学校特集
サレジアン国際学園中学校高等学校2023
“国際学園”
掲載日:2023年10月20日(金)
「21世紀に活躍できる世界市民の育成」を教育目標として、2022年に校名変更し、共学校となったサレジアン国際学園。主体的に考え、学ぶ「本科クラス」と英語環境で過ごす「インターナショナルクラス」に分かれていますが、"国際学園"の名にふさわしく、生徒たちは、実にのびのびと学校生活を過ごしています。
2024年度の入学生からは、同校に通いながら海外の高校卒業資格も得られるデュアル・ディプロマ・プログラム(DDP)をインターナショナルクラスのアドバンス グループ(AG)にて導入予定。26年には新校舎が竣工予定です。ソフト面・ハード面共にさらに世界を見据えた教育を展開します。
募集広報部部長の尾﨑正靖先生に在校生たちの様子やこれからの同校について伺いました。
主体的に"善"を選び、自分の力が精一杯発揮できる人生を
サレジアン国際学園の母体となっているのは「サレジアン・シスターズ」という、1972年にイタリア・ローマで設立されたカトリック修道会です。その創立者・ドン・ボスコの教えの一つについて尾﨑正靖先生はこう言います。
「子どもたちが主体的に"善"を選べるような教育を、というのがドン・ボスコの言葉です。
本校でも学校生活全般を通じて大切にしているのが、"Why"と"Because"。
21世紀を生き抜く上の大前提として、変化が大きい不透明な時代だからこそ、誰かから与えられた答えで動くのではなく、状況を鑑みながら最適解を探り、行動できるスキルは必須になります。
なぜそう思ったのか? あなたはどうありたいのか? ということを突き詰めるなかで、その子にとって本当に善いものは何かを考えられることを意識しています。生徒たちが思考を深められる余白を残した上で、彼らの中にあるものを引き出していきたいですね」(以下、尾﨑先生)
これこそが、同校の教育目標である「21世紀に活躍できる世界市民の育成」につながる大きな柱となっています。
その目標達成のために行っていることの一つが、課題解決型のPBL(Project Based Learning)型学習です。
「答えがないものをどう考えるのか、その考えたことを自分の言葉でしっかりと伝えられるかという授業になります。生徒たちはPBL型授業を通して、議論することや主張することを楽しんでいるように見えます。
本校では授業だけでなく、部活動や委員会活動、行事などさまざまな場において、しっかりと話し合うことや自分の考えを述べる機会が豊富です。この1年間で、さまざまに思索を巡らせ、表現できる力がかなり身についていることをひしひしと感じます」
そうした教育が現れた一つが、今年7月に東京体育館で行われた体育祭です。
「自分の良さや特徴、長所をできる限り生かし、論理的にアピールすることをPBL型授業で行っています。常日頃からあなたはどう思うの?と問いかけられる生活が続く中で、体育祭という勝負事においても自分の力を可能な限り発揮する、自分を主張するという姿勢を中2生たちは貫いていました。高校生にも遠慮することなく、力を振り絞った結果、なんと彼らが優勝を果たしました」
年齢に関係なく、自分の本気でぶつかっていくことは互いを尊重すること。この姿勢により、国際社会でもきちんと自分を主張し、渡り合っていける胆力を培うことにもつながります。
教育目標を叶えるための新校舎が2026年に誕生
PBL型授業によるポジティブな影響が、より快活な学校生活につながっている同校。授業が楽しいから学校に行きたい!と思える学校づくり・授業展開を目指し、日々の授業を最も大切にしています。
今年度、職員室の席順は教科ごとのブロックに変更されました。社会科の教諭でもある尾﨑先生ですが、それによりどんなメリットが生じたのでしょうか。
「例えばPBL型の授業の前準備として、教科会では生徒が考えを深められるような問いかけを何度も時間をかけて審議します。
それを授業で行ってみた際の生徒たちの反応をすぐに共有できるので、アップデートも可能で授業の深度も上がったと思います」
同校のインターナショナルクラスのAGを担当しているのは、数理社各教科の専門知識を持ったインターナショナルティーチャーです。
「彼らも同じ教科のブロックにいるので、授業についてはもちろんですが、海外の教育内容や教え方なども分かち合うことができます」
こうした学びを推進させるべく、2026年9月には大聖堂横の本館跡地に、地下1階、地上5階の新校舎が竣工される予定です。既存校舎に比べると、約1.4倍の広さになります。
現在の校舎も共学校化に伴いリフォームをし、特に理科で使用するサイエンスラボは設備・設備面がかなり充実しています。
新校舎建設に伴い、21世紀を生きる世界市民としてのサイエンスリテラシーをしっかりと培うための校舎設計がさらに強固に行われています。
専用の理科施設などを持つ他校なども参考にしつつ、理数教育にさらに力を入れられるよう、ハード面・ソフト面共に最新鋭のものを揃え、生徒たちに還元する準備が進められています。
「理科の実験室というだけでなく、ラボとしての機能も持たせ、より深い学びを推進します。
普通教室は3面の壁にプロジェクターをつける予定です。それらを使って議論や個別最適化した学習ができるよう、これまで以上にインタラクティブな授業を可能にしていきます。
