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学校特集

二松学舎大学附属柏中学校・高等学校2023

外部からも高い評価を受ける本物の「探究力」

掲載日:2023年9月1日(金)

 二松学舎大学附属柏は、2011年に中学校を開校して以来、人間教育としての「論語」と、自ら学ぶ素地を作る「探究学習」という独自のアプローチで、成果をあげています。昨年度は高2生の取り組みが「英字新聞甲子園」で全国準優勝に輝きました。
 そのエネルギーの源は中学時代の体験的学びにあります。同校が中1から体験的な学びを惜しみなく入れている背景には、二松学舎の創立者、三島中洲の「知行合一」(知識があっても実践をしなければ本当の『知』とは言わない)という考え方があり、地の利を生かした「沼の教室」「田んぼの教室」をはじめとする多彩な体験教室を通して、生徒たちは興味関心を広げ、身を持って探究の仕方も会得していきます。「英字新聞甲子園」準優勝も、単なる調べ学習にとどまらず、一次調査から始める研究者スピリットが花開いた一例と言えるでしょう。 授業の枠を超えていく探究心はいかにして生まれているのか。その教育について、副校長の島田達彦先生と、グローバル探究委員会委員長の森寿直先生にお話を伺いました。

先輩から後輩へ
探究のノウハウを伝える場ができた

二松学舎柏_島田達彦先生
島田達彦先生

島田先生:2015年の国立青少年教育振興機構が実施したアンケートの中に興味深いデータがありました。下記の数字はいずれもYESと答えた生徒の割合です。

・「自分はダメな人間だと思う」 日本 72.5% アメリカ 45.1% 中国 56.4%
・「将来の明確な目標がある」 日本 57.3% アメリカ 80.9% 中国 75.4%
・「自分で社会・国を変えられる」 日本 18.3% アメリカ 65.7% 中国 65.6%

 少し前のデータではありますが、これが日本の現状です。society.5.0の社会で活躍するためには、「自分を信じる」「他人を信頼できる」「長期的に物事を考えられる」「自分の感情をコントロールできる」「自ら考え、決断できる」などの力を身につける必要がありますが、日本の子どもたちは真逆へと進んでいます。このギャップをどう埋めていくかが非常に重要になります。学校に対する期待も、そこにあると考えています。

 同校では、「グローバル探究コース」「総合探究コース」どちらも、「論語教育」×「探究学習」による自問自答力の育成で、その期待に応えています。特に昨年は、中1から5年間、同校のグローバル教育を受けてきた最終学年が、外部から高い評価を受けました。

二松学舎柏_森寿直先生
森寿直先生

森先生:「英字新聞甲子園」のメンバーは、7名のうち5名が中高一貫生です。スタートした時は、全国大会で準優勝するなんてまったく思っていませんでした。「本選に残った7校に入った」と知った時は「え?」と思い、最終決戦の日はリモートで参加したのですが、審査員の先生方もいて、「準優勝は二松学舎附属...」と呼ばれた時は本当に盛り上がりました。テレビで全国レベルの吹奏楽部が入賞して先生と生徒が盛り上がるシーンはよく見かけますが、あの瞬間と同じ雰囲気を私たちも味わうことができ、本当に人生の宝になる、と思いました。

 新聞のテーマは「Think globally+Act locally=glocal!」でした、世界で話題になっているグローバルなテーマについて、柏でできる探究活動を記事にする、というものです。7人それぞれがテーマを見つけて、活動や取材を行い、記事にしました。

二松学舎柏_放射線の計測風景
放射線の計測風景

森先生:夏休みの暑いさなかでしたが、本校のグラウンドや、柏から少し離れた三郷と印西でも放射線を計測して比較し、教員も一緒に半パンになって本学の林を歩き回り、昆虫採取をしました。また、体育館の近くで発掘された土器や貝殻を調べたりもしました。汗水たらして活動した成果が、審査員である東大、筑波大、上智大の先生方からも「昆虫食、放射線、ジェンダー問題など、広角的、時間的に幅の広い視点で、世界で話題になっているテーマと柏の探究活動をつなげた記事として、地に足のついた非常に完成度の高い作品」という評価をいただき、大変嬉しかったです。

