(文/スタディエクステンション代表・鈴木裕之)
GLICCの鈴木裕之です。今回の記事では、SFCの2019年度の英語入試問題を紹介していきます。
SFCでは2019年度から、帰国生以外の生徒も英国算の3科目入試が受験できるようになりました。
試験時間は、国算各45分、英語60分で、英語の問題には作文(ライティング)が含まれています。昨年発表されたサンプル問題では、リスニングに約10分、リーディング・グラマー・ボキャブラリーに合計約30分、そしてライティングに20分の時間が割り振られていました。
本番の試験問題も、サンプル問題とほぼ同じ問題構成になっていますから、時間配分はサンプルに示されているものに従って進めていけばよいでしょう。
難易度的には英検2級から準1級程度の英語力が問われると公表されているように、帰国生ではない小学生にとってはやや難しい問題です。しかし、ライティング以外の設問はすべて記号で答えるタイプですから、消去法で選択肢を絞って正答率を上げるという戦略で、合格ラインに近づくことは十分可能です。
ちなみに、2019年度の英語問題を思考コード別に分析してみると、次のような結果となっています(配点や難易度はGLICCの予想です)。
※難易度は、英検2級相当の英語力を持つ小学6年生が受験した場合の予測で算出。
※リスニングの内容とライティングのトピックは公表されていないため、サンプル問題を参考にして難易度を予測した。
※難易度は、0が最も易しく、9が最も難しい。ただし、あくまでも正答率の予測であるため、設問内容が難しくても、例えば選択式の問題であれば、記述式の問題の場合よりも数値は低く出る。
SFCの2019年度の問題については、カテゴリーAの「知識思考」が、配点全体の18%を占めています。平均難度は5.9ですからすべて選択式の設問の割にはかなり高い数字です。
配点 | 平均難度 | |
---|---|---|
A思考力 | 18 | 5.9 |
B思考力 | 70 | 4.5 |
C思考力 | 12 | 6.5 |
カテゴリーBは「論理思考」の出題で、配点全体の70%を占めています。SFCでは論理的思考によって解答を導く設問が多いということを示しています。
カテゴリーCは「創造的思考」の出題で、配点全体の12%です。例えば作文(エッセイ)がカテゴリーCの典型です。今年度の作文のトピックは公開されていませんが、従来の出題していた傾向からすると、ストーリーを創作するタイプの作文、もしくは「もし・・・なら」といった仮定をもとに考える作文が出題されたと予想しています。
フィクションの読解では、アシモフの短編小説が使われていました。テクノロジーによって完全に個別最適化された学びがスクリーン上で可能になっている未来社会が舞台です。ある子どもが、たまたま屋根裏で古い本を見つけ、かつての学校(つまり現代の学校)の様子を知り、同じ教科を友達とともに教え合ったり一緒に学校から帰ったりした時代を羨ましがるというものです。母親が教育熱心であることは未来においても変わっていませんが、家の中で勉強が完結していて、友達との交流や遊びがなくなっているという暗鬱な未来が子どもの視点から描かれています。
このような現代社会へのリフレクティブな眼差しを感じさせる短編小説を目配りよく出題してくるところはさすがSFCです。
もう一つのリーディングでは、インターネットが24時間機能停止した場合に社会がどれほどの影響を受けるかということについての説明的文章でした。現代の高度なテクノロジーについて日頃から考えているかどうかで読み取りの力が大きく変わってくるでしょう。
アシモフの短編小説といい、テクノロジーについてのEssayといい、SFCの英語作問チームが、社会との関わりの中から英語を捉えていることがよく分かります。
表されていない作文の問題も非常に気になるところです。帰国生用の過去問題を考えれば、創造的思考を問うような面白い出題であったことは間違いないでしょう。受験した人がいたらぜひGLICCまたは首都圏模試センターまでお知らせいただければと思います。
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