学校特集
佼成学園女子中学高等学校2022
掲載日:2022年10月15日(土)
これからの社会を生き抜くための「人間力」と「活きた英語力」を培い、「新時代の教育」の推進に力を入れる佼成学園女子中学高等学校。この数年は、時代の変化を捉えた学校改革に積極的に取り組み、さまざまな新制度を導入しています。そんな学校の姿が受験生親子を惹きつけており、毎年の志願者数・入学者数は右肩上がりで増加中です。魅力あふれる同校の新制度、カリキュラム、学校生活とは――。教頭の西村準吉先生に伺いました。
特色あふれる教育内容
2019年度は633人、2020年度は679人、2021年度は717人、2022年度は779人。佼成学園女子中学校の入学者数は毎年、レベルアップしながら大きく増えています。一般的には、共学校化もしくは大学付属校化した、新校舎が完成した、学校名が変わったなどの際に入学者数が増えるケースが多いですが、同校の場合はそのどれにも当てはまりません。
西村先生「ありがたいことに、本校の"中身"に共感してくださる方が年々増えているように感じます。例えば学習面では、『グローバル教育』・『英語教育』のイメージが強い本校ですが、それ以外にも主体的・対話的な学びを行う『探究学習』、より深い学びやキャリアデザインに繋がる『高大連携学習』、万全のバックアップ体制で行う『進路指導』などを実施しています。さらに2020年度から今年度にかけては、学校改革やカリキュラムの見直しを行い、さまざまな新しい制度をスタートさせています。手前味噌になりますが、そういった本校の特色一つひとつが、受験生親子の心に響いているのだとしたらうれしいですね」
これらの取り組みのベースにあるのは、校長の宍戸崇哲先生が指針を示す「新時代の教育」。それは、「生徒によって取り組む活動は違っても、自らが関わり、考え、学び、他者と協働しながら、正解のない課題に立ち向かうことを目指す」という教育です。
同校では、今まさにそのための充分な環境が整いつつあります。
時代に合わせた、勇気ある変革
同校が「新時代の教育」を実践するにあたり、取り組んできた学校改革は主に以下になります。
① 中間試験の廃止
「試験がなくても勉強する生徒を育てる」、「(中間テストをなくすことで時間を確保して)探究的な学びの時間を増やす」といった、新時代の学びを意識して行った改革のひとつです。
西村先生「知識のインプット&アウトプットの機会が減ってしまうのでは、という懸念がありますが、それは小テストを頻繁に実施することで解消できます。一夜漬けで慌てて勉強するのではなく、時間をかけて徐々に知識を蓄えられる良さがあります」
② 新しい評価システム「3:3:3:1制」の導入
中間試験の廃止に伴い、評価制度も一新。従来は「中間試験40%、期末試験40%、平常点20%」で評価を行っていましたが、現在は「期末試験30%、アチーブメントテスト・小テスト30%、発表・協働学習・表現活動30%、平常点10%」に変更しています。
西村先生「この配分は現時点では難しい部分もありますが、全体で見ると、従来型学力観による評価が60%、新しい学力観による評価が40%となります。つまり、『発表、協働学習、表現活動も重要な学力である』という考えの元、評価を行っています」
2020年度から高2特進コースの探究学習の一環としてスタートしたのが「少人数ゼミナール(課題研究ゼミ)」。生徒たちは各自の課題研究を進め、論文作成と研究発表を行います。
西村先生「1ゼミあたり、7名ほどで行います。少人数で行うことの良さは、生徒と教師が1対1で対話を重ねていくことができる点。対話を通して、内容をさらに深めていくことができます。ICT(メールやグーグルドキュメントなど)もどんどん活用して、効率的にインタラクティブなやりとりを進めます。少人数ゼミでの研修やスキルは、総合型選抜入試や学校推薦型選抜入試、大学での学びでも役立ちます」
④ チーム担任制の導入
2020年度から1クラス1担任制ではなく、1クラス3担任制を導入しています。教師たちは日々の学校生活での触れ合いだけでなく、生徒一人ひとりの情報を「Classi」で共有し、常に最新の状況を把握しています。
