学校特集
関東学院六浦中学校・高等学校2022
掲載日:2022年12月14日(水)
校訓「人になれ 奉仕せよ」を具現化させるため、生徒たちにどのような学びをさせるか。10年後、20年後の未来を想像しながら「今あるべき教育」を模索し続ける同校は、2021年度から高校に「GLEクラス」を設置しました。このGLEとは、「Global Learning through English」のこと。GLEクラスは、「自分軸を確立し、グローバル社会で未来を切り拓く」をビジョンとして掲げ、「高いコミュニケーション能力を有し、他者と協同し、主体的に創造する力を持つ人」を育てることを目指しています。自分の強みと弱みに気づき、どのように社会に貢献できるかを考える。そして、その理想に対して誠実に向き合い、学びに没頭する中で自分軸を確立していきます。
GLEクラスで伸ばす3つの力
GLEクラスでは、「探究力」「日本語で書く力」「より高い英語力」を伸ばしつつ、キリスト教の精神に基づき、地球規模で物事を考えることができる人の育成を目指しており、そのために特化したカリキュラムを実践しています。
探究力
独自科目「アカデミックラボ」では、学校外の方々と関わり、たくさんの人と出会いながら、課題解決型の学びを進めていきます。2021年度は、㈱ハードオフや様々な学校と、2022年度は、地元横浜の農家やJA横浜の方々や中小企業との合同プロジェクトを行いました。
日本語で書く力
独自科目「論理言語力」や「小論文」を通して、主張を論理的に伝える力を養うことを目標としています。論理言語力検定2級の獲得を目指し、新聞への投稿や外部コンテストなどへも参加しています。
より高い英語力
IELTS5.5~6.5(英検準2級~準1級相当)の獲得を目指しています。オンラインのマンツーマン英語レッスンをカリキュラムに組み込み、英語圏でも評価されるような高いレベルでの4技能獲得を目指します。
GLEクラスが取り組む学びについて、GLEクラス1期生の女子と2期生の男子にお話を伺いました。
GLEクラスを選んだのはなぜですか?
高2女子:「私は中学から入学したのですが、ちょうど高校に進学する年にGLEクラスができることになって、一般クラスに進むかGLEクラスに進むかで悩みました。でも、中学の3年間で英語を学ぶ楽しさを知ったことと、自分たちが1期生で、先生と一緒に一からクラスを創っていけることにすごく魅力を感じてGLEクラスを志望しました」
高1男子:「僕は高校から入学しました。時代がどんどん変わるのなら教育も変わるべきだと考えていたので、高校を見学する際も、一般的な教育とは少し違った教育システムを取り入れている学校を選びました。将来、世の中に役立つ存在になるために進んだ教育を受けたいと思っていたことと、父がアメリカ出身なので外国に対するハードルがそれほど高くなかったため、国際的なクラスに入るのもいいなと思って決めました」
それぞれ1年半、半年が経ちましたが、
GLEクラスでの様子を教えてください
高2女子:「大変だったけれど、一番やりがいを感じたことは『クラス創り』です。高1からクラス委員をしているのですが、1期生ということで先輩もいないし、モデルケースがないなかで、何をしていけばいいんだろうと先が見えないこともありました。みんな育ってきた環境や価値観が違うし、物事の捉え方もそれぞれなので、最初はすれ違いが生じたりして難しかったです。でも、同じ目標を持って集まっている仲間なので、とにかくクラスで話し合いを重ねることで、徐々に同じ方向に向かっていけるようになりました」
高1男子:「僕がこの半年間で一番印象に残っているのは、地理などの授業で日本や世界各国で起きている問題を話し合ったり、他校の生徒とZoomで話し合ったりする機会が多く、それがすごく刺激的なことです。中学の頃は社会問題について知ってはいても、どこかで大人が議論することだと思っていて。でも今は、世の中で起きている問題についてSNSで発信したりもするのですが、『イイね』を押してくださった方のアカウントを確認してみると、たいてい大人の方なんです。やはり、そこには壁があるというか。子どもはまだ、そういう議論はしなくてもいいという風潮が少なからずあるように感じますが、やっぱりすべての世代がそれぞれの考えを持って、議論する必要があるんじゃないかと。だから、GLEクラスで意見を交わし、それを共有するというのは、すごく重要なことだと思っています」
一般クラスとは違う独自の授業では、
どのような学びが行われているのですか?
