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学校特集

千葉明徳中学校・高等学校2022

体験を通して考える力と伝える力を養い、「行動する哲人」を育成
明徳カラーを象徴する「土と生命(いのち)の学習」と「課題研究論文」をブラッシュアップ!

掲載日:2022年7月1日(金)

2025年には、創立100周年を迎える千葉明徳学園。2011年に中学校を開校して以来、21世紀型スキルを身につけ、「知」を高めて社会に貢献できる「行動する哲人」の育成を目標に教育を展開してきました。「行動する哲人」とは、高い知識と見識のもとで独自の判断力や意見を持ち、正しい行動ができる人。知識を蓄積するだけでなく、自ら思考し、その考えを表明し合い、周囲と学び合う「思考する学び」が、予測不可能な未来社会を生き抜くために不可欠としています。その土台となるのが、中学1・2年次の「土と生命の学習」と、中学3年次の「課題研究論文」の取り組みです。6年間の中高一貫教育の基礎となる体験重視の取り組みについて、中1学年主任の清水綾乃先生(国語)と1年担任の川村玄季先生(理科)にお話を伺いました。

ゼミ形式の学びを取り入れ、進化を続ける「土と生命(いのち)の学習」

●「日本を知る」ことから始めた「土と生命の学習」

 開校以来、「総合的な学習の時間」で行っている「土と生命の学習」は、中1・2が合同で行う明徳独自のプログラム。中学校の校舎前に作った自然フィールドで体験する米作りや夏野菜の栽培を起点として、人と人、そして社会との「つながり」へと視野を広げていきます。  校是である「行動する哲人」の基礎となる人間教育をどのように具体化するべきか。開校時に総合学習のテーマとしたのは、まず「日本を知る」ことでした。

千葉明徳_校舎前の田んぼで田植えをする中1
校舎前の田んぼで田植えをする中1

清水先生:「日本文化の原点は、米作りにあると考えました。普段私たちが食べている『お米』に焦点を当て、米作りの実体験から、食文化や社会の仕組み、環境などに関心を広げます。そうして人と人、社会、自然、世界との『つながり(協働)』について、生徒が『自分事』として捉えられる機会としてきました」

 豊かな緑の森に囲まれたキャンパスは自然そのもので、都心の学校ではできない実体験教育が可能な環境が整っています。校舎前に作られた田んぼや畑で作物を育てる中で、さまざまな調査、実験、観察を行います。うまくいく時もあればいかない時もあります。そうした成功体験・失敗体験を重ねながら、原因を探る「思考する学び」へと昇華させていくのです。

●6項目の探究テーマ

千葉明徳_テーマごとのゼミ活動で、研究内容をまとめる生徒たち
テーマごとのゼミ活動で、研究内容をまとめる生徒たち

 当初は体験重視のカリキュラムだった「土と生命の学習」ですが、農作業の基本はそのままに、2019年度からゼミ形式を取り入れた新しいカリキュラムにシフトしました。まず、事前に6項目の探究テーマを設定。そして、中1・2合同でグループを作り、1つのテーマについてさらに4チームに分けて、計24チームでさまざまな探究学習を行っていくというものです。
 今年度は次のような6項目のテーマで、チーム編成を行いました。

■「土と生命の学習」の探究テーマ

① 苗づくり
② 水田の改良
③ 明徳米のブランド化・小麦栽培
④ 地域貢献
⑤ 収穫作物を使った調理の工夫
⑥ だれでもどこでもできるような農業の提案


千葉明徳_ワラの再利用プランを実行するグループ。実際に作ってみることが、何よりの学びに
ワラの再利用プランを実行するグループ。実際に作ってみることが、何よりの学びに

 具体的には、日照時間や水量などの条件を変えて最適な苗作りを実証するチーム、田んぼの水量を安定させる方法を探るチーム、廃棄物となるワラの再利用プランやとうもろこしの葉っぱを捨てずに使う方法を考えるなど、一つの探究テーマから考えられる課題はさまざまです。この時に指標とするのはSDGs(持続可能な開発目標)。生徒たちは、体験から見つけた取り組むべき課題を話し合いによって決めていきます。

 稲刈りを終えた中1は、秋から春にかけて次年度のために準備を重ね、4月に学年が上がると、入学してきた新中1生たちにテーマについてのプレゼンをします。自分たちがどのように探究しているのか、何をテーマに掘り下げているのか、新中1に具体的に活動内容を伝えることで、手作りの探究活動が受け継がれていきます。