西村先生「生徒たちに多様さが見られる時代ですから、1クラス30人を教師ひとりの価値観で率いていくのはもう難しいのでは、と考えました。チーム担任制なら、何か問題が起こった際もチームで共有して解決していけますし、一つの物事を多様な価値観の中で捉えることができます。生徒たちにとっても、相談したい内容によって教師を選べる良さがあります」
中間試験の廃止やチーム担任制は、学校側としてもおそらく勇気のいる決断だったことでしょう。これらの取り組みからは、「新時代の教育」の実現のために、決して保守的にならず、常にアンテナを高く張って勇気を持って変わっていくという学校のスタンスが透けて見えます。
主体的・協働的な学びを充実させる「スコレータイム」
2022年度からは、新時代の教育にふさわしい時間割として、中・高で「スコレータイム」を導入しました。「ニュージーランド式時間割」をアレンジしたもので、同校では水曜日の2時間目と3時間目の間に25分、それ以外の曜日では朝のホームルームと組み合わせる形で35分を「スコレータイム」として設定しています。
"スコレー"とは、学問や芸術に専念し、幸福を実現するための自由で満ち足りた時間を表すギリシャ語で、スクールの語源でもあります。
西村先生「もともとのきっかけには、大学院時代をイギリス・ロンドンで過ごし、これまでもグローバルな視点を大切にして指揮を執ってきた宍戸校長ならではの発想や考えがあります。ニュージーランドやイギリスの学校では、モーニングティータイムがあるのをご存知でしょうか。お菓子食べたり、お茶飲んでおしゃべりをしたりするとても優雅な時間です。それをそっくりそのままではありませんが、そういった"余白の時間"をつくり、もっと主体的な学びと協働的な学びに充てるべきでは、という考えでスコレータイムの導入に至りました」
通常、学校の時間割は教科がぎっしりと詰まっているため、新たにそういった時間を生み出すことはなかなか難しいことですが、同校には中間テストがないこと、そして各50分で行っていた授業を各45分に短縮することでスコレータイムを時間割に組み込むことができたといいます。
西村先生「今はタブレット端末のおかげで、黒板を消したり、プリントを配ったりという時間がかなり減りましたので、50分の授業を45分に短縮できました。導入してまだ数か月ですが、スコレータイムでは主に担任教師と生徒が面談を行ったり、プレゼンの練習や打ち合わせの時間に充てたりして過ごしているようです。過ごし方は、基本的には生徒の自主性に任せていいと考えています。もちろん、スコレータイムの導入が正解かというのはまだ始めたばかりなのでわかりませんが、"新しい学び"にふさわしい環境づくりのために必要だと感じています」
これから、徐々にこの"余白の時間"のありがたさ、それによって生み出される豊かな体験を生徒と教師それぞれが実感していくのでしょう。日本では他に例を見ない、とても珍しいものですが、同校らしさが表れている時間割です。
高2で「キャリアデザイン」を履修、進路選択へ
高校では、2022年度から新カリキュラムになり、歴史に加えて地理が必修化され、「公共」が新設されました。また「キャリアデザイン」(高2のみで実施)という学校設定科目が加わりました。
「公共」では、課題となっている国の地理的な特徴とその歴史を結びつけて考えるような"地政学的な学び"をイメージしていると言います。そのため「歴史」では、日本史・世界史を融合した近代史にフォーカスを当て、「公共」ではこれまでの「現代社会」の内容にプラスして、日常的な課題解決についても学んでいきます。
西村先生「グローバルリーダーや地球市民の育成という観点において、また現在の緊迫した国際情勢、それによってもたらされる経済への影響という観点から、各国の歴史や思想、宗教などの知識と正しい理解を得ることがこれからの時代に必要不可欠であるという考えです。授業では多角的な視点で考えたり、ディベートを行ったりする予定です」
