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LOVELY LIBRARY 第20回·普連土学園の図書館《特別編》

情報誌『shuTOMO』2024年12月8日号でご紹介した記事の特別編です。

情報誌『shuTOMO』2024年12月8日号でご紹介した普連土学園中学校・高等学部の「LOVELY LIBRARY」取材時に先生方に伺ったお話を、特別編としてWebでお伝えします。取材・撮影・文/ブランニュー・金子裕美〉

好きな場所で働きたくて司書を仕事に

ー司書を職業とした経緯を教えていただけますか。


染谷先生 父親が四六時中、本を読んでいる姿を見て、小学生の頃から「そんなに本って面白いの?」と思っていました。父も図書館を利用していたので、一緒に本を借りるようになりました。小学校と高校は、学校の図書館が朝から開いていたので、学校の図書館を利用していましたが、中学校は週に1回程度しか開いていなかったので、公共図書館に通っていました。もう少し学校の図書館が開いていたら、そこが逃げ場になって、自分の経験も変わっていたかもしれません。幸い、勤めた中高図書館は、どちらも生徒が学校にいる間、いつでも開館しています。そういう環境づくりに関わることができてよかったなと思っています。


ー学生時代に夢中になった本はありますか。


染谷先生 好んで読んでいたのは講談社の「ティーンズハート」シリーズですね。それから赤川次郎の三毛猫ホームズシリーズなどもたくさん読まれている時代で、私も読者の一人でした。

ー司書の免許はいつ取得しましたか。


染谷先生 高校3年生の頃から図書館で働くことも考えていましたが、大学は教育学部で、社会の教員免許を取得しました。司書と司書教諭の免許を取得したのは大学院に入ってからです。私が専攻した「生涯教育学」は公共図書館や博物館を研究するところで、病院患者図書館の研究をしていました。新卒で勤めた後、一時期、仕事から離れていて、また働きたいと思ったときに図書館が頭に浮かびました。千葉県の私立中高一貫校で非常勤の司書として勤務した後、本校に移りました。現在は専任の司書教諭として、図書館の運営に加えて、図書委員会やクラブ活動の顧問もしています。

一生ものになるような読書体験を提供したい

ー武捨先生はいかがですか。


武捨先生 私が通った小・中学校には常駐している司書の先生がいなくて、国語の先生が空き時間や昼休みに図書館に来て、開けてくれるような感じでした。ですから当時の私は、図書館で本を扱うには国語の先生にならなければいけないんだ、と思っていました。高校生になると、複数の学校を担当している司書の先生が、週2日来てくださったので、 図書委員になって先生の話を聞いたり、お薦め本の話を聞いたりしました。そのうちに高校の図書館で働きたいな、と思うようになりました。

 大学は文学部に進み、国語の教員免許と司書教諭の免許を取得しました。卒業後は地元に戻って公立中学校に勤めたのですが、読書活動を推進するような環境ではなく、それ以前の教育や生活指導で手一杯になってしまったため、一念発起して退職しました。その後、私立の大学図書館で、ブッカー(透明なシート)をかけるなど、受け入れ準備の基礎を学び、いろいろな仕事を経験して、公共図書館に移りました。さまざまな年代の方々が来館し、幅広い要望や抽象的な質問にお応えしているうちに、自分はどうして図書館で働きたいのか、を考えるようになりました。

 振り返ると、高校の図書館で出会った司書の方が、私が読みたくなるような本を勧めてくれたことがありました。そのとき薦められたのは浅田次郎の「活動写真の女」と「プリズンホテル」という本でした。その少し前に、私が浅田次郎の「天切り松 闇がたり」シリーズにハマっていて、そのことを司書の方に話したら、同じ作者の本を勧めてくれたのです。読んでみるととても面白くて、特に『プリズンホテル』は全4巻、すべて読んで大号泣して、「めっちゃよかったです!」と伝えました。そうした経験から、子どもにとって一生ものになるような読書体験を提供することが司書の仕事だと、改めて思いました。その機会は、公共図書館よりも学校図書館のほうが多いと思い、チャレンジできる学校を探したところ、本校と出会ったのです。


染谷先生 武捨先生はいろいろな図書館で経験してきたことがすべて力になっている感じで、頼もしいです。本の知識が豊富な上に、本の装備、本の処理の仕方などもしっかりと習得しているので、私も勉強させてもらっています。

