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東京都市大等々力中の思考力・協働力・表現力を問うアクティブラーニング型入試

東京都市大等々力中のアクティブラーニング型入試。思考力・協働力・表現力を問う真剣勝負に83名が挑戦!

2019年で導入3年目となる、東京都市大等々力中学校のアクティブラーニング型入試。リアルな社会の課題を題材にした質の高い問いが立てられ、受験生たちは、個人ワークとグループワークに熱心に取り組んでいました。(取材・文/教育ジャーナリスト・マザークエスト 代表 中曽根陽子)

人工知能と共存する未来について多面的に考える

2月4日(月)朝、雲ひとつなく春の到来を思わせるような晴天の中、本年度入試の最終日を迎えていた東京都市大等々力中学(東京都世田谷区)。原田豊校長先生自ら校門に立ち、次々とやってくる受験生に声をかけ、受験生の緊張をほぐしていらっしゃいました。

今日行われたのは、アクティブラーニング型入試と英語1教科入試。今回は、アクティブラーニング型入試の様子を取材させていただきました。

9時から始まったアクティブラーニング型入試。5教室に分かれた受験生たちは、まず論文テストに挑みます。

内容はこれまでの自分を振り返りながら「小学校時代に一生懸命取り組んだこと」を、原稿用紙2枚にまとめて自己アピール。

時間いっぱい使って自分を表現していく受験生たちとそれを見守る先生。廊下には後半の思考力・協働力テストを審査する先生方も待機して、万全の体制で入試が始まりました。

その頃、富士山が望める最上階のラウンジでは、待機する保護者に向けて校長先生が激励の挨拶。ここまで頑張ってきた受験生と保護者の努力を労います。

「知識構成型ジグソー法」を活用しte、思考力・協働力を問う

開始から30分が経過して、論文テストが終了。休憩を挟んで、いよいよアクティブラーニグ型入試が始まりました。

今年のお題は、犬型ロボットaiboを例にとりながら、「AIが進化した未来の社会で、人々が幸せになるために、どうしたらいのか」この大きな問いに対する答えを個人ワークとグループワークを交互に行いながら探していきます。

まずは、AIの良い点と悪い点をあげる個人ワーク。自分の考えを論理的に説明できるかという力が試されます。

その後、教室の後ろに3人1組に組まれた座席に移動して、初対面の受験生がグループワークを行います。

次は、エキスパート活動を呼ばれる時間。任意に分けられたグループに、3種類の違う資料が配られます。グループ内では同じ資料を読み合い、その資料に書かれた内容や意味を話し合い、グループで理解を深めます。この時間で、担当する資料にちょっと詳しくなります。

次がジグソー活動と呼ばれる時間。新しいグループに組み替えて、3種類の資料を読んだ人が一人ずついる状態を作り、さきほどのディスカションで話し合われた内容を説明し合います。

グループ変えをすることにより、元の資料を知っているのは自分一人なので、自分の言葉で考えが伝わるように説明することが求められると同時に、他のメンバーから他の資料についての説明を聞くことで、さらに理解を深めていきます。ここまでがグループ替えの時間もいれて1時間です。

そして、理解が深まったところで、最後は個人ワークに戻り、それぞれのパートの知識を組み合わせ、最初の問いへの自分なりの答えを作り、ワークシートに記載して終了です。

試験中は、進行役の他に、1教室に6人の教員が配置され、生徒の様子を細かくチェックしていました。

話すだけでなく、聴く力、場をまとめる力が問われる

東京都市大等々力中学校では、2014年から東大 CoREFが開発した「知識構成型ジグソー法」を導入し教員研修を重ね、授業にも取り入れてきました。

アクティブラーニング型入試でも、そのメソッドが使われています。

入試のアドミションポリシーは、次の4つ。

① 与えられた資料を協働して読み解き、深く考えることができる生徒
② 真剣な議論を通じて、多様なものを認める資質を持つ生徒。
③ 一つの意見に対して、肯定否定両面から考察できる批評力を持つ生徒。
④ 協力して、最終的な結果を導こうとする意欲と協調性を持つ生徒

入試検討委員会の代表を務める石黒裕次郎先生は、この入試の評価のポイントを「とにかく発言すればいいというアドバイスをする塾もあるようですが、単に積極的に発言しているかということだけではなく、どれだけ人の話を聴けたか、意見をまとめられたかを見ている」と言います。集団の議論を良い方向に向けられるファシリテーション力が問われているようです。
これって、社会人としても必要な資質ですよね。

問いの内容といい、求められる資質といい、小学生レベルではないように思いますが、受験生はきちんと先生の指示を理解し、臆することなく堂々と自分の意見を述べあっていました。

アクティブラーニングの目的は大学入試対策だけではない

今年のアクティブラーニング型入試には、96名が志願して83名が受験。80%を超える高い受験率です。しかも、募集定員20名は最大値で、基準に達しなければ合格者数は定員を下回る可能性もあるという厳しいものです。

この入試を実施している狙いを二瓶克文教頭先生は、「できるだけ多様な資質を持った生徒を取りたいからだ」と話します。

同校では、このほかに、帰国生入試、算数・英語1教科入試も実施していますが、一様に自ら学ぶ姿勢のある生徒が多いと言います。学びへのモチベーションが高いので、入学後に一般入試の生徒と混じることで、お互いによい刺激を与えあい相乗効果が生まれるのだそうです。実際、アクティブラーニング型入試で入学した生徒の追跡調査では、入学後の成績は上昇しているそうです。

2020年の大学入試改革と学習指導要領の改訂で、ますます思考力・判断力・表現力、そして協働力が求められるようになります。

入学後の教科活動の中でもアクティブラーニングを有効に活用しているそうですが、これは、大学受験対策はもちろんのこと、生徒が生きる未来を見据えた取り組みでもあるのでしょう。

私学で増えている思考力型入試はじめとする多様な入試は、各学校が目指す教育の方向性を示しているものだと言えます。入試とともに、入学後の学校活動にどのように生かされているのかも、注目したいところです。

最後に、「この入試で問われる力は、付け焼き刃で身につくものではない」という校長先生の言葉を紹介しましょう。

日頃、家庭でも問いを立てる力。人の話を聴く力。自分の考えを伝える力の訓練を少しずつすること。それは、受験対策以上の意味を子どもにもたらすことになると思います。