学校特集
光英VERITAS中学校・高等学校2022
掲載日:2022年9月1日(木)
2021年4月より共学校としてスタートした「光英VERITAS中学校・高等学校」。個性的な校名はラテン語の「Optima est Veritas(真理こそ最上なり)」に由来しますが、「光」は「希望」や「光り輝く」、「英」は「英知」や「グローバル」、「VERITAS」は「真理」を意味しています。そこには、生徒の知的好奇心の芽やさまざまな課題解決に挑む探究心を伸ばし、真理の探究に挑み、成長し続けようとする心持ちを育てたいという同校の思いが込められているのです。受験生の間でも「光英VERITAS」の名が定着し、男子が入学して2年目を迎えた同校ですが、どのような変化が見られたのか、校長の川並芳純先生にお話を伺いました。
初年度から、入学生は男子が4割。
学校がいっそう活性化している
2020年度まで、女子校として人気を博していた聖徳大学附属女子が、光英VERITASとして共学化して約1年半。男子の入学者が初年度から4割を超えているなど、男女比のバランスも良好です。
「男子の入学者が多いのは、それまでの進学校としての実績があったからだと考えています」と川並校長は言いますが、共学化2年目の今、女子校時代との違いについて伺いました。
川並校長:「2年目を迎えての感想を言えば、『色が増えた、彩りが増した』というところでしょうか。女子校時代の良い点を踏襲しながら、生徒たちが七色から十色、二十色へと新しい色を作っているように思います」
また、川並校長は女子受験生の傾向の変化にも気づいたそうです。女子校時代の受験生は女子校志望で、共学校はほとんど受験しないケースが多かったのが、共学化してからの女子受験生は共学校志望、併願でも女子校をあまり受験しないということがわかったそうです。
川並校長:「共学校志望の女子は、元気でフランクな印象です。一方、男子は女子と成長の進度が違うためか、まだまだ無邪気でかわいいですね(笑)。高校での話になりますが、先日、高2の生徒と一緒に2泊3日で鴨川研修に行きました。その時、地引網体験をしたのですが、男子は服をビショビショに濡らすほどはしゃいでいましたね。その様子を見て、男子がいるということ、共学校になったということを実感しました。ちなみに、共学校の女子は男子の目を気にする、とよく言われていますが、本校の生徒はまったく気にしていないようです。研修では、男子に負けじとご飯をおかわりして食べていましたよ(笑)」
教育の柱「ヴェリタス・トルネード・ラーニング」が、
部活動での男子の活躍を実現!
さらに、「楽しさも増えました」と、川並校長は嬉しそうに話します。
昨年、新しくできた硬式野球部が全国高校野球選手権千葉大会に初出場。24名の1年生部員だけでしたが、12回の延長戦の末、初勝利を飾りました。そして、そのニュースは新聞各紙をはじめ大々的に報じられました。
ちなみに、ある新聞のスポーツ欄では、MLBエンジェルスの大谷翔平選手に1/3、同校の野球部の活躍には2/3のスペースが割かれていたそうです。
川並校長:「創部が昨年の4月で、甲子園の予選となる千葉大会は7月。その間23回もの練習試合をし、戦績は3勝20敗。監督の舘野文彦先生は、本校に赴任する前は千葉県内の公立高校で教鞭を執り、野球部でも40年間指導していました。しかし、舘野先生は今、以前とはまったく違う方法で指導しています」
その指導法とは?
