公立中学校への進学を希望しなかった数名の入学者を受け入れる形で、ごく小規模な中高一貫教育の体制を維持してきたからです。
しかし、近未来の社会で求められる力や、今後の大学入試で問われる力が変わり、これまでの日本の教育観、入試観、学力観までもが変わろうとしている”教育の転機“を迎えたいま、あらためて私学ならではのユニークな中高一貫教育を形作るべく、教育改革と入試改革に踏み切りました。
その改革のコンセプトが“Wonder Innovation”です。
昨春2019年入試では、中学開校以来、最多の入学者数に!
同校の公式Webサイトでも紹介されているように、教えあい学びあいで互いの成長を促す「3学年協働学習」、自然豊かな立地を生かしたフィールドワークや研究発表を取り入れた「探究学習」、情報化社会を見据えた「プログラミング教育」、勉強と習い事、勉強と部活動の両立を支援する「課外活動サポート」などが、八王子実践中の新たな教育の柱です。
有名な女子バレーボール部だけではなく、バレエや能などで全国的~世界的な活躍をする生徒もいますし、バトントワリングなど高いレベルをめざして練習に励む生徒もいます。
そして、八王子実践中が“Wonder Innovation”と謳う教育改革と合わせて行った中学入試改革が、あえて従来の「2科・4科入試」をまったく行わずに、「適性検査型入試」、「英語入試」、「自己表現(プレゼンテーション型)入試」の3種類の、いわゆる”新タイプ入試“だけで実施するという大胆な改革でした。これもまさに“Wonder Innovation”です。
この従来の中学入試の”常識“を破る改革が、かえって小学生の家庭にとってはインパクトがあったのか、2019年4月の新入生は、中学開校以来、最多の20名になったといいます。
とくに「自己表現(プレゼンテーション型)入試」では、同校に通える範囲の八王子近隣エリアから、愉快な特技を持つ小学生や、これまでがんばって打ち込んできたことをプレゼンしてみたいと考えたユニークな小学生が、堂々と、しかも入試当日にも関わらず、楽しそうに八王子実践中に集まってくれたといいます。
全国優勝めざす女子バレー部希望者も全員がプレゼンテーション!
そしていま、八王子実践中学校の教室には、それぞれに特技や熱中する対象をもった「自己肯定感の高い」新入生が集い、毎日が活気と笑い声に溢れていると聞きます。そういう空気が校内に満ち満ちているならば、それこそがまた”希望の中学入試“なのではないでしょうか。
有名な女子バレーボール部での活躍を志す女子アスリート小学生も、2019年入試からは全員がこの「自己表現(プレゼンテーション型)入試」にチャレンジし、それまでの入試では見られない、違った側面の自己表現力を見せてくれて、なおかつ潜在的な力の大きさ(=ポテンシャルの高さ)を感じさせてくれたといいます。
初年度の「自己表現(プレゼンテーション型)入試」で最も評価が高かったのは、やはり女子バレーボール部入部希望者の一人だったとか…。
そして今年2020年入試でも、女子バレー部入部希望者は、全員が「自己表現(プレゼンテーション型)入試」にチャレンジし、それぞれユニークなバレーボール体験~成長談や今後の目標、意欲を披露してくれました。
写真は、自身の出身地である埼玉県深谷市についてもプレゼンの最後に紹介し、そのために自作の「深谷ネギ」で大真面目に深谷市について語る姿に、プレゼンを受ける担当の先生も(おそらく笑いをこらえて)真摯な表情で話を受け止めていました。
「英語入試」受験者には、すでに英検2級の小学生も!
こちらも導入2年目となった「英語入試」には、数こそ多くはないものの、この2月2日(日)に受けに来た受験生は、すでに英検2級を取得し、そのうち一人は、ネイティブの先生とごく自然に英語で会話を交わせるほどの英会話力を持っている小学生でした。
「こういう高い英語力を持った小学生が、中学受験の勉強をしていない子のなかにもいるのですね!」と、入試広報ご担当の伊藤栄一郎先生。
同校の「英語入試」は、筆記試験と面接(個人)で行われますが、「実用英語技能検定(英検)」3級以上を取得している場合は筆記試験が免除されますが、この日の「英語入試」を受験しに来たなかには、ネイティブの先生と日本人の先生お二人を相手に英会話を楽しみながら、「将来は国連か海外のNPO活動で社会に貢献したい」という夢を語ってくれた受験生もいたそうです。
多様な才能を持つ小学生が愉快な自己表現(プレゼン)を披露!
