帰国後のご家庭

以前に海外にお住まいで、すでに日本に帰国された小学生と保護者の皆さまにご覧いただきたい、中学受験のための「帰国生入試」の情報です。

さらに「帰国生受け入れ校」が増えている中学入試

東京オリンピック・パラリンピックが開催される2020年には、これまでの日本の教育を大きく変える契機となる可能性のある「2020年大学入試改革」が実施されます。
この大学入試改革を追いかけて2018年から導入される次期『学習指導要領』では、小学校3年から英語が導入され、5年生からは教科科されるなど、日本の教育の「グローバル化」が大きな課題として反映されることになります。
そうしたグローバル化を実現するために、教育環境も多様化(=ダイバーシティ化)する必要性が叫ばれるようになっています。 そうした時代の要請のもとで、海外での在住経験のある「海外帰国生(海外帰国子女)」といわれる子どもたちの存在と価値、そして期待は、これまで以上に大きくなっています。
たとえば首都圏(東京・神奈川・千葉・埼玉・茨城など)には現在、約300校の私立・国立・公立中高一貫校がありますが、そのなかで約130校が、中学入試でも帰国生の受け入れを図っています。
今春2015年の中学入試でも、一般入試とは別枠で「帰国生入試」を実施した学校は約90校あり、来春2016年入試に向けては、さらに10数校が新たに「帰国生入試」を実施する予定です。
なお、今春2015年の首都圏における「帰国生(別枠)入試」の入試要項は、「入試要項一覧」のページをご覧ください。

あらためて各私学の「帰国生(別枠)入試」の受験資格を確かめよう!

そうした中学入試段階での、私立中学校の「帰国生入試」の受験資格は、おおむね「海外在留1年以上、帰国後2年以内」というのが平均的な条件になっていますが、なかにはそれ以上に受験資格を広げて(帰国後3年以内など)いる私立中学校もあります。たとえば東京都の私立中高協会では「帰国後3年以内」という条件を、「帰国生(別枠)入試」の受験資格の目安として申し合わせ事項に定めているようです。
したがって、一時期お子さんとご一緒に海外にお住まいで、お子さんを現地校やインターナショナル・スクール、もしくは各地の日本人学校に通わせていたご家庭で、すでに日本に帰国して(数ヶ月~数年たって)いる場合には、あらためて首都圏の私立中高一貫校の「帰国生入試」の受験資格を調べてみるとよいでしょう。
帰国後に(現在)お住まいになっている地域から通学が可能な私立中学校の「帰国生(別枠)入試」の受験資格をあらためて確かめることで、思っていた以上に「帰国生(別枠)入試」を受験できる(受験資格の該当する)私立中高一貫校が多いことがわかるのではないかと思います。
保護者の思い込みで意外と多いのが、「うちの子はもう帰国後2年以上たってしまったので、ほとんど帰国生入試の受験資格にあてはまらないのでは?」という誤解です。なかには、受験時に3年と1~2ヶ月たってしまうお子さんでも、ほんのわずかな帰国時期の差で受験できないのは子どもが可愛そうという考えから、例外的に受験を認めてもらえる場合もあるので、心配ならば事前に率直に各校の先生に問い合わせや相談をしてみるとよいでしょう。
また、そうした情報と合わせて、入学後の受け入れ体制や、各教科の学習サポート体制などを調べていくことで、わが子に合った帰国生受け入れ校を見つけることができると思います。

大きく分けて2つのタイプがある「海外帰国生(別枠)入試」

いま国内で実施されている「帰国生(別枠)入試」には、大きく分けると、次ぎの2種類のタイプがあると考えられます。

①一時期、英語圏の国々に在留し、現地の小学校やインターナショナルスクールで英語力を身につけた子どもの英語力を評価し、そうした子どもを受け入れて、さらにその子たちの英語力を伸ばすと同時に、国内で育った一般生にとっての良い刺激にしたいと考える学校(入試)。
②英語圏の国々に限らず、海外の現地校、日本人学校で貴重な海外生活の体験をしてきた子どもたちの感性や自己表現力、積極的に意見を発信する力、異文化体験などを評価し、そうした子どもを受け入れることで、多様な体験、バックボーンを持つ子どもたちが共存する教育環境の実現(="ダイバーシティ化")を図ろうとする学校(入試)。

