学校特集
桜美林中学校・高等学校
創立以来、「キリスト教主義の教育によって国際的人物の育成」を掲げ、国際交流の推進にも積極的に取り組んできた桜美林学園。併設されている大学の海外提携校は130を超え、年間500人を超える海外からの留学生を受け入れています。その国際色豊かな環境のなかで、生徒たちは"世界"を感じながら伸び伸びと学んでいます。文化や意見の異なる多様性を認めながら、自分で考えて、自分の言葉で表現することを大切にしてきた同校が、2017年の入試から「総合学力評価テスト」を新設。生徒がもつ資質の多様性を求め、入試の間口を広げる狙いですが、このテストでは知識を応用した分析力や論理的な思考力など「総合学力」を測ります。
自分で考えて、答えを見つける。
2017年から「総合学力評価テスト」がスタート
2017年の入試から新設される「総合学力評価テスト」は、覚えた知識のアウトプット型ではなく、その場で考えて、自分の言葉で表現する力が試されるものになります。入試広報部長の有馬純一先生は、「人として大切なことは、自分で考えて答えを見つけることができる人。自分の行動がどう結果に結びつくのか考えられる人になってほしいと思います。『総合学力評価テスト』では、問題の解決方法や考え方をたずね、知識を応用した分析力や思考力などを測ります。思考型の勉強をしてきた受験生に、ぜひ、積極的にチャレンジをしてほしいと思っています」
一人ひとりが「かけがえのない価値」をもち、
学んだことは、人や社会のために役立てる
キリスト教に基づいた教育が行われている同校の一日は、礼拝からスタートします。礼拝では聖書の言葉に耳を傾け、その言葉に自分を照らし合わせて、自分に「かけがえのない価値」が与えられていることを確認します。そして、自分と同じように隣人にもかけがえのない価値があり、愛する存在であることを学びます。
「そもそも、相手と自分は違う人。違うからと排除せずに、受け入れることから人との関係は始まります。国語の時間に作品を読み解くときには、一般的な見方に加えて、うがった見方なども紹介しながら、人間は型にはまらない、いろんな人がいるんだよと生徒の理解を促します。そういう理解ができれば、人の痛みもわかりますし、平和で幸せな世の中になりますよね」(有馬先生)
そうした環境のなかで、生徒たちのなかにはごく自然にボランティア精神が芽生えていきます。学年礼拝時には多方面で活躍する方々のお話を聞く機会がありますが、ホームレスの支援活動の話を聞いた生徒は、実際に炊き出しのお手伝いに行き、東日本大震災の際には生徒の発案によって学校で有志を募り、被災地でボランティア活動を行いました。その数は100人を超える人数だったとか!
また、国際社会に目を向けて、民族や文化の違いを尊重してきた同校では、「学んだことを分かち合い、人のために、社会のために役立てると」という教育モットーが、創立時から受け継がれています。「学んだことを生かして、良い社会人、つまりは善良な市民になってほしいと私は願っています。市民生活を送るうえで幸せになるためには、批判的な目をもって、人に流されないということが大切です」と、有馬先生。
このようにキリスト教の教えが多様な文化を受け入れる素地をつくり、自分や他人を愛する慈悲の心を育んでいるのです。
生徒の発案により実現した東日本大震災の復興支援
生徒の発案により実現した東日本大震災の復興支援
関心・視野を広げていくと、未来の可能性が広がっていく
中学の段階から年に5回のガイダンスを実施するなど、キャリア教育にも力を入れている同校では、生徒の選択肢を広げるさまざまな取り組みを行っています。「お菓子屋さんやパン屋さんになりたいといった、身近な関心から徐々に職業観を広げていきます。できるだけ早い時期から視野を広げていくために、ここでも、さまざまな職業の方に話を聞く機会を設けています」と有馬先生。
