2018年12月私立中コラボフェスタレポート①
2018年12月2日、相模女子大学中等部・高等部において神奈川で初めて『新入試体験!私立中コラボフェスタ』が行われました。
東京では半数近くの私立中学で2科4科以外の新しいスタイルの入試が実施されています。公立中高一貫校で実施されているような適性試験型をはじめ、自己アピール型入試、英語型入試、得意科目選択入試、思考力入試など、子どもたちの才能を掬い上げる取り組みをしています。その波が、神奈川にも広がりをみせています。コラボフェスタではそうした新しい入試を行う私立中学が一堂に会し、体験をしたり、入試の意図や内容を講演で聞いたりできる機会となります。その様子をご紹介いたします。
①思考力入試
聖学院/21教育企画部長 児浦良裕先生
・2013年(現高3)に初めて思考力入試を行った。
・思考力入試で入学した生徒の成長の様子は
・思考力入試では、主体性・協働性・多様性を持つ生徒が入ってくる。
・中1の学力推移調査をみると、トップテンのうち4名は思考力入試での入学者。自分で勉強を進めていく生徒が入学してくる。2科4科で受験した子どもが勉強できる、というのは幻想。
・聖学院では3種類の思考力入試を実施。
・ものづくり思考力入試は、LEGO SERIOUSPLAYというメソッドを活用した入試。「手は第二の言語」と言われ、LEGOを使って思考を可視化した上で言語化すると、言葉が出やすくなる。レゴ表現を文章表現する。情報を読み取って、レゴでつくり、作文する。それを自分で発表しつつ、他人の作品を見て、自分の作品の改善を行う。制約することによってアイデアが出る。自分の力だけでは最善の解は出せないことを前提に、みんなの作品を見て再現できたり、自分の思考に付加できるような生徒に入学してほしいという願いが込められている。クリエイティブな力が強い受験生が集まりやすく、英語入試との併願者が多い。
・M型思考力入試は数学的思考を問う試験。比較して背景を探る、要素分解、統合など、数学で使う力を測る。クリティカルな思考を持つ受験生が集まる傾向がある。自由研究をするさいにはデータを駆使するような生徒が多数いる。
・難関思考力入試は「ものづくり+M型」。加えて、音声情報をもとに情報を与える問題を出題したが、ここで合否の差が出た。面接ではプレゼンテーションと質疑応答。入学者は、自己主張をするというよりは、一歩引いて適切な発言をする傾向がある。細かいことに気づき、配慮する行動をとる。
2020年の大学入試改革は思考力入試が目指す世界観と近しいものがあります。知識や技能の習得だけでなく、思考・判断・表現力や学びに向かう力を問おうと、大学入試では記述式問題や多面的評価を加えようという動きがあります。また、文系の大学生は数学的思考が、理系はリベラルアーツが求められるなど、社会的要請も変化しています。そういう視点から思考力入試の問題を見ると、社会の変化にいち早く対応したものだといえます。私立中学が、未来を生きる小学生の才能をすくい取ろうとしているということです。
そして、思考力入試を実施している学校は、思考力を育む教育を展開していると期待できます。「入試は学校の顔」と言われる所以です。学校選びをするさい、入試の形態や出題内容に注目すると、学校の姿が見えてくることでしょう。真剣に面白い、楽しい入試がある学校に注目です。
②総合型入試
聖ヨゼフ学園 入試委員長 多田信哉先生
・教科融合型の入試を実施。2007年の入試から総合型の入試を始め、初年度の受験生が今年大学を卒業した。卒業をした生徒は、自己肯定感が高まっている。文理融合型の学部で真剣に学び、今はiPS細胞とイトマキヒトデの研究をしている。
・いろんなことに興味を持つ、答えが出ない課題を見つけると貫く生徒が集まっている。
桜美林 教頭 首藤元彰先生
・文系総合型、理系総合型の入試を実施。身近なものをテーマに問題解決し、表現する。
・総合型は今年3回目(現中2)。9名入学し、成績トップテンのうち4名。数学の公式は暗記よりも理由を考えて使いこなす生徒が多い。学校行事ではクラスの中心に押し上げられていく。
・高校でも国公立大学受験コースをつくった。身近なことを大事にする子に来てほしい。
関東学院六浦 校長 黒畑勝男先生
・総合Ⅰは課題解決型の問題。与えられているものを分析・統合する問題。総合Ⅱは数的処理。
・総合型入試で求めるものは、詰め込まれた知識ではなく、論理的にクリティカルに考える力。
・これまで活動を蓄積し、新しい事象と照らし合わせ、学び方を照らし合わせていく。学校をそういう子どもの場にしたい。そして、自己肯定感を育めるような教育を展開していきたい。
総合型入試では、教科融合型の問題が出題されています。知識は問題の中に提示されており、それをどう活用するのか、思考を展開するのかが問われます。資料の情報を組み合わせながら、論理的に説明するなど、思考をことばにすることが求められます。資料から主張や傾向を読み取る訓練、読み取った内容をもとに、筋道を立てながら説明する練習を重ねるのは、中学入学後にそうした能力を求めるという学校...
