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LOVELY LIBRARY 第18回·捜真女学校の図書館《特別編》

情報誌『shuTOMO』2024年9月29日号でご紹介した記事の特別編です。

情報誌『shuTOMO』2024年9月29日号でご紹介した捜真女学校中学部・高等学部の「LOVELY LIBRARY」取材時に、司書教諭の金子愛先生と校長で図書館長の島名恭子先生に伺ったお話を、特別編としてWebでお伝えします。取材・撮影・文/ブランニュー・金子裕美〉

昔と今をつなぐ図書館

ー島名先生と金子先生は貴校の卒業生ですが、図書館は変わりましたか。

島名先生 私が生徒だったのは今から40年も前のことです。学校の学びのスタイルも、図書館の雰囲気もだいぶ変わっていると思います。その時代の図書館は、ちょっと敷居が高かったと言いますか。真面目で、本が好きで、勉強したい人が行く場所、という感じでした。静かにすることを求められたので、私はあまり足が向きませんでしたが、代々の司書教諭の先生や、司書の皆さんが工夫してくださって、今は随分と敷居が低くなりました。生徒との距離が近い図書館になっていると思います。


卒業後、教員になり、(他校を経て)2007年に戻ってきました。在校当時はこの建物が1番新しかったんですよね。1階に調理室、2階に生物室と化学室、3階に被服室と物理室、そして4階に図書館があるのですが、建物ができる前は、「本館」と呼ばれる建物の1階に図書館があったので、本の引越しが大変だったようです。今はエレベーターがありますが、引越しの時はエレベーターがありませんでした。本館とは2階でしかつながっていなかったので、「行列を作り、バケツリレーのような感じで、みんなで運び入れた」という話を、経験された先生から時々聞きました。

金子先生 私が在校中には、蔵書にバーコードが付きました。図書委員もリニューアルのお手伝いがあり、「普段は入れない書庫に入ってバーコード付けをやっている」という話を友だちから聞いて、参加していなかった私は「いいなぁ、楽しそう」と思いました。バーコードシステムに変わって20年以上経ちますが、書架には貸出カードが入ったままの本も残っていてびっくりします。


島名先生 教員しか手に取らないような本のカードから、教わった先生の筆跡を見つけることもあります。あの先生もご覧になっていたんだ、と思うと感慨深いんですよね。

金子先生 私は大学で日本の中世の歴史を専攻したのですが、大学図書館で佐藤和夫先生の本をたくさん紹介されました。論文も佐藤先生の本を参考にして書きました。当時は全く知らなかったのですが、(本校に赴任し、社会科教諭時代に)授業準備をしようと思って古い本を借りたら、貸出カードに佐藤先生の名前を見つけました。著作の奥付を改めて見たら、捜真女学校の先生だったと書いてありました。全然知らなかったのでびっくりしました。

島名先生 佐藤先生は高校の日本史を中心に担当されていましたが、捜真では合気道部を作った先生としても有名なんですよ。(合気道部は)40、50年以上の歴史があります。

6学年がともに過ごす中で

ー図書館の自習スペースは、どのように利用されていますか。

島名先生 本館の1階に自習室があります。そこは個別の学習机だけなので、黙々と勉強したい人はそちらを使います。高校生は自習室を使う人が多いのですが、高2、高3のホームルームは4階で、図書館の並びにあります。図書館のほうが物理的にも心理的にも近いので、図書館の自習スペースを使う人もいます。閉館時間まで図書館で勉強して、その後、自習室に移動する生徒もいます。

金子先生 図書館はおしゃべりができるので、本館の自習室とは雰囲気が違います。個別の自習机で黙々と勉強する生徒もいますが、友だちと一緒に訪れて会話しながら勉強する生徒もいます。調べ学習の課題なども出るので、みんなでわいわいと相談しながら分担を決めたり、必要な本を探してレポートを書いたりする姿も見られます。

ーおしゃべりが勉強のじゃまになる、ということはないのですか。

島名先生 話をしてはいけない、という(窮屈な)雰囲気はあまりないような気がします。

金子先生 気になったときに「周りをよく見て行動しましょう」と声をかけることはありますが、生徒同士で気づかいができているというか、自分で周りを見て振る舞っているのではないかと思います。

ー先輩の姿を見て学ぶことも多いのでは?

島名先生 そうですね。直接何かを一緒にしたということではないけれども、同じ場所でそれぞれが経験をしている。だから卒業生が顔を合わせたときに、思い出話が尽きないというか……。異学年でも交流できるのだと思います。バトンが渡されるような感じではあるのかなと思います。

本を通じて人助けを!

ー図書委員会の活動にも貴校の校風が表れていますよね。

島名先生 文化祭では古本市とレモネードスタンドを出店しています。自国の言葉では絵本を出版できない国に向けて、絵本の日本語の部分をその国の言葉に張り替えてお送りしている「シャンティ国際ボランティア会」という団体の支援をさせていただく目的で古本市を始めましたが、今は図書委員会主催の講演会でご登壇いただいたご縁で、横浜子どもホスピス「海と空のおうち」や、小児癌の方を支える「みんなのレモネードの会」にも売上を寄付させていただいています。

金子先生 古本市は教室の中で、レモネードスタンドは教室の外で行っています。

島名先生 図書委員の生徒が楽しそうに取り組んでいる姿を見て、「私も販売する側に回りたい」「お手伝いしたい」という気持ちから、図書委員になる生徒もいます。

ー文化祭の古本市に出す本は、皆さんから募るのですか。

島名先生 6月に保護者面談を行うのですが、そのときに、お家の方も紙袋いっぱいに持ってきてくださいます。「量が多いので、土曜日に車で届けてもいいですか」と連絡をくださる方もいます。

金子先生 付属の小学校も絵本や児童書を出してくださったり、先生方もたくさん持ってきてくれます。集まった本を図書委員が仕分けて値づけをします。保護者の方が出してくださるビジネス書から、小さいお子さんが読み終わった絵本まで、いろいろな本が集まるので、結構賑わいます。


ー誰かのために行動することへのハードルが低いですよね。

金子先生 捜真小学校では「読み聞かせ」活動も行っています。

島名先生 図書委員が中心ですが、保育の道へ進もうと考えている生徒が「参加したい」と言えば、「一緒にどうぞ」という感じで柔軟に対応しています。

金子先生 図書委員というと図書館の中で活動しているイメージですが、外での活動も多く、私の外へ外へという気持ちも、そういうことから育ったのかもしれないなと、話していて思いました。

島名先生 金子先生の前任者がたまたま学校の近くに住んでいて、町のフェスティバルに呼んでいただいたときも、古本を運んで、古本市とレモネードスタンドを出店させていただきました。

ーそういうことから視野が広がり、行動することをポジティブにとらえられるようになって、頼もしい生徒さんが育っていくのですね。学校を訪れた際には、ぜひ図書館に足を運んでいただきたいと思いました。

▶︎古いものから新しいものまで、ラインナップが充実の新書のコーナー

▶︎入口には震災に関する本も