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学校特集

八王子学園八王子中学校・高等学校2023

縦のつながりが生まれて切磋琢磨
中学全員参加の「探究ゼミ」
-教え合い学び合う雰囲気が醸成され学校全体に活気-

掲載日:2023年6月12日(月)

2012年(平成24年)に中学が開設され、12年目を迎えた八王子学園八王子中学校・高等学校。JR 西八王子駅から徒歩5分という便利な場所にあり、英語教育や ICT 教育にも早くから取り組んで人気を集めています。2016年には「東大・医進クラス」を創設して生徒の意欲や学力を伸ばしており、実際に東大をはじめとする難関大学への進学実績でも定評があります。今回は、スタートして 7年目となる中学の「探究ゼミ」について、谷口明博先生にお話を伺いました。

中高一貫校12年目でさらなる飛躍を目指す

八王子学園_国語科の谷口明博先生
国語科の谷口明博先生

 八王子学園は 2012年に中学を創設して中高一貫体制となり、12年目を迎えました。「人格を尊重しよう、平和を心につちかおう」というスクールミッションを掲げ、平和教育や人間教育に力を入れつつ、時代のニーズに合わせた教育を実践しています。2016年には最難関の国公立・私立大進学を目指す「東大・医進クラス」と難関大進学を目指す「一貫特進クラス」の2クラス制を導入。生徒の個性や能力に合わせたきめ細かい指導を行っています。同時に課題解決能力やプレゼンテーション力を育む「探究ゼミ」を始動し、体系的なアクティブラーニングに取り組んでいます。

7 年前から中学で「探究ゼミ」を始動

【前期は学年別でテーマに沿った探究活動】

「探究ゼミは、2020年度から始まった大学入試改革を見据えて導入しました」と国語科の谷口明博先生は振り返ります。「大学入試が思考力や課題解決力を問うものに変わり、学校推薦型選抜や総合型選抜などの入試も増えつつある中で、そうした入試に対応する力を養う必要があると考えたからです。そこで自分で考え、課題解決策を講じたりそれをまとめて発表する力をつけるために探究ゼミを始動したのです」。

八王子学園_グループで話し合いながら作業する
グループで話し合いながら作業する

 探究ゼミは、今年度は水曜日の4時間目に中学3学年全体で行っています。前期は学年ごとの授業を行い、後期は縦割りのグループで3学年混合で活動します。

 前期は各学年の行事などと連動したテーマに取り組み、9月末の学園祭で発表します。八王子出身ではない生徒も多いので、中1は八王子や多摩についてグループで研究する「八王子学」を実施。中2は10月の修学旅行に向けて、行き先に沿ったテーマを班ごとに研究してまとめます。スクールミッションとして「平和を心につちかおう」を掲げて平和教育に取り組む同校では中2で広島・京都・奈良に修学旅行に行くので、それぞれの地の歴史や文化などについて調べる事前準備学習を行っているのです。そして中3はオーストラリア研修に向けた事前学習を実施します。

八王子学園_探究結果をまとめて学園祭で発表する
探究結果をまとめて学園祭で発表する

「中1 の全体テーマは『地元・八王子について調べましょう』。八王子の産業、歴史、自然など調べるテーマを細分化してグループに割り振ります。しかし、「八王子城について調べる」という指示だけでは、八王子城の場所や建設された年、構造などについて調べるだけで終わってしまいます。そこで"八王子城はなぜその場所に建立されたのか""北条氏照はなぜ八王子城を建てたのか"といった問いを立てさせます。そうすることで一問一答形式のまとめに終わらず、自分なりに疑問を掘り下げて複数の資料にあたってまとめることができます」。

 同校では中3で10日間のオーストラリア語学研修を実施しています(コロナ禍の3年間は未実施)。そこで中3前期の探究の時間はオーストラリアの文化、歴史、産業などについて調べる時間に当てています。1人1家庭にホームステイするためステイ先では完全にひとりになりますが、現地のことを学んでおけば、観光名所や動物などの固有名詞が出てきても理解できるし話を広げることもできます。このように探究学習を学年テーマや行事につなげることで、理解を深めたり行事への取り組みをブラッシュアップすることができます。

【後期は縦割りの「探究ゼミ」で活動】

八王子学園_ゼミでは中1~中3までが一緒に活動
ゼミでは中1~中3までが一緒に活動

 前期は学年ごとの活動ですが、後期からは各学年の教員が15種類ほどの「探究ゼミ」を立ち上げ、生徒は希望するゼミに所属して、縦割りで活動します。9月に生徒は参加したいゼミの希望を出し、先生方は各ゼミとも20人前後になるように参加者を調整して10月から活動を開始します。

『世界遺産』『日常と数学』など教科と関連の深いものもあれば、『音研~身の回りの色々な音~』『強いチーム、結果を出すチームとは?』『おいしく食べて元気~大切な人の食事を考える~』『オカルト探究倶楽部』など多様な出来事について研究するユニークなゼミもあります。

 生命倫理に関する問題をディベートしたり、株式学習ゲームを使って班ごとに株式の模擬売買を行ったり、似た製品2つを選んで実験しながらコストパフォーマンスを比較したりと内容は多岐にわたります。東京ディズニーランドの楽しさを追究して最後にメンバー全員で東京ディズニーランドに足を運ぶゼミなどもあり、授業や学校内にとどまらない活動もあります。

 この探究ゼミ活動で先生方が気を付けているのは、単なる調べ学習で終わらせないこと。それぞれが課題解決などの目的を設定して取り組み、グループワークなどを通して意見を述べあい、最後はレポートをまとめたり作品を作ります。2月末には中学生全員の前で発表する場を設け、それぞれの探究の成果を共有して学びを深めています。

