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学校特集

実践学園中学・高等学校2022

学ぶ楽しさを土台に
グローバルで活躍する力を育成
-中学にリベラルアーツ&サイエンスクラスを新設-

掲載日:2022年8月20日(土)

丸の内線・都営大江戸線「中野坂上駅」から徒歩5分、JR線「東中野駅」から徒歩10分という交通の便に恵まれた実践学園中学・高等学校。グローバル社会で活躍できる力を身につける、さまざまな取り組みを推進しています。多元的共生社会で活躍できる人材の育成を目的とした「コミュニケーションデザイン教育」や、今年から新たにスタートした中学の「リベラルアーツ&サイエンスクラス」について、教頭の野﨑啓太先生とグローバル教育部長の岩内孝輔先生に話を伺いました。

3つのプログラムで実践力を培う

【主体的に生き抜く実践力を育てる】
実践_教頭の野﨑啓太先生
教頭の野﨑啓太先生

 学校名が示す通り、6年間で実践的な力を育んでいる実践学園中学・高等学校。建学の精神は「学問の習得を通して、自己実現をめざし、人類・社会に役立つ人材づくりをする」で、「豊かな人間味のある人材の育成・人間性に富み、志が高く、正しい道徳心と高い倫理観をそなえ国際感覚に優れた、社会に役立つ人材を育成する」という教育理念を掲げています。

実践_今の時代を生き抜く知識と知恵を育てる
今の時代を生き抜く知識と知恵を育てる

 同校では「実践力」を知識を獲得するための読解力や記述力などの基礎力と、獲得した知識を使用して思考、判断、表現する知恵(活用・応用力)と定義し、新たな時代を主体的にたくましく生き抜く力を育てています。

 中高6年間を「ベーシック期(中1・中2)」「アドバンス期(中3・高1)」「マスター期(高2・高3)」の3ステップに分けてカリキュラムを構築。その時期ならではの学びを深めることで興味関心を育て、学んだことを主体的に活用し、目標に向けて努力する力や意識を身につけていきます。

実践_

 実践力を育むために「学力養成」「倫理・道徳、リベラルアーツ&サイエンス」「グローバル教育」の3つのプログラムを展開しています。東大名誉教授による理科特別授業、ブリティッシュヒルズ(福島県)での国際的マナー研修、新しい価値やアイデアを考えるイノベーション教育など、6年間で各プログラムに約20種類の取り組みがあります。

「無理やり知識を詰め込むより、学ぶ楽しさを感じて主体的に学んでほしい。それぞれのプログラムには、体験したり友達と協働したり達成感を感じるなど、楽しさを感じられるような工夫を盛り込んでいます」(野﨑先生)。

 学力養成プログラムでも、学んだ事項を確認しつつ、スモールステップの積み重ねで自信を育み、自己肯定感を高め、学ぶ楽しさを実感しつつ学力をつけていくのが基本です。

【コミュニケーションデザイン教育】

 同校のカリキュラムの特徴の1つは、2009年から取り組んでいる「コミュニケーションデザイン教育」です。これからのグローバル社会の中では多様性を受け入れることや他者理解、協調性、表現力といったものが必要です。
 そこでコミュニケーション力を
 1)自ら働きかける力
 2)仲間と共感する力
 3)コミュニケーションの場をつくる力
と定義し、これらの力を磨くために中学の全学年で週1時間、「コミュニケーションデザイン」の授業を行っています。

実践_レゴを使ったワークショップ
レゴを使ったワークショップ

「コミュニケーションデザイン教育」の授業は、アート系ワークショップ(芸術表現体験活動)に加えて振り返り(省察活動)を行い、メタ認知能力(自分を客観的に認知する力)や自己調整能力などを育てていきます。担当教員は教育用レゴブロックをはじめとして様々なファシリテーションの研修を積んだ専任教員が担当。また、青山学院大学社会情報学部附置社会情報研究センターと連携して共同研究も行っており、研修や研究内容を反映させてブラッシュアップを続けています。

「たとえば入学したばかりの中1生は春休みに行った場所や中学での抱負をレゴブロックを使って表現して紹介するなど、実際に手を動かして創作活動に取り組みます。学年が上がるとグループ作業が増え、2学年合同でミニ映画を作って授業内で発表することもあります」(野﨑先生)。

