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学校特集

文京学院大学女子中学校 高等学校2023

時代に先駆けた教育を目指し、
挑戦を続ける。

掲載日:2023年3月1日(水)

 2024年に創立100周年を迎える文京学院が開校したのは、1924年(大正13年)。前年度に起きた関東大震災で甚大な被害を受けた東京では、多くの女性たちが生活に苦しんでいました。そのような女性たちに自立の手段として裁縫の技術を習得させようと、弱冠22歳の島田依史子が開学したのが同校です。
 時代に先駆けた教育を志し、早くから国際社会での活躍を意識したグローバル教育に取り組んできました。また、近年は科学分野での躍進もめざましく、JSEC(高校生・高専生科学技術チャレンジ)をはじめとする各種大会、コンテストで上位に入賞し、実績を積んでいます。
 2012年には、スーパーサイエンスハイスクール、2015年には、スーパーグローバルハイスクールアソシエイトとして、文部科学省からの指定を受けました。
 2021年4月に教育提携を結んだアオバジャパン・インターナショナルスクールの文京キャンパスが、2022年1月に同校のインター共用棟に開校しました。両校が連携した教育内容にも学校内外から大きな期待が集まっています。

文京学院なら叶う
英語が日常にある毎日

■英語を学ばない!英語で学ぶ!
●ネイティブ教員の専門性を生かしたコラボ授業

文京女子_中学2年生社会科のコラボ授業の様子。中学校では、数学や体育のコラボ授業も行われている。
中学2年生社会科のコラボ授業の様子。
中学校では、数学や体育のコラボ授業も行われている。

 文京学院では、日本人教員とネイティブ教員がペアで行うコラボ授業を行っています。英語以外の教科を英語で学ぶだけでなく、同じ教科、事柄であっても、学び方も、学ぶ視点も異なることに気づくこともコラボ授業の狙いだそうです。島田美紀中学校副校長先生(グローバル教育担当)にお聞きしました。

文京女子_島田美紀副校長先生
島田美紀副校長先生

島田先生:グローバル社会が生み出す多様性とは、多くの価値観の共存とぶつかり合いを意味します。多様な文化、価値観にふれて柔軟に対応できる力を育むことが今後ますます必要となるでしょう。コラボ授業を通して、視野を広げ、英語運用能力を高めて欲しいと思います。

 実際の授業の様子は、いかがですか。

島田先生:中学生の間はとにかく楽しく学んで欲しいと思っています。今年は、中学1年生は数学でコラボ授業を行いましたが、ゲームを取り入れたこともあり、いつも楽しそうでした。高校生になると、「あなたの考えは何か?」「なぜ、そう思うのか?」と意見を求める機会も増えていきます。最初は戸惑っていた生徒も少しずつ言葉を発し、意見を述べることができるようになっていきます。世界史のコラボ授業では、Longman(米)の教科書を使用しているのですが、「ユダヤ人虐殺」を「虐殺」と表す日本と「genocide」と表す欧米、2つの言葉を並べることで国や民族による解釈の違いに気づいて、生徒たちは言葉を失っていたそうです。このような気づきの機会が貴重だと思います。

●英語で学び、グローバルマインドを育む!国際塾

文京女子_2009年に開設した「国際塾」
2009年に開設した「国際塾」

 多様性豊かな環境で学ぶことが、グローバルマインドを育むという観点から、グローバル人材育成の場として「国際塾」は2009年に開設したので、今年で14年になります。毎年、内容を見直しながら運営してきました。生徒が自身の興味・関心、目標に合わせて受講できるようにしています。もちろん、部活動との両立も可能です。

島田先生:国際塾は、英語で学ぶことをコンセプトにした放課後の講座です。ネイティブ教員の専門性を生かした様々な講座が展開されています。英語を学ぶことを通して、英語運用能力を高めて、国際社会で活躍できる人材を育てていきたいと思っています。大学受験に欠かせない英語検定試験の対策も行っています。

 オールイングリッシュで授業を行う大学も増えてきました。国際塾の学びは、大学入試や大学入学後の学びにも生かされていると聞いています。学校としては、その先まで見据えているということでしょうか。