ひと役買ってくれているのが、26年間続いている「父親の会」を中心とした、保護者の方々です。「看護師、養護学校や幼稚園の先生、芸能事務所にビルの管理会社、ロケットに携わるなど、さまざまな職業の方の話を聞くことで、生徒たちの意識は変化していきます。昨今ではマスコミの報道などからも、収入が高いことが偉いことと刷り込まれている生徒も少なくありません。困難にぶつかりながらも、やりがいをもって生き生きと働く保護者のみなさんの話を聞いて、働くということはお金を得ることだけではないことに気づき、職業への関心が広がっていきます」と有馬先生。さらに、「知識が増えていけば、自分のやりたいことをあきらめなくてもすみます。野球に携わって生きていきたいと夢を描く生徒がいたら、プロ野球選手になれなくても、グローブ作りや用具メーカーへの就職、法学部に行って弁護士の資格を取って代理人になるなど、好きな野球に携わる方法はいくらでもあるのです。また、近年では日本企業に勤めても、取引先や同僚、お客さんも日本人だけとは限りません。毎日勉強している英語が実際の社会でどのように役立つのか。そのことを理解する絶好の機会となっています」
同校の進路指導には、特徴がもう一つあります。生徒が自分に合った希望の進路を選択できるよう、進路指導部と学年主任、そして担任の先生が連携して、多角的な視点からサポートしています。生徒の性格や特質をよく知る担任の先生と、大学の幅広い情報をもつ進路指導の先生方が、それぞれの生徒に合わせて最適なアドバイスを行います。
多様化する昨今の大学入学試験にあわせて、進路指導部を中心に、小論文や面接指導などもきめ細やかに指導しています。このように手厚い先生方のサポートによって、生徒の可能性は未来に向かって大きく広がっていきます。
「基礎学力」の積み重ねと「自学自習」
の習慣が、高い学力を身につけさせる!
学習面においても生徒一人ひとりを手厚くきめ細やかに指導している同校では、自宅での学習方法や、予習・復習の仕方などをしっかりと身につけていきます。7年前から取り入れているのが「学習の歩み(記録ノート)」です。定期試験ごとに、目標や学習方法を2週間前から生徒自身が計画し、担任の先生も細かくチェックします。計画的に勉強を進めることが目的ですが、保護者も目を通すため、家庭、学校との連携の一助にもなっています。また1冊ずつていねいに目を通す先生からのアドバイスで、次回の試験への意欲も高まります。 「部活を熱心(すぎるほど!)に取り組んでいた生徒が高3の夏の引退後に、猛勉強の末に希望の大学に入学することも珍しくありません。本人の頑張りはもちろんですが、中学での基礎ができているからだと思います。基礎がゼロの子が本気で8月から勉強しても届かないですから」と有馬先生。中学時代に身につけた基礎が底力となって、希望の進路への道を"桜美林の生徒たち"は自ら切り拓いているのです。
表彰されて〝やる気スイッチ〟オン!
定期試験の合間など、年に5回実施されているのが「コンテスト」です。コンテストを行う教科は国語、数学、英語の3科目。漢字、計算、単語などの基礎力定着を目的に、全校で一斉に行われます。良い点数を取った生徒は全校生徒の前で表彰されるためか、コンテスト前にはスクールバスのなかでも勉強する生徒の姿が目立ちます。出題される範囲が限られているので、「勉強しよう」と決めたときに手をつけやすく、努力次第で高得点が狙えます。表彰をきっかけに勉強への"やる気スイッチ"が入る生徒も多く、覚えた漢字や単語は蓄積されて、やがて財産にもなります。「あとから、絶対にやっておいて良かったと思う時が来る」と、大学合格者の先輩から後輩の中学生に説得力のあるアドバイスも。いまや、このコンテストは同校の伝統行事のひとつになっています。
「勉強合宿」で中3生の中だるみを一掃!
