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学校特集

桐朋女子中学校・高等学校2023

個に寄り添い、創造性と人間性を養う「桐朋ism」
過程から学びを得る「Learning by Doing」を実践し、創造力あふれる人物の育成を目指す

掲載日:2023年6月1日(木)

 AIの発達による急速な社会変革が進む今だからこそ、新しいものを創り出す力が求められています。さまざまな経験を通して自主性や協働性を育み、人生を主体的に切り拓く人材を育成してきた桐朋女子。80余年の歴史と伝統が創り上げた、自由な校風から生まれる人間力の高さでも注目を集めています。「桐朋女子の6年間から得たものは何か、どのように役立っているのか」というテーマで、2020年度卒業生(77期/学年色は青)の髙崎晴菜さん、渡邊貴子さん、小峰結さんと、国語科の飯田百合子先生にお話を伺いました。

●卒業生プロフィール

髙崎晴菜(はるな)さん
東京都市大学都市生活学部3年。中高6年間、ソフトボール部(ピッチャー)と体育祭委員会に所属。高2の時に、有志の広報委員として学校説明会を企画。
渡邊貴子(きこ)さん
早稲田大学人間科学部健康福祉学科3年。学外のラグビーチーム(スクラムハーフ)に所属。在校中は週4日ラグビー、週2日スポーツジムというラグビー生活を送る。
小峰結(ゆい)さん
早稲田大学人間科学部人間情報学科3年。中高6年間、放送部に所属。体育祭では中学で「足の歴史」、高校で「玉入れ&綱引き」の各リーダーを担当。

生徒主体の多彩な学校行事で感性、想像力、協調性を育む

●一人ひとりが輝き、一体感を味わう体育祭

桐朋女子_左から小峰結さん、渡邊貴子さん、高崎晴菜さん
左から小峰結さん、渡邊貴子さん、髙崎晴菜さん

「Learning by Doing」。桐朋女子では、アメリカの教育学者ジョン・デューイが提唱した「実践や経験から学び、自分の体を通して肌で感じ、知識を高め、感情を深める」教育哲学を根底に置いています。なかでも、生徒主体で企画・運営される多彩な学校行事は一人ひとりが輝ける成長の場であり、生徒たちの感性や想像力、協調性を育む場でもあります。

 中高6年間で最も思い出深い行事を尋ねると、「体育祭です!」と3人が声を揃えました。学年対抗で行われる桐朋女子の体育祭は、個人競技だけでなく、3人4脚、2人3脚、2人2脚、1人1脚でリレーを繋ぐ「足の歴史」など工夫を凝らした団体種目や、学年が一体となる「応援交歓」など、運動が得意でない生徒でも主体的に取り組める行事です。

桐朋女子_小峰さんが全力で必勝法を考えた「綱引き」
小峰さんが全力で必勝法を考えた「綱引き」

小峰さん:私は本当に運動が苦手で、最初は体育祭なんてと思っていたんですが、だんだん熱が上がってのめり込み、中学で「足の歴史」、高校で「綱玉(綱引き&玉入れ)」のリーダーになりました。綱を引く時はどういう姿勢が効果的か、玉を投げる最適角度とは?と、どうしたら勝てるか全力で考えました。授業中もノートに練習方法を書いたりして(笑)。高2の時に「綱玉」だけは下剋上で勝てたので、リーダーとして少しは貢献できたかなと思っています。

桐朋女子_学年全体で行う一糸乱れぬ「応援交換」は桐朋女子の名物!
学年全体で行う一糸乱れぬ「応援交換」は桐朋女子の名物!

髙崎さん:私は「障害物競争」。桐朋女子の障害物競走はハードルをくぐったり跳び箱を飛んだり、特殊な内容なので、廊下に段ボールを積み重ねたセットを作って練習していました。学年全体が一体となる「応援交歓」に携わりたくて、中高6年間体育祭の応援企画委員を続けたのですが、6年間辞めなかったのは私を含めて2人だけ。コロナ禍で、中高6年間の集大成の年に開催できなかったことがすごく残念でした。みんなのモチベーションも高いし、演技も衣装も完成していたのに、結局何もできなかった。それだけが心残りです。

渡邊さん:体育祭は私の青春そのもの。私は運動が大好きなので、バッチバチでやらせてもらい(笑)、下剋上だけを考えていました。学年対抗というのも大きくて、高2の体育祭は一番モチベーションが高まりましたね。

髙崎さん:盛り上がってたよね、キコちゃん(笑)。高3を抜くことができる下剋上のラストチャンスなので、みんなのやる気度合いも上がっていくんです。下の学年にも負けるわけにはいかないし。

桐朋女子_体育祭は、6色に分かれた学年対抗戦。チームカラーの下に築かれた絆は、卒業後も長く続くそう
体育祭は、6色に分かれた学年対抗戦。チームカラーの下に築かれた絆は、卒業後も長く続くそう

