2/3 共立女子中「英語インタラクティブ入試」
共立女子は、今年2月3日午前にインタラクティブ入試、午後に合科型入試を行いました。昨年は、午前に合科型入試、午後にインタラクティブ入試を行っていたのですが、これを入れ替えたことで合科型入試は見事に大幅な受験者増となりました。インタラクティブ入試も、昨年68名に対して今年59名という応募者数は、実質的には減少とは言えない程度の変化です。〈取材・文/スタディエクステンション代表・鈴木裕之〉
2/3 AMに移行した共立女子中「英語インタラクティブ入試」
共立女子中学校〈東京・千代田区。女子校〉では、今年2月3日午前にインタラクティブ入試、午後に合科型入試を行いました。昨年は、午前に合科型入試、午後にインタラクティブ入試を行っていたのですが、これを入れ替えたことで合科型入試は見事に大幅な受験者増となりました。
インタラクティブ入試においても、併願校とぶつかりやすい午前入試で、昨年68名に対して今年59名という応募者数は、実質的には減少とは言えない程度の変化です。実際、受験者の英語レベルは昨年見学させていただいた時よりも確実に高くなっており、英語力に自信を持っていて、なおかつ共立を第一志望としている受験生が増えていることが感じられました。
共立では12月に実施された帰国生入試でも大幅に人数を伸ばしており、帰国生入試の方でインタラクティブ入試の受験者層を吸収してしまったと見るのがむしろ妥当かもしれません。広報部の金井圭太郎先生はこのあたりの動向を冷静に分析していて、最近の生徒募集の好調ぶりに、手応えを感じている様子でした。
「英語インタラクティブトライアル」
インタラクティブ入試は、「算数」の基礎的な問題(50点満点、30分)と「英語インタラクティブトライアル」(100点満点、40分程度)の二つの試験から構成されています。
「英語インタラクティブトライアル」の出題のねらいについて、試験開始前に会場にいらした英語科の先生にお話を伺うことができました。英語力の高さだけではなく、例えば積極的に英語を使っていこうとするような、学習に対する姿勢も重視されているようです。
受験生入場~アイスブレイク
4人の試験監督の先生が待つ会場に6名の受験生が入室してきました。先生の指示に従って色付きのビブスを身につけ、自分のビブスと同じ色の椅子に腰かけます。
ネイティブスピーカーの先生がファシリテーターとして会場に入ってきます。一人一人の受験生に話しかけ、英会話によるアイスブレイクで試験が始まっていきます。
インタラクティブ入試では、グループでの活動が前提となるので、受験生同士がお互いの英語力をはっきりと認識します。そのため、その気になれば自分の英語力を周囲に示すために、得意な言い回しを披露することもできるわけですが、そのような受験生は全くいません。むしろ聞く態度ができていることに驚かされました。先生の質問に回答する受験生の方に視線を向け、その答えに頷いたり、笑ったりしています。自分の順番に回答することを気にするより、周囲と友好的な関係を築こうとする様子がうかがえました。
質問する力と論理的に推測する力
続いてGuessing Gameと呼ばれるゲームが始まりました。受験生グループとファシリテーターの先生とが、いくつかのパーツを組み合わせて作った図形を、質問を通して当てるというものです。
質問はなんでも「当てずっぽう」ではなく、論理的思考が試されます。というのも、先生の手持ちのパーツも受験生グループのものと同じであることは分かっており、短い時間で推理するためには、するべき質問もおのずと決まってくるからです。まずは完成した図形には、どのパーツが使われていて、どのパーツは使われていないのか。さらにその全体の配置、個々の図形相互の関係といったことに質問が進みます。
論理的思考とは言っても、ゲームですから楽しむことが第一です。このゲームでは、受験生同士が同じグループで協力するようにデザインされていて、受験生からは時折楽しそうな笑い声が上がります。そうして先生や仲間との関係がアッと言う間にできていくのです。
ストーリーメイキングで創造的思考を発揮
続いてのアクティビティは、与えられた3枚のカードを元に各自がストーリーを作るというものです。考える時間は15秒、約1分間でストーリーを完結させます。
ほとんどの受験生は、与えられた課題を十分なレベルでクリアしていました。短い時間でストーリーを考えるわけですから、それほど複雑なプロットや表現上の工夫が必要なわけではありません。ただ3枚のカードに描かれているイラストはまったく脈絡のないものですから、意表を突いた展開を作りだす必要があります。こういった創造性を引き出す上で重要になるのが環境設定です。もし、このアクティビティがアイスブレイクも何もなくいきなり課されたならば、受験生は同じようなパフォーマンスを発揮できないかもしれません。英語の文法的な正しさよりも、内容が伝わることが重要だということが分かっているからこそ、受験生の意識が、創造的思考力そのものに向いていくのです。この環境を作り出しているところがインタラクティブ入試のファシリテーションの肝なのでしょう。
インタラクティブ=「対話」という相互作用
最後は、受験生2名がペアになって、チャットをするというアクティビティです。今年のトピックは「共立女子中学校について知っていること」でした。ペアはそれぞれ話し手・聞き手の役割を交代しながら会話を進めます。
ここでも、英語力だけではなく、コミュニケーション力の高さが求められます。自分が一方的に話すのではなく、相手から反応を引き出すことも大切です。そのためには、質問する技術も大切ですし、相手に合わせて表現を言い換えたり、あるいは相手の言わんとすることを文脈から推測したりするスキルも必要になるのです。
インタラクティブ入試において、スピーキングやリスニングといった独立したスキルに分解せずに、「相互作用」としての英語コミュニケーション力を見ようとしていることは、共立女子の英語学習に対する考え方が表れていると言ってよいでしょう。
つまり、「完成モデル」を与えてそれに近づけるような言語学習モデルというより、相手とのやり取りを通じて、「未完成から完成に」向かっていくプロセスに参加するインタラクション(相互作用=対話)を重視しているのだと思います。
試験終了後、受験生たちが「楽しかったね」と話している声が聞かれました。その楽しさというのは、コミュニケーションが持つ本来的な楽しさなのでしょう。そういった楽しさを盛り込んだ入試というのは今後の中学受験における一つのモデルになっていくはずです。