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学校特集

麹町学園女子中学校・高等学校2023

主体性を軸に探究心を育てる「アクティブサイエンス」が本格始動
2024年4月、中2に「サイエンス探究クラス」を新設!

掲載日:2023年10月1日(日)

1905(明治35)年創立以来の伝統的な女子教育の下、「豊かな人生を自らデザインできる自立した女性」の育成を掲げる麴町学園女子。同校の教育の特色は、「みらい科」「アクティブイングリッシュ」「思考型授業」「グローバルプログラム」、そしてみらいを科学する心を育てる「アクティブサイエンス」の5つです。2024年4月から中学2年次に「サイエンス探究クラス」を設置し、さらに積極的にサイエンス教育に取り組んでいきます。新クラス設置の狙いと背景について、理科教員でもある校長の堀口千秋先生に伺いました。

理科好きな生徒を増やし、文系・理系どちらも選べる土台を作る

■みらいを科学する心を育てる「アクティブサイエンス」とは?

「聡明・端正」を建学の精神に掲げ、自らの力で「自分のみらい」をデザインできる女性を育成する麴町学園女子。さまざまな教育改革に取り組むなか、2021年より「アクティブサイエンス」の取り組みをスタートさせました。
「アクティブサイエンス」とは、理科の授業で行う取り組みで、さまざまな実験や観察を繰り返しながらプロセスを考える能力、すなわち「論理的思考力・批判的思考力」を養い、問題解決に向けて「主体的に取り組む力」「自主的に思考する力」を身につけていくことを狙いとしています。
 そこで養う資質・能力、そして効果は以下になります。

①実験・観察を繰り返す→プロセスを考える能力(論理的思考力・批判的思考力)を養う
②生徒の活動中心の授業を展開→問題解決に向けて「主体的に取り組む力」「自主的に思考する能力」を身につける
③グループ学習を行い、生徒間で積極的に話し合う→「言語能力」「コミュニケーション能力」を育成する
④身近な素材や教材を扱う→理科に対する苦手意識をなくし、学習意欲を高める


 もともと創立者の大築佛郎は地質学者であり、「科学の目を開くことをはじめ、広い知識や教養を身につけた女性を育てる」ことを創立理念としました。同校には広々とした3つの理科室があり、生物、化学、物理など分野によって使い分け、一人1台の顕微鏡など、すでに恵まれた環境が整っています。そこに、理科教員でもある堀口校長が着任したことによって、「アクティブサイエンス」の本格稼働に拍車がかかったのです。
「アクティブサイエンス」に取り組む中学生の理科は週4時間。実際に手や体を動かしつつ思考を深める「実験」授業を連続2時間、残り半分を座学中心で知識を学ぶ時間とし、生徒の「もっと知りたい」「この先を考えたい」という気持ちを刺激し、探究へと向かう姿勢を後押ししながら、みらいを科学する心を育てています。

■校長自ら授業を受け持ち、身近なサイエンス教育を実践

麹町女子_校長の堀口千秋先生
校長の堀口千秋先生

 長年、理科教員としてサイエンス教育に携わってきた堀口校長は、入学前の中1生に「不思議だな、知りたいなと思うことを3つ挙げてください」という「サイエンスアンケート」を実施。回収されたアンケートには、「人の血液型が違うのはなぜ? 」「しゃっくりはなぜ出るの?」「眉毛は何のためにあるの?」「なぜ空気は透明なの?」「なぜ人は死ぬの?」など、生徒たちの素朴な疑問が並んでいました。
 そこで、堀口校長はアンケート回答の中からいくつかを選んでテーマとし、1カ月に1〜2回ずつ、中1の全クラスで理科の授業を行ったのです。

堀口校長:「なぜ理科が嫌いになる生徒がいるかというと、知識を習い覚えさせられ、それが試験に出るというように、意味をきちんと理解しないまま終わってしまうことが多いからです。理科の一番の魅力は実験ですが、『なぜ?』と自分で問いを立て、自分で考え、解くからおもしろくなるのです。ですから、授業では小学生の時に習ったミドリムシが宇宙食やクッキーになっている話であるとか、肌に良いとされるコラーゲンはタンパク質でできているため、食べてもほとんどは消化して排泄されるとか、女子がおもしろいと思ってくれるような理科のタネを探しながら話をしています」

麹町女子_中1に理科の授業を行う堀口校長
中1に理科の授業を行う堀口校長
麹町女子_講義だけではなく、グループワークも活発に!
講義だけではなく、グループワークも活発に!

