白梅学園清修中高一貫部。中高6年間の教育デザインをリニューアルし、 来春2018年入試では「『見方・考え方』表現入試」を新設へ!
2006(平成18)年に中学を開校し、白梅学園清修中高一貫部を誕生させてから12年目を迎え、いま同校はもう一段その教育を進化させつつあります。2015年に校長に着任した硲 茂樹先生、校長補佐の鈴木邦夫先生、学習指導部長の布施雄一朗先生と広報・入試対策担当の新宿仁洋先生に、今年からさらにバージョンアップした同校の教育展開と、新タイプ入試のコンセプト、小学生へのメッセージを語っていただきました。...
コトバ+ココロ=「シン」のある女性の育成へ!
2006(平成18)年に中学を開校し、白梅学園清修中高一貫部を誕生させてから12年目を迎え、いま同校はもう一段、その教育を進化させようとしています。
完全中高一貫教育、少人数教育、女子教育という三つの特質を生かして、きめ細かな面倒見の良い教育を実践してきた同校ですが、今後の大学入試や日本の教育、そして子どもたちが生きる時代の変化のなかで、これからの白梅学園清修の教育の新たな指針、〈コトバ+ココロ=「シン」のある女性〉という同校のスローガン(教育方法と目標を表現した公式)を打ち出し、全教員がその方向性に向かって工夫と実践をスタートしています。そして来春2018年入試からは、これまで実施してきた「2科・4科入試」と「適性検査型入試」に加え、新たに「見方・考え方入試」というユニークな入試を導入します。
今回は、2015(平成27)年に第5代校長に着任した硲 茂樹先生、校長補佐の鈴木邦夫先生、学習指導部長の布施雄一朗先生、広報・入試対策担当の新宿仁洋先生に、今年からさらにバージョンアップした同校の教育展開と、新タイプ入試のコンセプト、小学生へのメッセージを語っていただきました。
言語・思考・表現・英語の力で高い『学力、資質・能力』を育成
東京都の郊外、武蔵野の面影が残る緑豊かなロケーションの学園街の一角に、系列の大学・短期大学、高等学校、幼稚園を持つ学園キャンパスのなかに、白梅学園清修中高一貫部は2006(平成18)年に誕生しました。
今年で開校から12年目を迎えた同校の教育について、2015(平成27)年から校長に着任した硲 茂樹先生は、こう語ります。
「2020年の大学入試改革や日本の教育の変化、子どもたちが生きる時代の変化を踏まえて、この白梅学園清修中高一貫部の教育デザインを今年からリニューアルしました。
完全中高一貫教育、少人数教育、女子教育という三つの特質を生かして、新たに打ち出したのが、〈コトバ+ココロ=「シン」のある女性〉という指針です」と硲先生。
右の図のように、中高の6年間を3段階に分けて考え、1年~2年(中1~中2)の『基礎・基本』段階では『意欲・学び方・知識』をしっかりと育て、続く3年~4年(中3~高1)の『発展・活用』段階では『実現への欲求、目標設定』を、そして5年~6年(高2~高3)の『安定・変化』段階では『進路選択・進路相談』に力を入れて、生徒全員の学力、資質・能力の向上を図っていくといいます。
「その『学力、資質・能力』の中心となるのが、言語力、論理的な思考力、表現力、優れた英語力と考え、これまで白梅学園清修中高一貫部が実践してきたきめ細かな教育を、さらにバージョンアップしたいと考えました。今春からは全教員がその方向性に向かって、授業の工夫と実践をスタートしています」と硲先生。いま学内を活性化しつつある、この動きには大いに期待をかけているといいます。
1クラス15名~20名の授業では全員が発言し意見を交わす!
