受験生マイページ ログイン

学校特集

聖学院中学校・高等学校2023

「ICEモデル」による学びで「Only One」を磨く
すべての活動が教育理念の「Only One for Others」に向かう、聖学院の学びとは?

掲載日:2023年10月1日(日)

キリスト教精神に基づいた「オンリーワン教育」、そして「探究型授業」「STEAM教育」「グローバル教育」を柱に、それぞれの「Only One」を見出し伸ばして「for Others」の志を育み、果敢にチャレンジするマインドセットを醸成する聖学院。今回は「ICEモデル」のもとに実践される「探究型授業」と「グローバル教育」に焦点を当ててご紹介します。英語科主任の伊藤大輔先生と、広報部長の早川太脩先生に伺いました。

「ICE(アイス)モデル」は、生徒の顔を見ながら評価する学習システム

 聖学院の教育コンセプトは「Student(教えられる存在)からLearner(主体的に学ぶ存在)へ」。
 10年前にブロックを使って自分の考えを表現する「ものづくり思考力入試」を設置するなど、他に先駆けて「思考力入試」をスタートさせた同校は、独自の探究型授業を実践しています。「Only One」を見出し、「for Others 」の志を涵養することで、「ものづくり(問題の解決策の創造)」と「ことづくり(新たな価値の創造)」ができる青年を育てるためです。そして、同校ではその実現に向けて学びの設計図「ICEモデル」を採用しています。これは、カナダのヤング博士が提唱する「問いに重きを置く」学習・評価法のこと。

■「ICEモデル」とは?

「I」...... Ideas(基礎的な知識の定着)→問いの例:何か?
「C」......Connections(知識と知識をつないで活用)→問いの例:なぜか?
「E」......Extensions(価値づくり・課題の解決)→問いの例:何をするのか?


 つまり、「問い」によって学びの枠組みを作ることで、生徒が自ら学び進もうとする道筋を立てるのです。
 各教科とも単元ごとに「ICE」それぞれに基づいた「問いのストーリー」を策定し、単元の学習ゴールを「他者や世界に貢献するための価値づくりや課題解決」としていますが、その課題解決に向けた知識や知識の活用を、先生方は授業の中で「問い」として投げかけていきます。
 このように、同校では全教科で主体的かつ探究的な学びが展開されているのです。

聖学院_英語科主任の伊藤大輔先生
英語科主任の伊藤大輔先生

伊藤先生:「ICEモデルは、誰でも、いつでも、どこにでも持ち運べるシラバスといえます。またペーパーテストでの評価とは異なり、生徒の顔を見ないと評価できないものでもあります。教科によって、または学年によっても、ICEのどこに重きを置くかは変わってきますし、『I→C→E』という順番通りに行うだけでなく、学び進むうちに戻ることもあれば、行わないものが出てくる場合もあります。やり方については各教科で考えますが、英語科では、ICEをわかりやすい言葉で改めて言語化するべきだと考え、以下のように定義しました」

■英語科の「ICEモデル」とは?

「I」...... Ideas(土台)→教科書に出ている単語や文法を理解する
「C」......Connections(既知)→知識として持っている事柄を英語で表現する
「E」......Extensions(未知)→知らなかった事柄に、自分なりの解釈や新たな価値観を加えて英語で表現する

インプットとアウトプットの両方を強化する「英語教育」

 では早速、「ICEモデル」による授業はどのように展開されるのか、具体例をご紹介しましょう。

■中3の「英語」での授業例=「オリジナル・アイスクリームを作ろう」
 →「ICE」のE(Extensions)

 使用する教科書『NEW CROWN』には、レッスンとレッスンの合間に表題のような課題が出てくるページがあります。そこを飛ばして先のレッスンに進むケースが多いなか、同校はこのページを活用。授業の内容としては、「ふだん日本語で行っている探究型学習を英語で行う」イメージです。

伊藤先生:「どうすればオリジナル・アイスクリームを日本で流行らせることができるか。それを考えるために、日本における条件やポイントなどをいろいろ調べ、『こうすれば、日本で売れると思う』と、自分なりに価値をつけていくのです。これは、『ICE』の『E』にあたります。生徒たちは自分で撮った動画を見せながら約3分間英語で発表しますが、それを我々がルーブリックを使って評価し、点数化していきます」

