女子ゴルフ山口すず夏選手。「学校から世界へ」インタビュー③
「学校から世界へ」第3回アスリートは、世界のトップが集結する全米女子オープンに14歳で出場(日本人女子の海外メジャー最年少出場記録)。今年1月に行われたオーストラリアアマチュアゴルフ選手権では日本人初制覇と、女子ゴルフ界で非凡な才能を発揮している、共立女子第二高校の山口すず夏(やまぐち・すずか)選手です。【取材日:2018年5月28日】(文:金子裕美 写真:永田雅裕)
共立女子第二を選んだ理由
--中3で全米女子オープンに出場し注目を集めましたが、中学卒業後の進路はどのように決めましたか。
山口さん ジュニアゴルファーには(競技と両立するために)通信制の高校に行く、という子がすごく多いんです。私のまわりにもたくさんいましたが、私はあまり行きたくありませんでした。(遠征と重なり)これまで1度も出られていませんが、文化祭や体育祭、修学旅行など高校時代にしか体験できないことがいっぱいあるだろうなと思っていたからです。ゴルフを辞めた後の人生のほうが長いので、学校に通って身につけられることを身につけておきたいと思いました。
--共立女子第二高校を選んだのはなぜですか。
山口さん ゴルフ部のある私立高校を探していました。車とバスで1時間くらいで通学できることと、ゴルフ施設が充実していたことが大きな理由です。
--女子校に抵抗感はなかったですか。
山口さん 特になかったです。まわりの子たちは「女子校ってなんか恐そうだよね」「いじめがありそうじゃない」などと言っていましたが、私はそんなふうには思っていなかったです。入ると、みんな明るい子たちばかりで、学校に行くのが楽しいです。
学校生活とゴルフの両立
--どんな生活を送っているのですか。
山口さん できる限り学校に行くようにしているので、試合が固まっている1学期は大変です。例えば練習ラウンドをするために、木曜日の授業が終わったらすぐ愛知に行き、翌日兵庫に行き、その日のうちに帰ってきて土曜日は学校へ行くというような感じなので、車の中で宿題をやることもよくあります。
普段は朝練をしてから授業を受けて、放課後は父が運転する車で練習場に行きます。19時半くらいまで打って、それからトレーニングです。中学時代はクラブを5本くらい小さいバッグに入れて、自転車で練習場に行っていましたが、今は少しでも練習したいので、移動は父に頼っています。
--朝練は学校で?
山口さん 今まで平日は週3で、朝6時半に登校し、8時すぎまで学校でトレーニングをしていましたが、今は6時から7時半くらいまで家の近くで練習してから登校しています。放課後は、学校から練習場に直行し、練習後にトレーニングに行くという感じです。
--トレーニングはどんなことをしていますか。
山口さん 今までは走り込みや体幹トレーニング、腹筋などを鍛えていましたが、今はイチローさんをはじめ、さまざまなアスリートの方がやっている初動負荷トレーニングをやっています。ジムのトレーナーさんがメニューを組んでくれるのでそれに従ってやっています。
--頑張っていますね。クラスの友だちは応援してくれるでしょう。
山口さん 学校を休んだ時は、友だちに授業の内容をまとめたノートを写真に撮ってスマホで送ってもらい、それを家で写しています。定期テスト前にやることが多いので、ノートを写すばかりになっちゃって、全然勉強が進まないのが悩みのタネです(笑)
--先生方も勉強の面倒を見てくれますか。
山口さん そうですね。私だけでなく、誰もがいつでも聞ける環境なのでありがたいです。
【ゴルフ部顧問/池田先生談】
全日制の学校に通う意味を感じていると思う
山口さんと初めて会ったのは、山口県で行われていた中学3年の時の全国大会です。本校の選手と知り合いだった関係で、練習場にお父様と一緒にいた時に「一緒にやりませんか」と声をかけさせてもらい、山口さんが志望校の1つとして考えてくれて、入学に至りました。プロの大会も含めて、国内外のツアーに出場している選手です。練習は独自に行っていますが、スケジュールが合えばオープンキャンパスなどの校内イベントも一緒にやってくれます。ジュニアゴルファーは通信制の学校に通う子が多いのですが、全日制の学校に通う意味はあると思いますし、彼女はその意義を感じてくれていると思います。
【入試広報部/戸口先生談】
クラスが象徴していると思うのですが、まわりが特別扱いをしているという感じではないんです。普通にクラスに馴染んでいます。学校行事に関することもやれることはやって学校生活と競技を両立しています。だからクラスメートに受け入れられるのだと思いますし、(彼女の存在が)一般の生徒にもいい刺激を与えていると思います。