「3年後の2020年に迫った大学入試改革を前に、いま全国の学校教育の現場で『アクティブラーニング』や『英語の4技能』、『ICT教育』などが課題と言われるようになりましたが、白梅学園清修中高一貫部では、開校の当初から、これらの要素を私学のなかでも先駆的に取り入れ、実践してきました。
開校当初から全教室に電子黒板を設置して、教員だけではなく生徒もこれを使いこなせるようしてきた取り組みは、私立中高一貫校のなかでも早かったと思います」と硲先生。
常に1クラス15名~20名程度で行われる授業では、全員が毎時間に発言し、意見を交わすことができます。その小規模な教育環境を生かし、教員が一方的に教えるだけではなく、生徒に考えさせ、意見を発表させながら進む双方向スタイルの授業が行われてきました。
先生やネイティブ教員にも気軽に話しかけられる開放的な校舎設計
ところで、同学園のキャンパスに入るとすぐ、白を基調としたモダンな白梅学園清修中高一貫部の校舎があります。「生徒が主役」という設計思想で建てられた校舎は、中央の吹き抜けと一階アトリウムのエンカウンタースペースと校務センター(=職員室に相当)を中心に、上階の教室が吹き抜けを囲む形になっています。
「スペインのパティオのように、吹き抜けの中庭を囲む形で周囲に教室が配置された設計です。いつでも生徒の学習する姿が見えるようにと…。かといって教室から廊下が見えると授業中に気が散ってしまうので、その点は配慮されています。あくまで子どもたちが中心のため、開放された空間で、教員にとっては、いつも生徒に見られている感じで…(笑)、教員と生徒が仕切りのない同じ空間にいられるよう設計されています」と硲先生。こうした空間では、他の私立中高一貫校以上に、生徒と先生の距離感が近く、生徒からも先生に声をかけやすくなりそうです。
「それも本校の特徴のひとつです。なかには小学校時代に職員室に良い思い出を持たない生徒もいたり、職員室に呼ばれると叱られるというイメージもあったり…。しかも女子ですので、男子以上にナイーブです。そういう思春期の女子の感情面も考慮してこの校舎が設計されました」と校長補佐の鈴木邦夫先生が説明してくれました。
「ネイティブ教員も4名いますが、みな夕刻の5時まで残ってくれて生徒の相手をしてくれるので、それはありがたいですね。生徒は彼らに気軽に話しかけ、自由に喋っています。生徒のなかには海外大学進学を希望している子もいるので、そういう生徒をはじめ、多くの生徒がほぼ毎日ネイティブと話しに来てきていますよ。「ケリーとハリー」などと呼んで…親しんでいます」と話す硲先生は、そういう生徒と教員の触れ合いを常に微笑ましく見守っている様子です。
地域の子どもたちのために「英語教室」や「学びの広場」も開催
さらに硲先生はこんなことも話してくれました。
「地域貢献として「英語教室」と、土曜日の居場所作りとして「学びの広場」を行っています。「英語教室」は4人いるネイティブの教員のうち2人が担当し、木曜と金曜の放課後16時から、お遊び的な英語教室を開いてくれています。毎回、地域の子どもたちが来て、楽しそうに英語で遊んでいます。最近ではもう自分の学校のように馴染んでいます。もうひとつの「学びの広場」は、土曜日午前中に学校を開放して、公立小学校の子どもを受け入れています。
英語教室から本校を好きになって入学してくれた生徒も毎学年にいます。私立小学校に在籍しながら、中学からは本校への入学を志望して英語教室に通い、その後入学してくれた子もいます」と硲先生。
こうした「学校を地域に開放する」機会も、近隣エリアの小学生と保護者にとっては、白梅学園清修という「私学の雰囲気を知る機会」になっているようです。
「英語教室は初めてから今年でまる3年になります。『学びの広場』のほうはまだ昨年12月から始めて間もないので、最初の入学者があるとすれば来年入試からです。当初「学びの広場」はほとんど周知していなかったのですが、最近は参加者が増えてきました。なかには保護者も子どもと一緒に解説を聞いている姿も見られます。塾とはまた違った、新しい親子の学びのスタイルになっているのかもしれませんね。この英語教室や『学びの広場』へ参加登録している子どもは多くいますが、来たいときに自由に参加するスタイルなので、運動会シーズンなどは参加者が少なくなります」と鈴木先生。
公立小・中学校で「学校5日制」が導入されて以来、土曜日の子どもの居場所が問題になっているという保護者の悩みにも、白梅学園清修中高一貫部が地域のなかでひと役買ってくれているようです。
来春2018年入試では『見方・考え方』表現入試を新設!
