2月1日PM、相模女子大学中学部のプログラミング入試
相模女子大学中学部では、2月1日(月)午後にプログラミング入試が行われました。今年で3年目となる注目のプログラミング入試は、どのように進化し、またコロナ禍においてどのようになっているのでしょうか。〈取材・撮影・文/北岡優希〉
小田急線相模大野駅から徒歩約10分、幼稚部から大学まであり、またそれらが全て1つのキャンパス内にあるという大変珍しい学校です。
そのため大きな敷地と自然が広がっています。
落ち着いた雰囲気の中、試験開始
午後の入試は14時45分集合で、筆者が到着した14時10分ごろにはすでに生徒の何人かが座っていました。教室にはカフェのようにBGMが流れています。
机の上には、組み立て済みのロボット、命令を作ってロボットに送信するためのタブレット等、試験で使用することになる様々な道具が置いてあります。
プログラミング教育のパイオニア、川原田先生による導入授業
時間になると、今回のプログラミング入試の発案者で小学部の校長でもある川原田先生が導入の授業を始めます。タブレットとロボットのBluetooth接続の仕方、命令の入れ方や種類の説明など、初心者でもわかりやすく解説してくださいます。
そして生徒2人につき1人の先生がサポーターとしてついていて、うまくいかなかったり困っていそうな子がいたら声がけをしてサポートをしてくれます。筆記試験のような張りつめた空気はなく、非常にリラックスできる雰囲気です。
川原田先生は、2003年からロボティクス教育の研究を始め、小・中学校向けに、ソフトバンク社のPepperを活用したプログラミング授業を構築。Pepper社会貢献プログラムの教師用指導書も監修・執筆されています。教育界ではまだプログラミングという言葉もあまり一般的でなかった5年以上前からプログラミング教育に注目して導入し、テレビの出演経験もある、この分野の最前線で活躍されている先生です。
今年度からの大きな変更
課題は、机の左側からスタートし、右側のゴールまでプログラムを入れ込んだロボットを移動させます。そしてスタートからゴールまでの途中の動きは「自分で考える」ようになっています。
受験生にはプリントが配られ、どのようなコースを設定するか、どのような動きをしたいか等を記入していきます。あらかじめ用意されている板、ボールなどは自由に使って良いとのことです。
PBL(Project Based Learning)とは?
アクティブラーニングという言葉が使われ始めてから、STEAM教育とか、アダプティブラーニングとか、EdTechとか、新しい言葉がどんどん生まれ、常にアンテナを張っていないと追いつくのが大変です。聞いたことはあるけれどもよくわからない、というのがほとんどのはずです。
その中でもこちらはPBL(Project Based Learning)、課題解決型学習と言われるもので、「命令されないと動かない」とか「言われたこと以外はやらない」とかいう社会人が増えているといった問題に対して最も注目されている教育の1つです。つまりこの入試では、課題も自分で考えて作るのです。今年度からの変更のようです。
生徒のそれぞれの動きとそれを見守る先生たち
100分間の制限時間の中、生徒たちはそれぞれの動きをしています。課題を考え図を描いてからその通りにプログラミングしていこうとする子、まずロボットを動かしてみてそれに合うように課題図を作成していく子などさまざまです。
先生たちはサポートをしつつ、生徒たちの動きを観察し評価をつけていきます。
プレゼン発表
時間が来たら、2グループに分かれ、片方は20分間の基礎計算力テスト、片方はプレゼン発表をしていきます。
プレゼンでは、「実現しようとした動き」「工夫したところ」「難しかったところ」「時間があったらやりたい動き」などに関して自分の考えを発表していきます。その後質疑応答・フィードバックを経て終了となります。
終了後、川原田先生は、「このように試行錯誤を繰り返しながら、1つではない答えにたどり着かせる体験を今後もさせていきたい」とおっしゃっていました。例えばロボットを組み立てるところから始めるとか、自由度をさらに上げて、企画力・発想力・解決力を見るような入試にしていきたい、とのことでした。
自分で課題を見つけ、試行錯誤しながら解決していくPBLの流れは、プログラミング学習と非常に親和性があります。それらにいち早く注目し、入試にまでも取り入れている相模女子大中学部は、今後も目が離せない学校だと思います。