清水先生:「中1の生徒たちは楽しそうに説明を聞いていて、どのテーマもおもしろそうと興味津々でしたが、中1に自分たちの体験を伝えようとする中2の姿が頼もしく、生徒たちの成長を感じる瞬間でもありました」

●「思考する学び」にシフトチェンジ

 設定された6項目のテーマは、体験の中で生じた疑問や課題に対して、中学生の視点で具体的に取り組める内容になっています。新カリキュラムの作成に携わった川村先生は、昆虫の研究を行っており、同校における研究活動や論文作成指導の牽引役を担う一人です。

千葉明徳_中1担任で生物担当の川村玄季先生
中1担任で生物担当の川村玄季先生

川村先生:「中学開校から10年目に入ろうとしていた時期でしたが、本校の校是である『行動する哲人』の育成に向けて、他と差別化した本校の学びをどう具現化すべきかと考えた時に、本校独自の『土と生命の学習』の内容をブラッシュアップし、明徳カラーをより強く打ち出していこうと考えました」

 それは、農作業や実験などの圧倒的な体験量を確保しながらゼミ学習を進めることで、ポスターセッション形式での発表までの中身を、生徒たちが主体的に取り組んだ成果として深める形にする、というものでした。「その後に続く、中3の『課題研究論文』の基礎をこの時期に構築しておきたいという思いもありました」と、川村先生は話します。

●研究内容を自分たちの言葉でアウトプットする

千葉明徳_ポスター制作に取り組む生徒たち
ポスター制作に取り組む生徒たち

「土と生命の学習」の発表は、スライドを使ったものではなく、紙のポスターを使った形式です。さまざまな色の台紙に要点をまとめ、相手に伝わりやすく、かつ興味を喚起する言葉を選び、グループで見せ方を工夫し、相談しながらレイアウトを考えます。そのプロセスは「思考する学び」そのもの。
 グループで協働しながら作り上げた手作りのポスターをもとに、9月に行われる文化祭「明実祭」で研究発表を行います。研究内容は代表者だけではなく、生徒全員が順番に発表していきます。

同校の特徴である「まとめて・書いて・発表する」プレゼンテーションは、「考える力(論理的思考力)」と「伝える力(プレゼン能力)」を育成する取り組みとして保護者からの評価も高く、毎年受験者数を増やしている一因にもなっています。今春の入学者は、過去最多数となる91名を記録しました。

中3の「課題研究論文」は、「まとめて・書いて・発表する」学びの集大成

●「グループ学習」から「個の学習」へ

 新カリキュラムのもと、「明実祭」終了後の中2の「総合的な学習の時間」は、中3の「課題研究論文」の先取り学習へと移行していきます。中2後半からの約1年半をかけて、論文の章立てや構成、資料の揃え方といった論文を書くためのスキルを身につけ、「グループ学習」から「個の学習」へと転換していくのです。

千葉明徳_「課題研究論文」のためのゼミ活動の様子(中3)
「課題研究論文」のためのゼミ活動の様子(中3)

 課題研究において核となるのは、まさに「課題」(テーマ)の決定。キーワードマッピングを作成したりマンダラートを活用したりしながら、生徒の抽象的なイメージを「見える化」することによって、「自分の興味関心がどこにあるのか」を発見し、その中でまだ解決されていない「課題」を絞り込みます。中3の5月には全員の研究テーマが出揃い、ゼミ活動へと進んでいきます。

川村先生:「イメージを『見える化』すると、生徒自身、物事同士のつながりや文脈が見えるようになります」

 論文執筆活動の拠点となるのは、7〜8名ずつのゼミ活動。比較的研究分野の近いメンバーで構成されるゼミ形式の授業の中で、各自が研究の進捗状況を発表し、他の生徒からの質疑応答や意見交換を重ねながら、調査や研究を進めていきます。そして、9月に行われる中間発表会で、他のゼミの生徒や中1・2から飛んでくる鋭い指摘や疑問を参考にしながら、さらに研究のレベルアップを図りつつ、執筆を開始します。

 論文は年内に仕上げて、2月の「課題研究論文発表会」に向けてプレゼン資料を作成。同発表会では全員が10分間のプレゼンテーションを行うため、先生や他学年の生徒からの質問に答える準備も入念に行われます。

●学園内のスズメバチ調査、校則裁判、BGMと集中力の関係......ユニークな「課題研究論文」

 発表会では、毎年ユニークな研究が披露されます。「千葉明徳中学校周辺におけるスズメバチ類の生活史」というテーマで研究をした生徒がいました。学園内にスズメバチが生息することは確認されていましたが、その種類や生活史は明らかになっておらず、自ら捕獲用トラップを仕掛け、調査を行ったそうです。この生徒は高校に進級した今も、「探究」の時間に調査を継続しています。

