学校特集
明星中学校・高等学校2022
掲載日:2022年9月5日(月)
府中市の緑豊かな場所に位置する明星中学校・高等学校。広い敷地内には、系列の幼稚園と小学校があり、隣接する日野市には付属の明星大学もあります。2023年に創立100周年を迎える歴史ある学校ですが、この数年はさまざまな学校改革に取り組み、その成果が現れてきています。同校の校長を務める福本眞也先生と、校長補佐の藤井泉浩先生にお話を伺いました。
"自分の未来をデザインできる生徒"を育てる
明星中学校・高等学校では、創立100周年を迎えるにあたってビジョンと教育目標を見直し、2022年度から次のように掲げています。
<明星中学校・高等学校ビジョン>
・世界のトレンドに適応し続けるイノベーティブな学校
・人と自然を愛し、自他の価値を大切にする学校
・生徒と教師がともに成長し誇りを持てる学校
<明星中学校・高等学校 教育目標>
・自分の未来をデザインし共創していける人の育成
福本先生「本校についてわかりやすく言いますと、『21世紀を生きていくために必要なものを幅広く学べる学校』です。変化の激しいこの時代に必要なのは、『高い人間力』。不確実な時代をたくましく生きていく力、社会に貢献する力、他者を理解する力、協働する力といった力です。生徒たちには6年間でこれらの力を磨き、自分の未来をデザインできるようになってもらいたいと考えています。未来をデザインするというのは、自己理解と他者理解ができ、世の中や社会に触れ、自分の夢を実現するために大学進学後や社会に出てからの姿をきちんと自分で描けるということです」
こうした考えから、同校では「目に見える学力(=テストで測定できる学力)」と「目に見えない学力(=非認知能力。数値化できない個人の特性)」の両方をクロスさせる学習に力を入れてきました。なかでも特に生徒に大きな成長をもたらしているのが、2020年から始まった「探究学習×SDGs」です。
"目に見えない学力"が身につくSDGs活動
「SDGs推進校」を宣言し、「探究学習×SDGs」のカリキュラムを実践している同校。中1から「総合的な学習」として、1週間(34時間)のうち4コマをその活動の時間に充てています。
さらに高校では、生徒全員がSDGsの目標に沿ったさまざまなテーマで探究を続けています。高1は「社会とつながる(自治体やソーシャルビジネス企業とつながる)」、高2では「社会と関わる(研修旅行の事前学習で事業体験をする)」、高3は「社会に問う(コンテストや総合型入試でまとめる)」とステップを踏みながら、社会に貢献できる人間を目指します。
この「探究学習×SDGs」には、ICTをツールとして使いこなすこと、アクティブラーニング、自然科学・社会科学・人文科学といったさまざまな学びが深く絡んでいることも特長です。
これまで生徒たちが行った取り組み2例をご紹介しましょう。
社会課題となっているプラスチックごみ。ペットボトルではなく、マイボトルを持つことを学校全体で推奨したいという高1生からの発案がきっかけです。校長先生にプレゼンテーションを行い、すぐに製作が決定。「my mizu(日本初の給水アプリサービス)」とコラボをし、明星学苑オリジナルボトルが完成しました。ボトルのデザインは、生徒からの応募による校内コンテストを実施。応募数は200を超えたといいます。最終的に、明星学苑の幼稚園生から高校生までが一丸となってマイボトルを持ち、プラスチック消費の削減に取り組んでいる姿をイメージしたデザインに決定しました。
2022年、高3は研修旅行で大山(鳥取県)・淡路島(兵庫県)へ行きました。そしてその2地域の特産品を東京で紹介する販売会を実施し、その売り上げを地域創生事業へ寄付することに。生徒たちは販売会に向け、大山・淡路島にいる地域事業者20社と事前にリモートでの打ち合わせを何度も行いました。
販売会は東京・国分寺と豊洲の2か所の会場で2日間にわたって実施され、約80品目を販売しました。およそ80万円の売上金を寄付することができました。
