日大豊山女子中の2/2pmプレゼンテーション(課題解決型)入試
2月2日午後、日本大学豊山女子中学校では、プレゼンテーション(課題解決型)入試が行われました。この入試は、昨年行われたプレゼンテーション(課題発見型)の入試の進化系。SDGsをテーマに自ら解決したい目標を2つ選び、その実現のためにリーダーとしてどのように活動して行くかが問われます。受験生はそれぞれ個性あふれるプレゼンを披露しました。その様子をリポートします。〈取材・撮影・文/中曽根陽子〉
2月2日午後 日大豊山女子中学校では、2科入試とプレゼン(問題解決型)入試が行われました。14時開門と同時に、受験生たちがやってきます。
中にはプレゼン用の大きな荷物を抱えている受験生の姿も見られました。そして、午前の入試と同様に昇降口で、荷物を確認して子どもを送り出す親の姿も…。
プレゼン入試の控え室は、午前中の英語入試と同じ1階の中学2年生の教室です。今年のプレゼン入試の出願数は13名で、そのうち12名が受験しました。
控室では、最終確認をしながら待機する受験生の姿が。校舎の中では、先生が笑顔でお出迎えです。ラウンジで靴を履き替えた後、検温・手指消毒を済ませ、用意された激励文が入ったカイロを受け取ると控室に向かいます。
時間になると、担当の先生から試験についての説明があり、さらにA4サイズの発表カードが配れました。その内容は、今回のプレゼン入試のお題であるSDGsの目標から選んだテーマにチェック。
そして、テーマを選んだ理由。プレゼンテーションの方法。そしてアピールポイント(準備で工夫したこと・苦労したこと)の4つを記入します。
SDGsの17のテーマから2つを選び、解決するための案を発表
その後、控室の左右の教室で順番にプレゼンテーションが始まりました。
今年のプレゼンテーション(課題解決型)入試は、SDGsの17の目標のうち、自分が優先的に取り組みたいと思う目標を2つ選び、自分の学校でクラスのリーダーとなって、その実現に向けて活動するとしたらどのように取り組むかを10分程度でプレゼンするというお題があらかじめ提示されています。
例えば6番「安全な水と、トイレを世界に」と14番の「海の豊かさを守ろう」を選択したある受験生は、マイクロプラスチックによる海の環境破壊の問題を取り上げ、調べた内容を説明、その中で感じたこと、自分の生活の中で取り組めること、それをクラスメイトに広げて行く具体的な工夫がまとめられていました。
教育と貧困という難解なテーマに取り組む受験生もいました。
発表スタイルは個性豊か。10分間に工夫が凝縮された発表を披露...
プレゼン形式は特に指定はなく、パワーポイントを使用する人、手書きの紙芝居でプレゼンする人、模造紙にぎっしりと書いて発表する人などさまざま。
思い思いの方法でプレゼンをします。
時には手をあげたり、大切なところでは声のトーンを変えて強調したり、熱のこもったプレゼンが続きました。
一人10分のプレゼンが終わると、質疑応答の時間になります。
控室で受験生が記入したプレゼンテーションカードを参考に、試験官の先生方が、質問をしていきます。時間は5分程度です。試験官は二人。第1試験室が、地歴公民と理科の先生。第2試験室が、保健体育と英語の先生です。そして、英語入試と同様オブザーバーとしてもう一人の先生がいて、プレゼン前にはPC の接続やプレゼンの準備をサポートしていました。その対応に、受験生が慌てずに落ち着いて発表ができるようにという学校側の温かさを感じました。
実際、入念な準備をしてきても、不具合が起きることもあります。
パソコンを持ち込む人も、USBや印刷したものも持参しておくと安心ですね。
質問は、
なぜそのテーマにしようと思ったのか。調べてみて気づいたこと。工夫をしたところ。
大変だったところなど・・・。中には「その資料は全部自分で作ったの?」という突っ込みもありました。
全てのプレゼンが終わった頃には、日も暮れかかっていましたが、廊下では在校生が待っていて、お父さんやお母さんが待つ控室まで案内をしてくれていました。
入試は学校への入り口。何を目指して教育しているかを伝えたい