 堀口校長が生徒に伝えようとしているのは、理科本来の学びの「楽しさ」です。日常生活の中の身近な例を挙げながら、生徒たちの「不思議!」「もっと知りたい!」という意欲を引き出し、それをバネに主体的に取り組む姿勢を醸成したいと考えているのです。
 1学期終了後、意欲発揚のきっかけの一つとして、堀口校長はアンケートの回答と試験の成績が良かった生徒を各クラスから1人ずつ選んで、100円ショップで購入したスマホ用外付けレンズをプレゼントしました。虫眼鏡のように被写体を拡大して撮影できるので、自由研究の観察にも役立ててほしいと期待しています。

堀口校長:「中1の最初の授業で、私が普段からいろいろな果物を食べた後にその種を蒔いて育てているという話をしたところ、その後の授業で、ある生徒は目を輝かせながら『先生、イチゴを食べた後に黒いツブツブの種を蒔いてみたら、芽が出たんです』と言ってきました。もちろん、その生徒を褒めました。理科のタネは、どこにでもあるのです」

■中2で「サイエンス探究クラス」を設置

 中学は「グローバルコース(英語選抜コース)」と「スタンダードコース(みらい探究コース)」のコース制ですが、今年1年間の「アクティブサイエンス」の取り組みを踏まえ、2024年4月より理科に興味関心を持った生徒を中心に、中2進級次に「サイエンス探究クラス」(1クラス/最大35人)を編成します。事前アンケートをもとに原則希望制とし、12月の期末試験終了後に決定。定員を超える希望者がいた場合は、選抜になる可能性もあります。
 カリキュラムそのものは他2コースの内容と同じですが、「サイエンス探究クラス」では仮説を立てて実験を計画するなど、より探究的なアプローチを増やしていきます。今年1学期には月に2回程度だった堀口校長の授業も、「サイエンス探究クラス」ではさらに増やしていく予定です。
 同クラスを編成した狙いについて、堀口校長は次のように話します。

堀口校長:「理系の生徒を育てるというより、中学の段階から『理科好き』の生徒を増やしたいのです。一番の根っこにあるのは、サイエンス分野で深い研究を行うことで、高校での文理選択時に文系・理系どちらであっても、自分の希望を叶えられるだけの基礎学力を持った生徒を増やしたいということです。社会に出れば、文系でもビックデータを使ったりDX化に対応しなくてはいけない場面もあるでしょうし、さらに今後は、理系女子に対する需要は確実に増えてきますから」

 中1で堀口校長が授業をしていることを知ったある上級生が、「先生! 中1だけ授業するなんてズルイ! 私たちにも教えてください」と声をかけてきたそうです。そんなふうに、生徒の間で少しずつ理科への関心が高まっていることを堀口校長は感じていると言います。

麹町女子_堀口校長と生徒たちが丹精を込める3階のルーフガーデン
堀口校長と生徒たちが丹精を込める3階のルーフガーデン

堀口校長:「理科に興味を持っている生徒は、実はいっぱいいます。でも、理科好きな子って、周りと比べて自分は変わっていると思っているのかもしれません。そういう子も掘り起こしてあげないと。現在、高3の進路希望は文系が80〜85%で理系は少数派ですが、これが増えてくれればと思っています」

「サイエンスアンケート」で答えたような「これはなぜ?」「どうしてそうなるの?」という素朴な疑問を深掘りしていくことは、探究学習そのものです。同校が力を入れている「探究」やオリジナルのキャリア教育である「みらい科」の学びと共に、「アクティブサイエンス」は大学入試で主流になりつつある総合選抜型入試にも役立つと堀口校長は考えています。

麹町女子_トマトの横に、小さなスイカも。スイカのネットは、落下した時に衝撃を和らげるため
トマトの横に、小さなスイカも。スイカのネットは、落下した時に衝撃を和らげるため

 校長室には、植物の入ったガラス瓶や小さな器が並んでいました。どれも、観葉植物の切れ端や果物の種を水耕栽培しているものです。水に浸けたビワの種から根が出て、緑の葉がヒョロヒョロと育っています。なかには、子どもの身長ぐらいまでに育った植物も。
 また、同校の3階には、「ハーブガーデン」「ベジタブルガーデン」「フラワーガーデン」があります。堀口校長自ら肥料を運び込み、生徒たちも水やりなどを手伝いながら丹精を込めるルーフガーデンです。ベジタブルガーデンの一角では、小さな小玉スイカが実をつけ、プチトマトが育っていました。
 堀口校長自らが実践して「理科のタネ」を撒き、生徒たちの「サイエンス探究心」を喚起しています。

■「元気で、やる気のある」理系女子を求める大学が増加中

「新学習指導要領」の改訂により小学校でプログラミング教育が必修化され、「理数教育の充実」が柱の一つに掲げられたことにより、2024年度の大学入試でも理系女子を増やす傾向が顕著です。
 まず、東京理科大学が理工系分野に強い関心を持つ女子志願者を対象とした総合型選抜(女子)を導入。お茶の水女子大学でも、2024年度からデータサイエンスの基盤の上に工学の知識や技術を文系の知と協働させる学問として「共創工学部」が新設されます。また、芝浦工業大学が柔軟な分野横断教育に転換するため、2024年度4月から工学部を学科制から首都圏初の「課程制」へ改組すると発表しました。

麹町女子_「アクティブサイエンス」での1コマ。眼と手を動かしてで実験中
「アクティブサイエンス」での1コマ。眼と手を動かしてで実験中

 SDGsや多様性を内包する社会を実現するために、また地球温暖化への取り組みなど正解のない地球規模の課題が押し寄せる今、女性ならではの視点が不可欠とする時代の要請に応えた結果でしょう。それによって、大学入試における理系女子の増員は今後も加速すると予想されています。社会が、「元気で、やる気を持っている」理系女子を求めているのです。