 ちなみに、ルーブリックによる採点は生徒に開示しているため、生徒は自分の現在地と進むべき方向が理解しやすいのだそうです。


■高2の「コミュニケーション英語」での授業例=「リテリング」
 →「ICE」のC(Connections)

聖学院_高校の英語の授業の様子。4技能だけでなく、他者を受容する心と、世界を俯瞰する視野をも養う
高校の英語の授業の様子。4技能だけでなく、他者を受容する心と、世界を俯瞰する視野をも養う

「リテリング」とは、教科書の本文などの内容を他者に伝える活動のこと。
 ここではペアを組み、それぞれが教科書の文章を段落ごとに読みます。そして教科書を閉じ、お互いにその段落の要旨について英語で質疑応答し合うのです。

伊藤先生:「その段落の内容をざっと理解したうえで、自分の言葉に置き換える。自分の英語力と、新しく出てきた文章の内容を合わせて表現するのです。これは、『ICE』の『C』にあたります。この授業は我々も研究中ではありますが、大学受験が迫る時期、生徒にこのような授業がどれだけ価値あるものと思わせられるか、それが教員の腕の見せ所でもあります(笑)」

 この「コミュニケーション英語」の授業はオールイングリッシュで行われますが、大学受験のためのポイントなどについては日本語で伝えているそうです。


 海外の政治家のSNSやニュース記事なども教材として使うなど、同校は英語教育の目的を「社会と繋がるツールを獲得すること」としています。

伊藤先生:「中学ではスピーチコンテストも実施していますが、英語が使えるか、英語を使う機会がどれだけあるかが重要ですので、下手でもいいのです。文法の間違いを恐れるよりも、相手に伝えるためにとにかく喋る。授業では、そのような雰囲づくりも大切にしています」

聖学院_広報部長の早川太脩先生
広報部長の早川太脩先生

早川先生:「とくに英語科ではアウトプットを中心とした授業を行っていますので、高校生になると活発にやり取りしていますね。中1には男の子らしい元気さがありますが、中2くらいからは思春期が始まるので口数が少なくなります(笑)。でも、高校生になると抵抗なく話していますね」

伊藤先生:「テストでも単語の間違いや文法の間違いはほぼ減点しません。ICEモデルは『◯◯ができる・◯◯ができない』というto Doリストではないからです。指定の語数で、論理的に、頑張って書こうとするその姿勢を評価したいと思っています」

早川先生:「以前、中3の定期試験の試験監督をしたのですが、英語の問題を見てステキだなと思いました。前半には空欄補充や並べ替えなどもあるのですが、後半に『英語が世界で一番話されている言語だということを英語で伝えなさい』という問題があったのです。これは、答えが一つではありません。実際、生徒たちは『世界中の人々』を主語にしたり、『英語』を主語にしたりと、さまざまに書いていました。我々の世代では、英語の試験の解答は一つというイメージですが、表現の仕方に自由度を持たせていることは素晴らしいなと。ICEモデルを使う授業で作った素地を、きちんと評価する形で試験設計がなされているのです」

伊藤先生:「考えてみれば、我々が今まで改良を重ねながら実践してきた探究的な学びは、ICEモデルの考え方と一致していたのかもしれません」

伝統でもある「探究×グローバル」教育は深化し続けている

 同校のグローバル行事には語学系と探究系がありますが、「前者が『I』、後者が『C・E』と言えると思います」と伊藤先生。グローバル行事に探究型プログラムが豊富なことも同校の特徴ですが、これもまた、すべて「Only One for Others」を体現するためです。ここでは、抜粋してご紹介します。

■海外・国内研修

「タイ研修旅行」...他者のために、どうアクションを起こせるか

 開始から34年。タイ北部の山岳少数民族との交流と、現地でのボランティア活動を主な目的とした独自のプログラムです。毎年約30名の有志が「メーコック財団」を訪れ、親と暮らすことのできない子どもたちと寝食を共にするうち、子どもたちの将来に影を落とす社会的背景に目を向けていきます。これは、力の弱い人のために奉仕する大人たちに出会う旅でもあります。


聖学院_タイにて。護岸工事のボランティア活動での1コマ
タイにて。護岸工事のボランティア活動での1コマ

早川先生:「事前学習では、国籍がなかったり親がいない子どもたちのことを『かわいそう』『自分たちは恵まれているんだから、なんとかしてあげなくちゃ』と、言ってみれば上から目線になりがちなのですが、現地に行くと、その子どもたちはとても楽しそうなのです。それを見て、『自分はおこがましかったかな』という気持ちにさせられる。そこで、対等な目線で『じゃあ、この子たちのために自分は何ができるか』と真摯に考え始めるのですが、そのことは文化や環境への理解などにも繋がっていきます」

