3校合同探究オリンピック 明日の思考力コンテストin湘南 春の陣
通常の授業でも積極的に探究的な取り組みを行なっている湘南白百合学園。3月27日(日)には、逗子開成中学校、サレジオ学院中学校の生徒とともに、3校合同探究オリンピック「明日の思考力コンテストin湘南 春の陣」を実施しました。
(取材・文 / 市川理香)
「初めまして」の面々によるチーム戦
湘南白百合学園は、通常の授業でも探究的な取り組みを行なっています。そうした姿勢は、2020年度から始まった長期休暇中に行われる探究講座ともつながっており、2021年度の各種講座にはのべ1000人の生徒が参加したといいます。
今回のコラボは、湘南白百合学園から逗子開成(男子校。逗子市)、サレジオ学院(男子校。横浜市)に声をかけて実現したそうです。生徒の活動の場や価値観を広げたいという思いから積極的に動いていると語るのは、教頭の水尾純子先生。昨年8月には、鎌倉学園(男子校。鎌倉市)の中高生を迎えて2日間の「歴史家体験 軍人日記を読む」を実施し、男子校との協働に手応えを得ていました。
そうして迎えた今回の「春の陣」。男子校に通う中学生にとって、女子と話す、女子校の校舎に入るという滅多にない機会が、男女混成チームで競う探究コンテストとあって、恥ずかしがったり緊張したりもしていられない状況に、徐々に覚醒していくよう。一方、会場校でもある湘南白百合学園の中学生も、「初めまして」の男子と組んでのチーム戦ですので、初めは手探りしているかのようなぎこちなさをのぞかせた生徒もいますし、リラックスしていた生徒もいますが、アイスブレイクが終わる頃には、笑顔が見えるようになっていきました。
「チキンレース」と「発電所設置問題」
この日の探究課題は2つ。プラレールを使う課題と、発電所の設置計画を立てる課題です。
プラレールの課題では、貨車を走らせどのくらいレールの終わりギリギリで止めることができるかという「チキンレース」に、試行錯誤を続けました。レールに斜度をつけたり、貨車に重しのサイコロを乗せたり、レールの長短で組み方を変えたりという運任せの試行から、実験の条件設定や記録などの動きがちらほら見え始め、チームの個性も出始めました。判定(レール残り何センチで貨車が止まったかを実測)では脱線するなど必ずしも成功ばかりではありませんでしたが、そこに至るプロセスに、性別や学校の違いではなく生徒個々の“持ち味”が生かされていたように見えました。
「発電所設置問題」は、キュータン国のエネルギー環境大臣として、「環境」、「国民の理解」、「経済に見合う電力需給」を前提に国の発電所設置計画を策定するというもの。発電量、建設コスト、二酸化炭素排出量などが計算できるようにスプレッドシートが準備されていますが、発電量を追求すれば持ち上がる課題があり、コストを優先すれば別の問題にぶち当たるなど、これがただ一つの正解というものがない課題です。チームごとに作った計画は、代表者が計画と重視した視点を発表しました。
この間、3校の先生方は、スムーズなコミュニケーションを促すような声かけや雰囲気づくりはしても、どうすれば良いかをアドバイスしたり何かを教えたりするのではなく、生徒を見守って待ちます。そしてチームを観察しながら、問題理解、解決策の立案、協働性など複数の視点で評価を進めており、午後の東京学芸大学・西村圭一教授による探究活動のレクチャーの後、表彰が行われました。
「あるものの探究」と「あるべきものの探究」
西村教授は「明日の思考力」とは、「問いを持ち、協働して探り、新たな知を作ること」と生徒たちに語りかけました。そして知的好奇心に支えられる「あるものの探究」と、社会的な価値、目的に支えられる「あるべきものの探究」の違いを説き、身近なことに注目して本質的にやるべきことを見つけて欲しいと結びました。
「問いを立て」「協働する」体験は、この1日では終わらず明日に続くものとなるであろうことは、充実感たっぷりの表情から感じられます。継続的に行われてきた数学科の探究講座、教科横断型(例:理科×社会の防災授業)などの探究的な取り組みに多様性が加わっていることが、いまの湘南白百合学園の人気の原動力にもなっているようです。