 先述の通り、SNSの発達やIT技術の進化によって、私たちの社会は膨大な情報量を持ったビッグデータに囲まれています。ビッグデータを活用しながら新たな発想でビジネスチャンスを作り出すこれからの社会では、文系・理系を問わず、ビッグデータを扱うスキルは不可欠となるに違いありません。

堀口校長:「『サイエンス探究クラス』に関する保護者向けの説明会でも、今後は文系志望でも理科や数学の基礎的な知識は必須になると話しています。経済や経営に進むような生徒たちでも、数学の基礎的な力やデータを読む力、それらを基にした自分の考えを発信する力が求められるようになるでしょう。だからこそ、中学のスタート段階から、理科好きな生徒を増やしていきたいのです」

■その他の教育の特色

 今回ご紹介しきれなかった同校の大きな特色について、2例のみですがお伝えしておきましょう。

●「アクティブイングリッシュ」で中学の英検準2級以上 が50%以上に
麹町女子_英語を体に染み込ませる「アクティブイングリッシュ」は、本当にアクティブ!
英語を体に染み込ませる「アクティブイングリッシュ」は、本当にアクティブ!

「アクティブサイエンス」に先駆けて取り組んできた「アクティブイングリッシュ」は、「聞く・話す・読む・書く」の4技能を確実に身につけ、「使える英語」を体得する同校オリジナルの活動型英語学習法です。音声付きの教材のみを使用して大きな声で英語を暗誦しながら、英語の抑揚やリズム感を体に染み込ませていく安河内メソッドは、もはや同校の代名詞。「英語を話す」楽しさを実感する生徒たちは、「使える英語」を体得し、「伝える英語」に挑戦しています。その結果、中3の英検準2級以上取得者が50%以上、英検3級以上は70%に(2023年3月現在)。
 高2の海外修学旅行や希望者対象の留学など、「アクティブイングリッシュ」で身につけた英語力をアウトプットする機会も充実。さまざまなグローバルプログラムで、異文化に触れてグローバルな視点と協働する力を養うなか、海外大学に進学する生徒も年々増加しています。


●手厚い進路指導で「進路の保証」

「アクティブイングリッシュ」「アクティブサイエンス」などの着実な教育改革によって、同校では「進路の保証」を大きな教育目標の一つとしています。
 高校には、英検2級以上など一定の推薦基準を満たせば、原則全員が東洋大学の13学部36学科のいずれかに進学することができる「東洋大学グローバルコース」を設けて「進路の保証」をする一方で、生徒の学習意欲を高め、希望の進路を実現するために、複数の大学と高大連携を締結。高大連携の大学訪問や出張講義など、大学を具体的に理解する機会も積極的に設けています。毎年80校以上の大学が参加するオリジナルの進学フェアを行ったり、大学合格を意識した講習・講座も豊富に用意されています。
【高大連携締結校一覧】
東洋大学[経営学部を除く]/成城大学[経済学部]/共立女子大学[各学部・短期大学]/女子栄養大学[各学科・短期大学]/東京女子大学[現代教養学部国際英語学科(国際英語専攻)]/日本女子大学[国際文化学部国際文化学科・家政学部被服学科&児童学科・文学部英文学科・理学部数物情報化学科&化学生命科学科]


 難関大学でも、今後は総合型選抜入試がますます増えていくと予想されています。同校でも、「アクティブサイエンス」で獲得した探究力を持って、総合型選抜入試に挑戦する生徒が増えていくことでしょう。

麹町女子_「不思議!」「おもしろい!」を実感した生徒たちの目は、キラキラに!
「不思議!」「おもしろい!」を実感した生徒たちの目は、キラキラに!

堀口校長:「今後は、いろいろなことに興味を持って、自分で調べながら、どういう大学でどういう学びをしたいのかを探すことが大切になってきます。世間には、まだまだ女子は文系が向いているという固定観念があるかもしれませんが、最近はいろいろな企業の研究職や商品開発の部署で、若い女性の活躍が目立つようになってきました。『アクティブサイエンス』を学び、本当に『理科が好きになった』『理系に行きたい』と言ってくれる生徒が一人でも多くなることが、今一番の夢ですね」

 そして、最後にもう一つ。
 堀口校長と中1生の話に戻りますが、入学前に春休みの宿題として「サイエンスアンケート」を出したのに続き、夏の自由研究も課しましたが、実験が難しければ観察でも可としました。

堀口校長:「観察なら、何でもいいとしました。自分の家で飼っているペットがどう1日を過ごしているのかを観察してもいいですし、お父さんとお母さんがケンカしたら、その原因は何かを探るためにご両親をじーっと観察してもいい(笑)。何であっても、継続してじっくりと観察することは、理科の第一歩になりますから」

 堀口校長は、生徒に「机上の理科」ではなく、「心が動く理科」のおもしろさや楽しさを知ってほしいと尽力しているのです。この改革は、同校の次のステージを暗示しているように思います。

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