最後に黛 俊行教頭先生に、今回の入試の狙いと評価について伺いました。
【狙いについて】
本校では探究学習に力を入れています。その教育への入り口としての入学試験と捉えています。ですから、学校のアイデンティティとして、例え受験生が一人もいなくても続けて行くつもりで始めました。おかげさまで昨年を上回る13名が志願し、12名が受験をしてくれました。
本校では、6年前から、プレゼンのテーマ決定から情報収集、まとめ作業、そして発表までを試験会場で行う思考力(プレゼン)型入試をやってきましたが、限られた時間でそこにある素材で調べてプレゼンをするというだけでは、正直まとめられる内容にも限りがあります。
そこで、もっとじっくりと課題に取り組み、準備をして発表してもらおうと、プレゼンテーション入試(課題発見型)に変更。
今年はさらに、課題を解決するために自分は何ができるかという段階まで踏み込んだプレゼンテーション入試(課題解決型)に進化させました。
この入試には、課題を発見するだけでなく、それを自分ごととして、周りと協働して解決していく人になってほしいという思いが込められています。
事前に明確な課題を提示し、十分な時間をとって準備してもらうという入試形態に決めるまでには、学内でもかなり時間をかけて話し合いをしましたが、これは、「世界に貢献できるためのアントレプレナーシップ(起業家精神)を育成する」という本校の教育方針を反映した結果です。
ルーブリック評価で数値化。客観と主観を冷静に検証する
【評価について】
評価も「世界に貢献できるためのアントレプレナーシップ(起業家精神)を育成する」という教育方針に照らし合わせてルーブリックを作りました。
これは、首都圏模試センターの思考コードと同じ9マスで作られており、縦軸に貢献、横軸に起業家精神を置いています。
自主的にしっかり調べてきたらA1はクリア。今回のテーマであるリーダーとして友達を巻き込む工夫が考えられていたらA2クリア。さらにそれを一般化するルールのようなところまで提案できていたら、最高到達点の評価が着くというように、両軸のそれぞれの段階で求められているものをクリアすれば加点される仕組みで、最高得点は25点です。
この評価軸は、事前に生徒募集要項の中でも開示し、評価のポイントを載せています。
プレゼンテーションというと、中身だけでなく、表現力で伝わるものが変わってきますが、その点はどう評価しているのかを伺ったところ、「プレゼンの熱意や、丁寧に準備をしているかなど、意欲というカテゴリーを別に作り、合わせて30点満点で評価している」とのことでした。
表現力がある人はそこで加点されるし、逆に緊張してうまくプレゼンができなかったとしても中身で加点される仕組みなのです。
「それぞれをきちんと数値化することで、その評価が面接官の印象と合致するかどうかも検証しています」(黛教頭先生)
最後に、事前に準備ができるということは、大人の手が入る可能性があるが、そこをどう考えているかを聞いたところ、「大人の手が入るであろうことは織り込み済み」だそうです。
「それでも自分でプレゼンできるところまで作り上げていく過程でかなり勉強しているはず」と黛教頭先生。
確かに、どの受験生の発表内容も、充実していたし、熱量が感じられました。
ここまで完成させるには、かなりの時間をかけて調べ、資料としてまとめあげるまでには、どうまとめるかを考えたことでしょう。
相当な労力が必要のはずなので、本人のやる気がなければ決して成し遂げられなかったと思います。
「逆に課題に一緒に取り組めるというのは、親子の関係がいいとも言える」というのは、入試広報の我妻先生。
中学入試は親子二人三脚の受験と言いますが、新しい形の共同作業とも言えるのかもしれません。
今後、学内の評価ルーブリックにも応用して行くということで、まさに「入試は学校からのメッセージ」という言葉通り、日大豊山女子中学校の入試は、学校の目指す教育方針との一貫性が感じられる入試でした。
今年のプレゼンテーション(課題解決型)の入試結果は、12名全員が合格になったそうです。受験生の皆さんお疲れ様!
緊張して疲れたよね。でもどの人の発表もほんと素晴らしかったです。