【15種類の多彩なテーマでのびのびと活動】

 谷口先生の主宰する『映像文化探究(演習)』は、中1の国語の教科書に掲載されている作品を映像化するもので、最初に「扱いたい作品」と、「漫画、アニメーション、芝居による実写化などどんなメディアで表現したいか」という希望を聞いたうえで、6つの班を作って取り組みました。

八王子学園_自分たちが感じた物語の魅力を映像で表現
自分たちが感じた物語の魅力を映像で表現

「作品の魅力は読み手によって異なり、主人公は違う人物だと感じることさえある。それぞれの読み方を見出し、自分が感じた魅力がどうすれば人に伝わるかを考えて表現するのが狙いです。世の中には小説を元にしたアニメもあれば、逆にドラマやアニメを元にした小説もあるので、最初にそれらを比較する時間を設けました。アニメ化やノベライズ化では、小説家や出版社によって強調する部分や背景描写も異なります。どういう形にすると、自分たちが感じている魅力が伝わりやすいかを検討しながら、映像化を進めました」。

 テーマを掘り下げる、演技や声優としての技量を見てほしいなど、班ごとに"何にフォーカスするか"を決め、原作のどの部分を取り上げるとより効果的かを話し合います。原作をそのまま使う班、一部を切り出した班だけでなく、原作を元にスピンオフ作品を作った班もありました。内容もバラエティに富み、台本を執筆して芝居を撮影したりアニメーションを作った班もあれば、ひとりで漫画を描いた生徒もいました。「それぞれの作品はゼミ内で発表しましたが、同じ作品を扱っても世界観や表現手法はさまざまなので、生徒たちは他の班の作品に真剣に見入っていました」。

ゼミで縦の関係が生まれ学校生活がさらに豊かに

【グループワークやプレゼンのスキルが向上】

八王子学園_「アルゴリズム体操・行進を作ろう」ゼミの発表の様子
「アルゴリズム体操・行進を作ろう」
ゼミの発表の様子

 グループで話し合いや探究する姿勢、意見を人に伝えるといったスキルは、教科の授業でも培っています。「たとえば古典で文法や活用を教える時、いろいろなパターンを詳細に説明すると生徒は退屈してしまいます。ですから概要を説明後に演習問題を配って10分ほど個人で取り組み、後は班で教え合う時間を作っています」と谷口先生は話します。
「授業の最後に小テストを行いますが、個人の点数と班の平均点で評価するので、みんな頑張って教え合っています(笑)。私一人が喋るより集中して取り組むし、実際に小テストの成績も例年より伸びています」。

 グループで話し合う機会も増やしており、進行や書記などの役割をローテーションし、書記が作ったスライドを使って発表するなどルールも決めています。そうすることで、先生が指示を出さなくてもスムーズにグループワークができるようになりました。

 授業やゼミの中でも発表する機会が増え、プレゼン力が伸びているという確かな手ごたえも感じています。「東大・医進クラス」から東大に進学した卒業生は「プレゼンの場が多かったので、わかりやすく伝えるためのコツがつかめた。大学でもプレゼンがうまいとよく褒められる」と話しているそうです。

【ゼミを機に生まれた先輩・後輩の絆】

「こうした活動は学校全体に広がり、思いがけないプラスの効果が生まれています」と谷口先生は笑顔で話します。

八王子学園_多くの人が訪れる学園祭の発表
多くの人が訪れる学園祭の発表

 たとえば前期の探究の成果は9月の学園祭で発表しますが、必ず他学年の発表を見に行くことを課しています。中1、中2生は先輩の発表を見ることで次年度の活動内容を把握すると同時に、「来年はこのレベルに達したい」と先輩への憧れの気持ちも生まれ、モチベーションも高まります。

 中3は後輩の発表を見に行き、「この班の発表はここが良かった」と感想を書いて渡すことになっています。折に触れて縦のつながりを意識させることで、下級生は「来年はこんな先輩になりたい」という強い思いを抱くようになり、上級生は「スムーズに勉強や活動ができるようにアドバイスしてあげよう」「お手本になるように頑張ろう」と気を引き締める――という双方向の効果が生まれるのです。

八王子学園_6月の体育祭には中1も積極的に参加
6月の体育祭には中1も積極的に参加

 中1は入学してまもない6月に体育祭を経験しますが、ここ数年は上級生が昼休みに中1の教室に出向いて応援の練習をする光景も増えています。「受験や勉強に関しても、教員が話すより、『このテキストをしっかり演習しておくと高校に入ってから役立つ』『今のうちにこれをやっておかないと後で苦労する』というアドバイスのほうが生徒の心に響くようです。同じ学校で同じ先生に習ってきた先輩の言葉は後輩にとって信ぴょう性が高いし、素直に耳を傾けることができるのでしょう。仲間同士で学び合うのが教育の根幹だと考えているので、今後もその部分をサポートする体制も整えて、学校全体でさらなる高みを目指していきたいですね」と谷口先生は力強く話します。

「AI が発達しても、人の心に訴えかけることは人間にしかできません。人と話し合う、面識のない人たちと目的を持って活動する、そこで出た意見をまとめるといったことは、人間にしかできないでしょう。今の中学生が社会に出る 10 年後を見据えて、そのとき必要とされる力を磨いていく必要があります。人と人とのつながりに根ざした学びは、長い目で見て卒業後の人生やキャリアにも大いに役立っていくはずです」。

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