島田先生:最近は、英語を社内公用語にしている企業も増えています。英語運用能力の高さは、活躍できる場を広げるといえるでしょう。国際塾での学びを生かせるのは大学入試だけではありません。学びを生かして社会に貢献できる人として成長して欲しいと思っています。

 実際に、どのような講座が開設されているのでしょうか。人気の講座を教えて下さい。

島田先生:例えば、国際部の副部長のサイパル先生は、Artに造詣が深いので「Art & Culture」の講座を担当しています。「本物の芸術に触れて欲しい」と、2代目学園長島田和幸の意向で校内には多くの絵画作品が飾られています。それらの作品を観賞することで意見を伝え合うこともあれば、Comicを描くこともあります。国によって、笑いのツボが違うことを知ることも大切な気づきだと思います。

文京女子_中学3年生で準1級を取得したSさん
中学3年生で準1級を取得したSさん

自分の意見を伝えることが楽しくなった!!
 私は人見知りなので、初めて会った人と話すのが苦手でした。Communication Skillsの講座を受講して、苦手意識がなくなった気がします。スピーチコンテストで大勢の人の前で、意見を述べるなど、以前の私には考えられません。昨年9月にマレーシアのイスラム国際大学附属高校を訪問した際は、英語で意見を交わすことが楽しく、自分でも驚きました。


島田先生:中学に入学するまで英検を受けたこともなかった生徒が国際塾で力をつけて、高2で英検準1級を取得、上智大学外国語学部ドイツ語学科に進学した例もあります。現在は、ミュンヘンに留学中で、ドイツが抱える移民問題について学んでいます。移民の子どもたちに母語の教育がされていない功罪について、特に関心があると言っていました。

 大学入試、その先の学びにまで結びついた例ですね。

●「多様性」を楽しむ!インターとの教育提携

「コラボ授業」「国際塾」など、身近に英語がある環境を実現してきた文京学院では、国内名門インターナショナルスクールの1つに数えられるアオバジャパン・インターナショナルスクール(AJIS)の文京キャンパスが開校したことで、「英語が日常にある」環境作りがますます進んでいます。

文京女子_AJISとのコラボバッジ
AJISとのコラボバッジ

島田先生:AJISも、私たちも、学校という場所が「社会をよりよく変えていくための人材を育成する場である」という考え方を持っています。そのために、必要な学びが何か?共に考え、共有できるようにしてきました。教育提携が行われてから2年が経ち、共有できるプログラムも増えています。部活動やボランティアなど、生徒主体で行われている活動も多く生まれています。
◆AJIS After school program
AJIS主催のプログラムに文京学院生も参加しています。英語によるコミュニケーションスキルを磨く機会にもなります。
講座例:模擬国連、ギター、陶芸、実験科学など
◆One Day留学
AJISで1日を過ごすプログラム。授業だけでなく、ランチタイムや休み時間も一緒に過ごし、交流を楽しみます。

 文京学院は、海外にも多くの提携校を持っています。コロナで中止を余儀なくされたプログラムもあったと思いますが、現在の状況はいかかですか。

文京女子_British Hillsでの異文化体験プログラム
British Hillsでの異文化体験プログラム

島田先生:昨年(2022年)9月には、マレーシアのイスラム交際大学付属高校を訪問しました。また、12月には、タイに訪問して科学交流も再開しました。今年3月には、オーストラリア語学研修も実施する予定です。長期留学の受け入れ、送り出しも再開しています。2023年1月にはカナダへ高校2年生の生徒が1年間の留学に出発しました。秋にも、カナダとフランスへ1年間の予定で留学することが決定しています。
 文京学院では、中学3年生の希望者から海外語学研修に参加できます。その準備も兼ねて中学1~2年生の希望者を対象として、British Hills(福島)での異文化体験プログラムを行っています。今年、2年ぶりに再開ができました。はにかみながら英語で答えていた生徒も3日目には堂々と答えるようになり、たくましさを感じました。ユニークな手法によるスピーチのレッスンも受け、スピーキングのコツがつかめたという生徒もいました。