そして、八王子実践中が実施する4種類の新タイプ入試のなかで、最も志願者が多かったのが、「自己表現(プレゼンテーション型)入試」です。
この2月2日(日)に受験に来た小学生が見せてくれた「自己表現(プレゼンテーション)」は、まさに多種多様!
小学校生活でがんばってきたことを一覧で列記したプレゼンペーパーで伝えた受験生、「僕という人間」を表現した受験生、ヴァイオリンを演奏した受験生、スポーツ系では、チアリーディングの迫力あるダンスを教室で踊ってみせた受験生、フィギュアスケートでの自身の演技を動画でプレゼンした受験生、鉄道研究の成果をパワーポイントで見せてくれた受験生など、それぞれユニークな「自己表現(プレゼンテーション)」を見せてくれました。
圧巻は、多摩地域の民族芸能で、お囃子とひょっとこの踊りでがんばってきた男子受験生の、太鼓のお話とひょっとこの踊りを見せてくれた受験生のプレゼンテーション。教室に入ってくると、持参した太鼓を床にセッティングした後、はきはきした挨拶と合わせて八王子実践中に入学したい気持ちを堂々と面接官の先生に伝え、真剣な顔つきで太鼓の前に座ってお囃子を演じ始める瞬間には、面接官の先生方も息を飲む空気が伝わってきました。
そして、お囃子を演奏し、次にはひょっとこのお面を被って、CDプレーヤーに用意した曲に合わせて踊って見せる姿は、まさにエンターテイメント。教室内の面接官の先生は、本人の真剣な思いを受け止めるべく、真摯な姿勢で演技を見ていましたが、廊下から様子を見守る他の先生方は、終始にこやかに、このユニークなプレゼンテーションを見守り、終了後は大きな拍手が沸き上がりました。
中学入試の常識と歴史を変える、八王子実践中のユニークな入試
入試会場の教室から、お囃子の太鼓の音やヴァイオリンの音色が廊下に響いてくるユニークで和やかな中学入試。そんな入試があっても良いのではないかと思います。
こうして、2月2日(日)に行われた八王子実践中の愉快なプレゼンテーション(自己表現&英語&プログラミング)入試は、先生方の笑顔や、プレゼン後に「やり切った」と言わんばかりの清々しい表情で保護者のもとに帰っていく受験生の姿からは、新たな中学入試の未来さえ感じられたような気がしました。
他の私立中高一貫校の校長経験もある加藤先生が感想を聞かせてくれました。
「塾に通って勉強することも、もちろん大事ですが、多くの私立中学校には、他の第1志望校に落ちて入学してきた子や、模試の偏差値などで劣等感を感じてきた子も数多くいます。そうした子は、やはり多少なりとも傷ついて中学に入学してきますから、最初はその傷をいやせるようしてあげる必要があります。でも、こうした自己表現入試で合格して八王子実践中に入学してきた子は、”自分のがんばってきたこと、打ち込んできたことを認めて、評価してくれた学校“と思ってくれるので、自己肯定感がとても高いのと同時に、学校のことを大好きになってくれるのですね。そこが良い点だと思います」
広報ご担当の伊藤栄一郎先生は、「ですから、いまの中1の学年は、毎日が騒がしいくらい活気があります。中1の担任や教科担当の学年団も、その意味で良い手応えを感じています。今年はどういう元気で愉快な学年になるか、いまから楽しみですね」と笑顔で話してくれました。
八王子実践中が変える、従来までの中学入試の常識と歴史。そんな愉快でユニークな入試を経て入学した生徒さんたちの、将来の成長が私たちも楽しみです!