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受験情報ブログ

コロナ禍にも関わらず、受験者倍増となった和洋九段女子中のPBL型入試(前編)

2019年より始まった和洋九段女子の「PBL型入試」(2/1)には、昨年の倍の受験者が集まりました。

2019年より始まった、和洋九段女子の「PBL型入試」。日本一入試らしくない入試にこだわって、年々志願者数を増やしてきました。しかし、今年度は新型コロナ感染症の影響で、入試体験会を開くことができず、そのため出願は減るのではないかという予想に反して、昨年の倍の受験者が集まりました。〈取材・撮影・文/教育ジャーナリスト マザークエスト 代表 中曽根陽子〉

緊急事態宣言下、初日の午前中に行われたPBL入試

和洋九段女子中学高校では、5年前から段階的にPBL型授業を導入。現在は教科を問わず学校全体でPBL型授業が行われています。そして、2019年から入試でも「PBL型入試」を導入。3回目となる2021年入試では2月1日午前、14名の受験生が参加して行われました。

試験初日の朝、学校入口の外階段では、校長先生が受験生を出迎えます。

入口を入ると、消毒液と自動検温の機械が置かれ、コロナ対策が徹底される中、受験生は会場へと案内されます。

会場となったのは、和洋九段のPBL型授業の象徴であるフューチャールーム。会場入口では、大型モニター越しに、在校生が手を振って受験生を出迎えます。昨年までは、在校生が入試のサポートにあたっていましたが、今年はそれも叶いません。しかし、なんとか受験生を応援したいと、自宅からオンラインで声援を送る高校生の姿に、受験生の顔もほころびます。

会場設定にも変化が…。昨年と大きく変わったのが、各机に飛沫防止のクリアボードが置かれていることと机の配置。受験生同士が密着しないように、ロの字に並べられているという徹底ぶりです。そして、すべてホワイトボードになっている壁4ヶ所には、在校生のビデオ作品が映し出されていました。

開始時間まで、壁際に並べられた椅子に座り、ちょっと緊張した様子で待機していた受験生も、「これは、今年オンラインで開催された在校生の作品です」という説明に、顔を上げて熱心に見ていました。

開始時間が近づき、部屋の中央、4人一組に置かれた指定の場所に案内された受験生の前に映し出されたのが、昨年度PBL入試を受験して入学した中学1年生からの応援メッセージ。「4月に学校で会えるのを楽しみにしています」という言葉に大きくうなずく受験生の姿もありました。

一緒にいる仲間と思いっきり楽しむことが入試の目標!?

新井誠司 教頭先生の「それでは入試を始めます」という声かけと共に始まったのが、深呼吸のワーク。椅子に浅く座り、背筋を伸ばして、深く呼吸をするように促されます。集中とリラックスの効果があると言われている、マインドフルネスを取り入れた集中タイムでした。

そして、この入試の目標が示されます。それが次の2つ。

① 一緒にいる仲間とPBL入試を思いっきり楽しむ。

② 帰ったら、家族と今日の入試の内容について話す。

こんなことを目標にする入試があるんだと、私もびっくりでしたが、学校側のPBL入試にかける思いが込められていると感じました。

自己紹介から始まる参加型の入試

続いて、カードに「今日呼ばれたい名前を書く」ように言われます。まるでワークショップ仕立ての指示に、ちょっと戸惑いながらも、呼ばれたい名前を書き、ホルダーに入れて首からかける受験生たち。続いて、マスクの上からマウスシールドをつけて、徹底した感染対策を取ります。

そして、一人ずつ、名前、今日の目標、今の気持ちを話して自己紹介をし合い、拍手で応えるという流れ。

「皆は一緒に協力し合う仲間だ」という説明を受けて、これはほんとうに入試だろうか…、そう思わされるようなリラックスした雰囲気のなか、入試が始まりました。

答えが一つではない問いに対して、自分なりの答えを出す

入試の流れは次の通り

1.検索の仕方を学ぼう
iPadの使い方の確認。検索をして、学校のサイトにアクセスしてみる。

2.イントロダクション
ニュース映像を2本見た後、「新型コロナウイルスの流行による良い変化について」iPadで調べ、自分が気づいたこと・感じたことをまとめて、各自発表。

流れたのは、新型コロナウイルスの感染が世界的に広がっていることを伝えるニュースと、大気汚染が解消されているというニュース。受験生は担当の先生から、メモを取りながら動画を見ること、人の発表も、気づいたポイントをメモしながら聞くことを促されながら、作業に取り組んでいました。

ここまでは、練習で、いよいよ本番です。

3.自分で意見を作ろう

AIと世界一の実力を誇る棋士の対決を伝える動画を見たあと、

①AIなどの技術が、人間より賢い知能を生み出すことが可能になるシンギュラリティが来る。

②人間の仕事の49%はAIに取って代わられる。

という2つの未来予想図が提示されます。

そして、トリガークエスチョン「AIとともに作る理想の未来とは」が提示され、受験生たちは調べたり、メモをしたりしながら、自分の意見をまとめていきます。(トリガークエスチョンとは、思考を刺激する起爆剤となる問いのこと)

「突拍子もない意見でもOKだよ」という声かけをしながら、受験生を見守る先生方の眼差しはとても暖かく、それぞれの力を引き出そうとしているように感じられました。

人の意見をよく聞き、更に良くするために協力し合う態度が大事

4.グループで発表しよう。

それぞれがまとめた考えを、一人ずつ発表していきます。

そして、それぞれの意見について、だれのどこが良かったかを伝え合います。

この時に求められていたのは、伝わる話し方と聞く態度でした。

5.グループで一番の意見を選ぼう

どの意見をグループの意見として採用するかを話し合います。その際、決め方から考えさせていました。

休憩中には在校生とオンラインで話せるサプライズも!

6.休憩 

休憩中に、在校生とオンラインで繋がって直接話せるサプライズも。

グループごとに、一人ないし二人の在校生が、ねぎらいの言葉をかけたり、受験生の質問に答えて、和ましてくれていました。

そしていよいよ後半のスタートです。

7.グループの意見をよりよくしよう。

グループ発表に向けて、その意見をさらに良いものにするように、各自が調べて見つけたことを伝え合います。発表者に選ばれた受験生は、それらの意見を取り入れながら、発表内容をまとめていきます。

ときどき、先生から「ナイスサポート」の声がかかり、皆で作っていくという機運が盛り上がるのがわかりました。

8.全体の前で発表しよう。

発表者に選ばれた受験生が一人ずつ前に出て、発表します。

どの受験生も堂々と、グループでまとめた意見を発表していました。

「コロナ禍にも関わらず、受験者倍増となった和洋九段女子のPBL型入試(後編)」レポート記事に続く