 この春、中3で取り組む「自問自答論文」をそこで終わらせることなく、高3まで自分で掘り下げて書き上げた論文が高く評価され、慶應義塾大学文学部に合格した生徒もいます。

二松学舎柏_探究論文 自問自答
探究論文 自問自答

森先生:受験勉強もしながら、4年間も探究し続けるのは難しいと思いますが、その生徒は「10時間勉強するとしたら、途中で休憩を取ると思います。だから私は7時間勉強し、3時間を休憩するつもりで探究活動を続けました。受験勉強の休み時間のつもりだったので、気楽にできました」と言っていました。
 表題は「なぜフェイクニュースは広がるのか。フェイクニュースにだまされないために」です。もともとうそが大嫌いな、正義感の強い生徒で、人はなぜうそをつくのか、という素朴な疑問から始まっています。
 うその記事が広がるのを食い止めたいという思いが原動力になり、フェイクニュースを研究している著名な先生に直接インタビューをしたり、講演会に行って質問したり。アンケートも外部の多くの人に行いました。国内にとどまらず、海外にも投げかけて、オランダ、オーストラリア、ニュージーランド、フィリピン、台湾、イタリア、ロシア、スイス、アメリカ、カナダ、韓国、中国...。多くの国の人から集まったデータをもとに、最後は国民性とフェイクニュースを融合した考察を行いました。それが100枚もの論文になって、高く評価されたのです。

島田先生:(アンケートは)SNSを使って投げかけて、それを見た人が応えてくれる、という方法で行ったようです。

二松学舎柏_英字新聞コンテストで準優勝に輝いた「NGK TIMES」
英字新聞コンテストで準優勝に輝いた「NGK TIMES」

森先生:先ほど、副校長が「主体性」や「自己肯定感」についての話をしましたが、今までの教育は、教師主体で生徒は「覚えること」を中心に求められてきました。それだけでは今の時代を生き抜いていくことは難しいですよね。英字新聞の生徒たちがちょうど高2の時に1年間担当したのですが、何をやりたい?というところ以外はほとんど口を挟まず、伴奏者に徹してきました。生徒自身が興味を持つことだから、0を1にすることができます。そこに伴走者がいれば、その「1」をさらに大きくすることも可能です。
 高2の探究活動は、記事を書いて「英字新聞」を作ると同時に、「中高生のための英語プレゼンテーションコンテスト(CMA)」にもチャレンジしていて、そちらでも東日本大会の決勝まで行きました。

 同校はこうした成果を後輩へつなぐために、今春卒業した卒業生に探究活動や学校生活を通して習得したノウハウを伝えてもらう場を作りました。

森先生:「私はこんな研究をしました。こういう活動をすると探究になっていくし、なかなか手の届かない研究者の方に対しては、こういう方法でアプローチするとインタビューできるようになりますよ」など、体験を踏まえた先輩の話は響きますよね。これまではみんなが第一人者だったので、先輩から直接メッセージをもらえる機会がほとんどありませんでしたが、最近になってようやくそういう声や資料が、後輩に届き始めています。そこは、本校がステップアップした証ではないかと思います。

進化する探究学習。変わらないのは
オリジナル性と地に足をつけた取り組み

 中学校を開校した当初から、キャンパスのある千葉県柏市に根ざした教育を行っているところが、同校の教育の大きな特色です。手賀沼をはじめ、柏の街や自然、文化が知らず知らずに体に刻み込まれていきます。