高1男子:「例えば、先日は地理総合で災害について学びましたが、先生からは『日本の地域名・災害と対策』の2つを調べるように言われただけで、あとは生徒だけでゼロから行いました。グループに分かれて1週間くらいで仕上げ、Googleスライドというアプリを使ってスライドを作ってグループで発表しました」
高2女子:「普通に教科書を開いてノートをとって、という授業はほとんどないですね。先日は現代社会で選挙について学びましたが、模擬選挙を行いました。『区長に立候補しよう』というテーマで、グループで立候補者を立て、公約を考えて選挙動画を作ったんですが、このように、多くの授業では楽しみながら、自分たちで動いて学んでいます。高1の時に国語で『竹取物語』を学んだことも印象に残っていて、ただ教科書を読むのではなく、自分たちで劇を演じました。台本を覚える段階で内容は頭に入りますし、頭だけでなく体に落とし込む授業が多いと思います」
学校説明会でも、生徒さんが活躍しているとか。
どんなことをするのですか?
高1男子:「今年度の説明会では、高1がワークショップを担当するのですが、最初にどういうことを紹介すれば受験生と保護者の方がGLEクラスに興味を持ってくれるかについて議論しました。『新しいことをやっている』『社会問題についてよく話す』『先輩がフレンドリー』『英語を使う機会が多い』など、さまざまな意見をまとめて具体的に話し合っているところですが、このクラスには『教育のあり方』について意見を持っている人が多いので、『理想の教育のあり方』『理想の教室の姿』などについて、受験生と意見交換しようかと考えています。GLEクラスの教育は今の時代に合致している、ということをより多くの人に知ってもらいたいと思っています」
高2女子:「去年のワークショップでは、『世界で活躍する人の要素とは何か?』をテーマに、受験生は受験生同士のグループで、保護者は保護者同士のグループで話し合ってもらい、その後、全体で共有しました。保護者の方が思いのほか盛り上がってくださって、楽しかったですね」
「コミュニケーション能力」と
「高いコミュニケーション能力」の違いって何?
GLEクラスが育成を目指す生徒像には「高いコミュニケーション能力を有し〜」という言葉があります。このことについて、生徒さん方は具体的にどのように考えているのでしょうか。
高1男子:「一般的に言われるコミュニケーション能力には、声の大きさやテンションの高低も影響するように思いますが、自分の意見を丁寧に、わかりやすく、かつ、できればデータなども添えて説明できる話し方が『高いコミュニケーション能力』だと考えています。発表が苦手でも、どんな性格やタイプでもいいけれど、自分の意見を適切に伝えられる力は多くの人が持っていたほうがいいかなと。GLEクラスでは意見交換をすることが多いので、高次のコミュニケーション能力を身につけられると思います」
高2女子:「私の場合は、もともと話すことが好きで、よくも悪くも、思ったことはすぐに言っちゃうタイプです(笑)。でも、クラス委員などを務めるなかで、自分の意見を発信するだけではなく、周囲と調整することを心がけるようになれたと思っています」
高1男子:「GLEクラスに入るまでは、世の中のことについては両親や少数の友達と話すだけでしたが、このクラスで発表などを繰り返していくなかで、自分の意見を理解してもらえる場面が結構ありました。そういう力をもともと潜在的に持っていたのだとしても、間違いなくここで鍛えられたと思います」
GLEクラスで学んだ先で、
どういうことをしていきたいですか?
