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学校特集

サレジアン国際学園世田谷中学高等学校2023

興味をとことん探究するサレジアン国際学園世田谷の学び
本科クラスのゼミと、インターナショナルクラスの英語指導・多様性が身に付く環境

掲載日:2023年11月1日(水)

 2023年度から共学化したサレジアン国際学園世田谷。建学の精神に、創立者である聖ヨハネ・ボスコの全人間教育を掲げ、「21世紀に活躍できる世界市民力」の育成を目指しています。
 同年度からは、本科クラスとインターナショナルクラスの2コース制を実施。入学した生徒たちがどのような学校生活を送っているのか、本科推進部長の市橋朋之先生とインターナショナル推進部部長の上田かおり先生にお話を伺いました。

第一線で活躍できる人を目指し、PBL型授業を全教科で実施

サレジアン世田谷_2023年に共学化したサレジアン国際学園世田谷
2023年に共学化したサレジアン国際学園世田谷

 グローバル化が進む現代社会で、第一線で活躍できる人を育てるサレジアン国際学園世田谷。生徒たちの①考え続ける力、②言語活用力、③コミュニケーション力、④数学・科学リテラシー、⑤心の教育の5つの力を育むために、2022年度からPBL(Problem Based Learning)型授業を全教科で実施しています。

 PBL型授業とは、自分で問題を分析して問いに対する最適解を導き出す授業のことでディスカッションの機会を多く設けています。授業では問題に対する深い分析、法則や仮設の再検討、新たな価値観の創出を通じて「Logical」「Critical」「Creative」の3つの要素を伸ばします。PBL型授業は全教科で各学期に1回以上実施するため、話すのが苦手な生徒でも自然とコミュニケーション力が身につきます。

 2023年度からは共学化したことで、生徒たちの多様性がより顕著になりました。本科推進部長の市橋朋之先生は、「男子生徒は自分の興味・関心を追いかけている」と語ります。

「特にディスカッションの場面では、男子生徒が自分の持っている深い知識を活かして、発想や観点の面白さを臆することなく表現できていますね。一方、女子生徒もロジカルな視点で説明するなど、互いに刺激を受けて成長していますよ」(市橋先生)

自分の興味を深掘りできる本科クラスのゼミ

サレジアン世田谷_本科推進部長の市橋朋之先生
本科推進部長の市橋朋之先生

 2023年度からは本科クラスとインターナショナルクラスの2コース制度を導入しました。本科クラスは「熱く探究する生徒」の育成を目指し、生徒が好きなものや興味を探究できる環境を提供しています。その特徴の一つが中1から行われるゼミの授業です。ゼミは生徒が自身でテーマを設定し、研究活動を行う授業で、3つの学問領域(自然科学、人文社会科学、数理情報プログラミング)からさらに専攻するゼミを選択します。

「中1のプレゼミは、学問とは何かを体感する時間です。在学中は一つのゼミに所属しますから、ミスマッチを防ぐために興味の根を深く理解する取り組みをしています」(市橋先生)

 例えば昆虫に興味がある生徒は、昆虫の捕食に興味があるのか、体の構造に興味があるのか、その構造を利用してアウトプットを行いたいのか。興味の根によって、専攻するゼミが異なってくるそう。

 中1は受講したいプレゼミを志望理由書と共に3つ選び、興味の根を探る時間にしています。それと共に、研究のベースとなる記録の付け方や情報へのアプローチ、発信の手法を学びます。中2で所属するゼミを決めると、中3まで研究テーマのリサーチを続け、高1~高2では探究を深化させる「ゼミEX」へとステップアップします。

「自分」に徹底的に向き合う時間

サレジアン世田谷_自分の興味・関心のある分野を深堀する本科クラスのゼミ
自分の興味・関心のある分野を深堀する本科クラスのゼミ

 9月の学園祭ではゼミの一環として「未来を考える〇〇学」をテーマに来校者に向けてプレゼンを行いました。

「プレゼンで行ったニュースアクティビティでは、生徒の意欲を感じる場面がありました。興味のあるニュースを1つ選んで探究し、プレゼンするのですが、ある生徒はジェンダーに関するニュースをテーマに据え、日本の世代別未婚率などのデータを用いて発表したんです」(市橋先生)

