学校特集
江戸川女子中学校・高等学校2022
掲載日:2022年6月15日(水)
創立90年以上の伝統校であり、都内で初めて高校英語科を設置した進学校としても名高い江戸川女子中学校・高等学校。2021年度は国際コースを新設、2022年度には45分制授業を採用するなど、変革の時を迎えています。同校がいま目指すものを、中学入試対策委員の水嶋 瞳先生、英語科主任の熊川美帆子先生に伺いました。
45分授業を取り入れ、より濃密な学習に
江戸川女子中学校・高等学校(以下、江戸女)では、6年間の中高一貫教育を受けた生徒が、2020年度には東京大学現役合格、2021年度には一橋大学、千葉大学、筑波大学などに合格と、優秀な成績を収めています。丁寧で細やかな指導と先取り教育がその一助となっています。
同校では2021年度までは65分制の授業を取り入れていましたが、今年度より45分制授業を採択。45分授業とした理由には、学習指導要領改定への対応と、生徒たちのモチベーション維持という狙いがあります。
今年度より、高等学校の指導要領が改定され、科目数が増加。現状の65分授業ではほかの科目を削らざるを得ないため、45分と細かく区分けし、フレキシブルに対応できるようにしました。
授業が20分間短縮されたことにより、生徒たちの授業への集中がぐっと増しました。
理科教諭でもある水嶋 瞳先生いわく、「もともと65分授業も、説明〜演習〜次の課題と、一連の流れで深い理解を促せるものでしたが、45分に収めるように私たち教員も知恵を絞っています。その結果、密度が濃く、生徒を飽きさせない授業になりました」
難易度の高い内容は、45分授業を2コマ連続させる編成を取ります。それにより、カリキュラムにメリハリを出すこともできますし、大学入試に近い形態で問題演習をすることもできると水嶋先生は教えてくれました。生徒の集中力を高めながら無理なく多くの授業を確保できるため、学習効果も一層向上することが期待されています。
楽しみながら上を目指す、きめ細やかな教育方針
前述のように、難関大学合格者を続々輩出している点も同校の特筆すべき点。これを下支えしているのが、先取り教育や、朝テストや隔週の補習授業、夏休み・冬休みの補習などのきめ細やかな指導です。
中学ではしっかりと基礎力をつけ、さらに上のレベルへ挑戦。高校では普通科Ⅱ類、普通科Ⅲ類、英語科の3つの類・科に分かれてそれぞれの目的に合った学習を展開するのが江戸女の教育方針です。
英語・国語・数学・理科は、中学校の時点から高校の内容に入ります。英語と数学は習熟度別の少人数編成でしっかりと基礎学力を積み、古典は中3からオリジナルテキストを利用し、文法を中心に大学入試に直結した内容を学びます。
高校では夏期・冬期講習や入試直前講習、東大・医学部受験講習などで、弱点を補う、さらに上のレベルの学びに接するなどの機会を設けています。
しかし生徒たちは、受験勉強に特化した詰め込み教育を受けて、成績を伸ばしているわけではありません。
「在学中に突如、成績が伸びる生徒がいます。彼女たちに話を聞いてみると、『勉強するのがすごく楽しくなった瞬間があったんです』と教えてくれました」と水嶋先生。
生徒たちは、実験を多用した探究型の理科の授業や、実社会の流れを取り入れた社会の授業などで、学ぶことへの興味関心を深めます。その上で、総合学習の授業や進路指導を受けます。
例えば、自分史を作る、将来の夢についての作文制作、職業研究とその発表。これらの経験を経て、自分の将来の姿を明確にイメージし始めます。そして、それを実現するためには何を学ぶべきか、今目の前にある課題が将来とどうつながっているかということを自覚した瞬間に、積み重ねてきた努力が花開くのです。
教養も体得できる、江戸女ならではの学校生活
生徒が学校生活の中で、やりたいことを掘り下げて考え、しっかり将来の夢を描いて学び、理想とする人生を歩んでいってほしい、それが江戸女の先生方の願いです。
「中学生、高校生での6年間は、人生の中でかけがえのない時期です。本校の中でたくさん経験を積んで、その上で将来を考えてほしい」とも語ります。
同校では、週に1時間、「特別教育活動」の時間があり、茶道・華道・箏曲をたしなみ、感性を磨く機会を持ちます。
「女性は女性らしく、という時代ではありませんが、礼法を知っておくことは、将来の生活の軸になると考えています。本校では今後も大事にしていきたい授業です」と水嶋先生。
また、中学3年間の音楽の授業で受ける弦楽器のレッスンも同校ならではのカリキュラムです。バイオリン・ビオラ・チェロ・コントラバスの4パートに分かれますが、初めて弦楽器に触れる生徒が大半です。
最初は一音もきれいな音が出せなかった段階から、中3の9月には弦楽発表会で見事な演奏を披露するまで成長します。少しずつ努力を重ねれば結果は表れると実感し、楽器を引きこなす技術と共に、成功体験を得ることもできるのです。
この他にも、海外語学研修や百人一首大会、高1時にはベートーヴェンの第九を教員やお父さんと一緒に歌う第九発表会なども開催されます。毎年行われる校外学習も自主性を重んじたもの。特に、奈良・京都への修学旅行は、自主研修、班行動を3泊4日で約20時間行うことで、自立心を養います。
江戸女の生徒たちは、このような多様な経験を通して、学力とともに、知識や教養をしっかりと身につける学校生活を送ることができるのです。
2021年国際コースが始動。2年目の実態は