答えのない未来に挑む
2012年、SSHから始まった探究活動

■2022年「高校生・高専生科学技術チャレンジ」で
高校2年生が「ソニー賞」を受賞

 グローバル教育と並んで、文京学院が力を注いできたのが「探究教育」です。外部大会での活躍もめざましく、昨年12月には「高校生・高専生科学技術チャレンジ」で高校2年生が「ソニー賞(339名中5位相当)」を受賞しました。2019年の審査員特別賞(267名中16位相当)に続く快挙となりました。以下、佐藤泰正副校長先生に話をお聞きしました。

文京女子_佐藤泰正副校長先生
佐藤泰正副校長先生

佐藤先生:昨年、12月に最終結果が発表になったのですが、私たちも大変嬉しく思っています。本校の理数キャリアコースでは、入学段階で各自が興味・関心があることをもとに課題研究を設定します。特に、2年生からはその研究成果で積極的に学外の大会に参加するように促しています。ソニー賞を受賞した生徒も、「探究活動」で培ったスキルを生かして、夏期休暇などを利用して、非常に熱心に研究活動に取り組んでいました。
 社会の変化はめざましく、今後どのように変化するのか、誰も予測がつかないと言われています。そのような社会で生きていかなくてはならないからこそ、自分で課題を発見し、掘り下げて、解決を図れる生徒を育てていきたいと思っています。探究活動は、そのために有効な教育活動だと考えています。

文京女子_2022年高校生・高専生科学技術チャレンジ賞では見事「ソニー賞」を受賞
2022年高校生・高専生科学技術チャレンジ賞では見事「ソニー賞」を受賞

 探究教育を通して、生きる力も育っているということですね。文部科学省からの通達で、学校の授業の中に探究活動を取り入れるようになったのは、中学校は2021年4月、高校では2022年の4月からでした。文京学院では、もう少し早くから着手していたと伺っています。

佐藤先生:本校は、文部科学省から2012年にスーパーサイエンスハイスクール(SSH)としてのご指定を受けて活動をしてきました。他校より10年早く「探究活動」に取り組めたと言うことになります。この間に、指導経験を積み、指導のスキルを培ったことは大きかったと思います。現在は、それらを生かして、中学1年生から段階を追って探究教育に取り組ませています。

 具体的に教えて下さい。

佐藤先生:中学校3年間は、探究活動に取り組むスキルの基礎を磨く時間です。「探究活動」は、「言語運用能力」、「数理分析・情報処理能力」、「問題設定・解決能力」という3つの力をつけていくことを目標としています。

文京女子_中学2年生:レールボールを転がし、落下地点を測定して記録する。科学の前提である「再現性」を追究する。
中学2年生:ボールを転がし、落下地点を測定して記録する。科学の前提である「再現性」を追究する。

佐藤先生:学校生活において、自身のいいたいことを正しく相手に伝える力、相手の意見を聞いて正しく理解する力は、あらゆる場面で必要ですが、社会に出てからも必要とされることは変わりません。
 中学1年生は「図形伝言ゲーム」や「温度計」と「体温計」を比較してその違いを表現する、次に違う理由も推測し伝え合うなど、楽しみながら言語運用能力を育むことをスタートさせています。2年生になると、数を正しく測定して記録する練習も始まります。数理分析の基礎を学ぶといった感じです。中学3年生になると、自分で決めた課題に取り組み、下級生の前で、自身の研究成果を報告する機会も設定しています。

■テーマは、20年後の「プリキュア」?!

 先日、取材に伺った時は、高校1年生を対象にアニメ「プリキュア」を題材にした探究の授業が行われていました。活発な意見交換が行われ、大変な盛り上がりを見せていました。

佐藤先生:2004年に始まったプリキュアは、長期間にわたり続く人気アニメです。生徒たちのほとんどが、幼少期の一時期観ていた作品です。そんな親しみ深い作品を題材に探究の授業を行いました。

 確かに、新しい回が始まると、話題になりますね。

佐藤先生:20年近く続いたアニメですが、毎回のテーマやストーリーは、少しずつ変化しています。女の子だけだと思っていたプリキュアに、男の子が加わったり、アフリカ系の女の子が登場したりしました。その時々の社会的背景が反映されたキャラクターやストーリーが設定されています。
 生徒たちが取り組んだ課題は、「20年後のプリキュア」を創造することです。自分たちがこれから生きていく20年後の社会をリアルに想像しながら、その時代に求められる正義の味方、「プリキュア」とはどのような存在かを考えました。

 どんな「プリキュア」が誕生しましたか?

