学校特集
サレジアン国際学園中学校高等学校2024(2)
掲載日:2024年11月16日(土)
「21世紀に活躍できる世界市民の育成」を教育目標とし、2022年に校名変更、共学校化を果たしたサレジアン国際学園中学校高等学校。同校では、「言語活用力」、「考え続ける力」、「数学・科学リテラシー」、「コミュニケーション力」、「心の教育」の『5つの力』を重視しています。今年中学3学年が揃ったサレジアン国際学園の教育について、募集広報部部長の尾﨑正靖先生、募集広報部主任の宮島健太郎先生にお話を伺いました。
PBL型授業で考え続ける力と受容性・積極性を身につける
サレジアン国際学園は、ゼミなどを通じて主体的に学び、思考を深める「本科クラス」と、外国人教師と日本人教師のダブル担任制で充実した英語環境の「インターナショナルクラス」の2クラス制を敷いています。インターナショナルクラスはさらに、英語の習熟度別に、帰国生などが中心のアドバンストグループ(AG)、英語学習に高い意欲を持つスタンダードグループ(SG)に分かれて英語の授業を展開。
入試はこの3区分に分けて実施されています。
すべてのクラスの授業でPBL(Project Based Learning)型授業を通じて、考え続ける力や言語活用力、コミュニケーション力を養成しています。
「PBL型授業では、まずロジカルシンキングのフレームワークを学びます。その上で大切なのは、他者の意見を絶対に否定しないこと。それぞれが真剣に考えるので、自分と違う意見には異を唱えたくなることもあるでしょう。しかしまずは、お互いに話をして聞いて、受け止められるように教員が言葉かけをします」(宮島健太郎先生)
PBL型授業では、原子力問題、死刑制度についてなど、中1から正解のない課題に立ち向かい、思考を深め、それぞれの意見を共有していきます。
「本校の生徒たちの素晴らしさは、難しい問いであっても自らで分解して、自分なりの意見や見解を導き出して必ず話してくれることです。さまざまな意見に耳を傾けて、一生懸命考え、伝える姿勢ができています」と宮島先生。
思考がより柔軟で感受性豊かな10代の早いうちに、世界が抱える諸問題に仲間たちと共に挑んでいく同校の教育。これからの世界で活躍できる力を大きく育てています。
心身を通じた経験で多様性を理解する、ハイブリッドクラス
世界にはさまざまな考え方がある、いろいろな人がいるということを、より肌感覚で理解することができるのが、今年度から中1で行われている「ハイブリッドクラス」の取り組みです。
募集広報部部長の尾﨑正靖先生が本科クラスとインターナショナルクラスの学級を混成させた、このクラス制導入のきっかけを教えてくれました。
「これまで本科とインターの両クラスの生徒たちは、クラブ活動や委員会活動、学校行事などを通じて交流していました。実際に1期生・2期生たちを見ていると、クラスの垣根を感じさせず、お互いにいい影響を与え合っています。
だからこそ、日常的にもっと交流することで特徴的なカリキュラムやプログラムを通して、それぞれが備えてきた強さやお互いの持ち味を活かすことができれば、より素晴らしい化学反応が起こり、学びが深まるのではという思いがありました」
実際にハイブリッドクラスを導入したことで、クラス内にポジティブな変化が生じています。
「クラス運営に関しては基本的に、朝礼、終礼ともにオールイングリッシュで行います。きちんと聞き取れなかったり、困ったりしたSG生や本科生に対して、AG生が通訳する機会が自然と生まれていました。その一方で国語や数学が苦手というAG生に本科生やSG生が教えるというような場面も見られます」(尾﨑先生)
なお、クラス内ではバディグループシステムを取っています。これは基本的に本科生とAG生、SG生が1つのグループを構築し、助け合いながら過ごすシステムです。
「生徒たちはそれぞれが自分の得意を生かしながら、自らの力をどう使って他者と向き合い、貢献していくのかを体験しています。
例えば本科生は、『プレゼミ』(後述)で考えたことや経験したことをインター生たちに休み時間などに共有しているようです。
インターナショナルクラスで行われているイマージョン授業は、外国人教員が担当していることもあり、いわゆる日本の授業形態とは異なります。
この学びも本科生たちにシェアされることで彼らは触発されています。我々が想定していた以上に学びとして深まっている手応えを感じています」と尾﨑先生。
「これまではインター生同士が英語で会話している中に本科生が加わる、ということは正直なところ、それほどありませんでした。
ただ現中1は普通に入っていきますし、わからなければ互いに聞き合っています。海外での生活経験が長かったAG生に、日本育ちの本科生やSG生が日本や文化について話をしている姿もよく見かけます。
本当の意味での多様性を体現していると思いますし、その雰囲気というのはこのハイブリッドクラスでのバディグループシステムでより醸成されていると感じます」(宮島先生)
クラスメイトやバディという密な人間関係の中で、積極性を持って学校生活を送る生徒たち。安心して自分自身を出せる環境下で高い能動性や受容性を育んでいます。