本が好きだから図書館の近くに住む

ー我が子に本を読ませたい、あるいは読書を好きになってほしいと願う保護者の方に、アドバイスをいただけますか。

染谷先生 そもそも本が身近にないと読まないかもしれませんね。私がそうだったように、親が読んでいると、自然と興味をもつかもしれません。

武捨先生 小さいときに身近になかったものには多少のとっつきづらさがあると思うので、寝る前に絵本を読んであげるとか。

染谷先生 恐竜図鑑など、子どもさんがすでに興味をもっているジャンルの本から入るとか。

武捨先生 少しでも本に触れる機会を作ってあげると、その経験が自ら読むきっかけになるのかもしれないなと思います。

染谷先生 読書は嫌いじゃないけれど読むことが苦手という子には、リーディングトラッカーという読書補助具がお薦めです。定規に似たフォルムをしているのですが、読みたい行に当てると、文字が頭に入ってきやすくなる便利グッズです。普連土図書館では、本を読むことが苦手な生徒に貸し出しています。

ーこういうもので、苦手意識が和らいだり、読書の楽しさに気づけたりするといいですね。先生方は今もよく本を読みますか。

染谷先生 私はわりと読むほうかもしれないです。

ー親が読書を、と言っても、忙しくて時間が作れないという方も多いと思います。どんなときに読んでいますか。

染谷先生 電車に乗っているときや、就寝前に読むことが多いです。 休みの日に読むこともあります。だから読みたい本を常に持っていたいというか。持っていると安心します。私は家に本をあまり置かないないタイプなので、読みたい本が手元にないときは公共図書館に借りに行きます。ですから、引越しをする際には公共図書館が駅近にある駅を選びました。

ーおもしろい発想ですね!

染谷先生 引越すときは、まず図書館が近くにある駅をピックアップして、候補の中から通勤時間など家族の利便性を考慮して住まいを決めました。駅と直結している公共図書館もいくつかあって、家に帰る前に図書館に寄れるのでとても便利です。

ー生活動線の中に図書館を組み込むというのは良いアイデアですね。機会があればぜひ参考にしたいです。

厳選した本をカフェで一気に読み切る

武捨先生 私は本を買うタイプなんです。ただ、何も考えずに買ったら本だらけになってしまうので、この本棚に収められるだけの量しか持たない、と決めています。入らなくなったら自宅の箪笥の中にちょっとスペースを作って入れておき、人にあげたり、どこかで売ったりしています。ですから、本を購入するときはシビアというか、厳選に厳選を重ねます。表紙の裏や袖(内側に折り込まれているカバーの部分)などにある説明を読んで、これは私の心に響きそうとか、すごい気になるなとか。心が揺さぶられる作品を選んで買うことが多いです。

ーどういうときに本を読みますか。

武捨先生 私は今、乗車率の高い電車に乗って通勤しているので、電車の中では本を開くことが難しいんです。ですから、今日はこれを読みたいな、という本を、休みの日に時間を作って読んでいます。家で読むのはもったいないな、と思うときもあります。そんなときは、朝から近くのカフェなどに行って 1冊読みます。人が増えてきたら別のカフェへ、とはしごすることもあります(笑)。

ー素敵な休日の過ごし方ですね。

武捨先生 そういうときは、ただ本を読むというより、今まで出会った本の中から特に、自分が魅力を感じる本を選ぶようにしています。「読書すること」を目的にしたくないというか。今日はこういう気持ちになりたいという目的があって、そのために読書をする。ツールとしての読書を心がけています。結果として「本が好きです」「趣味は読書です」と言っていますが、同じ本を何巡もするので多読するタイプではありません。「いろいろな本を読もうね」とか、「1日1冊」あるいは「月に何冊、読もうね」と言われても、おそらく目標に到達できないです。


ーお宅の本棚には愛着のある本が詰まっているのでしょうね。

武捨先生 確かに、ずっと持っている本が多いです。私は4、5回、引越しをしていますが、愛着のある本にはずっとついてきてもらっています。中学生あたりに集めた本も手放していません。読み返すこともたびたびあります。シリーズ1から全部読み返そうかな。

染谷先生 あー、それ、楽しそうです。

武捨先生 至福の時間ですよね。 想像しただけで(笑)。

普連土学園の図書館にはソファの席もあります。一人がけもあるので読書に没頭できます。