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和洋九段女子、従来の枠組にとらわれない「PBL型入試」

和洋九段女子で2019年から導入された「PBL型入試」。2020年は2月1日午前に行われました。

和洋九段女子では、現高3生から段階的にPBL型授業を取り入れ、現在は教科を問わず学校を上げてPBL型授業を行っています。壁面すべてがホワイトボードになっているフューチャールームでタブレットを活用しながら行われる授業は象徴的。2019年から入試でも「PBL型入試」を導入し、2020年は2月1日午前、フューチャールームを会場に行われました。(取材・撮影・文 / 市川理香)

PBL型授業育ちの高2生が持つ実感

この試験をサポートするのは高2生。本格的にPBL型授業を導入した学年でもあり、「PBLの授業は、どう?」と聞いてみました。

「たくさんの自分とは違う意見が聞けるのがいいです。それにふだん、他愛無い話をしている人と、まじめに意見交換するので、その人のいろいろな面を知ることができるのもいいなと思います」

まさにその言葉を、入試という場面で実感した110分間でした。

日本一、入試らしくない入試

2月1日午前の第一回入試は、「国算」「国算社理」「英語・英語スピーキング」、そして「PBL型」の4タイプの入試が行われました。入り口で塾の応援を受け、保護者は控え室へ、受験生は試験会場へ分かれます。ハイタッチ、あるいはギュッとハグののち、受験生の後ろ姿が見えなくなるまで見送る保護者の姿に、迎える学校関係者の表情にも引き締まるものが浮かびます。

取材許可をいただいた「PBL型入試」は、5階のフューチャールームが試験会場です。グループワークができるように机が設置され、受験番号で座席が指定されています。集合時刻8:30には受験生がそろいました。

「まもなく、試験っていうか、PBLを始めます」とファシリテーターの新井誠司・教頭先生。さらに続けて、お手伝いの高2生に「机に座っておしゃべりしてあげて」と促します。高2生たちは自分の受験体 験や女子校の赤裸々な学校生活を笑顔で話してくれ、試験前のピンと張り詰めた緊張感は、そこにはありません。何でも言い合えるような雰囲気が生まれ、空気も次第に心地よく和んでいきます。何より、受験生自身の表情も和らぎ、話に相槌をうったり、自分のことを話したりしていることが、入試の導入としては異色でしょう。

試験開始時刻が近づき、高校生たちは、脇に用意された席に移動しましたが、それぞれ受験生に向かって、ガッツポーズを送ったり、頑張れと唇が動いていたり・・・。その姿に何だか、鼻の奥がツーン。

試験は、集中タイムから始まった

前方のスクリーン(壁一面のホワイトボード)に、スライドが映し出され、定刻通り8:50に試験が始まりました。

始めの5分は、集中タイム。
「息を吸って、吐いて、今日にかける思いを感じましょう」
ヨガ教室の始めを想像していただけるといいかもしれません。いろいろなことがそぎ落とされて、この時間だけに集中する準備が整うようです。

次に自己紹介。今日呼ばれたい名前で名札を作り、首からぶら下げてから、順番に自己紹介していきます。それぞれのグループに着いたファシリテーターの先生方も自己紹介します。この時、指示されたわけでもないのに一人ずつの自己紹介に拍手していたのは、朝、顔を合わせてからの時間がなせる業でしょうか。
そして一人一台用意されたタブレットを使い、「和洋九段 PBL型入試」というワードで検索の練習をした後、本番に入りました。

課題を見つける。考える。まとめる。伝える。

流れに沿って、PBL型入試を振り返ります。

[1.動画を観る]
まず、救命ドローンのスタートアップ企業、Ziplineの動画(急病人の治療に必要な血液を、いかに早く届けるかを自動車と飛行機を比較しドラマ仕立てにした動画)を視聴。メモを取っても構いません。