このうち①のタイプの学校(入試)では、「帰国生(別枠)入試」の科目や作文のひとつに英語が課され、国語・算数などの基礎学力以上に、受験生の英語力を重視して合否が決められます。典型的な例としては、頌栄女子学院〈東京都港区・女子校〉、洗足学園〈神奈川県川崎市・女子校〉の帰国生A方式入試、渋谷教育学園渋谷〈東京都渋谷区・共学校〉の「英語・国語・算数・英語面接」選択入試、などがあげられます。
一方の、②のタイプの学校(入試)では、「帰国生(別枠)入試」の科目に英語や外国語を含まず、一般受験生と同様に、国語・算数の2科目か、あるいは国語・算数・社会・理科の4科目の学力(筆記試験)で合否が決められます。どちらかというと「帰国生(別枠)入試」に4科目を課すケースは少なく、国語・算数の学力を中心に合否が決められるケースが大半と考えてよいでしょう。 「帰国生入試」を一般生と分けた別枠の形にせず、一般入試と同様の形で帰国生入試を実施し、帰国生に対しては何らかの配慮(多少の加点や面接などの要素を考慮)を加える学校も、こうした「国・算」の基礎学力型のタイプの入試と考えてよいでしょう。 いずれにしても、「帰国生(別枠)入試」は、現在のところ、東京・神奈川で中学入試がスタートする(解禁となる)2月1日よりも前に実施することが認められていますので、早い学校では前年の11月から「帰国生(別枠)入試」がスタートし、一般入試スタート直前の1月末まで多くの私学で行われているのが現状です。

海外帰国生には、一般の中学受験生より多くの受験チャンスがある!

このように、「帰国生(別枠)入試」には、大きく分けて2つのタイプがあるがあるなかで、毎年の帰国生(の受験資格に該当する小学生)は、11月~翌年1月末にかけて、受験可能な、志望校のひとつに考えられる私学の「帰国生(別枠)入試」をいくつも受験し、その結果に応じて、2月1日からの一般入試にもチャレンジしていくという形が一般的です。
もちろん「帰国生(別枠)入試」で第1志望に合格できた場合には、2月以降の一般入試を受ける必要はありませんが、慶應義塾普通部や慶應湘南藤沢のような人気校には、2月1日以降の一般入試と同日に帰国生入試も実施しているところがあるため、多くの受験生は、そうした2月1日以降の受験チャンスも生かしていくことになります。
つまり、「帰国生(別枠)入試」の受験資格がある中学受験生は、一般の(国内の学校に通ってきた)中学受験生よりも、多くの受験チャンスがあることになります。それならば、この特典を生かさない手はありません。一般的に「海外在住1年以上、(日本への)帰国後1年以内」という小学校6年生であれば、ほとんどの私立中高一貫校の「海外帰国生(別枠)入試」の受験資格があると考えてもよいでしょう。
現在、首都圏の中学入試では、男女とも「一人あたり平均5~6校を受験(出願)する」のが一般的ですが、帰国生の場合はこれ以上に多くの学校を受験(出願)しているのが現状です。それだけ多くの学校を探して受験するのは大変と思われる方もいるかもしれませんが、「1校が平均3回の入試を実施している」現状のなかで、「受験できるチャンスをできるだけ多く生かす」ことが、合格へのカギになっていることも事実なのです。
もし親子で気に入った学校があり、その学校が一般入試を3回実施していて、なおかつ「帰国生(別枠)入試」も実施しているならば、この学校を4回受験することを軸にして、他の併願校を2~3校選んで受験するという形でもかまいません。現に、首都圏の帰国生入試では最も高い人気を集める洗足学園や渋谷教育学園渋谷などは、こうした受け方でチャレンジしている受験生も多いのです。
また、たとえば保護者(父親)が仕事の都合により、まだ帰国の予定がなく、母親とお子さんが先に日本に帰国するようなケースで、帰国のタイミングを計っている場合には、志望する(関心のある)私立中高一貫校の「帰国生(別枠)入試」の受験資格をあらかじめ確かめておいて、受験時にうまく該当するタイミングで帰国するというもの、ひとつの方法でしょう。