世界97か国に広がる、サレジアンのネットワーク
学校内でもこのように多様性を学ぶことができますが、同校はサレジアンシスターズというイタリアに本部を持つ修道会を母体としています。創立当初から世界各地の姉妹校とのつながりを大切にしつつ、世界会議やボランティア活動などに積極的に参加してきました。
2024年、コロナ禍を経て数年ぶりに復活したのが、フィリピンへのボランティア研修です。高校生の希望者に対して夏休みに実施され、今年は高1と高2の8名の生徒が参加。世界各国の姉妹校の生徒と共に貧困地域の子どもたちとの交流を図ることで、世界的な社会問題や国際支援について考えました。
また今年8月、約20年ぶりに開催されたのが「CIAO(チャオ)ユースキャンプ」です。アジアとオセアニアの10数か国の姉妹校の生徒たち、およそ300人がフィリピンに集合。5日間をかけて話し合いやプレゼンテーションを行い、交流を図りました。
「夢を持ち、主体的に未来を歩めるためには」、「持続可能な社会をどのように作っていくか」といった2つのテーマで議論がなされました。
「特にミャンマーやパプアニューギニアといった貧困問題を抱えた国の参加者から、生徒たちは大きな刺激を受けていました。彼らは国の代表者として選抜された、とても優秀な生徒たち。努力を重ねて、国外の大学へ全額奨学金での進学を決め、自分は国のために何ができるかということを徹底的に考えており、問題意識が切実なのです。
さらには、紛争国の生徒からの『私たちの国は分裂の危機にあり、明日はどうなるかわからない状況。私たちのためにも祈ってください』という悲痛なメッセージを受け取っていました。
そういった同年代の子を見て、自分たちがいかに恵まれた環境にあるかを実感し、どのように希望に繋げていけるのかを考えました」(尾﨑先生)
今後は生徒たちが国際問題について学んだり、ニュースで見聞きしたりというときに、彼らの顔が思い浮かぶことでしょう。姉妹校で学ぶ友人のために、どんなアクションを起こしていけばいいのか。世界で起きていることは他人事ではないという思いを得た生徒たち。
「今回は高校生5名が参加しましたが、非常に大きな学びになったと同時に、この97か国に広がるネットワークの強さや話し合いをする時も、創立者であるドン・ボスコの理念という共通の教育基盤があるので、すぐに打ち解けられたようです」(宮島先生)
世界中に友達ができることで、より世界は身近なものとなっていきます。
サレジアン国際学園の教育とは
サレジアン国際学園が掲げる「21世紀に活躍できる世界市民の育成」という教育目標について伺いました。
「まず必要なのはグローバルであるということです。さまざまな価値観やバッググラウンドを持った人たちがいる中でチームとして協力して何かを作り上げていける、そういった人材が必要だと思います」(宮島先生)
同校では「なぜ英語を学ぶのか」を自ら考え、世界を見据えた英語教育を展開しています。
インターナショナルクラスのSGの英語は週10時間とたっぷり。AGでは週39時間のうち21時間の英語で実施されている授業時間があり、英数理社をオールイングリッシュで学んでいます。
中学から、日本はもちろん海外高校の卒業資格を与えられる「DDP(デュアルディプロマプログラム)」につながる学びを実施し、海外大学進学への門戸も大きく開いています。
本科でも英語の授業は週8時間としっかり行い、世界に羽ばたく研究者になるための素地として高い言語活用力を養います。
同校ではCEFRの基準を用いた目標を設定していますが、今年6月の受験結果について、
「例えば、本科の中3では、A2(英検準2〜2級相当)への到達は中学卒業時を想定していましたが、6月の時点で82%の生徒がパスしています。AGでは、高1での到達目標のC1(英検1級相当)が中3で36%、B2(英検準1級〜1級相当)は中3で49%、中2では55%と高い水準で推移しています。
特に本科生での伸びが顕著で、高3で熟練レベルのC1へ到達するだろうと実感しています」(尾﨑先生)
本科の学びの特色は、ゼミナールを通して、研究者のように探究できる姿勢を培っていることです。特に2027年竣工予定の新校舎は最先端のラボを配しており、より探究に没頭できる環境が整備されます。
中1では、研究の基礎を知るべく1年間の 「プレゼミ」を行います。論文の書き方や先行研究の調べ方といったアカデミックスキルを身につけると同時に、豊富なワークショップなどを通じて「学びとは何か」を考え、学ぶことの本質にアプローチしていきます。
中1の後半から中2にかけ、自分自身の興味関心とキャリアデザインに基づいた研究課題を絞り込み、所属するゼミを決めます。中2・3では3時間、高1・2は週2時間の4年間をかけて、学年の枠を取り払った形での探究型授業「個人研究」に取り組みます。主体的な学びを堪能しながら、高2では最終論文を執筆します。
生徒たち同士が交流を図ることで切磋琢磨し、やる気に火をつけているサレジアン国際学園。深く思考し、積極的に自ら動き、世界に貢献する国際人を育成しています。