東京成徳大学中2/5実施の新設「DL選抜入試」レポート
2023年、「Distinguished Learner選抜入試」を始めた東京成徳大学中学・高等学校。Distinguished Learner(DL)とは自律した学習者を意味し、同校が求める成長してほしい生徒像です。このDL入試はその資質を探るべく、学力試験では測れない才能を見出す新しい入試制度。2月5日に行われた同校のDL入試についてお伝えします。〈取材・撮影・文/市村幸妙〉
東京成徳が考える、自律した学習者とは
2023年、「Distinguished Learner(ディスティングウィッシュト ラーナー)選抜入試」を始めた東京成徳大学中学・高等学校。Distinguished Learner(DL)とは自律した学習者を意味し、同校が求める成長してほしい生徒像です。このDL入試はその資質を探るべく、学力試験では測れない才能を見出す新しい入試制度。2月5日に行われた同校のDL入試についてお伝えします。
「徳を成す人間の育成」を建学の精神とする東京成徳大学中学・高等学校。建学以来培ってきた「成徳」の精神を、グローバル社会の中で発揮できる人材の育成を教育目標としています。
同校が求めるグローバル人材とは、①主体的な思考、意見を持ち行動できる、②チャレンジ、リトライができる、③多様性を理解し、受容し、多様なものと連携できるマインドがある、④日本人としてのアイデンティティを持つこと。
教育の大きな特色として、中3の3学期に希望者で実施する、3ヶ月間ニュージーランドターム留学があります。。
生徒たちはひとり1家庭でのホームステイをしながら、留学先1校につき3名までという学校生活を送ります。異文化の中では特に自ら動き、発信しなければ、学びを得られません。
生徒たちはトラブルなどにも立ち向かいながら乗り越えて、一回りも二回りも大きく成長し帰ってきます。
こうした能動的に動ける力や思考力、判断力をもつ生徒を受け入れるべく実施されたのが、このDL入試です。
中1生たちに協力を仰いだり、体験講座などを実施したり、若手の先生方のアイディアも大いに反映しながら、1年間をかけて準備を進めてきました。
自分なりのアイディアを考え、表現できるか
初年度のテーマはSDGsから、ゴミのアップサイクルについて。諸注意の後に出題動画が流れます。
試験は大きく2ブロックに分けられています。
試験①の個人フェーズはアイディアを自分なりにまとめること。
受験生の頭の中にあるアイディアをいちばんやりやすい方法でアウトプットしてもらうべく、無地・方眼・罫線の3種の形式の用紙に加え、画用紙やマジック、折り紙など、さまざまなものが用意されていました。インターネットからダウンロードした資料を貼り付けるのもアリです。
創作時間は75分間ありますが、試験開始から25分後以降で一次提出を行います。
受験生は違うフロアに移動し、採点官の先生に方向性を示します。先生方と受験生は、例えば誰を対象とするのか、どんな状況で必要となるのかなど話し合いが行われます。
それらを参考にしながら、より具体的なアイディアとして落とし込み、最終提出を行います。
ここで求められるのは、頭の中にある考えを表現すること、それをきちんと説明し、アドバイスに耳を傾け、より良いものとして再構築できるかです。なお、一次提出を行わない場合は減点対象となります。
試験②は協働するグループワーク
20分間の休憩を挟んで、教室を移動し、試験②のグループワークを行います。
試験①の前に、配布されたビブスの色により受験生は3人1グループに分けられていましたが、女子のグループは早々に自己紹介などを済ませ、試験開始前にはすでにチームは和やかな雰囲気に。
グループワークの際にもアイディアをまとめやすいように、ホワイトボードや模造紙などが準備されています。
誰かのアイディアをブラッシュアップしてもいいですし、複数のアイディアを融合して新しいものを生み出してもいい。いかに相談し合える関係性を作り、協働してより良いものを構築するかが求められます。
プレゼンは、全員で行っても役割分担をしてもオーケー。各グループの裁量に任されます。
それがどんな形になるか、先生方も未知数です。この入試に正解はありません。
なお、採点は詳細項目を設けたルーブリックで主観が入らないようシステマティックに行われます。
教室内には採点官のほかに受験生をサポートする先生方もおり、受験生たちが活発に話し合う姿に目を細めていました。
採点官は一次提出からどんな過程を経て、最終的にどのようにまとめられたのかを見ていきます。
もうすぐ創立100周年の東京成徳の学び
1926年創立の伝統校である東京成徳大学中学・高等学校。今春の入学生は在校中に創立100周年を一緒にお祝いできます。
DL入試は、同校の一般受験と併願し、合格を勝ち得ながらも特待生合格を目指すという受験生もいました。
この入試でもわかるように、同校では教科学習も大切にしつつ、不確実に変化する世界で逞しく生き抜くための力を養っています。
授業でも実際にこうしたクリエイティブな学習が組み込まれています。生徒たちはさまざまな意見に触れて、多様な考え方があること、話し合いや折り合いをつけること、協働することでより良いものを建設的に創造していくことを学んでいます。
トライアンドエラーを厭わない精神性を涵養し、チャレンジングな学校生活を送る同校の生徒たちの今後の活躍がますます楽しみです。