生徒たちが気兼ねなく話し合いができるコモンズというスペースも増加予定です。安心していろいろなことを学び合える環境を整備していきます。
食堂がようやくできます。これも生徒たちや保護者の皆さま、そして我々教員にとって喜ばしいことなのではないでしょうか」
と尾﨑先生は笑います。
新校舎竣工に向けてうれしいのが、現在の校舎から中高の機能がすべて移転するので、ありがちなバラックのような校舎は経験しないで済むこと。落ち着いた学習環境が担保されています。
施設・設備面がさらに整うことにより、サレジアン国際学園の更なる飛躍が楽しみであることは間違いありません。
世界97ヵ国に広がる、サレジアン・シスターズのネットワーク
同校は世界97ヵ国に姉妹校をもつ、まさに"国際学園"です。
コロナ禍を経て、今年3年ぶりにリアルで復活するのが姉妹校との交流。
春休みの約1週間、中3以上の希望者対象に実施される予定なのが、2000年ごろから行われてきたフィリピンの姉妹校との文化交流です。現地校の生徒宅へのホームステイや英語での交流に加え、ストリートチルドレンとの触れ合いの機会などを設けています。
マニラで実施される予定ですが、アジア圏に共に暮らす隣人として、互いの文化に触れていきます。
事前学習ではフィリピンの歴史や文化を学ぶだけでなく、あわせて募金を行ったり、洋服などのチャリティ品の収集をしたりとさまざまな準備を行います。
孤児であるストリートチルドレンのリアルを目の当たりにして、改めていかに自分が恵まれているのかに気づいたり、社会課題へ大きく目が開き、実際に行動を起こしたりする生徒も出てくることでしょう。
これまでフィリピンの姉妹校は1校との交流を深めていましたが、時代の変遷により変化が生じてきました。
「姉妹校は、フィリピン・マニラには4校ありますし、セブにもあります。今年度伺う学校と来年以降に訪ねる学校は違う学校にしてはどうかと、フィリピンのシスターから提案がありました。
1校との関係性を深めることも大切ですが、より広く交流を持てるように展開していく予定です」
さらに現在、計画が進んでいるのが「サレジアンサミット」。さまざまな国や地域・10ヵ国ほどの姉妹校から生徒たちを迎え、ホームステイを受け入れる予定です。
文化の異なる各国の生徒たちといろいろなテーマをもとに話し合うような、サレジアンならではのサミットとして、今年度の3月、もしくは来年度に1週間ほど実施する方向で動いています。
フィリピンの海外研修旅行と時期はずらす予定ですが、それに参加しなかった生徒にとっても、有為な交流の機会となります。
ゼミナール活動に拍車をかける高大連携教育
2023年10月、上智大学との高大連携協定を結んだ同校。同じカトリック系の学校として、国際性に富んだ仲間として、連携して教育活動を行っていきます。インターナショナルクラスにとっては、英語教育が強力に推進されることにも高い期待が寄せられています。
「大学は研究機関ということもあり、研究室との交流を通して、大学生と本校生徒の協働が予定されており、本科のゼミにもとてもいい影響を与えていただけそうなので楽しみです。
さらに教員の研修や交流なども計画されています」
サレジアンで実施されている探究ゼミは、毎週金曜日の午後、中学生は3時間、高校生は2時間を使って複数学年で学んでいます。環境問題やエネルギー開発について考える「E研」やプログラミングなど、計8つが開講されています。
さらにそこに上智の大学生や大学院生と交流し、高等教育の学問に触れられることで、研究によりアカデミックさが加わることでしょう。
なお、ゼミは中2から高2で実施されていますが、中1は本格的な探究学習へ進むための事前学習を1年間行い、学びへの姿勢を整えます。
この事前学習を経た現・中2である、1期生たちはどうしているのでしょうか。
「自分が好きなテーマを選びながら、生徒たちは試行錯誤を重ね、場合によっては苦しみながらも学び合っている姿が見られます。
私が担当している『アントレプレナー養成講座』は社会課題の解決を目標とするような生徒が集まっています」
高校生が行ったゼミの発表に対して、中2の生徒が手を挙げて質問するといったことも起こっているそうです。彼らの知的好奇心や積極性はあくなきところですが、縦割りの複数学年で行う効果が早速出ているようです。
「社会に出たら学年や年齢は関係ありません。ここでしっかりとした議論が論理的・建設的な形でできているというのは、とても良いことだと思っています。それは中2生にとってもそうですし、高校生に話を聞いてみると、自分たちが学んできた知識を持っていない中学生たちが、彼らなりの視点で素朴な疑問を出してくれることは、とても刺激になっていると教えてくれました。
お互いに学び合えるような状況や自分だけではできないことができるという点で、私たちが考え、願っていた効果や目指していたことが実際に目に見える形で表出し、期待以上の学びにつながっています」
年を追うごとに、大きな教育成果を生み出し、生徒たちに広い視野を与え、より大きく羽ばたくための翼を授けているサレジアン国際学園。多様性に満ちた環境をさらに拡充していることで、ますます高い注目と人気を集めていることが納得できる学校です。