そして白梅学園清修中高一貫部では、来春2018年入試から新たに「『見方・考え方』表現入試」を導入します。これはどういう入試なのでしょうか。
「冒頭でもお伝えしたように、本校の教育で『資質・能力を高める』『言語能力を高める』教育を行うならば、中学入試の時点では、単なる知識を問うのではなく、知識はそれほどなくても、物事をよく見て考えて、自分の意見を出せる子どもを評価したいと考えました。そういうお子さんはいるのですね。授業中はよく発表するのに、まだテストではあまり点が取れないとか…。でもそういう子どもには、将来伸びる子も多く、一緒に学んで面白い子どもたちだと思っています。そういう子どもを発見したい、育てていきたいという考え方が根底にあり、この新しい「『見方・考え方』表現入試を導入することにしました」と硲先生。
その内容は、来春2018年中学入試要項では「論述試験」と「口述試験」と表記されています。
「難しい表現を使っていますが、論述のほうは自分が事象に対してどう課題を見つけて、それに対して自分がどう考えるかという意見文的なものを400字くらいで書いてもらう形を考えています。口述のほうは、文章で書き切れないこともありますので、それを受験生の言葉から聞き取って、こちらで理解したいと思っています。決して減点主義ではありませんから、面白い発想や考え方を聞かせてほしいと思います。
採点は難しいので、これから私たちも研究しないといけないのですが、点数で刻んでいくのではなく、ルーブリックをつくって、一定の段階で評価を設定したいと考えています」と硲先生。
公立中高一貫校の『適性検査』の事前練習にもなる新たな入試
「たとえば地図を書くことも、本を読むことも『言語活動』に含まれると本校では考えていますので、どうしても言葉でうまく表現できないお子さんは、地図やイラストを描いて、自分の考えを伝えてくれればよいと考えています。こういう意図の入試として新設しますので、なかなか採点は大変になるとは思いますが、多くのお子さんに受験してくれると嬉しいのですね」と硲先生。
その硲先生のお話からは、小学生の知的な関心やユニークな意見、そして中学に入学してからの伸びしろや可能性に期待し、そうした子どもたちを同校の中高6年間で大きく育てることができるという自負・自信さえ感じられます。
「2月1日の午後に実施しますので、公立中高一貫校を志望して翌々日2月3日に公立の『適性検査』を受けようとしている受検生にも、事前の練習も兼ねてチャレンジしてみてほしいですね。『口述試験』もありますが、その部分はプラス評価になるものです。書く練習は皆さん全員がよくしていると思いますので、ここでしっかり取り組んでもらえれば、翌日の練習にもなるはずです」と鈴木先生も言います。
課題はふたつ用意して、自分で取り組みやすいほうを選べる形になるといいます。
「ひとつは社会事象から、もうひとつは子どもが経験してきた場面設定で、どう考えるか、どんな行動をとるかということを聞きたいと思います。自分自身の考え方、判断は問いますが、決して難しい課題ではないはずです」と硲先生。
この新たな「『見方・考え方』表現入試は、子どもたちの良い面を見てくれるという意味では、歓迎する保護者や「受けてみたい」と小学生も多く出てくるのではないかと思えます。白梅学園清修らしい、とても温かさを感じる入試と考えてよいはずです。
『こういう生徒を育てたい』という教員一同の強い想いが形に!