「神動画」というテーマで動画を作成したときは、青学大教授が開発した時間を逆回転させる独自アプリなども活用。各班それぞれがユニークな動画を作成して発表し、共有することで大いに盛り上がりました。「日常の授業の中ではあまり発言しない生徒も、こうしたワークショップではアイデアを出したり出演したりと活躍の場が生まれます。全員が参加できるので、コミュニケーションデザインの授業は生徒たちも元気よく楽しんでいます。今後は理科・社会・英語など他教科の先生の協力も得ながら、さらに表現や活用の幅を広げる授業を展開していきたい」と野﨑先生は話します。

【ICT化で15年以上前から黒板はゼロ】

 ICT化も進んでおり、15年以上前に電子黒板を導入しました。「一部の教室だけでなく、全教室の黒板を排して一斉に電子黒板に切り替えました。教員のほうが"これから授業をどうすればいいのか"と戸惑ったほどです」と野﨑先生は導入当時を振り返ります。

実践_全ての教室で電子黒板を使用
全ての教室で電子黒板を使用

 先生方はこの時から、教科書をパソコンに取り込んで授業用のスライドを作ったり、画像や動画を教材用に加工したりするようになり、機器類を活用していました。そのため、2020年にコロナが感染拡大して登校自粛となった時も、スムーズにオンライン授業に切り替えることができました。

 また、生徒は授業で1人1台ずつ使えるようにChromebookとiPadを備えています。全員に配布すると学校に持ってくるのを忘れることもあるので、あえて配布せず学校に装備。廊下の保管スペースで充電できるようにしてあるため、授業で使うたびにそこから取り出して使えるようになっています。

 充実した教育環境と、時代に即した先生方の丁寧な指導とフォローで、生徒たちは安心してのびのびと学力や個性を伸ばすことができるのです。

中学に「リベラルアーツ&サイエンス(LA&S)クラス」を新設

【高校LA&Sコースの様々な挑戦】
実践_社会と英語の教員免許を持つ岩内孝輔先生
社会と英語の教員免許を持つ岩内孝輔先生

 同校では、4年前まで高校で英語に特化した「英語クラス」を設置していました。しかし「これからの時代は英語教育だけでは真のグローバル人材は育成できない」と考え、大きく方向転換を図りました。2019年に「リベラルアーツ&サイエンス(LA&S)」コースとして新たなスタートを切ったのです。

 LA&Sコースに立ち上げから携わっているグローバル教育部長の岩内孝輔先生は、「難易度の高い日本の大学に合格させる、という価値観を変え、真のグローバル教育に舵を切ることにしました。英語力をベースに、海外や社会との接点も増やして本当の教養を身につけ、将来やキャリアをしっかりと見据えて進路を決める教育を行うのが狙いです」と話します。

実践_「ドラマ」の授業の成果発表
「ドラマ」の授業の成果発表

 高校のLA&Sコースは、この3年間で様々なチャレンジを重ねてカリキュラムを作り上げてきました。企業出身の理事長や校長先生の人脈を活かして社会で活躍している人を招いて話を聞いたり、海外の人にオンラインで話を聞く機会も作りました。ネイティブ教員が英語だけでなく社会や理科の授業を英語で行い、「歴史の出来事を日本ではこう教えるが、外国ではこんな視点で教える」「この分野は海外ではこのようなアプローチをする」など、生徒に新しい気づきを与えます。

「留学前には事前研修も兼ねて、アメリカではポピュラーな『ドラマ』の授業も行っています。ドラマの作り方を学んだうえで、班ごとにテーマに沿ったドラマを作って演じるという内容です。皆で1つのものを作り上げるには協調性も必要ですが、人の気持ちになって発信したり表現したりすることで他者理解も深まります」(岩内先生)。

 こうした授業を受けた上で、高1の終わりから半年間留学をすることで、生徒たちは圧倒的に視野が広がり、他者との違いを意識し、認める感覚が強まります。「生徒たちは『留学前もクラスメートは仲が良かったけれど、互いを気遣ってギクシャクする場面もあった。でも留学後は違いを認めて受け入れることができるようになり、家族のような温かい雰囲気のクラスになった』とよく話しています」(岩内先生)。