佐藤先生:例えば、介護しながら闘う「プリキュア」なんて非常にリアルな例だと思います。まさに、少子高齢化が進む日本の社会を反映しています。

■各種大会、コンクールにおける実績は、大学入試で高く評価

「探究」は新しい教科なので、保護者世代にはなかなかイメージができないという声もありますが、理系、文系に関係なく、広く学ぶ教科と考えてよいでしょうか。

佐藤先生:未来がどうなるかはだれも予想がつきません。その中で、自分で考えて解決する力を育てることは、生きる力を育てると言っても過言ではありません。また、若い世代ほど、所属を超えて、共に考えていくべきだろうと思います。本校では、外部大会にも、積極的に参加させているのはそのような目的もあります。同世代、他者の意見を知ることは、視野を広げることにもつながります。

 JSEC以外では、どのような外部大会に出場なさっていますか。

佐藤先生:例えば、「キャリア甲子園」ですね。昨年度、挑戦した生徒は入賞履歴を大学入試でも評価していただき、津田塾大学総合政策学部に進学しました。今年度参加する生徒たちも書類審査を通過し、2次審査である動画によるプレゼンを行う段階まで進んでいます。今年3月には、「第10回SAGE JAPAN CUP」に2チームが予選を通過して、出場することが決まっています。大会に出るためには、十分な準備が必要とされます。この過程で、生徒間で意見を交わしながら、他者の意見をリスペクトし、尊重するようになっていきます。
 外部大会は、自分たちで社会が抱える問題や課題を見出し、解決策を提言する場です。実際に出場することで、獲得した知識や成果を他者に評価してもらい、自己肯定感を高め、成長にもつながっていきます。

【画像をクリックすると拡大します】

 大学入試でもたくさんの成果に繋がっていることがよくわかりますね。

佐藤先生:これからの時代に必要なのは、自分で問題点を探して、解決を図る探究的姿勢であり、それが将来を切り拓く武器になると考えています。総合型選抜では、高校3年間の活動実績や学習への意欲が評価されます。合格した生徒たちは、研究に真摯に取り組み、外部発表会にも果敢に挑戦していきました。全国平均と比較して、総合型選抜での合格率(約80%)が高いのは、時代の要請に応えた活動が評価されたからだと思います。

願ったのは、「女性の自立」
文京学院の根幹を築く伝統教育

文京女子_1924年、わずか15名の生徒で始まりました。
1924年、わずか15名の生徒で始まりました。

 多くの女子校で「良き家庭婦人」となるために学んだ「運針」を、文京学院では「自立の手段」として学びました。

島田先生:本校では伝統教育として運針、ペン習字、礼法(茶道・華道)に取り組んでいます。ペン習字」は1日1枚以上、年600枚以上提出することを目標に取り組みます。効果は、字が美しく書けるようになるだけではありません。計画的に書き続けることで計画性が身につき、書き上げた際の達成感は自己肯定感にもつながります。毎年、8割以上の生徒が私たちは、その努力を表して「ペン習字精励賞」を贈っています。

文京女子_ペン習字(左)や運針(右)などの伝統教育にも精力的に取り組みます。
ペン習字(左)や運針(右)などの伝統教育にも取り組みます。
文京女子_茶道
和室で行う茶道の授業は、美しい所作を学ぶ時間でもあります。

 礼法が授業に取り入れられているのは、女子校らしくて魅力的です。

島田先生:依史子は、早くから海外教育視察にも出かけていました。海外に出た時に、日本の文化を理解していることが必要であると、授業に取り入れたと聞いています。給食を導入したのも美しい所作を身につけて欲しいという願いからです。

 伝統の継承と時代先駆けた教育を行い、社会に貢献できる女性を育てている文京学院大学女子中学校 高等学校。これからの時代を担う人材が育つことを期待できる学校であると、改めて実感しました。

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