小峰さん:6学年上の「青の先輩」から受け継いだ秘訣とかもあって。でも、一つ上の学年の先輩には絶対教えない(笑)! 人数が多い競技種目のリーダーとして、どうすればチームがまとまるかを考える良いきっかけになりました。アクティブラーニングの授業でも協働性は学びますが、先生方が整えてくださった環境が前提にあります。体育祭などの学校行事は、あくまで自発的な発想でアクティブラーニングをしていく。それが、桐朋女子の伝統として引き継がれていると思います。学年全体が一体感を持って学ぶ機会なんて、そうそうない圧倒的な体験です。

髙崎さん:去年、大学の学祭の副会長をやったんですが、改めて桐朋生のスキルの高さを実感しました。私たちは、けっこう高いレベルまで持っていけていたんだなと(笑)。

小峰さん:私の場合は、早大の高田馬場の本部キャンパスではなく所沢キャンパスなので「やってやるぞ!」みたいな気持ちがありまして、2年間学園祭の実行委員をやりました。それほど積極的ではない人たちの組織をまとめるスキルは桐朋での学びが生きていると思うし、これからも活かしていきたいです。

 それぞれの個性を活かしながら、お互いに尊重し合う桐朋女子での経験は、みなさんの貴重な財産となっているようです。青春を燃やす学校行事の中で、桐朋生は社会生活で必要とされるリーダーシップや協調性を身につけているのです。

対話を通してチャレンジの過程に寄り添い、未来を作り出す

●自分に向き合い、納得して「自分で作る時間割」

桐朋女子_自分で時間割を作るため、カリキュラム説明会が開かれる
自分で時間割を作るため、カリキュラム説明会が開かれる

「個を大切にする」教育方針の下、桐朋女子では自分自身と向き合い、納得できる生き方や職業の実現に向けて、今やるべきことを自分の意志で選択することを大事にしています。
 中1から高1まで基礎学力や自ら表現する力を養ったあと、高2・3の時間割は生徒自身が作成します。卒業生のみなさんは、どのように考えて「自分で作る時間割」に向き合ったのでしょうか?

渡邊さん:私はまず受験に必要な科目をとって、次に興味のある授業を選んで。あとはブランク(空き時間)を作りたいと考えました。ラグビーのクラブチームにずっと所属していたので、ブランクの時間に勉強して練習時間を確保していましたね。

髙崎さん:高3の時は、結構ブランクを作った気がします。

桐朋女子_空き時間に自習室を活用する生徒たち
空き時間に自習室を活用する生徒たち

小峰さん:高3の授業はだいたい4限で終わりにもできるのですが、あえて6限の授業をとって3・4限をブランクにしておくと、嫌でも学校に残らなければいけない。授業で学んでも自分で勉強しないと消化する時間がなかなかとれなかったりするので、その時間は自習室にいることが多かったですね。時間の使い方まで考えて、時間割を作っていました。

渡邊さん:数Ⅲ・物理・化学と理系寄りの科目をメインでとりながら、古文もとって。

髙崎さん:キコちゃんは、現代文の授業もとってなかった?

渡邊さん:履修届けは出さなかったけれど、モグリで出席していました。森鴎外の『舞姫』を読んで、すごく興味が湧いたので。担任の飯田先生の授業で、モグリなのに1番前の席に座って。単位にはならないのに、試験も受けていました(笑)。

小峰さん:私はちょっと変な時間割で、先生に沢山迷惑をかけました。数Ⅲはとっているのに物理・化学をとっていない。文系の古典もとって、倫理・政経など社会科系の授業多めみたいな。学際系を目指していたこともあり、理系でも文系でもなく、といった時間割でした。

髙崎さん:理系・文系で分かれるから、こういう科目のとり方は珍しいと思います。

小峰さん:最後まで悩みますよね、文系、理系って。受験のことは念頭にあるけれど、時間割を開いてみると、なんか全然関係ない科目もいっぱいとっている、みたいな(笑)。

渡邊さん:私はギリギリ、高3まで悩んでいました。医療系・心理・スポーツ関係と単純に興味のある科目を選んでいたら、方向性がバラバラになってしまい、自分が何に向いてるのか迷うことが多くて、先生と話しながらギリギリまで悩みました。

 時間割の提出は前年の秋。最終的には、個人個人が担任の先生とのやり取りの中で決定していきますが、「ギリギリまで進路を悩んだり、いろいろな方向性を模索しながら自分で時間割りを作ることができるのは、桐朋女子の魅力の一つではないでしょうか」と、飯田先生は話します。
 選択科目の種類は幅広く、多岐にわたっていますが、その中で生徒たちは将来にはいろいろな選択肢があること、人生を自分で選択する大切さを学んでいくのです。

●「ことばの力」を育むレポート提出

 桐朋女子では、年間を通じて各教科でレポート提出が多く、「ことばの力」を育むプログラムが充実しています。理科では観察や多彩な実験を行い、社会では見学などの体験を通じて、自ら問いを立て論理的にまとめる力を養います。

小峰さん:桐朋女子はレポートが多いと思わない? 大学に入ってからとっても役立っているけれど。

髙崎さん:中1の社会で、地元商店街についてのレポートを8枚(A4ワードテキスト)手書きでまとめたんですが、大学に入学して最初の授業が始まる前に「自分の街の商店街について」をテーマにレポートを書くという課題が出たんです。そういえば、中1の頃に同じテーマで書いたなって思い出しました(笑)。