「フィリピン研修」...他国の社会課題を自分事と捉え、解決策を創出する

 24年3月からスタート予定。世界有数の英会話能力を有するフィリピンで、「英語+プロジェクト学習」の2つにフォーカスするプログラムです。フィールドワークを通して貧困やゴミ山などの環境問題のほか、フィリピンが抱える社会課題をディスカッションし、解決策の創出に挑みます。


「国内MoG(Mission on the Ground)」...企業に対して、どうアクションを起こせるか

聖学院_京都MoGで、現地の大学生たちとコラボレーション
京都MoGで、現地の大学生たちとコラボレーション

 海外実践型・問題解決プログラムとして実施していた「カンボジアMoG」が、治安情勢などにより難しくなったため、それに代わって国内で実施する探究型研修です。これもまた、次代を拓くためのグローバル教育です。昨年は金沢の酒蔵を訪ねて甘酒の認知度を上げる課題に取り組みましたが、今年は、京都で規格外野菜の再利用プロジェクトに挑戦しました。


■探究型宿泊行事

中3「糸魚川農村体験学習」...農村での原体験を通して「食」と「地域」を考える

 今年で38年目を迎える、植林体験や田植えなど農業体験に重きを置いたプロジェクト。食の生産現場の方々にお世話になり、美味しい山海の恵みをいただくことは心身を大きく成長させます。


聖学院_糸魚川では農業を営む方々と交流し、田植えも体験!
糸魚川では農業を営む方々と交流し、田植えも体験!

早川先生:「中3の担任をしていた時、糸魚川の事前学習として『あなたの幸せって何?』と生徒に問いかけ、レゴで作品を作ってもらいました。実は、私の意図した裏テーマは『生徒の幸せの定義を崩して再定義する』でしたが(笑)。それを言語化して共有したところ、一番多かったのが『Wi-Fiがあること』でした。『コンビニがあること』『美味しいご飯が食べられること』などもありましたが、『家族』といった言葉が出てくるかと思いきや、Wi-Fiだったのです。その後で、『糸魚川ってこういうところだよ。君たちの幸せがWi-Fiにあるなら、糸魚川の方たちは幸せじゃないの? じゃあ、現地の幸せを探しに行こう』と」

高1「ソーシャルデザインキャンプ」...持続可能な社会の構築を目指す

 神奈川県の真鶴町や静岡県沼津市を中心にフィールドワークを行い、「何が起きているのか? その解決策は?」と、地域が抱える社会課題についてグループワークを通して考えます。課題解決に取り組む企業や団体の方々の現場も訪問し、現状と理想を繋ぐ解決策を提案します。


高2「沖縄平和学習の旅」...沖縄から「世界」と「平和」を考える

 事前学習で沖縄が抱える課題の概要を理解し、現地ではグループ活動を実施。各分野の第一人者を訪ねて、課題の現状を肌で感じながら「平和な世界を構築するために、自分は何ができるのか?」と、平和を作り出す可能性を体験的に考えます。


聖学院_沖縄で、生徒たちは世界と平和について考える
沖縄で、生徒たちは世界と平和について考える

伊藤先生:「ある講演会でお話しくださった方が、『聖学院の卒業生である私の息子が親になり、孫に平和について熱く語っていた』とおっしゃっていました。我々は種を撒き続けていますが、生徒の中でその種がいつ発芽するかはわかりませんし、発芽して思いに火がついても、その火が消えてしまうこともあります。でも、それは必ず次に繋がっていきますので、我々は種を撒き続けなければと思っています」

■高校の「GIC」は、聖学院の次世代教育の象徴

聖学院_3Dプリンターやレーザーカッターが揃う「ファブラボ」は、「ものづくり」に取り組む生徒たちに人気の場所
3Dプリンターやレーザーカッターが揃う「ファブラボ」は、「ものづくり」に取り組む生徒たちに人気の場所