③適性検査型入試
共立女子第二 入試広報部主任 戸口義也先生
・南多摩中等、立川国際に類似する問題を出題する。なお、相模原中等の併願者もいる。
・適性検査型の受験生は手続き率が高い。自然環境の豊かさや、自己実現のしやすさを理由に入学してくる。適性検査型の入学者は成績の上位に入る。
・様々なタイプの小学生に入学してほしい。
相模女子大学中等部 入試広報部長 中間義之先生
・相模原中等に類似する問題を出題。大きな特徴は、問題作成のさいに9教科の教員が関与すること。
・「こういう子を求めていた」という生徒が適性検査型入試を通して入学してきた。
・問題の中に解くヒントが隠れている。だから、受験の準備が遅くなった小学生でも受験しやすい。続けてきた習い事を中学でもやりたい、考えることなら頑張れるという小学生をもとめている。
・入学者の傾向として、グループワーク等の中心になる生徒が多い。
鶴見大学附属 入試広報統括部長 川野正裕先生
・市立南、サイエンスフロンティア、川崎、桜修館の受験者が多い。
・複数の教員が問題を作成する。また、問題文のストーリーとして、生徒が探究したことを持ち寄り、討論するという流れになっている。
・我が校では協働学習、ペアワーク、情報を分析統合し、発表することが多い。情報を収集、読解し、表現するトレーニングを積むと良い。
・適性検査型入試で入ってくる子はリーダーシップをとる傾向があり、多くの生徒に刺激を与えている。
日本工業大学駒場 進路指導部部長 藤森啓先生
・適性検査Ⅰは国語。資料を読んで体験に基づいて書く問題。クリエイティブなところも見たい。受験生は勉強結構たくさん書いてきている。他方、適性検査Ⅱは算数理科社会。算数では規則性、理科・社会ではデータを参照するが、思考の過程を書くことを求める。
・適性検査型入試の入学者は勉強もでき、入ってから伸びる。英語のスピーチコンテストといった催し物では大活躍。コミュニケーション能力が高い。
・適性検査型入試では文章による説明を求めているが、一種のコミュニケーションだと思って書いてくる生徒が多い。これは国公立入試では大事。
また、栄光ゼミナールの菅原先生より「適性検査型入試の対策をしないで臨むのではなく、ぜひ体験イベントに参加してほしい」という話がありました。公立一貫を選ぶ受験生の7割は私立を併願しており、私立の学校見学に行くことも大事だとのこと。また、公立一貫校受験生は初めての受験となるので、受験の経験をする必要性を述べていました。
適性試験型入試の実施校は、近隣の公立中高一貫に似ている問題を出題する傾向にあります。必要な知識は問題の中に情報として隠れていて、それを拾い上げて思考することが求められます。知識が身につけるのが苦手な受験生は適性検査型、総合型を考えてもいいのではないでしょうか。
④自己アピール(プレゼン型)入試
聖和学院 入試広報ご担当 栢本さゆり先生
・12歳の子でもプレゼンテーションはできる。活動歴と活動報告を尋ねる。一途に取り組んできた経験や継続力を評価する。好きな讃美歌を謳うようなアピールをする受験生もいる。
・練習会を行っている。保護者の方からは「うちの子がこんなに話すなんて」と述べる。
・自己と他者を愛すべきかを認める
・日本語でも英語でも表現できるようになるなど、入学して伸びている。
東京純心女子 入試広報部長 高橋正先生
・タラント(才能)発見・発掘型入試は受験生の才能を見出すために生まれた。
・自己アピール作文では、前もって準備できる課題となっている。
・対話の時間は20分。間違いなく自己アピールできる。自分が一番頑張っていることを伝えてほしい。言葉が足りないときには、対話者が背中を押す。言葉が内からあふれ出す瞬間 、キイキとして話してくれる。
・この入試の入学者はクラスの友達関係のコミュニケーションの潤滑油となっている。勉強、クラブ活動、先輩と後輩の相談を解決する姿、イキイキとした姿が多い。3種の入試によって個性が生まれ、学内は活気に満ち溢れている。
関東学院六浦 校長 黒畑勝男先生
・日本語のリスニング・プレゼンテーションを通し、コミュニケーション能力を測る。
・どんなことをしてきたか、A4で活動報告書を提出する。見通しをもって人生を生きることが大事。目先のことにとらわれて生活することが多い中、10年先のことを考えてほしい。
・我が校では探究型地球市民講座、日本語、英語CLILなど、未来を見据えた教育を実践している。個性をもって入ってくる生徒を受け入れる体制が整っている。
3校の先生からは、小学生にも大人顔負けの自己アピールができるということをご報告を受けました。今までに取り組んできた事柄を存分にアピールするなかで、活動の様子をアピールしてもらうことを通して、2科4科では獲得できない才能をもつ受験生を評価しようという私学がここにはあります。そして、自己アピール入試を実施する学校は、多種多様な才能を受けとめる教育活動を行なっています。対話が活発に行われ、多様な価値観を共有し、グローバルな視野で活躍できる子どもを育む意思を持つ私学がここにはあります。これからもそうした私学を応援していきたいです。