桐朋女子_化学実験にて。真剣な眼差しが意欲を物語っている
化学実験にて。真剣な眼差しが意欲を物語っている

渡邊さん:理科も硝酸に銅を入れて色が変わるとかイワシやイカの解剖とか、実験がいっぱいあって楽しかったですが、レポートも多かったですね。最初は座学の授業で学ぶけれど、実際にやってみないとわからないこともあります。やってみて失敗すると、何故うまくできなかったか、どうしてこういう結果になったのかが実感できる。自分でやることで楽しみと発見があるので、座学以上の学びができたと思います。

髙崎さん:「物理や化学でもレポートを書くの?」って、大学の友達に不思議がられました。

小峰さん:社会のレポートは前期、後期で1回ずつあって一番大変でした。中2の時に被差別部落をテーマに書いたんですが、自分でテーマを選べるのも良かったと思います。

●自らゴールを見つけて動き出す、自主性あふれる生徒たち

 桐朋女子では、学校生活の中で一体感をもつ体験や個性を伸ばす場面がたくさん用意されています。そうした集団生活の中で、自分の役割を自覚しながら行動する術を身につけていくのです。「体育祭や桐朋祭だけでなく、いろいろな場面でこちらから企画を投げかけると、生徒たちは即座に役割分担をして捌いてくれるといいますか、捌けてしまうんです」と、飯田先生。

桐朋女子_調布の魅力を伝えるマインドマップ
調布の魅力を伝えるマインドマップ

 ところで、同校では大学共通テストの終了後、指定校推薦や総合型選抜などで早い時期に進路が決まった高3生を対象に「高3進路決定者講座」を開いています。生徒たちが自由にゴールを決めて実行するPBL(課題解決型学習)で、「地理」を履修していた3人のみなさんにもう一人加えた4人は、「桐朋女子に6年間通ったけれど、地域のことを全然知らない」という問題意識をもち、地域に根付いた学校になるにはどうすれば良いかと考えました。

小峰さん:地理の先生に「何やってもいいよ」と言われて、「最後だし、みんなで一つのものを作ろう」と盛り上がって『地域×桐朋女子』という冊子を作りました。

髙崎さん:最初にあった別のプランのほうが簡単だったけれど、「それじゃつまんないよね」って、いつものように私が言い出すと......。

渡邊さん:私が暴走を止める(笑)。

髙崎さん:「もっと、おもしろいことしようよ」ってみんなで盛り上がっていると、渡邊さんが冷静に判断してくれてまとまる、みたいな(笑)。

小峰さん:統合失調症や心の病気になった人たちが、食事を通して交流する「NPOクッキングハウス会」や調布市青少年ステーションCAPSなど、地域で精力的に活動されている方たちを取材して、冊子にまとめました。桐朋女子と地域が繋がることに、ちょっとは貢献できたかなと思っています。

髙崎さん:生徒が「どうしてもこれがやりたいんです」と言えば、やらせてもらえる学校です。大学でも勝手に企画書を作って、あらかじめ根回ししてからやいろいろなことをやり始めました。そういう交渉術も、やっぱり桐朋で身についたことだと思います。

桐朋女子_桐朋女子では、自分で自分を育てる生徒が育つ
桐朋女子では、自分で自分を育てる生徒が育つ

 先生方は、そんな生徒たちの行動を頼もしく思いながら、サポートに徹します。飯田先生は、生徒たちの姿をこう表現してくれました。
「桐朋生を見ていて感じるのは、一人でいることが平気な生徒が多いことです。高校生は時間割が違うので別々のスケジュールで動きますし、コース選択も成績ではなく自分の望む将来を考えて行っています。そして、違いを尊重し合いながら、いろいろな場所にグループができ上がる。高3になるとすごく成熟してくる様子が感じられて、大人びた生徒が多いですね。何か頼み事をすると『あっ、やっておきますよ』と即座に答えられるなど、お仕事ができる人たちです(笑)」

 このように、桐朋生は自分の「個」を磨きながら、仲間の「個」をも尊重し、自主性と協働性を併せ持つ大人への階段を登っていくのです。

■拡大する学校推薦型選抜(指定校推薦)枠

「個に寄り添う」教育方針を貫き、創造性と人間力を育む教育で主体的に人生を切り拓く人材を育成してきた桐朋女子。創造力あふれる卒業生たちの活躍で、早慶上理など難関私学をはじめ音楽・美術などの芸術系から医療系まで幅広い進路選択ができる指定校推薦枠は100校以上、人数にして650枠を超えています。

■進路の幅が広がる高大連携を推進

 大学の高度な講義内容に触れることで生徒一人ひとりが進路についてより深く考え、視野を広げていくことを目指して、桐朋女子では高大連携の取り組みを加速させています。電気通信大学および東京女子大学に加えて、2023年4月に日本女子大学と高大連携協定を締結しました。これにより、日本女子大学による出張授業の実施や高大接続プログラム「日本女子大学科目等履修制度」(高等学校生徒コース)への参加が可能となり、2024年度入試より生徒の連携大学推薦制度利用も始まります。

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