実践_地方の課題解決を考える高校の『イノベーション教育』
地方の課題解決を考える高校の『イノベーション教育』

「足元をしっかり固めることで、海外でできることが見えてくる」という考えから、ローカルな視点も大事にしています。昨年度は『イノベーション教育』として、地方の課題を見つけて解決策を考えるプログラムも実施しました。コロナ禍の中だったのでオンラインで宮城や富山など3か所の方に話を聞き、その地方の良さや悩みを引き出しました。そしてグループでワークショップを行い、解決策を考えて発表しました。

 多彩なプログラムで多角的な視野を培った生徒たちは、将来を具体的に考えられるようになります。この春卒業した高校LA&Sコース1期生は10人ですが、それぞれが自分の目指すキャリアを見据えて多彩な進路を選択しました。「留学経験を経て、国際貢献の道を志したり、もっと語学力を磨きたいと英語学科に進んだ生徒もいます。『イノベーション教育』がきっかけで街づくりや地方創生に関わりたいと考えて進路を決めたり、心理学科や看護学科に進んだ生徒もいます。

「高2までのプログラムで目的意識に目覚めた生徒たちは、主体的に受験勉強に向き合うようになります。学力に見合った大学を勧めても『その大学には私のやりたいことが学べる学科がないから受けません』という生徒もいて、これまでの教育の手ごたえを感じました」(岩内先生)。

【2022年度から中学でもLA&Sクラスを始動】
実践_理科・数学や社会も英語で学ぶ
理科・数学や社会も英語で学ぶ

 その流れを受け、2022年度から中学でも「リベラルアーツ&サイエンス(LA&S)クラス」を設置し、今年度は中1生7名でスタートを切りました。授業の時間割は一般クラスと同じですが、ネイティブ教員が担任、岩内先生が副担任を務めており、HRなどは基本的に英語で行います。また、ネイティブ教員は合計8人おり、数学と理科、社会はネイティブ教員と日本人教員のチームティーチングで行っています。

「初学者レベルから英検2級取得者まで英語のレベルには幅がありますが、互いに得意分野と苦手分野で補い合ったり刺激し合える、良い雰囲気のクラスです。たとえば理科の授業で実験映像を見ながらネイティブ教員が英語で説明すると、英語が得意な生徒がクラスメートに通訳する場面も見られます」(岩内先生)。

また、高校のLA&Sコースでは高2で留学しますが、中学からのLA&Sクラスは
・中2夏に2週間、ニュージーランドまたはオーストラリア語学研修
・中3後半に半年間、アメリカまたはカナダ留学
・高2(期間未定)でアジア留学

と、6年間で3回の海外留学を予定しています。高2の留学は語学目的というよりは、「イノベーション教育」で行っている課題解決型授業を海外に広げて実施するのが狙いです。

【日本初のグローバルリーダー養成プログラム】

 また、カリキュラム全体を通して重要視しているのは、グローバルリーダーとなるために必要な「異文化対応力」を測るCQ値です。IQ(知能指数)やEQ(心の知能指数)はよく知られていますが、CQは日本ではまだ耳慣れない言葉かもしれません。

● CQ(Cultural intelligence Quotient=異文化対応力)

●EQ(Emotional intelligence Quotient =心の知能)

●IQ(Intelligence Quotient=知能)


 CQ値は企業のグローバルリーダー研修などでも採用されているもので、早稲田大学の藤井正嗣名誉教授の協力を得て導入を図っています。「日本の中高でCQ値を組み入れたプログラムを導入するのは、わが校が初めてです(岩内先生)」。

 具体的な取り組みとして、昨年は高2生を対象にシンガポール国立大学の生徒とマーケティングをテーマにしたオンライン授業を行いました。生徒たちは商品開発の提案を英語で考えてプレゼンまで実施しました。さらに今年の7月にはカリフォルニア大学バークレー校(UCB)の教授が来日し、留学から帰ってきた高2生に対してビジネス・リーダーシップに関する5日間の授業を行います。

 こうした新たな取り組みを充実させることで、現在の中1生が高校に進学する時にはさらに洗練されたプログラムになっているはずです。

 難度の高いカリキュラムにも前向きに取り組む、意欲が高い中1生たちを、先生は温かい目で見守りながらサポートしています。「我々のモットーは"Enjoy School Life!"。 楽しく過ごすことで主体性が生まれるので、先生が一方的に話す授業ではなく、生徒が楽しく参加できる授業やプログラムこだわっています」と岩内先生は力をこめます。LA&Sクラスの生徒たちのこれからの成長と進路には、大きな期待ができそうです。

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