希望の私学【工学院大学附属中学校・高等学校】(1/2)
今や2020年大学入試改革は、中学受験生にとって広く認知されています。そして、その入試改革が、2030年に想定される地球規模の環境問題に備えるためのCOP21、あるいは人工知能(AI)ロボットの開発大競争を迎えているグローバル企業の活発な競争に象徴されるように、未来に備えるためのグローバル知識基盤社会の盤石の基盤をつくるためのものであることも毎日のニュースで大きく取り上げられています。
§1 未来に備え、未来をデザインする教育
未来に備えるためには、倫理的かつ法秩序的に過剰な化石燃料の消費を回避する国際協力が必要です。同時に産業革命以降の過剰な生産と消費と大移動をセイブするだけではなく、新しい産業構造、つまり機械化(第1次)、電力活用(第2次)、自動化(第3次)に続く第4次産業革命というイノベーションにも期待がかかります。
しかも、この第4次産業革命は、歴史的に続くものの、おそらくエネルギーが化石燃料とは別次元のものにシフトしていると言われています。人工光合成や人工エネルギー、宇宙サイエンスの目覚ましい革命がAIによってもたらされる可能性が、SF物語ではなく現実態となってきたのではないか。そう考えているのが、実は工学知を建学の精神として受け継いでいる工学院大学附属中学校・高等学校(以降「工学院」)です。
成熟社会を迎えた近代社会の一員である私たちの国は、この定常化した現状を持続可能にするにしても、電脳社会として新たなデザインをしていくにしても、発想革新と技術革新の両方が必要です。この2つのイノベーションを生み出す未来のリーダーを育成する希望の私学が工学院なのです。
§2 C1英語×PBL型アクティブラーニング
2020年大学入試改革では、英語は民間の英語資格試験のスコアを、従来の英語の入試に代替する方向性が打ち出されています。民間の試験というのは、英検、TOEFL、IELTS、TEAPなどを指しますが、上智大学や立教大学などのように、すでに多くの大学で、2020年を待たずして、この動きを加速しています。
いったいどのくらいのレベルのスコアを必要とするのでしょうか?文部科学省は、それぞれの民間の試験の評価基準がバラバラなので、現在国際共通基準となっているCEFR(Common European Framework of Reference for Languages:ヨーロッパ言語共通参照枠)で換算しています。
CEFRは、A1・A2・B1・B2・C1・C2となるにつれ、レベルが上がっていきます。今のところ多くの大学では、B1・B2レベルを要求しています。それぞれどんなレベルかというと、簡単に言うと、Aは日常会話レベル、Bは新聞などを読み市民として政治経済などの議論ができるレベル、Cは学問的なリサーチができるレベルということになります。
すると、2020年大学入試改革は、今までの入試とは違い、高大接続システムを整え、アカデミックスキル(リサーチスキル、論文作成スキル、クリティカルシンキングなど)を要求してきますから、2020年に向けては、C1レベルまでの英語力(以降「C1英語」)が必要になるはずです。
工学院は、そこを想定し、2020年大学入試改革に直面する中1から、卒業時までにC1英語の力を身につけられるように、カリキュラムイノベーションをスタートしました。
2015年の中1から3クラスを、それぞれ「ハイブリッドインターナショナルクラス」「ハイブリッド特進クラス」「ハイブリッド特進理数クラス」と位置づけ、どのクラスも英語の授業はオールイングリッシュで展開しています。
中でも「ハイブリッドインターナショナルクラス」は、帰国生と英語体験者が集まってきていますから、すでに数学、理解もオールイングリッシュで行う取り出し授業もスタートしています。
そして、C1英語を学ぶと、自ずと、リサーチ、ディスカッション、プレゼンテーション、エッセイライティングは当然学ぶことになりますから、PBL型アクティブラーニングの授業となります。
「PBL型(プロジェクトベースドラーニング)」となっているのは中1から、中1は中1なりのテーマを持ち、問題解決型の探求学習を行っているからです。実は、この探求学習は、中1のみならず全学年で行い、本格的には高1の論文作成に結びつきます。工学院の先生方が全員チューターになって指導していきます。生物の教師でもある平方校長と共に学ぶ生徒もいるぐらいです。
実は、中1からカリキュラムイノベーションを始めるに当たり、2年前からカリキュラムイノベーションチームが立ち上がっていて、すべての教員がPBL型アクティブラーニングを実行できるように準備がなされてきました。PBL型アクティブラーニングのトーンは、教師と生徒が、教える側教わる側という関係ではなく、互いに学び合い、探求を広め深めていく関係が前提です。
この教師も生徒も学習者であるというコンセプトは、30人以上の工学院の先生方がIB(国際バカロレア)の教員研修のワークショップに参加してリサーチしたのがきっかけでした。
§3 ICT×思考力
工学院のPBL型アクティブラーニングは、リサーチしながら議論し、議論しながら考えます。そして考えたものやことは、論文やプレゼンテーションとしてアウトプットします。これらが1回ごとの授業でリアルタイムに展開できるのは、電子黒板やタブレットの環境が充実しているからです。
もし、このようなICTがなければ、中1から知識を思考に結びつける循環授業は難しいでしょう。中学時代はまずは基礎知識を体得し、高校からそれを論理的に結び付けて考えるという、単線型の授業構成になります。
ところが、ICTの活用によって、知識と思考が循環し、学年があがるにつれ、より知識のネットワークが広がり、思考力は深まっていく思考のスパイラルが生まれます。従来の大学入試では、知識とせいぜい論理的思考力をみる問題が多く出題されていましたが、2020年大学入試改革では、思考力・判断力・表現力を重視します。また「学習を通した創造的思考力」を問う問題が新入試問題では出題されると言われています。
ますます、工学院のPBL型アクティブラーニングによる思考力が注目されるようになるでしょう。この思考力は、議論を中心に養われますが、それは生徒同志の多角的なものの見方を共有できることが大きな影響を与えています。
そして、タブレットにインストールされているロイロノートスクールのアプリを活用することによって、チームメンバーの多様な思考だけではなく、他のチームの考え方やものの見方も共有することができるのです。
また、このアプリによって、クラスメンバー全員の考え方を共有するだけではなく、クラウド上に記憶することもできます。いつでも引き出して、自分の考え方と照合して、相違点や共通点の確認をし、新たな課題を発見することもできるのです。
そして、驚くべきは、思考力そのものを育成する新教科も創設されているということなのです。それは「デザイン思考の時間」と呼ばれているものです。国語科の教員であると同時に司書教諭でもある有山先生が中心となって担任の先生方と協働してプログラムを作成・運営しています。
今、思考力を鍛えていくのには、多角的なものの見方や考え方が欠かせないと述べましたが、この多角的なネットワークは、クラスメンバーだけではありません。先生方は学校の外のネットワークとの連携も積極的にコーディネートしています。
たとえば、「デザイン思考」の授業で、ポプラ社の飯田健さんを講師として招いて、総合百科事典「ポプラディア」を使ったワークショップも行っています。まだまだネット検索では探すことができない膨大な情報は図書館に集積されているのですから、本の調べ方や読書もとても大切なのです。
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