高2で新設された「キャリアデザイン」は、これまでスーパーグローバルクラス(SGクラス)が行っていた高大連携授業を、特進クラス(SHクラス)でも必修化、進学クラス(SCクラス)では選択制で受けられるようにしたものです。 なお同校では、以前から大学との教育連携を積極的に進めており、成城大学をはじめ、上智大学、東京都市大学などと教育提携の協議をしています。
西村先生「『キャリアデザイン』の授業では、週に1回、午後の時間を使って連携する各大学の講義を受けに行きます。1学期はキャリアデザインの基礎を学ぶ&計画書を作成、2学期は大学講義の受講(対面・オンライン)、3学期はまとめレポートを作成、単位を取得と、進めていきます。大学の教授や専門家、知見のある方の見解を聞くことは、生徒の視野を広げ、考えを深めてくれます。今後は高校生を対象とした講座を行っている複数の大学などの講座も受けられるよう調整したり、大学主催のオープンエデュケーション講座も積極的に活用したりする予定です」
生徒たちは、高2のうちに自分の進路や将来についてじっくりと考え、高3で進路を決定するという道筋をたどります。同校の場合、高3生の6割は、(年内のうちに合格発表がある)総合型選抜入試や学校推薦型選抜入試を受けて早期合格を決めるという状況もあり、高2での「キャリアデザイン」履修はタイミング的にまさに理想です。
中高6年間で得るのは"天井知らずの可能性"
進路指導のキャリアは約20年、現在は佼成学園全体(男子校・女子校)の進路指導を行っている西村先生。同校では、"受験は団体戦"を合言葉に、生徒と教師が一丸となって大学受験に臨む体制を整えていると言います。
西村先生「本校には『校内予備校』といって、受験のノウハウに精通したプロの予備校講師が指導する講習会を行っています。実施するのは、主に放課後と長期休業中です。大手予備校と同レベルの授業をお得な費用で受講できますし、塾への移動時間も省けるので大きなメリットがあるのではないでしょうか。『卒業生チューター制度』では、本校を卒業したチューターが先輩サポーターとして体験談や大学生活について教えたり、さまざまな相談にのったりして受験をバックアップしています」
保護者に向けては、西村先生自らが現在の大学入試の動向や総括、実際の試験内容などをまとめた通信誌「針路21st」を発行し、配布しています。昔と比べ、大きく変化する大学入試について家庭でも知識を深めてもらいたいと尽力します。
西村先生「個人的な話で恐縮ですが、私は大学と大学院時代の計6年間を通して自分の好きな学びを充分に深められたという自負があります。親の職場が大学だったということもあり、大学は子どもの頃から馴染みがある大好きな場所。だから、生徒にも大学では有意義な時間を過ごしてほしいですし、できるだけ希望の進路に進んでほしいと強く思っています。大学名や偏差値ばかりを気にするのではなく、大学で何を学びたいのか、将来はどうなりたいのかを生徒には考えてもらいたいですし、一緒に向き合っていきたいですね」
進路指導に熱意を注ぐ西村先生は、「できれば中学から本校に入学してもらうのが理想的」とも話します。
西村先生「本校の英語の授業は、中1で週に10時間にものぼります。公立中学の約2.5倍もの"英語のシャワー"を日常的に浴びるため、生徒はみんな英語が話せるようになるんです。そのため、大半の生徒は中学生のうちに英検2級、準2級を取得しています。この英語力の高さが後々にアドバンテージになることは言うまでもありません」
さらに、中学から入った生徒の場合、大学受験前にぐんと成績を伸ばすケースが多く見られるそうです。6年間をかけて自分の可能性に気づき、個性と学力を伸ばしていけること、教師と生徒との信頼関係が厚いことなどがその要因としてあるのかもしれない、と西村先生は分析します。
「新時代の教育」が詰まった環境で6年間を過ごす佼成学園女子中学高等学校。教育内容やカリキュラムはもちろん、時間割、制度面などすべてにおいて現状に甘んじることなく、改善や変革を続けています。この学校でなら、自ずとチャレンジ精神も培われることでしょう。将来に必要な力を蓄えるためのすべてがこの学校に詰まっています。