福本先生「『オリジナルマイボトル』は、生徒たちが『校長先生、プレゼンをさせてください』と言ってきて始まった取り組みです。『地域創生事業への寄付』も、事業者と生徒の間で必要な打ち合わせがたくさんありましたが、すべて生徒たちが自主的に行いました。これらの活動から育まれるのは、自主性、プレゼン能力、コミュニケーション能力、協働力などといった社会性です。生徒たちは貴重な体験を通し、『目に見えない学力』をたくさん身につけることができるのです」
そのほかにも、生徒たちがジェンダー問題についてスウェーデン大使館に話を聞きに行く機会を設けました。学校にスウェーデン大使を招き、生徒たちがプレゼンを行うといった交流をしたり、女子生徒の制服にスラックスを導入したりと、ジェンダーフリー問題にも積極的に取り組んでいます。
文字にすると簡単ですが、制服のスラックス導入は学校側にとっては実はとてもエネルギーが要ること。生徒の発案から1年で導入に至ったそうですが、それは異例のスピードともいえるでしょう。真の意味での、"生徒の自主性を重んじる"、"時代の流れに合わせて柔軟に対応する"という学校の姿勢が見えてきます。
福本先生「"正解か不正解か"で考えてしまうと、どうしても答えを出すのに時間がかかって対応が遅れてしまいます。だから私は、"適正か不適正か"で考えるようにしているんです。特に新しいことに取り組む際は、ある程度準備が整ったらまずは走り出すのが大事。そして走りながら作る、考える、あるいは軌道修正するといった姿勢でいるようにしています」
同校の「探究学習×SDGs」の活動は府中市にも広く知られることとなり、2022年3月には、府中市との間で「地域活性化に関する協働協定」を締結。府中市にある唯一の私立中学・高等学校として、地域活性化・課題解決に取り組んでいます。「府中市民桜まつり」をはじめとした市イベントの運営補助や、環境・SDGsに関するワークショップへの参画など、その活動の幅は多岐にわたります。
さらに広がっていく同校の「探究学習×SDGs」。校長補佐を務める藤井先生は生徒たちの様子について次のように話します。
藤井先生「SDGsのさまざまな活動や企画はそのほとんどが生徒からの発案によるものです。高2・3生を対象とした『府中市民桜まつり』のボランティア募集があった際には、50名近くの手が挙がり、とても驚きました。生徒たちはこれまで以上に、より自主的に、そして楽しんで取り組んでいる印象があり、大変うれしく思っています」
多くの生徒たちの心に、「やってみたい」「貢献したい」といった前向きな気持ちを芽生えさせ、それが行動に表れてきているのでしょう。
もともとグローバル教育に力を入れている同校ですが、世界を見据えるのと同時に、今後は足元であるローカル(地元)にも意識を向けて、生徒たちは学び、成長していきます。
"汎用性の高い学び"を取り入れた授業を展開
同校では、オリジナルの学習を取り入れている教科があります。
例えば中1~3生の「国語B」の授業では、「他者にきちんと伝わる文章を作成する力」を鍛えるために、マッピング、ベン図、マトリックスといった思考のツールを駆使した学習を行っています。
藤井先生「きちんと客観的な根拠を持って明確化し、文章ないしは発表に落とし込みます。中1生はこちらが課題をあらかじめ設定、中2生は身近なものをいくつか挙げてそこから選ぶ、中3生はイチから自分で設定する......というように、少しずつステップを踏みながら取り組んでいます」
また英語の授業では、GCP(グローバルコンピテンスプログラム※)を展開しています。
※GCP:生徒一人ひとりが自分の視点と身の回りの環境を知ることから世界に繋がることに重きを置き、言語能力の向上とプロジェクトベースの学習を通じて能力向上に取り組むプログラムのこと。
藤井先生「最初は教員も生徒も少し苦労していたようですが、すぐに慣れて今はスムーズに授業を行っています。このような授業で得た学びや知識は、他の教科や『探究学習×SDGs』にもおおいに活かされます。汎用性の高い学びをたくさん取り入れていることも本校の授業の特長ですね」
