学校特集
聖セシリア女子中学校2019
掲載日:2019年8月1日(木)
我が子を私学に通わせるべきか否か。迷っている方にぜひ知っていただきたいのが、聖セシリア女子の教育です。申し分のないキャンパスで、揺るぎない信念に基づいた教育を、長年にわたり実践しているからです。
創立から90年。時代の波にもまれながらも、一貫して生徒をいつくしみ、幸せに生きるための教えを説いてきました。卒業生が母親になり、娘の受験のために母校を訪れて、「やっぱりこの学校しかない」と思うのは、変わらぬ『あたたかい校風』であり、『自分の適性を活かして社会に貢献することが自分の幸せにもなるし、人を幸せにする』という教えだといいます。
「本校の特色は目に見えないものが多くて......」と頭をかきながらも、「本校の最大の心の教育は、ここにいるということ。校風を維持することが、私の使命」と、説得力のある言葉を発する青柳勝校長に、聖セシリア女子の教育を詳しく語っていただきました。
2019年度は、国公立・難関私大の合格者数が、昨年度の31名→59名へと大きく増加(1.9倍、2019年卒業生126名)。
うち、国公立・最難関私大(早慶上理など)の合格者は25名と、昨年比2.5倍となりました。
合格者の多くが、本校での学習を中心にしながら学力を伸ばし、志望校合格にむけてあきらめずに挑戦した生徒たちでした。
私が希望する大学の合格を得ることができたのは、先生方と友達の存在があったからです。先生方は常に、「あなたならできる、大丈夫」ということを言ってくれました。受験勉強の際には時々辛くなることもありましたが、できたことを見逃さずに声をかけてくれたことも、最後まで頑張るモチベーションにつながりました。
また、宗教教育や学校生活を通して、友人とは互いを尊敬しあえる良い関係を築くことができました。そのような友人がいたからこそ、励まし合い一緒に勉強を進めていくことができたと思います。
M.Tさん 慶應義塾大学 理工学部
先生との距離が近く、親身になって私たちのことを考えてくれる先生方のサポートがあったことで、自分の学習スタイルを最後まで貫き希望進路を獲得することができました。特に勉強の方法や進め方についてはアドバイスをもらい、また必要に応じて私に合った参考書を紹介してもらいました。
私は英語が得意だったこともあり、受験前は苦手な数学や物理に時間を取るようにしました。英語は単語やイディオムの習得はもちろんですが、授業でも行っていた音読を中心に勉強し、英語力を身につけることができました。
林間都市の文教の中心としてつくられた学校
教育理念は「幸せな人づくり」
本校はカトリック校ですが、女子修道会が母体ではありません。創立者の伊東静江先生が学生時代にキリスト教と出会い、キリスト教の教えの中に新しいタイプの女子教育を見出されて、なんとしても理想の教育を実践できる学校をつくりたいというご自身の熱意と、ご家庭の支援があって開校に至りました。伊東先生のお父様は小田急電鉄の創業者で、小田急江ノ島線を通した時に、林間都市計画の文教の中心として、この学校は創られたのです。
当時(昭和初期)の教育は「三従の教え」(幼きときは親に従え、嫁しては夫に従え、老いては子に従え)が主流でしたが、伊東先生は、やがて女性も男性と対等な立場に立って、自分の手で自分の人生を切り拓き、幸せをつかむ日が来ると考え、その時に幸せをつかめる女性を育てる「幸せな人づくりの学校」を目指しました。
本校の存在価値は、
「心」と「力」がバランスよく育つこと
21世紀を生きる我々は、その「幸せな人」を「心と力の教育により、バランスのとれた人」と解釈して、幸せな人づくりに取り組んでいます。「力」は学力、知力です。これらは人生を切り拓くために有効な武器になりますが、学んだことを、何のために使うのかを知らなければ、幸せにはなれません。自分は何のために生きるのか。何のために知識を活かすのか。それを知ることが、心の教育の主体であると考えています。
先生方は「力」をつけるために、一生懸命力を尽くしてくださいます。それが集まった時に、どちらかに偏っていないか、真ん中にいるか。それを見ることが、私の役割だと思っています。「心」と「力」がバランスよく育つことが、本校の存在価値だと思うからです。
林間学校
体育祭
「力」をつけるためのカリキュラムにも、