様々な海外研修、帰国生の受け入れと取り出し授業など、英語教育に特に力を入れてきた同校。英語教育の先進校としての期待に応えるために、2021年度より「国際コース」を開設しています。
国際コースは、帰国生など特に高い英語力を持つ生徒を集めたコースです。英語特化型入試などで選抜され、現在中学2年生は24名、中学1年生は25名在籍しています。
現・中学2年生である一期生を2年続けて担任する熊川美帆子先生は、クラスの様子を、とてもポジティブでチャレンジ精神に富んでいると語ります。
国際コースは、英語の授業が週9時間用意されています。ネイティブ教員による「Reading Writing Listening Speaking」、探究授業にあたる「Global Studies」、文法をマスターする「Grammar」や美術と音楽のイマージョン教育など、英語力をさらに磨き上げ、協働する姿勢と思考力も向上させる取り組みです。
英語の授業のみ、英検2級以上の力を持つ生徒で構成する「アドバンストクラス」と英検3級以上の力を持つ生徒を対象とした「スタンダードクラス」に分けられます。
「当初は、英語力の差を気にする生徒が出るのではと懸念していましたが、むしろそれに刺激を受け、スタンダードクラスの中には積極的に英検2級にチャレンジして合格した生徒も続々と現れています」と熊川先生。物怖じせずに様々なことに取り組み、授業中もどんどん質問の手が挙がるなど、授業への意欲を感じられるそうです。
授業中に戸惑っている子がいたら周囲の生徒がすぐに教えてあげたり、日本語よりも英語が得意な生徒とは英語メインで話したりするなど、お互いを思いやる心も見られます。
学内の「English Festival」では、「Global Studies」の授業での成績優秀チームが発表を行いましたが、国際コースの代表として彼女たちが選ばれた理由は、英語力よりもプレゼンの内容を評価されたものでした。
「英語を流暢に話すことよりも、何をテーマに語ったか、その内容の充実度合いで選ばれており、それに皆納得していたようです」(熊川先生)
生徒たちを1年間見つめてきた熊川先生によると「英語力だけではなく、お互いの良いところを認め、尊重し合う心が自然と出来上がっています」とのこと。
人間としての成長も大きく遂げている様子が伺えるものとなっています。
得意なことを伸ばしながら苦手分野を克服する、国際コースでの学び
オンライン英会話などで英会話力を磨き、タブレットで洋書を読みこなす、国際コースの生徒たち。反面、彼女たちにも苦手なことがあります。国際コースの発足当初から懸念されていた文法の問題です。
英語を耳から覚えている生徒が多いので、正確な英文を書き記すことは苦手、それも苦手分野は一律ではありません。
「少人数制だからこそ、一人ひとりに目が届き、カバーすることができます。正確な英作文ができるように、3年かけてじっくりと学んでもらう予定です」(熊川先生)
その上で、「英語が書ける、話せる」ということを完成形とせず、より知識を増やし、自分が何をしたいか、英語をツールとして何が実現できるかを考えることを目標とします。そこに、「Global Studies」や英語と音楽のイマージョン教育など、視野を広げ、思考力を高める授業が生きてくるのです。
これから普通科の生徒ともさらに交流を深め、お互いに影響を受け合い、高め合える江戸女の空気を醸成していくことでしょう。
多感な時期に、未来への種を手中にする
水嶋先生と熊川先生のお話の中で何度も出てきたのが「未来に種を蒔く」という言葉です。そして、「中学・高校の6年間の経験はかけがえのないもの、一つも無駄になることはありません」と熊川先生は言い切ります。
勉強に専念して志望大学に入学することも重要ですが、勉強一辺倒では、進学先や社会に出た後につまずいてしまうこともあります。そういったときに、視点を変え、前を向かせてくれるのが、それまでの経験です。
部活に打ち込んだこと、苦手と思いながらも取り組んだ英会話の授業、マレーシアやカナダなど各国を訪れた海外研修、まっさらな状態から始めた華道や茶道、弦楽器の演奏など。現時点では思い当たらずとも何年か後に、これらが折り重なったものが、自分の未来の可能性を広げる下地になり、将来の自分を救うきっかけにもなりうることに気づくはずです。
「大学の推薦入試に挑んだ生徒が、中高6年間で打ち込んだものについて語った際に、面接官の方に『ずいぶんおおらかな学校に通われているんですね』と言葉をかけられ、結果、合格判定を得たそうです。この話に象徴されるように、江戸女の生徒たちには、多くの経験をして、広い視野を持って未来へ向かってほしい」と熊川先生は言います。
6年間の学校生活の中、夢の裾野を広げ、可能性の種を育てる生徒たち。最近は、理系を志す生徒が、それも医療関係を志望する生徒が増えています。
「コロナ禍で医療従事者が不足しているニュースや、医療に携わる両親が苦労している姿を見て、自分も助けになりたいと感じているようです」と水嶋先生。
未知のウィルスを恐れるのではなく、自分の置かれている状況をしっかり把握し、その中で他人を救いたいと思いやる心、社会の一助になりたいという意志を持つ、優しさと自立心にあふれた選択です。
知見や教養を蓄え、たくさんの選択肢の中から希望の道をしっかり掴み取る、江戸川女子中学校・高等学校で得られる未来。「イマを磨く、ミライ輝く」が、今年度の同校のスローガンです。在校生たちの輝く姿を見るために、ぜひ学校説明会や学校見学、オープンキャンパスにご参加ください。