宝仙学園理数インターの新設「AAA入試」と導入2年目の「入試・理数インター」
宝仙学園共学部理数インター〈東京・中野区。共学校〉では、今春2019年入試から、また新たな入試を導入しました。ひとつが、既存の自己アピール(プレゼンテーション)型「リベラルアーツ入試」をさらに特化させた「AAA(トリプルA)入試」と、従来の「4科目入試」を共通のテーマを通して教科融合・総合的にするというコンセプトで新設した「新4科入試」です。
“日本一入試の種類が多い中学校”宝仙学園共学部理数インター
宝仙学園共学部理数インター〈東京・中野区。共学校〉では、今春2019年入試から、また新たな入試を導入しました。ひとつが、既存の自己アピール(プレゼンテーション)型「リベラルアーツ」をさらに特化させた「AAA(トリプルA)入試」と、従来の「4科目入試」を共通のテーマを通して教科融合・総合的にするというコンセプトで新設した「新4科入試」です。
この二つの新設入試と、従来から実施してきた「帰国生入試」を含めると、今春2019年には9種類もの入試を実施した宝仙学園理数インター(以下・宝仙理数インターと表記)は、「日本一入試方法が多い中学校」であることを公言し、それを中学入試のリーフレットの表示にも明記しています。
多様な入試を行うことで、多様な資質や潜在的能力、受験準備のスタイルやバックボーンを持った子どもたち(=受験生)と「新たに出会うことができた」という、同校の先生方の喜びと手応えを、そのままアドミッション・ポリシーにして、ここ数年の首都圏中学入試で、高い人気を集めてきた、いわば「私立中入試の多様化」を象徴する私立中学校です。
2月1日AMには2種類、PMには6種類の入試を実施
そうした、ここ数年で加速的に増加してきた「新タイプ入試」導入校の先駆け的な存在として首都圏模試センターでは宝仙理数インターに注目し、2017年入試では新設2年目の自己アピール(プレゼンテーション)型の「リベラルアーツ入試」を、続く昨年2018年入試では新設初年度のアクティブラーニング型の「入試・理数インター」を取材させていただき、Webの取材レポート記事としてご紹介してきました。
そして今春2019年入試では、2月1日の午後に並行して行われた、新設初年度の「AAA(トリプルA)入試」と、導入3年目の「リベラルアーツ入試」、導入2年目の「入試・理数インター」の様子を、それぞれ見せていただきました。
この2月1日の午前中には、同校の多様な入試のなかで最も受験生が多い「公立一貫型入試」と、第1回「4科入試(特待選抜)」の2種類の入試が行われましたが、午後からは、新設の「新4科入試」と「リベラルアーツ入試」「AAA入試」「グローバル入試」「入試・理数インター」「英語AL(アドバンスト・ラーナー)入試」の6種類の入試が並行して行われます。
午後に実施される入試の受験生の集合時刻はいずれも13時50分~14時30分の間。午前~午後とも同校を受験する親子に加え、午後から来校してくる受験生の親子が、保護者控室を兼ねた集合場所の講堂に集まってきます。
この多様な入試を午前~午後と滞りなく進行するうえで大活躍してくれるのは、やはり多様な入試を経て入学してきた、同校の在校生たちです。
わが子の力を親が信じて、結果を恐れずにプレゼンテーションへ!
「新4科入試」の受験生は最初の国語が開始される14時45分、そのほかの5種類の入試の受験生は、最初の「日本語リスニング」が開始される14時45分が近づくと、係の在校生の案内によって、それぞれの受験生が講堂から試験教室に向かっていきます。
講堂に保護者だけが残る形になると、校長の富士晴英先生による恒例の挨拶と、保護者へのアドバイス・トークがありました。
ここでは、この時間帯に行われる6種類の入試について、その導入の目的があらためて伝えられると同時に、とくにプレゼンテーションを伴う「リベラルアーツ入試」「AAA入試」「グローバル入試」の3種類の入試を受ける受験生の保護者に向けては、「もしもこの入試で合格できなかったら、お子さんの力が不足していたわけではなく、学校がわが子の良さを見抜けなかった。校長の目が節穴だったと思ってください」という、ほとんどの小学生にとっては初めてのプレゼン入試に挑んでいく子どもたちの保護者をさりげなく励ます逆説的なアドバイスがありました。
確かに、ペーパーテストの得点ではなく、これまでの「学習歴(習い事も含むすべての活動的を、同校では「学習歴」と呼んでいます)」と、先生方に向けてのプレゼンテーションの評価が、実際の合否につながるという体験は、もし残念な結果に終わった場合は、小学生にとっては厳しい経験になってしまう可能性もあります。
それだけに、「もし合格しなかったら、自分を評価できなかった学校と先生が悪い」というくらいに開き直って堂々とプレゼンテーションに臨むことができ、親も結果に関わらずそう思えたならば、それはまた貴重な、とても意味のある経験になるように思えます。
自己肯定感の高い子どもたちが入学し、前向きな学校生活を送る
実際に、これらの自己アピール(プレゼンテーション)型の入試で合格し、入学してきた生徒は、「私ががんばってきたことを認めて(評価して)もらえた!」と感じて、そんな学校を好きになってくれるケースが多いため、とても自己肯定感が高い生徒が多いといいます。そうした意識から、授業や学校行事に、前向きに取り組んでくれる生徒が多いことに、先生方も手応えを感じているそうです。
首都圏の(おそらく全国でも)初めて、2016年入試から、中村中学校〈東京・江東区。女子校〉と同時に、こうした「自己アピール(プレゼンテーション)型」入試を導入した宝仙理数インターが、多様な学習歴(活動歴)を持つ小学生に道を拓いてくれた、この「リベラルアーツ入試」をはじめとした各種の自己アピール(プレゼンテーション)型入試は、この先にも多くの「習い事に励む小学生」にとって、まさに希望の入試として広く歓迎されていくことと思われます。
新設の「AAA(トリプルA)入試」第1回は実受験率100%!