「幸せな人づくり」の学校らしさが表現されている
カリキュラムにも、校風が表現されています。初期にあたるAブロック(中1・中2)の学習目標は「スロースタディ」です。私学の中高一貫校はどちらかといえば「スピードスタディ」。急いで進めて、高3では大学受験の演習を繰り返し行うのがパターンですが、本校では学習習慣を身につけることを主体とし、自分から家庭学習に取り組めるように丁寧に指導しています。また、嫌いな科目を作らないよう、中1、中2を担当する教員には、授業の動機づけを最重要視して、興味関心を引き出す授業をしてほしいとお願いしています。
中期にあたるBブロック (中3・高1)の学習目標は「リピートスタディ」です。この時期でも、先に進むより反復することを大事にしています。何度も何度も解くうちに、解けるようになります。解けると、やればできるという自信がつきます。ですから先に進むよりも、時間があれば前に戻って、何度も繰り返しています。
後期にあたるCブロック (高2、高3) の学習目標は「チャレンジスタディ」です。大学入試にチャレンジし、希望の進路を拓ける学力をつけていきます。基礎的な重要語句は高1までにほぼ出てきます。ただ、それを覚えるだけでは、大学入試は突破できません。基礎学力に加えて、知識と知識を統合する力と推理する力が必要です。それを高2、高3で身につけさせたいと考えています。また、受験勉強だけでなく、社会に出た時に必要な教養も身につけさせたいと考え、最終学年には「教養選択」という形で、「平和学習」「女性史」「詩を読む」「アンサンブル」などの授業をあえて入れています。
オリジナルの学校設定科目が豊富。
中2は、英語でミュージカルに挑戦!舞台も踏む。
「イングリッシュ エクスプレス」
こうした「学校設定科目」(学校が独自に設定できるオリジナル科目)が非常に多いのも、本校のカリキュラムの特色です。実は、創立者が校長の頃からオリジナル科目が豊富でした。学校の中に滑走路があった時代に、日本で最初の女子グライダー部を創ったり、神奈川に自動車がまだ十数台しかない時代に、アメリカから自動車を輸入し、学校の中にテストコースを造って、国内初となる自動車技術をマスターさせようとしたり。独創性に優れた方だったので、昔からオリジナルの科目が多く、その意思を継いで今も学校設定科目を多めに入れています。
例えば中2の「イングリッシュ エクスプレス」では、1 年間、英語でミュージカルをします。英語芸術学校「マーブルズ」から先生に来ていただき、歌、踊り、台詞がすべて英語、演技指導もすべて英語という環境で授業を行い、年2回、ミュージカルを上演して保護者の皆さんに見てもらっています。
高2の「スピードリーディング」では、ひたすら英語の長文と格闘します。長文を頭から翻訳し、1分間に何語翻訳できるかを競い合うのです。帰国子女や英語ができる子を見ていると、どれが主語か、どれが熟語かなど考えません。言葉として理解するので、そういう力の習得を目指しています。
きめ細かい補習で全体を一定レベルに引き上げる。
合わせて、上位の生徒を退屈させない講座も開講。
学習すれば、難なく理解できる子と、理解に時間のかかる子が出てきます。放っておいたら個人差は開くばかり。大学や社会に出てから困らない基礎的な知識は全員にもっていてほしいので、理解できる子を退屈させず、理解に時間のかかる子には理解させていく「カリキュラムサポート」という仕組みを設けています。定期テスト後の補習、土曜講座、夏・春の講習会などで、全体を一定レベルに引き上げるとともに、上位の生徒を退屈させない工夫をしています。
「イングリッシュキャンプ」
中学ではテストごとに補習者が決まり、家庭に通知して、例えば数学と英語をマンツーマンで教わる補習が入ります。次のテストまではクラブ活動よりも補習が優先です。余裕のある生徒には、放課後に英語ゼミ、数学ゼミを開講し、授業よりもワンランク上の内容にトライできるようにしています。
また、土曜日は休校日ですが、何も入らない土曜日が年間28週あるので、それを「土曜講座」(1限〜4限)に当てています。講座は学力段階別で、自分の実力に合う講座で学ぶことができるため、しっかり力が身につきます。
学年の約半数が皆勤、精勤の表彰対象に。
出席率の高さは、居心地のいい学校である証だ。