 興味を持った分野をとことん突き詰めて調べる姿は、本科の目指す「熱く探究する生徒」の姿そのもの。生徒の姿勢から、「本校を希望した生徒の意気込みを感じた」と市橋先生は語ります。

「自分の興味のある分野がまだわからない生徒も、プレゼミを通して自分の価値観や社会に対しての疑問・課題を見つけられるようになります。テーマを深く探究することは自分の興味・関心を知り、自身の価値観を理解するきっかけにつながっていくのです」(市橋先生)

 また、プレゼンでは生徒の自己満足で終わらないよう、ルーブリックを用いた自己評価を行います。

「評価項目を作り、自分やクラスメートの発表を評価します。そうすることで、自分の発表を客観視し、次に活かせるようにしています」(市橋先生)

 本科クラスではロングホームルームなどの時間を通じて、自分の価値観が過去の経験にどのように影響されているかを振り返る時間を設けています。自分自身を深く理解することは、将来の職業観や生涯大切となる自身の価値観を確立するきっかけに、もつながっていくことでしょう。

グローバル社会での活躍を目指すインターナショナルクラス

サレジアン世田谷_インターナショナル推進部部長の上田かおり先生
インターナショナル推進部部長の上田かおり先生

 インターナショナルクラスでは、「グローバル社会で活躍できる人」の育成を目指し、生徒は英語到達度に応じて「スタンダード」と「アドバンスト」の2つに分かれて授業を受けます。

・スタンダード...英語力習得へのモチベーションが高い生徒であれば、入学時の英語力は問わない。
・アドバンスト...帰国生やインターナショナルスクール出身で、入学時の英語力がCEFR(※1) B1、英検2級、IELTS(※2)4.0-5.5以上。

※1 CEFR...ヨーロッパ言語共通参照枠。ヨーロッパで学習者の外国語の習得状況を示すガイドライン。
※2 IELTS...英語圏に留学や就労する際に必要な英語力を測定するイギリス発祥の英語試験。

 外国人教員であるインターナショナルティーチャーが担任を務めるホームルームでは、スタンダードとアドバンスト混合で指導を受け、授業ではスタンダードが英語1科を、アドバンストは英語・数学・理科・社会科の4科をオールイングリッシュで学びます。

サレジアン世田谷_英語レベルに応じた指導が受けられるインターナショナルクラス
英語レベルに応じた指導が受けられるインターナショナルクラス

  英語の授業では、スタンダードとアドバンストの生徒が3つの英語到達レベルに分かれます。すべてのクラスはオールイングリッシュで授業が行われます。

・スタンダード...日本人教員がサポートとして授業に入り、英語の基礎をしっかりと伸ばします。
・インターミディエイト...英語の基礎ができた生徒がアドバンストへステップアップできるよう、英語による思考力を身につけていきます。
・アドバンスト...英語圏の現地校と同じレベルの授業を行います。アカデミックな語彙力と思考力が必要となります。

 スタンダードレベルの授業には日本人教員がサポートとして参加しますが、「日本語でサポートする機会はほとんどなく、みんな一生懸命に授業を受けている」とインターナショナル推進部部長の上田かおり先生は語ります。

「中1から英文法を学びますが、その時も『名詞』『動詞』といった日本語の文法用語は使いません。日本語で英文法の用語を覚えると、英語でものを考える思考力がストップしてしまいますから、名詞の説明も『noun』という英単語を用いて授業します」(上田先生)

 在籍するレベルは、定期テストや学期の変わり目に、授業の様子なども加味して見直します。今年度は、スタンダードとアドバンストで英語の授業をスタート。1カ月半後の中間テスト終了後には、スタンダードからインターミディエイトへステップアップする生徒が多数出ました。

「ステップアップする生徒がいる一方、アドバンストで授業を受けていた生徒が、インターミディエイトにステップダウンするパターンもあります」(上田先生)

 生徒たちはステップアップに意欲的です。上田先生はスタンダードに在籍する生徒から「テストは高得点だったのに、なぜインターミディエイトに上がれないのか」と質問を受けたそう。

「テストの点数だけでなく、授業中の発言や姿勢も判断項目の一つです。そう伝えると、その生徒は俄然やる気になって授業中の発言を増やし、2学期からはインターミディエイトにステップアップすることになりました」(上田先生)

