2月2日午後、日本工業大学駒場では「プレゼンテーション型入試」を実施
日本工業大学駒場中学校(東京都目黒区)は、2022年入試で新たに「プレゼンテーション型入試」を導入しました。既存の「教科型」、「適性検査型」、「自己アピール型」に加わった、4タイプ目の入試を取材しました。(取材・撮影・文 / 市川理香)
応援メッセージがお出迎え
2022年入試は、2月に入ってからは晴天続きで、2月2日午後も青空が広がりました。この日、日本工業大学駒場では午前に「教科型」と「適性検査型」入試が、午後に、「教科型」と新設の「プレゼンテーション型入試」が行われる中学入試2日目。
校門脇にはデジタルサイネージで、在校生からの応援メッセージと、感染予防への注意喚起が流されており、受付脇にも在校生からのエールが掲示されています。コロナ禍下での入試ゆえに、直接、応援はできないけれども、頑張って欲しい思いをなんとか伝えたいという温かな心遣いは、心に沁みます。
朗読を聞き感想を書く
受験生は会場の新図書館に集合し、14時45分に注意事項の説明を聞いた後、あらかじめ机上に置かれたタブレットとイヤフォンの接続を確認。開始のチャイムまで静かに待つ受験生の足元には、プレゼンテーションのための資料なのでしょうか、大きな荷物もちらほら。
いよいよ15時、試験が開始されました。
初めの45分は、3分の朗読を聴いて、その感想(あなたの心に浮かんだ思い)を書きます。朗読されている間、受験生はメモを取りながら集中して聴いており、感想も、迷いながらというよりも思いの丈を素直に書き進めているように見受けられました。今年の朗読は、「愛犬を亡くした悲しみを、どう乗り越えたか」について書かれた文章だったそうです。
工夫を凝らしたプレゼンテーション
15時55分から、個別のプレゼンテーションへと移りました。部屋は3室用意され、各部屋に受験番号順に案内され、試験官2名を前に、資料・作品などをディスプレイした後、5分で発表。その後、5分程度の質疑応答が行われました。プレゼンテーションのテーマは、あらかじめ下記の3つが示されており、その中から一つ選んで、手書きで資料を作成することになっていました。
テーマ1:「東京オリンピック・パラリンピックを見て感動したこと、深く関心を持ったことなど」
テーマ2:「今一番夢中になっていること(なぜ夢中になれるのか)」
テーマ3:「自分が将来やってみたいこと、就きたい職業」
テーマ設定にあたっては、一つに絞らず幅広く興味を持ってほしいという思い、東京オリンピック・パラリンピックのような時代性、事前準備する時間的な余裕、性差に影響されないこと、「人柄を育てる学校」としてのメッセージ性などを考慮したそうです。蓋を開けてみれば、個々の内容は、折り紙でくす玉作り、鉄道(ジオラマ作りから絵を描くこと、乗ること)、地元の獅子舞いなど多岐に渡り、資料も大きさ、写真の使い方、色や字の大きさの見せ方の工夫もそれぞれ。
発表の様子、資料のクオリティ、準備の程度などについて、試験官2名がその場で話をし確認しながら評価を進めました。
プレゼンテーションするにあたり、テーマを選び構想を練り、紙芝居風にするかポスターにするか、プレゼンの手段を考えて資料を作る、それを模索するプロセス、そして当日、緊張しながらも自分の思いを伝える・・・。初めての入試に採点官は評価者としての難しさも感じたようですが、表現する入試の可能性に確かな手応えを感じたと言います。
朗読パートでは、「聞いたことを人に伝えること」、プレゼンパートでは「自分のことを人に伝えること」が求められました。科目(1科目選択)と作文が組み合わされる自己アピール型入試から、もう一歩踏み込んだとも言えるプレゼンテーション型入試。教科では測れない潜在的な力を見る手応えを得たというだけに、次年度への展開が楽しみです。