野球部といえば丸刈りが一般的なイメージですが、髪型は自由。また、長時間に及ぶ厳しい練習はしません。活動は夕方5時半で終了し、その後は夜7時まで自習室などでの学習を奨励しています。練習内容や戦術も、部員に考えさせます。試合後には、『なぜ負けたのか』を一人ひとりが考えるように促すなど、「命令しない指導」をしているのです。
川並校長:「共学化にあたって、本校は『答えを求める学び』から『問いを持つ学び』へと本格的にシフトチェンジしました。この『問いを持つ学び』こそが、本校が大切にする『トルネード・ラーニング』。舘野先生の指導法は、まさに本校のトルネード・ラーニングを体現したものなのです」
「トルネード・ラーニング」とは課題を解決するための考え方や手法のこと、探究的な学びの方法です。
まずテーマを設定し、それについて情報を収集して分析。そして、課題を発見し、解決策を考え、発表する。でも、それで終わりではありません。そこからまた新たな課題を発見し、解決策を考え、発表することを繰り返していく。まさに、生徒が自ら学びを高めていく学習法です。
このトルネード・ラーニングによる考え方は、授業はもちろん、行事やクラブ活動、委員会活動など学校生活全般のベースとなっています。
川並校長:「実社会もトルネード・ラーニングの繰り返しですよね。ある一つの課題が解決しても、その先にさらに大きな課題がある。トルネード・ラーニングの手法を身につけることで、自ら学ぶ力を高め、探究的な学びを生涯にわたって続けることができる人材を育成できると考えています」
野球部も、試合後に課題を見つけたらその解決に向け、練習に励む。さらに、次の試合では新たな課題が見えてくる。その新しい課題解決に向け、また練習に励む。この繰り返しがあったからこそ、創部わずか数カ月で、公式戦初戦で勝利を勝ち取ったのです。
川並校長:「大学院生だった頃、私は古代ギリシアにおけるアテネとスパルタの違いについて調べたことがありますが、失敗したのはスパルタです。運動部も、スパルタの指導では伸びません。本校は、スパルタとは逆の指導法をとっています」
共学校になったことで、クラブ活動もより活発になりました。中学の男子は陸上部やバトミントン部、硬式テニス部など、運動部では個人競技に興味のある生徒が多いようですが、一方、文化部では科学部が人気なのだとか。そんななか、ゴルフ部に注目の生徒がいます。
川並校長:「中1の男子が、今年6月に行われた全国大会予選の関東中学校ゴルフ選手権で、スコア65で優勝しました。彼は小学校3年生の頃から、本校に通うお姉さんの練習について行っていたのだそうです。そして、その姿を見て『お姉ちゃんと同じ学校に行きたい』と。本校の空気感、雰囲気が好きで入学したとのことですが、この空気感というのは、女子校時代から大事にしてきた生徒と教員の距離が近いこと、その温かい校風のことだと思います」
川並校長は、彼が将来はプロゴルファーになるのではないかと期待しているそうですが、さらに科学部にも期待を寄せています。
川並校長:「現在、科学部には男子だけで24名所属していますが、ここまでの大所帯は女子校時代にはなかったことです。この変化に注目し、科学に興味を持つ『芽』を大切に育てていきたいですね」
教育の柱の一つに「理数・サイエンス教育」を掲げる同校。科学部は、希望者対象の「わくわく科学教室」などのイベントを主催するなど、「理数・サイエンス教育」を牽引する存在でもあることから、この変化には期待大です。
「探究的な学び」「理数・サイエンス教育」「グローバル教育」で
地球規模で活躍する人材を育成
共学化するにあたって、理数系にもいっそう力を入れたいと語っていた川並校長。2年目を迎え、その成果が現れ始めています。
川並校長:「理科は実験を重視し、実験は年40回を目標にしています。また、校舎の2階をサイエンスフロアとし、7室すべてを理科教室にするなど環境も整備しました。さらに、『誰でもサイエンス』と名づけた、気軽に参加できる実験教室のほか、コンテストなど数々の学びの場を用意しています」
例えば、理科的思考が試される『エッグドロップコンテスト』。これは、校舎の3階(高さ約10m)から卵を落下させるのですが、卵が割れないように、できるだけ軽量の紙のプロテクタを製作するというものです。
川並校長:「女子は一般的な落下傘型が多いのですが、男子は飛行機を折ったりするなど、男女で発想の違いが見られました。エッグドロップコンテスト一つとってみても、考え方の幅というか、どんどん色が増えていくのを実感していますね」
さらに、2020年には東京理科大学と教育連携協定も結びましたが、大学の先生が大学の教育内容を紹介してくれる機会もあります。
