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受験情報ブログ

目白研心中学校「次世代スキル入試」(2月3日午後)

2月3日午後、目白研心中。グローバルに活躍する人材を発掘する試験……「次世代スキル入試」

2021年2月3日、東京都新宿区にある目白研心中学校で「次世代スキル入試」が行われました。この試験は、教科型ではなく、近年増えている思考力入試のひとつで、受験生がテーマに沿って、話し合ったり、発表したりする形式です。入試の現場を取材してきました。〈取材・撮影・文/知恵工場ナレッジ 千葉 緑〉

○始まりは試験のルール説明から

目白研心中学校は、最寄り駅のひとつである中井駅から徒歩8分、閑静な住宅地の高台、新宿区の目白台にあります。校舎に続く坂道を登りきると、緑豊かな目白大学と中高のキャンパスが広がります。

集合時間は14:30。14時過ぎには、校舎の入り口で検温・消毒を済ませた3名の受験生が、試験会場の教室に入ってきました。教室の中央には机が3つ、黒板に向かって逆ハの字型に置かれています。

受験生が席に着くと、司会の先生が、「この試験は自分が話す時間と、他の人の話を聞く時間があります。話す人は、はっきりとした声で聞いている人の顔を見ながら話しましょう。聞く人は、話す人を見ながらお話を聞きましょう」とルールが伝えられました。

問題用紙が配られ、試験開始です。

○最初問題は自己紹介

問題用紙をめくると、最初の問題は自己紹介でした。「受験番号と名前、中学生になったら挑戦したいこと」を1分間で話すよう、司会の先生から指示がありました。司会の先生はスマホの時計を見ながら、設問ごとに制限時間を伝えます。

「中学では友達を1000人作りたいです。苦手な漢字も、テストでは100点取りたいです」と、ある受験生。初めて会った人たちを前に少し緊張した様子でしたが、ハキハキと答えていました。他の2人は、発表者の方に体を向けてしっかりと聞いていました。

○「役に立った時」ってどんな時? 身近な体験から考える

司会の先生から出された質問は、「自分が今まで誰かの役に立ったのはどのような時ですか? どうして役に立ったと思いましたか?」です。受験生たちは、3分間でワークシートに答えを書きます。それを元に、順番に10分間で発表し、話し合います。

「友達の悩みを聞いてアドバイスをしてあげた時です。友達から『助かったよ、ありがとう』と言われて、自分が役に立ったと思いました」と答えました。3人とも、学校や家など身近な場面でのエピソードが元になっていました。

3人の答えを聞いた先生は、さらに畳み掛けて、「自分が知っている中で、一番役に立ったことをした人はどんな人ですか?」と問いかけます。

「入試の前日、『わからない問題は飛ばして次の問題を解こう。焦らず、深呼吸しようね』とお父さんがアドバイスをしてくれました。だからお父さんが一番役に立ちました」と答えると、先生は「お父さんはどんな人?」と質問したり、「この方のお父さんについてどう思いますか?」と他の受験生に意見を聞いたりしていました。自分の父親と比較して、「あなたのお父さんが羨ましい!」という意見も飛び出しました。

○自分は何ができるだろう? 解決策を考える

5分間の休憩を挟んで、次も質問が続きます。

「これから誰か、もしくは世の中の役に立つために、自分ができることは何でしょうか? 明日からすぐできること、中学生になったらできることを発表してください」と司会の先生。受験生たちは15分間でワークシートに答えを書き、そして1分間を目安に発表をします。

「募金に興味を持ちました。世界にはお金がなく病気になっても薬を買えない人たちがいます。明日からでもコンビニなどでお釣りをもらった時は、募金箱に入れたいです。中学生になったら、募金活動に参加したいと思います」と一人の受験生が発表しました。

それを聞いた別の受験生は「私だったらたとえ10円でも、人にあげるのは惜しいなと思ってしまいます。あなたの考えは素晴らしいです」と、感心していました。

「役に立つこと」というテーマを通して、まずは自分のこと、次に自分以外のこと、さらに世の中へと発展していきます。

○ニュースの話題も、答えのヒントに

「コロナの感染が広がっているので、私は、手洗い、うがい、マスクの着用など当たり前のことしっかりやって、感染予防に役立ちたいです」と、受験勉強のさなかにコロナ禍を経験しただけに、実感がこもっています。

すると、「当たり前のことを当たり前にやるって難しいよね」と先生。「みなさんは10年後、コロナはどうなっていると思いますか?」と問いかけました。

ある受験生はワクチンの開発が進んでいることや、スペイン風邪の例を挙げて、「10年後はコロナに打ち勝っていると思います」と答えていました。時事問題の知識が発言に説得力を持たせます。

○自分の答えを採点する「自己評価」

グループワークや発表がひと通り終わると、「自己評価シート」が配られます。自分の答えや発言を振り返り、項目ごとに、「よくできた・できた・ふつう・もう少し」の4段階で自己評価します。

この最後の課題を書き終えると、採点官の先生に引率されて、受験生たちは控室で待つ保護者の元へと戻っていきました。

○「自分で選んだ道を正解にする」

この「次世代スキル入試」は、今回で3年目です。昨年まではグループワーク・発表に加えて、公立中高一貫校の適性検査に対応した筆記問題がありましたが、今年はこの2つの形式を独立させて、筆記型の「適性検査型入試」(2/1午前、2/2午前)と、グループワーク・発表型の「次世代スキル入試」(2/3午後)に日程が分けました。

合否判定はそれぞれのワークに評価項目があり、それを3人の先生で点数化します。

「次世代スキル入試」について、齋藤圭介教頭は、試験の狙いについてこう話しました。

「同校のキャリア教育がベースとなっています。SECの授業では『ENAGEED CORE 2.0』という教材を採用しており、この試験は、教材を開発した企業と共同で立ち上げたものです。わが校では、グローバル時代に不可欠な3つの力として、世界中の人々と最適な関係を築くコミュニケーション力、正解のない問題に対応できる問題発見・解決力、成功体験が自信につながる自己肯定力を考えています。自分で選んだ道を正解にする力を持った次世代の人材を育成することを目指しているのです」と語りました。

「次世代スキル入試」は、まさに、その3つの力の素養を持った人材を発掘する試験だと感じました。