二松学舎柏_オリジナルの「流行感冒」マップを作成
オリジナルの「流行感冒」マップを作成

森先生:昨年、中1(12期生)を担当したことを機に、中学3年間をかけて取り組むプログラムを始めています。その1つが「手賀沼と文学」です。1年次に「沼の教室」で行く「手賀沼」の北に白樺文学館があるのですが、ここは白樺派の武者小路実篤、志賀直哉、柳宗悦や、二松学舎卒業生の嘉納治五郎らが住んでいました。そこで総合学習の時間を活用して、志賀直哉の『流行感冒』をテーマに3年間追い続けるつもりでいます。
 スペイン風邪が1918、19年ごろ世界的に流行しました。『流行感冒』には我孫子にスペイン風邪が入って来た時の様子が描かれています。人の心を描いている作品ですが、中学生がそこまで読み解くことは難しいので、そこで起きていたことをピックアップして探究しています。例えば、中1では当時の我孫子の様子が読み取れる文章をピックアップして、昭和2年の地図で確認し、現「白樺文学館」の向かい側に住んでいた志賀直哉がどこを歩いたのか、を自分たちで推測する、という学習をしました。
 80人を14の班に分けて手がかりとなる記述を探すのです。「うちの裏山に初茸を探しに行く」という一文を手がかりに、「志賀直哉の家はここだから、裏山はここなんじゃないか」とか。「『帰ってくる道、鎮守の前で』という記述もあるぞ」「今も残るこの神社かな?」みたいな感じで推測して、生徒たちがオリジナルの流行感冒マップを作りました。
 その生徒たちが今年、中2になりました。今年はその地図を持って7月に現地に行き、そこが今、どうなっているのか。当時の様子が描かれている史跡や看板がないか、などを調べます。
 第2弾もスタートしています。1910年代のスペイン風邪とコロナの相違点を調べようと、新聞検索(毎日)システムを活用して、みんなで記事を探しています。1918年1月1日から365日分の記事を、14班で手分けして探したら、多くの記事が集まりました。当初、教員の死亡率が高かったこと。1919年2月にワクチンができたこと。風邪薬、予防薬が発売されていたことなど、当時のスペイン風邪流行の様子や流れをおおよそつかむことができました。中には二松学舎の記事もあり、我らが創設者の三島中洲先生が寝込んで、東京の大井町でお休みされている時に漢詩を書いたことを知りました。今年は1919年を調べていますが、続いて2020年のコロナについても同じように調べて考察したいと考えています。一人ひとりにやることがあるので盛り上がっています。休み時間などにスペイン風邪の話をしている生徒もいます。100年の時代を経て人々が変わったことと、変わらないことを、スペイン風邪、コロナについての新聞検索を通して、考察していきたいと思っています。

 生徒が総がかりで集めた資料から、一つの説が導き出されたら、それは全員が貢献した結果といえます。そうした小さな達成感が、自己肯定感につながっていきます。

二松学舎柏_田んぼの教室
田んぼの教室

森先生:全員で同じ体験をすることも意識していることの1つです。田んぼもそうですが、みんなであのヌルッとした感じを共有する。雨でも田植えをした体験を共有する。生徒たちは6年間一緒ですし、もっと言えば一生の友だちなので「あの時一緒に行ったね」という、経験の共有に探究活動は適しているのです。モチベーションも上がります。

島田先生:森先生、楽しそうでしょ(笑)。生徒もそうなんですよ。やらされるのではなく、自分が知りたい、やりたい、だから楽しい。私はそこが一番のポイントだと思っています。そのためには与えすぎてはいけません。私の大学の恩師は「私が感動する本を紹介する」と言って6割くらい話すと、「あとは知りません。読みたい人はどうぞ」という具合でした。私はその術中にはまって、よく本屋に走ったものです。生徒に一から十まで与えてしまったら、おなかいっぱいで何もする気がなくなってしまいます。いい意味での空腹感をつくってあげることが大事だと思います。