「心の教育はなにをしているのか」と聞かれれば、「宗教の時間にキリスト教をもとに生き方を振り返ります」「福祉活動もすごく盛ん。年間に何回も参加できます」とお応えしますが、それで伝わるでしょうか。私が考えている、一番大きな心の教育は「ここにいる」ということだと思います。80数年間、心と力のバランスを柱に教育を行ってきた。その空気の中に身を置くことが、その子の心の成長を促します。最大の心の教育は校風なのです。この校風を維持することが、私の使命だと思っています。
卒業式に皆勤賞(無遅刻、無欠勤、無早退)、精勤賞(遅刻、欠勤、早退が合わせて3日以内)の表彰をすると、毎年多くの卒業生が表彰されます。本校の子どもたちはほとんど学校を休みません。そう言うと、学校生活が順調で、何事もなく過ぎていくように思われますが、決してそうではありません。一番心が揺れ動く時期ですから、友達との関係がうまくいかない、先生との相性が悪い、部活で先輩に怒られたなど、さまざまな悩みを抱えていると思います。それでも休もうとしないのです。それは、彼女たちにとって、学校が居心地のいい場所だからだと思います。
(写真はクリスマス会)
つまずいたら、誰かがそばに寄ってきて、支えてくれると思うから学校へ来る。それがこの学校の校風です。その中に身を置いて、辛い時に支えられた経験がある生徒は、将来、誰かを支えることが躊躇なくできるでしょう。本校に在籍している間に、そうしたことを何度も味あわせていくことが、この学校ができる最大の心の教育なのではないかと思います。周りの人が困っている時に助けてあげられる人は、会社に入ってもかわいがられます。それは幸せなことだと思います。重宝されて、「君みたいないい子が来てくれてよかったよ」と言われる。将来、身をおいたところで必要とされる、そういう子になってもらいたいです。
部活動が一つの居場所に。
トップダンサーが指導するセシリアバレエも人気
本校では、部活動も人間関係づくりに主眼を置いています。そのため部活動は自由参加ですが、参加を推奨して中学生はほぼ100%、高校生は約95%の参加率。1学年100名前後の学校としてはたくさんのクラブがあり、一生懸命取り組んでいるため、居場所にはなっていると思います。
本校の部活動は、目的をもって選べるよう運動部、文化部ではなく、「クラブ」「フォーラム」「課外活動」という分け方をしています。「クラブ」は仲間とともに努力を重ね、お互いを高め合うことで目標の達成を目指す活動です。吹奏楽、演劇、バレーボール、バスケットボール、ソフトボールなどがあり、大会やコンクールを目指して週4日活動しています。「フォーラム」は一人ひとりが自分の興味・関心を大切にし、発見や知識を深めていく活動です。土日だけ、昼休みだけ、週1回だけ、と、フォーラムにより活動日が異なるので、昼休みはコーラスフォーラムに参加し、月曜の放課後は茶道部、土曜日は「テレサ会」(ボランティア)で施設訪問をしている生徒もいます。クラブがない曜日にフォーラムで活動する生徒もいます。いろいろなことに興味・関心があるのはいいことなので、スケジュール管理は生徒に任せています。「課外活動」は費用がかかる活動です。現在は、「(公財)井上バレエ団」と連携してクラシックバレエを行っています。学校でトップダンサーから指導を受けられる、非常に恵まれた環境。学校行事と発表会が重なる心配もないため、興味を持ってくださるご家庭が多く、本校の特色の一つになっています。現在、幼稚園から高校まで70人(中高生は55人/1学年10人前後)が参加し、レッスンに励んでいます。中には、先生の声かけにより井上バレエ学園の一員になる生徒も。公演を観に行くと、約2000人収容のホールで堂々と大役をこなしていました。
学内でバレエができる数少ない学校として、日本全国から多くの問い合わせをいただいています。学業との両立に魅力を感じていただき、現在、受験生の約2割がバレエを目的として入学してきます。希望者が参加するもので、レッスンは週1~4日、クラブ活動の時間帯と、クラブ活動が終わった午後6時からの2回行っています。週1日から受講できるため、吹奏楽や演劇などのクラブで活動した後にバレエのレッスンを受けている生徒もいます。特にコーラスフォーラムとバレエのかけ持ちは人気があります。発表会も、2年に1度行っています。バレエに参加している生徒は、学校生活のさまざまな場面でその力を発揮。例えばミュージカルに取り組む中2の「イングリッシュ・エクスプレス」では、踊りはもちろん、演出にもかかわるなどリーダーシップが光っています。(大橋貴之先生/バレエスタジオ担当・入試広報部長)
