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2月1日、今年度から共学化する注目の聖ヨゼフ学園中学校の「総合・グループワーク型入試」をレポート

今春から男子を受け入れ共学化する聖ヨゼフ学園中学校「総合・グループワーク型入試」をレポートします。
2020年2月1日(土)14時30分。神奈川県横浜市鶴見区にある聖ヨゼフ学園中学校では、去年から始まった「総合・グループワーク型入試」が実施されました。今年度から共学化することもあり、募集人員10名のところ、15名の受験生が集まりました。(取材・撮影・文/北岡優希)

2020年2月1日(土)14時30分。神奈川県横浜市鶴見区にある聖ヨゼフ学園中学校では、去年から始まった「総合・グループワーク型入試」が実施されました。今年度から共学化することもあり、募集人員10名のところ、15名の受験生が集まりました。2月1日午前・2日午前・3日午前に一般入試があるのですが、こちらも募集に対しての受験者数が1.5~2倍になったとのことからも大変注目されているのがわかります。

14時30分、受験生が控室に通され待機しています。

集まった受験者を見て気になったのが、受験者数15名のうち、男子7名女子8名という比率。通常、女子校からの共学化の初年度は、あまり男子の数が見込めないものなのですが、「半数近く集まったのはうれしい誤算」と入試副委員長の熊澤先生。

その後筆記用具だけ持って隣の教室に移動、14時50分から15時35分までの45分間、「総合」の筆記テストが行われます。

テストの内容は、毎回1つのテーマに沿って作成し、今年は「オリンピック」。実在の選手や競技を大問ごとにトピックとして扱い、それに関する問題が、実に面白い視点から出題されます。適性検査型にやや似ていますが、選択問題も入れ込んだりと非常にバランスの良い問題になっていました。

先生達は、受験生の詳細を把握

受験生たちが総合試験問題に取り組んでいる間、先述の熊澤先生や、入試委員長の多田先生が筆者の質問にいろいろと答えてくださいました。

驚いたのが、今回集まっている受験生が、例えば併願をどこにしているのか、塾に通っていたのかなどの細かな情報を、リストを見ることなくすらすらお答えされていたことでした。15名ならば確かに覚えられるかもしれませんが、その他一般入試の受験生に関しても把握されていたので、その理由を聞いたら、過去に3回ほど学校説明会を行ったが、3回とも出席する常連さんが多く、入試日にはすでに顔見知りになっているから、と言われていました。

そうは言っても、正直なところ不合格になったり他の学校に行ったりする受験生もいるはずなのに、聖ヨゼフに足を運んだ、というだけでここまで深く接して関わる、といった姿勢から、これは仕事で命令されてやっているのではなく、心から受験生を大切にしていないとできないことだと思いました。そしてこの後帰り際、筆者は驚愕の光景を目の当たりにします。これに関しては後述します。

グループワーク開始!

試験が終わると、今度は上の階に通され、5人ずつ3グループに分かれグループワークになります。テーマは3グループ共通で、個人質問と全体質問に分かれており、まずテーマに関する課題の理由説明を挙手して1人ずつしていきます。その後、全体質問の内容が掲示され、それに関して全員で話し合い、課題の解決方法を決め、先生に報告します。1グループに先生は2人です。

今回のお題は学校内の掃除に関するものでした。質問が紙に印刷されており、まず個人質問が掲示されます。「最近、学校でそうじをきちんとしない人が増えてきました。何度か先生にも注意を受けていますが、先生の見ていないところではやはりそうじをきちんとしない人がいます。なぜこのようなことが起きてしまうと思いますか。その理由を含めて説明してください。」という道徳の授業で取り上げられそうなものでした。

全体質問は、「みなさんは美化係です。今の意見を聞いて、どのようにすればみんながそうじをするようになるか、具体的な解決の方法を話し合い、決めてください。」というものでした。個人質問の他の人の意見をしっかり聞いていないとできない内容です。

個人質問は1人1分の合計5分ほど、全体質問は12分です。その間、試験官である先生達は残り時間を告げる以外はほとんど話しません。進行役やリーダー決めから、全て受験生に任せます。あるグループはすぐに進行役が決まり、その人がぐいぐい引っ張っていき、あるグループは最初の1~2分誰も話すことなく沈黙が続きました。見ていて非常にもどかしい気持ちになったのですが、結果的にはどのグループもそれなりの結論を出し報告することができていました。

総合科目の筆記試験が100点、グループワークが20点の配点で、合否を決めます。従来の詰込み式の勉強で培った、テストで点数を取る能力ではなく、こういった思考力や問題解決能力で合格した子たちが、入学後どうなっているかを聞いたところ、「グループワーク型は去年から始めたばかりなのでまだどうなっているというのは難しいが、10年前からやっている総合科目型入試で入った子は、高校生になってから、大学生になってから目覚ましい活躍をする子が多い」と言われていました。これと全く同じ言葉を、筆者は別の学校でも聞くことになるので、おそらく真理なのだろうと思いました。

校長先生も受験生と顔見知りに

グループワークが一通り終わったのが16時10分ごろ。その後は帰宅の途につくのですが、午前の一般入試も受けており、その発表が17時のためそれまで待機している親子が何組かおり、そのうちの何組かに学校の計らいでインタビューをさせていただくことができました。これは学校とご家族との信頼関係がないと決してできないことで、これを入試当日に構築できていることに驚きました。

お話をしてくださったのは女子児童とそのお母様で、最初は他の学校もいろいろと検討している中で、この聖ヨゼフ学園の雰囲気が群を抜いて良かったこと、全ての先生が本当に優しく親身になってくださり、もうここしか考えられない、と話してくださいました。説明会も全部参加、入試も全日受ける予定で今日という日を迎えた、と言われていました。児童の方に今日の感想を聞いたら、「思ったよりあまりうまくいかなかった。たくさん練習したつもりだけど、後になってああ言えばよかった、こう動けばよかったと心配しています」と。それを横で聞いていたお母様が、「娘もこんなにまで強い思いを持っているとは思わなかった」と涙ぐみ、お子様も感極まって涙目になり、涙もろい筆者もうるうるしかけるなど少し独特な状態になってしまいました。これだけの思いを持って受験をする学校に出会えた、これは本当に素晴らしいことだと思います。筆者は17時の発表までいました。この親子がどうなったか、言うまでもないでしょう。充実した学校生活を送れると思います。

帰り際、別の合格した受験生が、家族で集まり、校長先生と記念写真を撮っているのを見て、度肝を抜かれました。通常卒業式に見るような光景が、入試日に広がっているのです。全ての先生が、全ての生徒と分け隔てなく接します。うちはアットホームな雰囲気です、という学校は数多くあれど、ここまで本当に「ホーム」な学校があるでしょうか。家族の愛を受け、学校でも愛を受けて育った子は将来きっと、その受けた愛情を周りの人にも与えていくと思います。

偏差値が、合格実績が、という理由で学校を選ぶのも大切な要素の1つです。将来の道筋を考えるのに、具体的な数字ほど参考にしやすいものはありません。しかし今後変化のスピードがさらに増していくこの世界において、こういった学校こそが必要になってくると思います。数年後どうなっているかも予測がつかない中、この大学に入れたい、この会社に入ってほしい、といった理由で学校を選ぶのは危険だと思います。我が子を将来どういった人間にしたいか、そのためにはどういった学校が合うのか、そういう観点で学校を選ぶことが、この先大切になってくると思いました。