高1男子:「いろいろな変化や問題の中で柔軟に対応できる人、大げさに言うと、国際社会で活躍できる人になりたいです。世界にはいろいろな言葉で、いろいろなことを思っている人がいて、しかも88億人もいるわけですから、ガラパゴス化した中に止まっているのではなく、世界の公用語とも言える英語を通じて、世界中の人々と一緒により良い世界を創っていける人になりたいです」
高2女子:「GLEクラスには『自分軸を確立し、グローバルな社会で未来を切り拓く』というビジョンがあります。クラス目標もそのビジョン達成のために私たちで考えましたが、クラスとしてのゴールはそのビジョンを達成することだけではありません。一人ひとりにとって、そこはゴールではなく通過点にすぎません。この先、私たちの人生の中で、どういう形であってもいいので、学びを継続していければいいなと思っています」
高1男子:「僕は、人生は一度きりだから特別なことをしたいと思っているので、その他大勢になることや流行に乗ることがあまり好きではありません。世の中には宇宙に行ったり自動運転の車を作ったり、すごい方がたくさんいますが、そのような方たちともSNSなどを通じて関わることができるなど、それほど遠い存在には感じない時代です。ですから、僕も何かしらの影響力を持つ人間になって身近に感じてもらい、みんなと一緒に世の中を創っていきたいです」
高2女子:「私は教師になりたいと思っています。親が教師をしていて憧れを持ったことがきっかけですが、小学校中学校の頃は、夢はあったけれど、そこに近づくためのプロセスがぼやけていました。でも、GLEクラスに入って、こういう教育をもっと広げていきたいと思い始めたんです。そこから、やりたいことがどんどん明確になってきました。学校生活は、先生がいないと成り立ちませんよね。先生が選択肢をたくさん与えてくれる。でも、重要なのは、そこに自由があって、自分で選べること。自分で決めていいんだ、自分で自分の限界を決めなくていいんだということを、将来、子どもたちに伝えたいです」
最後に、GLEクラスのビジョンにある「自分軸」という言葉は、
どういう意味だと捉えていますか?
高1男子:「自分軸を作るためには、自分の意見をしっかり持って、自分の考えを作ること、自分とはどういう存在なのかを理解することが重要だと思っています。例えば、社会問題には正解はないけれど、答えは出さなくてはならない。何かを選択する時には自分の考えが必要になるので、そういう社会問題などに興味を持ち始めると自分のこともわかってくると思います。ただ、選択することにはリスクもあるので、結構ハードルが高いことだとも思います。GLEクラスを選ぶということは、一般クラスとは違うことを学ぶことになります。例えば、一般クラスでは学んでいても、自分たちは学ばないことがあるなど、リスクを背負う可能性もあります。ですから、自分に合った選択をするためにも、自分の意見や考えをしっかり持ち、まずは自分という存在を理解することが重要だと思います」
高2女子:「自分の強みや弱み、得意や苦手というのは、実は自分ではあまりはっきりわかっていないものだと思うんです。私たちも『自分軸って何だろう?』と話したりすることがあるのですが、本当の強みや弱みとかは他人の発言から気づけるものなのかもしれません。ですから、ちょっと気恥ずかしいですが、クラスメートに対しても『この人の良いところを言ってあげよう』と思うようになりました。それが大事なんだと、お互いにそうすることで自分が改善しなくてはならないことに気づけたり、自分の奥底にある強みをさらに伸ばしていくことができるんじゃないかと思います」
この取材の最初に、GLEクラスを担当している先生は1期生の女子のことを「彼女がGLEクラスの担任です(笑)」と紹介してくれました。また、2期生の男子は学校説明会で壇上に立ち、一人で20分間、GLEクラスについて説明したそうです。「入学して3カ月しか経っていないのに、全部話してくれました」と先生。
お二人とも驚くほどしっかりしていますが、資質と主体性があるとはいえ、それ以上に、GLEクラスでの学びが実を結んでいる証といえるかもしれません。