福本先生「各教科では、教科書の内容をそのまま教えるのではなく、教科を通して"何を"教えていくのかが大事です。今後もそういった授業を増やしていきたいと考えています」
こういった授業で得た知識や学びは、論理的思考力を問うような大学入試の対策にもつながる上、その後も大学での学びやビジネスの場で活かすことができます。
蓄積した成績データにより行う進路指導で伸びる大学合格実績
現役進学は9割を超え、早稲田大学、慶應義塾大学、上智大学といった難関大や国立大学への合格者数が年々増えている同校。その大きな要因は、手厚い進路指導にあります。
同校では、中学入学時からの成績データに基づき、早い段階から生徒一人ひとりに進路アドバイスを行います。それも、ひとりの先生が行うのではなく、担任教師、学年主任、進路担当など複数の教員が多角的な視点から担っています。
進路指導担当が緻密なデータ分析を基に、どう頑張れば志望校に入れるかについてアドバイスをしています。例えば日々の学習習慣や授業の理解度をチェックする、模試の成績結果のデータを反映し、生徒一人ひとりの生活や成績を見直す......など、個々の生徒と真摯に向き合う指導です。
藤井先生「中1のときから、その生徒の得意・不得意科目はもちろん、性格、所属している部活動、志望校などについてすべてデータ化して丁寧に見ています。とても時間がかかる作業ですが、大学合格者数を10年前と比べると、国公立で10倍、GMARCHで7倍という結果が出ています」
同校の生徒たちは高1まで、「特別選抜クラス」または「総合クラス」に所属します。高2以降、「特別選抜クラス」は「MGSコース」に、「総合クラス」は「MGSコース」もしくは「本科コース」に分かれ、それぞれの学力や進路に合わせた学習を進めます。
「MGSコース」は国公立大学・超難関私立大学を目指すコースで、中高一貫生は中学課程で高校教科70時間分の先取り授業を実施。高校では受験の主要科目を強化し、志望校合格に向けたハイレベルな学びを行います。
「本科コース」は、学校生活を充実させながら希望する大学を目指すコースです。進路選びは、自分の興味や適性を見極め、将来自分がどうなりたいかの目標を設定することから始まります。そしてさまざまな分野に対する興味や自律心を育てながら、第一志望大学への現役合格を目指します。
なお、本人の学力と意欲次第では、「総合クラス」から「特別選抜クラス」への編入も可能です。
生徒たちは自分の学力に合った環境で落ち着いて勉学に励み、丁寧な進路支援を得て希望する大学を志します。
生徒の可能性を伸ばす仕掛けが充実
自主的に取り組むSDGs活動、風通しの良い環境、汎用性の高い学び、そして手厚い進路サポート。同校が積み上げてきた枠にとらわれない学びや教育は、生徒たちの意識や行動にも変化をもたらしています。
藤井先生「表情がいきいきとして、明るい、素直な生徒がかなり増えました。そして体育祭や文化祭といった行事にも、さらに前向きに全力で取り組んでいる印象です。私たち教師は後方で見ていても大丈夫なくらいです」
創立100年を目前に、ますます活気づく明星中学・高等学校。福本先生は、今後について次のように話してくれました。
福本先生「今の時代の若い子たちは、"自分にできることは何だろう"と探しているのではないでしょうか。学校にできることは、生徒たちの選択肢を広げて、さまざまなことを体験させてあげること。私は、子どもの可能性は無限だと考えています。子どもたちの限界を大人が勝手に決めつけてはいけないんですね。だから、今後も本校では生徒の可能性がぐんぐん伸びるような仕掛けをいっぱい作ってあげられたらと考えています」
同校でなら、貴重な体験が詰まった6年間を過ごせるでしょう。10代の大切な時期に人間力を磨き、将来は大きく羽ばたきたいと考えている方に、ぜひ学校説明会などに足をお運びいただきたい学校です。