千葉明徳_弁護士の方にインタビューをするために、法律事務所を訪れた時の様子
弁護士の方にインタビューをするために、法律事務所を訪れた時の様子

「千葉明徳中学校・高等学校において校則をより良いものにするために」というテーマを扱った生徒は、高等部で校則に不満がある生徒がどれくらいいるか調査を行ったうえで、法律事務所を訪問して現役の弁護士にインタビュー取材をしました。
 また「BGMは集中力向上をもたらすのか」というテーマを扱った生徒は、「歌詞がなくテンポの遅い曲のほうが集中力を向上させる」と仮説を立て、ゼミの仲間に被験者になってもらい、繰り返し実験をしてデータを集めたそうです。

 このように、研究テーマは多種多様。ヒット曲に共通するコード進行を実際に使って作曲に挑戦した生徒や、心理学系のテーマで、先行研究の内容について先生や生徒たちにアンケートをとってまとめる生徒もいました。
 これらの論文は、『課題研究論文集』として1冊の本にまとめられます。

●「試して」を加えて育まれる「トライ&エラー」の気づき

 日常的にICTを使ったグループワークが各教科で行われるなか、総合学習を新カリキュラムに移行して3年。論文内容にも、旧カリキュラムの時とは違う変化が表れていると言います。

千葉明徳_「課題研究論文発表会」でプレゼンテーションをする生徒
「課題研究論文発表会」でプレゼンテーションをする生徒

川村先生:「『まとめて・書いて・発表する』の前に、『試して』を実行する生徒が増えてきました。自分が『試した』ことは過去に例があるのか、『試した』結果から導かれるものは何なのか、なぜ『試して』みようと考えたのか。そういったさまざまな気づきの後に『まとめて』があるのだと理解するようになりました。『試した』体験から得られた気づきが蓄積されて、論文の内容も旧カリキュラムの時とは明らかに違いが出てきています。課題を自分事にするビジョンが、生徒自身の中に育まれつつあると感じています」

「土と生命の学習」で多くの体験をもとにした調べ学習を行い、「課題研究論文」では自ら進んでさまざまな実証方法にトライするため、中学3年間の学びが血となり肉となって、高校での学習活動をさらに活性化させているという手応えがあるそうです。

千葉明徳_高1と中3の合同セッション。課題研究を進めるうえでの質疑応答が行われた
高1と中3の合同セッション。課題研究を進めるうえでの質疑応答が行われた

川村先生:「例えば、『これを考えてみよう』という問いかけに対する生徒たちの抵抗感が一切ありません。知識のある・なし、成績のレベルに関係なく、『まずは考えてみよう』というスタイルが育っています。学びを深めるために大事なポイントである『トライ&エラー』の発想が育まれていて、失敗を恐れることなく、挑んでいく姿勢が身についています。それは、高1の授業をしていて本当に実感しますね」

 中3の生徒たちは1年半の時間を費やして課題研究論文に取り組みますが、こうした取り組みは、高校受験を考えずに過ごせる中高一貫教育なればこそできることでしょう。先生方や仲間たちと深い信頼関係を築きながら、生徒たちは興味・関心のあるテーマを追究しています。

●「行動する哲人」を育てる探究学習と、それを支える先生方のサポート

 明徳の教育理念を体現する「行動する哲人」の基礎は「総合的な学習の時間」にあり、探究学習の時間によって形作られていると、先生方は実感しているそうです。そして、川村先生はこう言います。

川村先生:「やろうと思いさえすれば、ある程度のことならはおおよそ何でもできる。その環境があることが、本校の大きな強みです」

 こうした探究学習を可能にしているのは、恵まれた自然環境や設備だけでなく、少人数教育のもとで生徒の個性や特性に寄り添ったサポートを続ける先生方の熱意です。時には実現不可能なものや奇想天外なテーマを軌道修正しながら、惜しみない愛情で支える先生方の後押しがなければ成り立ちません。

川村先生:「このような学びを生かすために何より肝心なのは、『生徒にやらせる』ではなく、教員が一緒になって楽しむことだと思っています」

 体験をもとにした探究活動の形が、さらに強化された「土と生命の学習」と「課題研究論文」は、生徒の「なぜ?」「どうして?」という知的好奇心と、それを一緒に楽しみながらサポートする先生方の愛情の結晶と言えるかもしれません。

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