学校特集
明星中学校・高等学校2023
掲載日:2023年12月1日(金)
今年、創立100周年を迎えた明星中学校・高等学校。「和の精神のもと、世界に貢献する人を育成する」という建学の精神を脈々と受け継ぎながら、長きにわたって進化と発展を続けてきました。歴史と伝統に裏打ちされた教育方針は変わらず重んじつつも、見つめる先は次の100年。新たな一歩を踏み出したいま、副校長・水野次郎先生と入学広報室室長・藤井泉浩先生に、同校が目指すこれからの教育や取り組みについてお話を伺いました。
「次世代ソーシャル・リーダー」とは
今年4月、明星中学校・高等学校の副校長に就任した水野次郎先生。これまで幼児向け教育雑誌の編集長、千葉県の県立高校の民間校長、島根県の私立中学高校の校長など、数々の要職に就いてこられました。その豊かなキャリア経験から、教育について多角的な視点をお持ちです。今後、同校が目指すべき教育については次のように話します。
水野先生:いまは変化が激しく、未来を見通せない時代です。でも生徒たちには、そんな時代を勇気と希望を持って生き抜き、社会で活躍する人間になってもらいたい。私は、そのような人間を『次世代ソーシャル・リーダー』と呼んでいます。持続可能な社会を守り、発展させるために行く先を示し、行動する人のことです。そして、単に自分がそういった人になるだけでなく、そういった人を育てられるような人のこと。生徒たちがそのような人に成長できるように、指導・教育を行っていきたいと考えています。
水野先生は、「次世代ソーシャル・リーダー」には下記の5つの素養が必要だと言います。
①学力と豊かな知性
②芸術的感性と教養
③使命感と正義の心
④あたたかな人間性
⑤養育者への孝行心
これらに加え、「対話を通して解決する力」がとても重要と話します。
水野先生:対話力は、コミュニケーション能力とも言い換えられます。人や企業、組織同士の協働、協創がますます求められるこれからの時代、対話力は欠かすことのできない重要なスキルです。ある調査では、企業が「選考にあたって特に重視した点」の第1位が16年連続で「コミュニケーション能力」でした。また、大学入試においても緩やかにではありますが、コミュニケーション能力が評価され始めています。社会全体が対話力を重視しているのは明らかで、これからもそれは広がっていくでしょう。
水野先生は生徒と対話を行うため、同校に来てから約半年の間に計5回ほどデジタルツールを使って生徒たちにアンケートを実施しました。生徒とのやり取りでは、一方的にならず、双方向コミュニケーションになるよう意識していると言います。
水野先生:アンケートを実施したのは、こちらが一方的に話すよりも、生徒たちにより自分ごととして感じてもらえるのでは、という考えからです。例えば、アンケート結果で生徒たちの自己肯定感が低いことがわかったとします。では、自己肯定感を上げるためにはどうすればいいのか。それを生徒たちにさまざまな情報やデータ、写真やイラストなども用いながら論理的にわかりやすく説明します。生徒たちからの質問に答えるときは、おすすめの本を紹介したり、自らの体験談を話したりすることもありますね。
豊富なキャリア経験に加え、キャリアコンサルタントの資格を持つ水野先生との対話は、幅広い視野と知見に基づくものであり、生徒たちの思考力や創造力を深めることに繋がっています。生徒たちは教科書から得る学びとはまた違った学びや気づきを得ていることでしょう。教員と生徒の垣根が低く、生徒が様々なことを質問したり、相談したりしやすい環境も同校の魅力のひとつです。
生徒の意思を尊重したクラス編成と放課後の過ごし方
充実したクラス編成で、自分に合った学びを続けていけることも同校の特色です。中学入学時には特別選抜クラスと総合クラスの2クラスでスタートしますが、中3時には英語に特化した英語クラスが加わり3クラスになります。高校2時には目指す大学ごとに4クラス、高3時には5クラスに分かれます。
水野先生:6年間の学校生活をいかに自分でデザインして有意義に過ごすか。これはとても大事なことです。本校では、学力に応じて生徒たちが選択していくことができます。「最難関国公立大を目指したい」、「実践的な英語力を身につけたい」、「勉強と部活を同じくらい両立させたい」など、それぞれ自分の学びのスタイルに合ったクラスを選ぶことができるのです。
充実しているのは、クラス編成だけではなく、部活動も然り。中学・高校では文化部・運動部・同好会を合わせて30種類以上もの部活動が行われていて、全国大会に出場する部も少なくないのだそうです。きっと生徒たちは自分の希望する部活動を見つけやすいことでしょう。ただ、部活動についても生徒の意思を重んじていると話します。