そうした自己アピール(プレゼンテーション)型の入試のひとつとして、2017年から導入した「リベラルアーツ入試」よりも、さらに特化した学習歴(活動歴)を持ち、中学入学後にもハイレベルな活動をめざしていきたいと願う“尖った”小学生に向けて、今春2019年では「AAA(トリプルA)入試」を新設しました。
ここでいう「3つのA」は、「Athlete(アスリート)」、「Artist(アーティスト)」と、もうひとつの「A」は、自分で設定した「A」のつくもの。各分野で、全国レベルの実績、またはそれに準ずるような実績を持つことが出願資格となることを意味しています。
この2月1日午後に行われた新設「AAA(トリプルA)入試」の第1回には、男子2名、女子3名の計5名が出願し、その全員が入試当日に受験に訪れました。
同日の同じ時間帯に行われた「リベラルアーツ入試」第1回には、男子2名、女子6名の計8名が出願、「グローバル入試」第1回には、女子1名が出願し、どちらも全員が実際に受験に訪れました。
同じく並行して行われた「入試・理数インター」第1回には、男子15名、女子12名の計27名が出願し、このうち26名が受験に訪れました。<...
「授業をしっかり聞ける」力を測る「日本語リスニング」
そして、新設「AAA入試」をはじめ、「リベラルアーツ入試」、「グローバル入試」、「入試・理数インター」、「英語AL(アドバンスト・ラーナー)入試」を受ける受験生には、それぞれプレゼンテーション、教科・理数インター、英語試験を受ける前に、14時45分から15時30分までの45分間、一斉に「日本語リスニング」が課されます。
今年の「日本語リスニング」は、大問が2問あり、2月1日はそれぞれ7分前後の音声を聞きながらメモを取り、終了後に問題用紙を開いて、問いに答える形式のテストです。これによって、学校としては、「授業をしっかり集中して聞くことのできる力」があるかどうかを試しているといいます。
今年は2教室に分かれて行われた、この「日本語リスニング」が始まると、教室は一斉に静かになり、受験生が集中して放送を聞こうとする緊張感に包まれます。
放送の後には、一斉に解答用紙に向かって問いを読み込み、鉛筆を走らせる音が教室に響きます。
この45分間の「日本語リスニング」が終わると、「入試・理数インター」と「英語AL(アドバンスト・ラーナー)入試」の受験生は、それぞれ教科・理数インターと英語試験が行われる教室に向かいます。
プレゼンテーションを行う新設「AAA入試」と、「リベラルアーツ入試」、「グローバル入試」の受験生は、そのまま教室で待機し、各自の順番で係の在校生に案内されてから、一人ずつプレゼンテーションの教室に向かいます。
プレゼンテーションの教室(空間)は、新たな出会いの場
宝仙理数インターの「AAA入試」、「リベラルアーツ入試」、「グローバル入試」で行われるプレゼンテーションは、一教室に2~3名の聞き手の先生方に向けて、受験生が約5分のプレゼンテーションを行います。
ただし、入室してからのプレゼン準備の時間や、プレゼン後の先生方との質疑応答も含むと、一人あたり20~30分程度、やり取りがなされます。
しかし、個々のプレゼンの間こそ、受験生は一生懸命に、緊張した面持ちで準備してきた発表を行いますが、そのときにも話を聞いている先生方は、笑顔や柔らか表情で相槌を打ってくれたり、事前の準備のときにも手を貸してくれたりと、入室してから退室するまでの時間は、決して堅苦しいものではありません。
一教室あたり2~3名の聞き手の先生方は、校長先生や教頭先生など管理職と、英語担当の先生方は変わりませんが、その他の先生は、個々の受験生がプレゼンテーションするテーマに合わせて、それを聞いて評価するのにふさわしい(担当教科の)先生方に入れ替わります。
この自己アピール(プレゼンテーション)型の入試を導入した2017年入試の後に、先生方から伺った感想は、「この入試を導入したことで、多様な受験生との出会いの機会が広がりました」とのことでした。
宝仙理数インターの先生方にとっても、「より多くの個性的な受験生と出会う」ことができ、受験生にとっては、「自分の頑張ってきたこと、得意なことを認めてもらえる」ことができる、このプレゼンテーション型入試は、双方にとって、より可能性を広げ、受験生にとっては「自己肯定感を高められる」貴重な機会となったと考えてよいでしょう。
自らの能力を高め、社会に貢献したいと願う受験生も…!