川並校長:「東京理科大の学生がインターンとして、授業や学習のサポートをしに来校しています。今後は大学の先生による模擬授業や実験、共同研究のほか、本校の生徒を大学に派遣することも計画しています」
今、理数・サイエンス分野に興味を持つ男子が増えつつあり、その波及効果は女子にも及んでいるとか。「今後も、さらなる環境整備を含めて理数・サイエンス分野の学びを創造し、広げていきたいと考えています」と校長は展望を語ります。
「英語グローバル教育」も、共学化にあたっての改革の大きな柱の一つでした。
川並校長:「英語は、『読む』『書く』『聞く』『話す』の4技能に、『話す』を『コミュニケーション』と『プレゼンテーション』に分けた5領域の力の育成を目指しています。授業は4段階の習熟度別で、オンライン英会話はさらに細分化した5段階の習熟度に分かれています。また、毎週水曜日と土曜日には、iPadを用いて英語の多読も行っています」
また、高1の英語の授業で実施されたものに、早稲田大学の異文化交流センターとの連携プログラムも。早大に通う各国からの留学生との協働作業を通じて、国際理解を深めるというものです。
海外留学などは、コロナ禍の影響で中止となっていますが、オンラインによる同世代の海外の生徒たちとの交流は積極的に行っています。
川並校長:「以前から行っている、台湾の万華中学との手紙での交流『ペンパルプログラム』は継続中です。オンライン交流もオーストラリア、台湾、アメリカ、マレーシアと4カ国5校で行っています。6月には、初めてとなるマレーシアとの交流『マレーシア・日本フェスティバル』に参加しました。これは、日本とマレーシア両国の政府が未来を担う若者たちの交流を図ることを目的に主催したもので、本校の生徒は日本の文化や本校について紹介しました。お互い、部活動の話題で盛り上がっていたのも印象的でしたね」
さらに、昨年度まで高1対象だった「JICA国際協力出前講座」が、中学生対象に。高校生には外務省の方に来校してもらい、外務省の役割などについて講演してもらう「外務省高校講座」が新たなプログラムとして加わりました。
川並校長:「グローバル教育のプログラムはほぼ完成しています。今後は、これらをどう熟成させていくかが課題です」
教育の土台中の土台は、「VERITAS」
川並校長:「探究的な学び、理数・サイエンス教育、英語・グローバル教育など、すべての土台には『小笠原礼法』があります」
小笠原流礼法は週に一回、6年間を通して行われる同校伝統の授業で、卒業と同時に許状がもらえるのも注目すべき点です。
小笠原流礼法は、もともとは室町時代の武士の礼法。美しい振舞や所作は、相手を思いやる心や感謝の心から生まれたもので、礼法ではその精神を培います。また、礼法から日本の文化や歴史を学ぶことは、日本の国について誇りを持って語ることのできる、グローバルな人材を育成することにも繋がっています。
ちなみに、同校の礼法の授業は、日本の伝統的な書院づくりの和室で実施。凛とした佇まいの礼法室で、日本文化とその精神を身体の中から染み込ませていくのです。
理数・サイエンス分野をもっと拡充し、英語・グローバル教育はさらに熟成させていく。でも、その精神的土台となるのは「礼法」。そして、それらを包括しているのが、「VERITAS(真理)」を追い求め続ける「ヴェリタス・トルネード・ラーニング」なのです。
川並校長:「礼法の精神は、光英VERITASの名にある通り、真理を見出す力、探究し続けていく力につながっていますが、本校の教育の土台中の土台は『VERITAS』にあります。例えば、競っている人は、どちらも自分が正しいと主張します。でも、争いを解決するのは『真実』です。ですから、生徒たちには真理を探し続けていく心持ち、態度、そして、それを見つけ出す力を身につけてほしいですし、それを以って『和』を達成できる人になってほしいと願っています」
突然ですが、昨年放映された「古見さんは、コミュ症です」(NHK総合)と、今年放映の「未来への10カウント」(テレビ朝日系)の2つの学園ドラマには共通点があります。ロケ地が、光英VERITASなのです。
ドラマでは、正面から生徒玄関までのプラタナスの並木道や玄関前のけやき広場、広くて明るいカフェテリアや教室、渡り廊下など、同校自慢のキャンパスがストーリーに彩りを加えていました。ちなみに、ロケ場所の詳細は同校HPにも掲載されています。
そして、川並校長もドラマに出演し、有名俳優との共演を果たしています。「絵になる」キャンパスに加えて、「数年前、外環松戸ICがオープンし、都内から本校への車でのアクセスが良くなったことも一因だと思います」と、川並校長。
多方面から注目を浴びる同校ですが、さらにどのような色が増えていくのか、ますます注目です。