中高一貫教育のなかで、中3生の夏休みは受験もなく、緊張感を保つのが難しい時期です。そこで、同校では高校での学習意欲につながるように3泊4日の勉強合宿を行っています。朝起きてから夜寝るまで、食事と睡眠、トイレ以外はひたすら勉強に打ち込みます。ハードな合宿ですが、「やればできる!」と、帰るころには生徒の目の輝きが変わってくるそうです。この勉強合宿は、大越孝校長が中高の先生をしている時代に、「もっと勉強したい」という生徒の要望から発展したそうで、主体的に学びたいという生徒の気持ちに応えるカタチでスタートしました。
そんな生徒の意欲に全力で応える同校では、毎日、必ず1~2時間分の宿題が出て、先生がていねいにチェックしています。さらに、夏、冬、春の長い休み期間には習熟度別の授業を展開、その時点の力に応じた講座が開かれます。また、土曜日の放課後には、より深い内容の問題にチャレンジしたい生徒を対象とした「ハイクラス」や、補習が目的の「欠点補習クラス」など、生徒の勉強の意欲に先生方はとことん応えます。
また高3生はそれぞれの志望に合わせて、大学進学に向けた受験講座が自由選択で受けられます。「早慶上難関英語」や「センター政経」、「生物」「古文」といった30近い受験講座が開講され、無料で受講することができます。「予備校に行かなくても安心して大学受験に備えることができる」と、生徒や保護者からも大好評。このような先生方の地道な努力は、生徒たちの学習意欲をさらに深め、大学の合格率上昇にもつながっているのです。
真のグローバル教育とは、多様な考え方を受け入れて、
柔軟な思考ができる人に育てること
真のグローバル教育を目指す桜美林では国内とオーストラリアでのファームステイを実施しています。
「中2では、長野県飯田市で農業を体験しながら、農家に1泊させてもらいます。なかには初対面の農家の方と思うようにコミュニケーションが図れない子もいますが、この国内での"挫折"経験を踏まえて、中3ではオーストリアで4泊のファームステイに全員でチャレンジします。150人が40家庭ほどに分かれて、メルボルン郊外の農家に宿泊しますが、4泊にもなると、お客様扱いから一歩越えたコミュニケーションを図れる関係になっているようです」と有馬先生。
巨大なトラクターに乗って収穫のお手伝いをさせてもらったり、羊の毛を刈ったりと、豊かな大自然のなかで貴重な経験を積みながら、英語で自分の気持ちを伝えます。お世話になったホストファミリーとうまく話せなくてもどかしさが残っても「英語でもっと自分の気持ちを伝えたい」と、次の学びの意欲につながっていくそうです。
このようなオーストラリアでの体験も含め、文化の異なる人々ともコミュニケーションがとれるよう、英語で自分自身の考えを積極的に表現することは同校の英語教育の目標のひとつです。専任の外国人と日本人の先生が連携をして"読む、書く、話す、聞く"という4技能をバランスよく身につける授業のほかに、年に一度、各学年の代表者が発表する「イングリッシュ・プレゼンテーション」の機会を設けて、"発信する力"もつけていきます。中1は暗唱、中2はスキット、中3はスピーチ。それぞれ1年間の英語学習の成果を全校生徒の前で披露します。また、中国、韓国、オーストラリアにある姉妹校を中心に、海外研修プログラムも充実しています。
酪農にチャレンジ!
オーストラリア研修旅行
選択授業の第二外国語。異文化交流で世界がぐんと身近に
創立者の清水安三先生が中国で学校を創設したことをきっかけに、中国語や韓国語をカリキュラムに取り入れているのも同校の特徴です。中3生からは第二外国語と選択することもできます。中国や韓国の提携校との交流もあり、その影響からか選択を希望する生徒が年々増えているそうです。「同じアジアの同世代の生徒たちが流暢に英語を話す姿に発奮したり、理科の実験や演奏などを一緒に行うことで距離を縮め、異なる文化の違いを互いに認め合うきっかけにもなったりもしています」と有馬先生。このような体験からも海外に自然に目が向き、生徒たちに新たな価値基準や視野が広がっているのです。
キリスト教の教えを礎に、一人ひとりを「かけがえのない存在」として認め合う"オベリンナー"(生徒・卒業生)たち。雨の日には、教室移動中に車いすの生徒にそっと傘を差しだす生徒たちの姿が当たり前に見られる同校では、これから先も先生方に温かく見守られながら、自分で考えて、自分の言葉で表現できる主体的な大人へと成長を続けていくことでしょう。ぜひ、一度学校に足を運んでみて、明るく伸びやかな同校の雰囲気を体感してください。
同校へのアクセスは無料スクールバスがとても便利です。JR横浜線「淵野辺駅」から学校までの乗車時間は約5分。京王電鉄・小田急電鉄・多摩都市モノレールの「多摩センター駅」からは約15分。5~10分間隔で運行しています。