 今回ご紹介できなかった「STEAM教育」ですが、STEAM教育に特化したクラスとして、高校に「GIC(Global Innovation Class)」が設置されています。「ものづくり・ことづくりを通して世界に貢献できる人材を育てる」というコンセプトの下、革新的な学びを実践していますが、その学びは中学や高校の他クラスにも敷衍し、STEAM分野・グローバル分野のワークショップを校内外で行うGIL(Global Innovation Lab)も展開。GICは、聖学院の次世代教育の象徴的な存在という位置づけでもあります。

■「GIC」で展開される独自科目

● Liberal Arts(週2時間)......バイアスを排除してフラットに情報を捉え、論理的・客観的に考える力を育成するため、書籍やニュース記事を題材に、ディスカッションやディベートを行い、ロジカルシンキングやクリティカルシンキング、ビジョンメイキングの力を獲得していきます。
● Immersion(週3時間)......公共(社会科)や家庭科などの内容を中心にSDGsを英語で学び、英語でプレゼンテーションやディスカッションを実施。思考戦略やリーダーシップなど、世界課題を解決するために重要なスキルとマインドを「英語で獲得する」プログラムです。
● STEAM(週6時間)......「サイエンス」「デザイン」を軸に、ICTスキルを活用しながら「ものづくり」「ことづくり」に必要なツールを学び、論理と感性の両面から創造力を育てます。授業はすべてPBL型で行われ、課題解決・価値創造のための問いからスタート。設定したテーマに基づき、知識や思考スキルを習得していく構成になります。
● PROJECT(週2〜4時間)......ゼミ形式で授業を行い、国際系・社会系・環境系などのテーマから任意に一つ選んで課題を設定し、学内外で連携しながら協働・研究活動を行います。高3では探究論文を完成させ、これがGICでの学びの集大成となります。

※GICの詳細についてはコチラ→https://www.seigakuin.ed.jp/global/senior/
※GILの詳細についてはコチラ→https://www.seigakuin.ed.jp/quest_pbl/lego/

聖学院_6月に開催された中学の体育祭。4年ぶりに全学年がそろい、5色のチームに分かれて全12種目が繰り広げられた
6月に開催された中学の体育祭。4年ぶりに全学年がそろい、5色のチームに分かれて全12種目が繰り広げられた

「聖学院には、どんなことにもチャレンジできる環境がある。勉強以外の何かに興味を示している人を認め合い、複眼的に評価してくれる仲間や先生方がいる学校だと、今、改めて思う」。卒業生の言葉です。
 撒かれた種が多種多様だから、好きなことに夢中になれる、好きなことがまだなくても夢中になれるものが見つかる。それが聖学院です。

「Only One for Others」を全員が体現できるように。同校のすべての教育活動は、そこに向かっています。入り口である各種の「思考力入試」が示唆するように、同校は「ものづくり(問題の解決策の創造)」と「ことづくり(新たな価値の創造)」を教育の価値とし、社会に、世界に貢献できる人を育てているのです。

 ところで、早川先生は理科(化学)の先生です。話は冒頭に戻りますが、せっかくなので、最後に理科の「ICEモデル」による授業例もご紹介しておきましょう。

■中1理科の授業例「野菜の観察」→「ICE」のC(Connections)

 学習指導要領の改訂によって、これまで中1で行われていた「植物の分類」の単元が中2に移行したことから、昨年はその前段階として中1で「野菜の観察」を行いました。「ふだん食べている野菜は、植物のパーツとしてどの部分なのか」がテーマです。

早川先生:「トーク&チョークの授業ですと素直に寝る生徒もいますが(笑)、実物を見たり触ったりすると興味がわいてきますので、そこを最大限に活かして授業を行っています。野菜という自分が知っているものと、中学受験の際に習った『植物の分類』のところを実物ベースで繋げたわけです」

 冒頭のタイトル部の写真が、この時の授業の様子です(ごぼうの断面を拡大して撮影しているところ)。
 ここで、問題です。玉ねぎは、根? 茎? 葉っぱ? 植物のどの部分でしょうか?

早川先生:「丸ごとの野菜や輪切りにしたものをたくさん用意して、iPad で撮影しながら考察したのですが、『ブロッコリーは花です。なぜなら、○○だからです』と、生徒たちは見た目での根拠などを示しながら発表しました。理科は『C』や『E』を刺激して、『I』を定着しやすくすることができる教科かもしれませんね」

 ちなみに、私たちが食べている玉ねぎは「葉っぱ」です。

資料請求はこちらから 学校ホームページはこちら 学校データベースはこちら