聖セシリアならでは
宮嵜先生:私が聖セシリア女子の指導を担当して以来、レッスンで大切にしていることは、踊る楽しさを感じてもらうということです。最初は同じことの繰り返しです。1回のレッスンの中でそんなに上達を実感できるものではありませんが、繰り返して練習するうちに身についてきます。レッスンを通して、積み重ねの大切さやできなかったことがある時できるようになる達成感を味わいながら、自信をつけて、自由に踊れるようになっていってほしいと思っています。また、バレエを通して礼儀ただしさや美しい立ち居振る舞い、まわりの方々への気配りや思いやりの心も一緒に育んでいってほしいと思っています。
(生徒の前で)踊って見せるととても喜んでくれます。中学1、2年生は2年に1度、芸術鑑賞教室で井上バレエ団の舞台を見に来てくれるので、そこでも舞台に対する憧れをもち、踊るだけでなく、いろいろな舞台を見に行きたいと思ってもらえるように頑張ります。
中1・中2はエンカウンター主体で関係づくり。
キャリアプログラムにもカトリックの教えが生きている。
本校のもう一つの特色として、キャリアプログラムがあります。Aブロック(中1・中2)ではキャリアプログラム的な要素は2、3時間で、生徒の人間関係づくりを援助する構成的エンカウンターを主体としています。近年、いじめの問題などがクローズアップされ、自分と違うものを排除する傾向が高まっているような気がします。そのため、人はいろいろな人がいるからおもしろいということを、ゲームや体験の中から悟れるよう、中学1年生には年間10時間あまりを費やして、計画的に実施しています。 中学3年生になるとエンカウンターからキャリアプログラムに移行し、高3までの4年間で約80時間、キャリアプログラムに取り組みます。本校の進路指導は、進学指導とは少し違います。生徒はキャリアプログラムのさまざまな取り組みを通して、自身の適性や能力を模索し、伸ばしながら、意欲的にどう生きるべきかを考えていきます。
「テレサ館」内にある自習室。
最近、卒業生のお母さんが増えていて、「キャリアプログラム、覚えてる?」と聞いたら、結構覚えていました。カトリックの学校なので「自分の適性を活かして社会に貢献できることが自分の幸せにもなるし、人を幸せにするんだという教えが今も心に残っている。だから子育てが一段落したところで、自分自身を周りの人たちのために活かしたい」と言っていました。やはりキャリアプログラムの礎にあるのはカトリックの教え。そこが最大の特徴だと思います。
毎年、多くの生徒が進学を希望しますが、教科指導で「力」を伸ばし、キャリアプログラムを軸に、日々の生活における「心」の成長が一体となることで、希望の進路を切り拓いています。
家庭でも愛され、学校でも愛されている生徒たち。
愛情が心の糧となる"幸せな人づくり"はまだまだ続く。
高2では「長崎・島原」に赴きます。
本校の生徒は、大切にしすぎていると思うほど、家庭でも愛され、学校でも愛されています。修学旅行で津和野に行っていた頃、自転車練習が恒例でした。自転車で見学するコースがあるので、全員乗れるようにしたいと思った担任が、補助輪つきの自転車をどこかから調達してきて、練習させていたのです。小さな子どもに教えるように、仲むつまじく、先生が自転車を支えて、つきっきりで教えるのです。その光景は本校の風物詩で、自転車に乗り出すと、ああ2年生の修学旅行が近づいているのだなと思ったものです。修学旅行が九州に変わり、現在そのようなことはしていませんが、一事が万事、生徒のために愛情を注ぐ先生ばかり。愛情いっぱいの環境で育った生徒が、ここを巣立って、幸せな人生を築いていることが、私たちの誇りです。
小田急線で江ノ島方面へ向かう途中の大和市「南林間駅」から徒歩5分、東急田園都市線も乗り入れる「中央林間駅」から徒歩10分と、アクセスがいい上に、校門をくぐると、草木や花々が迎えてくれる、心落ち着くキャンパスに、幼・小・中・高・短大がともに学ぶ。カトリックの精神に基づき、「信じ 希望し 愛深く」を心の糧とし、知育・徳育・体育の調和のとれた総合教育をめざしています。