2025年1月22日、光英VERITAS中学校 「VERITAS探究入試」が行われました。
光英VERITAS(こうえい・ヴェリタス。千葉県松戸市)は、受験生の多様な能力を掘り起こすべく、国算2科目、国算社理4科目、英語、理数、探究という多彩な区分の入試を行なっています。その一つ、「VERITAS探究入試」が、2025年1月22日午後、行われました。(取材・撮影・文/市川理香)
今年の課題は、SDGs11
昨年から始まったこの入試、SDGsから一つのテーマについて、提示された資料をもとに解決策を考え、「企画書」にまとめ提案するというものです。
【探究課題】
SDGs11 :住み続けられるまちづくりに関連して、松戸市をより良く住み続けられるまちにするために市長に提案するプロジェクトの企画書を提出しなさい。
*調査・まとめ
解答用紙「プロジェクト企画書」は解決の手順に従い構成されており、資料をもとに、「調査・まとめ」50分で、企画書をまとめます。
2025年入試では、資料は、松戸市に関する人口や家族類型、交通、農業、空き家、防災、開発などのデータや自治体の発信など12通りが提示されました。資料はどれでも、いくつでも使ってもよく、松戸市に限らず、日頃、家庭や小学校で、どのようなことを話したり関心を持っていたりするかが現れそうです。
解決の手順は「プロジェクトのタイトル」に始まり、「現状の分析(現状・課題)」→「協働したい職業(協働したい職業・その理由)」→「プロジェクトの内容と影響」→「デメリット(短所)や反対意見」。取り組む課題を決めたら、資料と16通りの職業が描かれた一覧をためつすがめつ見ながら企画書作成。多くの受験生に、最後まで考えることを止めない“勢い”、“ひたむきさ”が見られます。
*相互発表
休憩をはさみ、試験会場で座席の前後になった受験生とペアになり、お互いの企画書について一人4分で発表し質問し合う時間が設けられていますが、試験官が発表を聞いて採点することはありません。この時間は今年新たに設けられた時間で、あくまでも、その次の面接官との個別面接に向けて、受験生自身が考えを整理するウォーミングアップのように見えました。
*個別面接・質疑応答
そして一人ずつ呼ばれた順に個別面接(3会場)に臨み、面接官からの質問に答えて試験終了。面接は、企画書の流れに沿って、公平になるように同じ質問で行われますが、自分が考えたプロジェクトへのこだわりや、反対意見にどう答えるかも質問され、本当に自分がやりたいことか、企画を自分のものとして答えられるかが問われます。
中心となる「探究推進部」
2年目の今年、作問・採点をブラッシュアップ。探究活動の中心となっている探究推進部のメンバーで入試の探究テーマを夏には決め、その後、話し合いを繰り返し、日頃の探究活動をイメージしながら、受験生がいかに自分の思いの丈を話せるか、自由に発想して個性を発揮できるかに心を砕くなど、一年がかりで入試日を迎えた、とのこと。光英VERITASでは、学びの評価をルーブリック表で見える化しており、入試でもルーブリックを用いた評価をしています。発表より記述が得意な受験生もいれば記述より発表が得意な受験生もいますし、同じような企画でも表現や言い回しまで細かく採点し、合否判定会議ですり合わせに時間をかけます。
個別面接を終えた受験生は、「緊張して話せなかった」「自分の意見を言えるのが良い」などの感想を漏らしていましたが、合否の分かれ目は、面接での説明や質問への答えに、答案に書いたものをいかに自分のものとして答えているか、だと言います。それは、知識に偏らず、考えて述べられるか、思考力、判断力、表現力が問われる入試の特徴。考えるための知識も必要ですが、気になることを調べたり、家族や友人と話したしたりする、そんな日常生活が垣間見えます。
ある先生は、「思いがけない視点、発想が見られて、まさに探究」と言い、また「一生懸命試験に臨んでいるので合否判定はつらい」と吐露する先生も。ほとんどの受験生が、事前の探究入試勉強会に参加しているので慣れてはいても、明暗が分かれるのが入試本番。若干名募集のところ、出願15人、受験13人、合格6人、実質倍率2.2倍という結果でした。
写真は個別面接の面接官
日頃の活動を入試に表現
この入試について、副校長の大野正文先生は、「試験は、入学後の学習活動そのもの。課題を発見し、どう解決するかという探究活動を、入試に具現化した」と語ります。探究推進部の13人を、「新しいことをおもしろがれる人」「発想が柔軟な人」と評します。家庭科、数学、国語、理科、社会など教科はばらばらですが、「教科横断も意識している」との狙いも明かします。
校長の川並芳純先生は、「光英VERITASの教育の特徴にリンクした多様な入試があって然るべき」と力を込めます。それが、教科型入試だけでなく、理数・サイエンス教育にリンクした「理数特待選抜入試」、英語・グローバル教育にリンクした「英語入試」であり、この「探究入試」。この3つの入試の正式な名称には、校名から「VERITAS」を冠しており、思い入れが伺えます。
川並先生は、「正解のある問題を解く力や偏差値で測れない、色々な能力を持った子どもたちに入学してほしい」と言い、「VERITAS探究入試」会場でも、受験生の答案や姿に目を凝らします。
昨年のVERITAS探究入試に合格し入学した生徒は、探究学習のリーダー的な存在として活躍しています。また、女子校時代から力を入れてきた探究学習の成果は、探究コンテストで優秀な成績を収めることや大学進学にも現れており、筑波大学や明治大学に総合型選抜で合格した生徒は、探究学習で取り組んだテーマを大学でも学びたいと選んだ進路だと言います。
2021年の共学化、校名変更という体制の変化は、「問いを持つ学び」への転換を加速したことを、入試から見つめ直した取材でした。
写真は事務室前の合格発表掲示板に書かれたメッセージ