「『こういう生徒を育てたい』という強い想いが校長にも教員にもあって、英語入試はすでにひとつ導入していますから、もうひとつ『言語教育』につながる入試をしたいと考え、この春から教員全員で議論し、方向性を共有してきました」と校長の硲先生。こうした教師陣が意欲的に、新たな中高一貫教育のあり方を考えてくれていることが、同校をさらに活気づけているのでしょう。
続いて、いま改革に取り組んでいる先生方を代表して、広報・入試対策担当の新宿仁洋先生(写真向かって左)と学習指導部部長の布施雄一朗先生(写真右)にお話を伺いました。
「完全中高一貫教育の女子校ということに基づいた6年間一貫カリキュラムによる英語教育、海外研修なども含めた英語教育の充実と、最近の大学進学実績の伸び、それと、少人数制を全面に出した面倒見の良さの3つをお伝えしたいと思います。
2020年からは大学入試も変わり、その先の社会で求められる力も変わりますから、それに即した教育をすべきではないかということで、今年から授業の形態を変える形にしました。全教科で一方通行の講義型の授業は最小限にとどめて、せっかくの少人数教育の良さを生かして、毎授業でクラス全員が発言・発話できるような、本当の意味で生徒が主体となるような授業に変えて行こうと、全教員で決めました。実質的な全教科アクティブラーニングともいえるのですが、あえてオリジナルな『言語活動』と表現しています」と新宿先生は説明してくれました。
「まだ今年度からスタートしたばかりで、1タームしか終わっていませんが、コンセプトとしては、知識を得るだけでなく、活用して応用する力が必要だということがひとつ、あとは他者と協働する力が必要だということがひとつ、もうひとつが相手とか情報の質に応じて、表現し分ける力がひとつだということです」と新宿先生。
『言葉』をキーワードにした授業で、生徒の能動的な学びを促す
「そして、このすべてに関わっているのが『言葉』だろうと…。人は言葉で考え、言葉でコミュニケーションをとって人と関わりますし、表現するには当然言葉が最も多く使われます。その「言葉の力」を身に着けたうえで『課題を解決する力』や『未知の課題=答えのないかもしれない課題に立ち向かう力』を身に着けさせたいと考えました。そこで、授業の形態としては、教員が講義をして『これを覚えておきなさい』というスタイルだけではなく、それを覚えたら、それで各自が何か社会に役立てるかという、そこまで考えさせるような授業に変わりつつあります」と、現在までの進展を新宿仁洋先生は説明してくれました。
「授業を変えるにあたって、進路指導部からは『2020年大学入試改革はしっかり見据えてほしい』と言われました。先に『大学入学共通テスト(仮称)』のモデル問題なども出されましたが、私たちがそこで求められる力だと考えた方向性は大きくは外れていないと思います。
めざす教育の方向性と中身が決まったことはもちろんですが、そこでは『言葉』をキーワードにして授業を作っていこうと、教員が全員一致してひとつの方向に迎えたことの価値が大きいと思っています。小規模な私立中高だからできたという面もありますし、若い教員が多いことでの教員集団の持つ馬力やフットワークの軽さも強みに感じました」と学習指導部部長の布施雄一朗先生。
「たとえば『国語科でレポートの書き方を教えたから、理科ではレポートを書かせてみてください』といったつながりが『言語活動』として、わかりやすい例かと思います。他の教科でも『シラバスにも目的を示してください』とお願いしています。学んだり覚えたりするコンテンツではなく、どういう力をそこで身に着けるかという目的を生徒にも示すということです」と布施先生。
全教科で能動的な学びをめざす白梅清修オリジナルの『言語教育」
「私自身も以前からアクティブラーニングには関心があり、いろいろな文献なども調べてきたのですが、よく否定派の方々が言う『講義型の授業からアクティブラーニング型の授業にしたせいで大学合格実績が悪くなった』というデータや事例はひとつもありませんでした。自分でも、説明会などで「小学校のときに印象に残っている授業をひとつ思い浮かべてきてください」と聞くと、ほとんどは社会科見学とか、体育の跳び箱とか図工とか、本当に生徒の頭に残っていることは、自分で能動的に何かを成し遂げたり体験したことだったりしますよね。それをすべての教科でやりましょう、というのが本校がめざす『言語教育」であり、本校の改革の最終目標だと思っています』と新宿先生。
「こうした形の授業を、生徒や保護者には『従来の授業より面白くてためになりますよ』と伝えられるかどうが今年の課題だと思っています。また、こういう能力をただのパフォーマンス評価ではなく、きちんと定期テストでも測っていきたいと思っています」と新宿先生。
「たとえば感想と創作では、素材文の考察だけではなく、その続きを創作させたり、太宰治の『走れメロス』のメロス以外の登場人物のスピンオフ小説を書くという課題を出したりしています。そうした授業をして実感できたことは、和私たち大人や教員が『中学生にはちょっと難しいかな?』と思った課題でも、生徒はみな楽しんで取り組み、各自ユニークな作品を仕上げてくれるということです」と布施先生。「だからこそ、小規模な教育でクラス一人ひとりの生徒の意見や発話を引き出し、授業時間内に振り返り(リフレクション)までできる授業の流れを意識して実現したいと考えています」(布施先生)という同校の新たな授業改革には、大きな期待を抱けそうです。