 やる気みなぎるインターナショナルクラスの生徒たち。中2、中3と進学するにつれ、スタンダードの英語授業に在籍する生徒は少なくなる見込みです。

バディシステムで多様な価値観を身につける

 スタンダードとアドバンストの生徒について、上田先生は「2つのグループはバディシステムで助け合う」と語ります。

「入学した生徒は、スタンダードとアドバンストでペアあるいはトリオのバディを作り、互いに助け合います。スタンダードの生徒は英語でわからない部分を、アドバンストの生徒は、国語や家庭科などの日本語でわからない部分を尋ね合っています」(上田先生)

 助け合いは言語だけに留まりません。日本の小学校から入学した生徒は日本の文化的な側面を説明し、帰国生はこれまで育ってきた国や地域の多様な価値観を伝える場面が見られるそう。バディシステムは、協調性や相手に貢献する心を育むきっかけにもつながっているのです。

 加えて、上田先生は「インターナショナルクラスの生徒たちは、ボーダーレスな考え方を身につけている子が多い」と語ります。

「インターナショナルクラスの生徒は帰国生が約半数で、異なるバックグラウンドを持っている子もいます。同じ単語を共有しても、イメージする内容は違うことも。教員である私たちが、まずは自分のフィルターを手放すことを心がけています」(上田先生)

 生徒たちは友人として長い時間をかけて語り合う中で、互いの文化を尊重しながら生活を送り、グローバル社会で役立つ多様性を身につけていきます。

英語で思考力を鍛える探究プログラムSAP

 オールイングリッシュで行う探究プログラム「サレジアン・アカデミック・プログラム(SAP)」も、インターナショナルクラスの特徴の一つ。本科のゼミに当たる時間で、インターナショナルティーチャー主導のもと英語で思考を深めます。

サレジアン世田谷_インターナショナルクラスの約半数が帰国生
インターナショナルクラスの約半数が帰国生

 中1ではグループディスカッションや情報の収集・分析を学び、中2ではパネルディスカッションや研究、中3ではディベートやスピーチ、校内模擬国連を実施。取り組むテーマは中1で文化学、中2は環境問題、中3は社会問題と、少しずつ視野を広げていきます。

「英語で思考し、発言するのはスタンダードの生徒にとってかなりハードルが高いもの。中1の1学期ではまず言語に捉われず、しっかりと調べて思考することを大切にし、2学期以降に段階的にスタンダードとアドバンストの生徒が混合クラスとなり、英語で取り組む予定です」(上田先生)

 9月の学園祭では、4人グループで探究した各国の伝統文化について英語で発表しました。

「1つの国の文化をローカル、ナショナル、グローバルの3つの視点でリサーチして発表します。切り口によって文化の見え方が異なることを学び、多様な価値観を理解するのが狙いです」(上田先生)

 同校では世界市民力を身につけることを教育目標に据えています。そのためには英語が話せるだけでは足りません。

「多様性を理解し、相手のバックグラウンドも受け入れられた上で話ができる人を育てたいと思っています」(上田先生)

 同授業では、世界130カ国にあるサレジアンのネットワークを活かし、兄弟校と国際交流も行います。

「オーストラリア、アメリカ、フィリピンにある兄弟校とオンライン対話やビデオレター、手紙交換を始める予定です。同世代の若者と同じテーマで交流する経験は、世界市民力を身につける上で大きく役立つと思います」(上田先生)

 特にオーストラリアの兄弟校は第2外国語として日本語を学ぶ生徒がいるため、双方にとって良い刺激を生む効果が期待されています。

 また、夏休みには希望者制のインテンシブ講座を5日間開講。2023年はスタンダードとインターミディエイトはスピーチをテーマに、アドバンストはドラマをテーマに行いました。アドバンストではさらに理科と数学も開講しています。

「授業だけでは扱いきれない内容を講座で取り上げることで、生徒が新しいことに挑戦する機会を作っています」(上田先生)

 自分の興味のある分野を定め、深く学ぶことができるサレジアン国際学園世田谷。多様性のある環境のもと、未来に向けて研鑽を積む生徒たちが集っています。

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