森先生:本当にそうですね。「先生はこのくらい見つけたよ。でもまだたくさんあると思うから、みんなで文章から手がかりを探してみて」と言うと一生懸命探します。気分は宝探しです。『流行感冒』は中1には難しい小説だと思いますが、作業としては宝探しと同じなので夢中になって隅々まで探します。そして「先生、見つけました!」「これどうですか?」と、嬉々として見せに来ます。総合学習の時間は毎週、そんな感じです。1年間やってみて、意味調べ、読み方調べから始めて、時間をかければ、しっかり小説の世界に入って行けることがわかりました。

 同校では10年あまりの経験をもとに、探究学習において意識的に取り組んでいることが2つあります。1つは「1次資料を作ること」、もう1つは「生徒がアクションを起こすこと」です。

森先生:中学開校当初は「2次資料」でした。インターネットに書かれていることをまとめて発表する、というものでしたが、今は違います。自分たちで小説から手がかりを探して、昭和2年の地図と結びつけ、実際に自分たちが現地に行って今の様子をたどるのです。この取り組みは両方のポイントを満たしているプログラムであると自負しています。
 私たちが初年度からテーマの1つとしてきた「水」も、手賀沼の上流から下流にかけて5カ所の水を、数カ月に1回採取してCOD(化学的酸素要求量)を測っています。今年の古都の教室(奈良・京都研修旅行)では琵琶湖から京都に流れる水を実際に採って、CODを測定し、手賀沼と比較しようと考えています。

 高校生の研修旅行の引率で、今年度カナダとイギリスに行く森先生は、そこでも水のCODを測定して来る予定です。

森先生:来年はグアムに行きます。太平洋戦争が一つテーマになっていますが、そこでも向こうの水を実際に採取して、手賀沼と比較しようと考えています。
 先ほどのフェイクニュースもそうですが、この地でできることをしっかり深めておくことが大事なんです。生徒たちはいろいろなところに行きますから、そこでも少し意識してデータを採るだけで、いくらでも世界とつながることができます。
 水に着目したのは、たまたま手賀沼という題材が学校の近くにあったからです。都内のど真ん中でやろうと言ってもできません。昆虫採集もできないでしょうし。土を掘っても土器など出てこないでしょう。本当にいい場所だなと思います。手賀沼を活用したオリジナル性は、この柏の地に根ざした私学として大事にしていきたいと思っています。

「探究活動の目的は、生徒たちが自立して自分たちで走り出すこと」と森先生。

森先生:先生たちがいなくても大丈夫と思ってくれれば大成功です。そういう先輩が巣立っていることは心強いかぎりです。

二松学舎柏_沼の教室
沼の教室

島田先生:先ほど森先生が、「生徒がアクションを起こすこと」をポイントに挙げていましたが、探究活動の良いところはそこなんですよね。社会に出たらそう失敗できませんが、今ならどれだけ失敗しても大丈夫です。失敗は、行動を起こさなければできませんから。まずやってみて、うまくいかなかったり、これは失敗したなと思った時に、立て直す力をぜひ身につけてほしいですね。トーマス・エジソンは「私は失敗したことはない。10000とおりのうまくいかない方法を発見したのだ」という言葉を残しています。気持ちを切り替えて、次の一歩をいかに踏み出すかが、大事になると思います。

「これまで学校は『教える場所』でしたが、時代は変わりました。学校が学ばなければいけない時代になり、我々教員も生徒と一緒に学んでいける学校になっていかなければいけないと思っています」と島田先生は話します。その考えを森先生が具現化し、先生方と共有しながら、地に足のついた探究教育を推進しています。
 大変そうなことも楽しみながら、みんなで乗り越えていける校風です。中学校では「人間力」と「自問自答力」を体験的に学び取り、高校では自ら学び、探究して、その力に磨きをかけていく。そんな6年間を送りませんか。ぜひ学校に足を運んで、キャンパス内だけでなく、外を歩いて、景色や空気を感じてみてください。そこに始まり、6年後には世界に目を向けているお子さんの姿を想像していただけるはずです。

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