そして、今春2019年新設の「AAA(トリプルA)入試」にチャレンジしてきた受験生は、いずれも自分の好きなこと、得意なことに打ち込んできた、意欲あふれる小学生でした。
学校側が期待した以上に、スポーツやバレエなどの習い事、囲碁や理科(生物)研究などの分野で、かなり高いレベルの実績を持つ小学生や、さらに高みをめざして努力している小学生が集まってくれました。
「こちらが期待した以上にユニークな、面白い小学生がチャレンジしにきてくれました」と校長の富士晴英先生も言います。
富士先生からのお話と、この日見せていただいたプレゼンテーションの様子から共通に感じたことは、ここに集まってくれた受験生が、①自分の得意なこと、がんばってきた分野で、今後さらに高いレベルをめざす意欲を持っていること、②そうした分野で、将来の活躍をめざすと同時に、身の回りの社会や世界の人々に何らかの形で「貢献したい」と考えていること、③そうした分野での活動と両立する形で、中学進学後の中高6年間の活動も充実したものにしたいと願っていること、の3点でした。
こうした自己アピール(プレゼンテーション)型の入試を設け、自分たちのようなタイプの小学生に門戸を開いてくれる宝仙理数インターでは、同時に中高6年間で充実した学校生活を送ることができ、良い友達や先輩後輩、先生方と出会えることにも期待を寄せている受験生が多いように感じました。
導入から4年目を迎えた「リベラルアーツ入試」や、3年目の「グローバル入試」の受験生にも、自分ががんばってきたことを、一生懸命にプレゼンしている姿からは、先の「AAA入試」の受験生にも負けず劣らず、高い意欲と潜在的なエネルギーを感じさせられました。
「入試・理数インター」は、昨年以上の活気で賑やかに!
一方、新設2年目を迎えた「入試・理数インター」の受験生が、先の「日本語リスニング」に続いて、ひとつの部屋に集ってチャレンジする「教科・理数インター」では、男子14名、女子12名の計26名の受験生が、4~5名ずつのグループに分かれて、この「教科・理数インター(=「入試・理数インター」)のコンセプトでもある「答えのない学び」に取り組み始めていました。
この「入試・理数インター」に挑戦してくる受験生は、宝仙学園共学部理数インターが、2016年度から授業として導入した「教科・理数インター」というアクティブラーニング型の授業に関心を持ち、「こんな授業を受けてみたい!」、「こんな学び方をしてみたい!」と思って受験を決めた小学生がほとんどだといいます。
そうした小学生が、今春2019年入試までの間に数回行われてきた「体験授業」に保護者と一緒に参加した機会に、そうした「答えのない学び」の楽しさを肌で感じて、この「入試・理数インター」の受験を決めたというケースが大半だとか…。
ちなみに、この「入試・理数インター」が新設された昨年2018年入試には、首都圏模試センターでは、このアクティブラーニング型入試「入試・理数インター」を最初から最後までの約90分間、通して取材させていただきました。その取材レポート記事は下記に掲載されていますので、一連の流れを知りたい方は、ぜひご覧いただければと思います。
さらに“ダイバーシティ”環境へと進化する宝仙理数インター!
この「入試・理数インター」で、各グループで取り組む「お題」は新たなものになっていましたが、一連の流れは前年とほぼ同様です。様子を見せていただいて感じたことは、「昨年よりも受験生はいっそう元気よく、この『答えのない学び』に楽しんで取り組んでいて、良い意味で騒がしかった!」ということでした。
こうしたアクティブラーニング型入試の評価方法は、導入している私立中によって考え方は違います。なかにはかなり詳細な「評価の観点」のルーブリックを作成し、試験に立ち会う先生方がそれを共有して、こうしたアクティブラーニング型の学びへの取り組みや、受験生の考え方、発想を評価しているケースもありますが、この宝仙理数インターでは、試験会場にいるファシリテータの先生方は、そうした「採点表」を手にしている様子はありません。
これも同校の独特の考え方で、「とにかく受験生が硬くならず、楽しんでこの学びに取り組めるような入試に!」という富士校長からの要望もあってのことだといいます。
こうして、今春2019年では何と9種類もの入試を実施し、多様な小学生に同校への受験~進学の道を開いてくれた宝仙学園理数インター。「知的で開放的な広場」を標榜し、学習も学校生活も進学も「指導」から「支援」へとシフトして生徒の自主性と自己肯定感を高め、大きな成長を促そうと進化している同校の入試に、いま大きな注目が集まっています。