水野先生:生徒たちには、放課後の時間を自由に使ってもらいたいと考えています。だから、部活動に入ること自体を重視しているわけではありません。もちろん、部活動に打ち込むのもいいですが、習いごとや自分の興味関心のあることを楽しむのもいいでしょう。ただでさえ、今の子たちはやることがたくさんあって忙しいため、あえて放課後の時間を自由にする、つまり時間的余白を意図的に作ることで、何か物事をゆっくりと考えたり、新たな意欲が湧いてきたりすると思うのです。放課後の時間の使い方をこちらが「こうすべき」「こうあるべき」と押し付けないように気を付けています。
同校の教育目標は、「自分の未来をデザインし共創していける人の育成」。多様性が重視される社会ともリンクするような特色を持っています。生徒たちは自分らしい学び、時間の過ごし方を体験していくことができます。
歴史と伝統を感じる「凝念教育」と「探究学習」
教育・指導に対する姿勢やクラス編成や部活動に対する考え方からは、時代に合った現代的な印象が見受けられますが、長い歴史と伝統を重んじる一面もあります。
それがよく表れているのが、「凝念(ぎょうねん)」と「探究学習」です。
水野先生:「凝念」とは、心を一点に集中させる、精神統一を指します。生徒たちは「凝念!」の掛け声とともに姿勢正しく腰掛け、両手は下腹部に合わせて瞑目して臍下丹田(せいかたんでん)に力を入れるとともに、心を集中させるよう努力します。物事へ集中する習慣や心の成長につながるこの「凝念」の教えは、本校の創立以来受け継がれてきた伝統教育です。主に、道徳に代わる時間として行われています。
心の成長に繋がるこの凝念教育は、教育方針の中にもしっかりと掲げられています。もうひとつの「探究学習」について、入学広報室室長の藤井泉浩先生は次のように話します。
藤井先生:創設者の児玉九十先生が、「体験教育」として始めたのが最初です。児玉先生は、「吾人(私)の主張する体験教育は、頭脳の研磨に力を尽くすと同時に頭脳の動きそのものを吾々の全身に表現し実行する様に導く教育である。頭だけ出来ても実行に現れなければ目的の半分しか達せぬものと見るのである」とおっしゃったそうです。この思考と実践を繰り返していく教育は、100年前はまだ珍しいものだったと思います。
現在、「探究学習」は主体性や創造力といった非認知能力を身につけられる学習として様々な学校で実践されるようになりました。しかし、同校ではかなり早くからそれに着目し、100年にわたって途絶えることなく実践し続けてきました。そのため、その取り組みは先進的かつ厚みがあるものとなっています。
藤井先生:本校の探究学習は「SDGs」をテーマに実践しています。中1時からスタートし、高校でも続けていきます。単なる調べ活動・発表にとどまらず、社会や地域と積極的に繋がって協働していくケースが多いです。過去~現在の取り組み事例では、企業とのコラボによるマイボトル製作、地域創生事業への寄付、地元府中市との地域活性化に向けた活動などがあります。これらは、教員がそうするように先導するのではなく、生徒たちからの発案で自主的に行われていく場合がほとんどですね。
ほかには、高大連携による総合的な学びや課題解決型研修旅行なども実施。非認知能力を養うための教育プログラムや仕掛けをたくさん用意されているため、それらが相乗効果となってうまく作用し、生徒たちの自主性が育まれ、探究の精度を高めることやスキルアップに繋がっているといえそうです。
同校では、教科学力を「目に見える学力」、非認知能力を「目に見えない学力」とし、その2つの学力をしっかりと身につけられるようにバランス良く中高の年間指導計画を組んでいます。
今後の展望として、水野先生は教員の指導・育成にも力を入れていきたいと話します。日本の教育現場では、教員を志望する人材が減少傾向にあるため、危機感を抱いているのです。
水野先生:教育は、次代を担う子どもを育む希望とやりがいに満ちた無二の素晴らしい仕事です。だから教育人材を育てていくことにも積極的に取り組んでいきたいと考えています。今後はそのための準備や研究を重ねて、具体的な施策として形にしていきたいですね。
これまでの100年がそうであったように、今後も進化と発展を続けていくであろう明星中学校・高等学校。たくさんの自然に囲まれた広大な敷地にあり、テニスコート、グラウンド、プール、アリーナを構える総合体育館、カフェテリアなど施設が大変充実していることも大きな魅力です。
ぜひ、学校説明会に訪れて、実際の明星の学校生活を見てみませんか。