[2.動画の振り返り]
5分間で、どのような問題点が、動画の中にあったかを見つけ、どのようにして解決するかを考えます。

[3.発表]
見つけた問題点と解決方法を順番に発表し、グループで共有。

[4.トリガークエスチョン]
ここで、本日のトリガークエスチョンが提示されます。
「100年後、人や物はどういうふうに移動していると思いますか」

[5.自分の意見をまとめ、グループの意見を作る]
今現在、社会で起こっている問題、例えば満員電車、温室効果ガスの排出、石油依存などを改善するという考え方でもOKというヒントや、「現実的なものでも、空想のなかでもいい」とのアドバイスもあり、受験生はそれぞれタブレットで調べながら、自分の考えをまとめていきます。
自分の意見をまとめる(20分)→グループ内で発表(15分)→グループの意見としてひとつを選ぶ(10分)の計45分。ファシリテーターの先生に質問するのも、受験生同士が相談するのも、自由です。

[休憩]
ここで一旦、休憩をはさみましたが、その間も本当に試験中なの?と思いたくなるほどリラックスしていました。
というのも、受験生は事前におやつや飲み物を持参するように言われており、高2生もグループに混ざり、小さな茶話会の様相を呈します。朝と同様に、学校生活のこと、中学受験のきっかけ、部活のこと、クラスや部を超えた関係など、和気あいあいとしたなかで話が盛り上がっており、まるでクラスのお弁当の時間のよう。

[6.グループ内で意見をブラッシュアップ]
休憩後、グループで協力して、選んだ意見をより良いものにしていく時間です。

グループ内の人の意見に耳を傾け、時には発言し、時にはうなずき、また新たに調べる必要のあることは協力しながらの話し合い。
ファシリテーターの先生方は、グループの話し合いをさりげなく動かしながら、評価表に評価を書き込んでいきます。このルーブリック評価は非公表ですが、「独創性がなくても、今ある問題を解決する方法であればよい」「人の意見はまずほめよう」「良いところと、その理由を言おう」「解決策に理由があればよい」「意見は、問題を解決するものになっているか」など、合間、合間に挟み込まれるアドバイスや指示から、積極性、協働する力、コミュニケーション能力、論理的に意見を伝える力などを評価していることがうかがえます。

[7.発表]
代表者が、グループの意見を発表して、PBL型入試は終了。
「私たちが考えたのは・・・・」と発表する内容は、インプット・アウトプットを繰り返した後だけに、最初に比べて骨太になっています。また発表者は代表一人ですが、グループで協働してより良い解決策を導いた成果でもあり、全員に達成感が浮かびます。

花道から退場

解散前に、新井先生からなぜPBL型授業を大切にしているかが、アフリカの言葉を引き合いに伝えられました。

「『急ぎたいなら一人で行きなさい。遠くに行きたいならみんなで行きなさい』という言葉があります。PBL型授業で身に付ける力は、複雑な問題に出会ったときに、大切になってくるでしょう」

ファシリテーターの先生からも感想が話され、高2生が出口に花道を作ってハイタッチで送り出しました。
何回か実施されたPBL型入試体験会に参加して慣れていた受験生が多かったようですが、まったく初めてという受験生もいたようです。活発な話し合いや課題解決の努力に取り組んだ6名の受験生。きっとその夜は、自宅でも今回のトリガークエスチョンで夕食が盛り上がったことでしょう。その時、調べたり、考えたり、説明したりを繰り返したPBL型入試だからこその、お子様の成長を感じられたかもしれません。

終了後、「PBL型入試で入りたかった」と高2生が言ったのは、PBL型授業の楽しさを実感しているから。そして和洋九段女子がPBL型入試を導入したのも、PBL型授業で生徒が目に見えて成長することを実感しているから。

新井先生は、こう言います。「選抜するための入試という枠組みをいかにこわすかを考えて、PBL型入試を導入しました。インプット、アウトプットを繰り返すので、入試中にも受験生には学びや気づきがあるはずです。積極性やプレゼンテーション力、分析力、協働性を加点法で採点します。目指すのは、日本一、入試らしくない入試」

私立女子中学フェスタで「SDGsすごろく」体験授業

和洋九段女子中3生が、SDGsに取り組むなかで作った「SDGsすごろく」は、企業や学校関係者から高い関心が寄せられています。3月の私立女子中学校フェスタでも体験できるそうなので、ぜひお出かけください。予約は3月2日12時から受付開始です。