学校特集
捜真女学校中学部・高等学部2024
掲載日:2024年9月6日(金)
中学受験の魅力は、学校を選べることにあります。それぞれの学校が教育理念を掲げて独自の教育を行っているため、何を軸に学校を選ぶのか、ということが重要になります。現在、私立中高一貫校で学校生活を満喫している高校生に話を聞くと、「共学校か別学校か、ということは二の次で、自分が通いたい学校かどうかを重視した」と言います。ボーダレス社会だから共学校と決めつけないで、女の子であれば女子校も視野に入れて学校選びを行うと、改めて見えてくるものがあると思います。例えば、学習をスモールステップで積み上げていく安心感であったり、自分らしい進路を考えるキャリア教育であったり、リーダー的な役割を経験する機会であったり...。
捜真女学校では思春期の女子が同性同士の安心できる環境のなかで、自分の可能性に気づける場面が豊富にあることを実感できるはずです。「人生の中で中高の多感な時期を女子校で過ごす価値は大きい」と話す、校長の島名恭子先生と、広報委員長の新井昂太先生に、同校の学校生活についてお話を伺いました。
内面を「ことば」で伝え、受け入れられて、自己肯定感を高める!
それが女子校の素晴らしさ!!
捜真女学校は、今から約140年前の1886年に7人の生徒から始まりました。現在の校舎は横浜の小高い丘の上にあり、4階に上がると東京、神奈川の景色を一望できます。この地に校舎を移転したのが1910年のこと。100年以上の月日を経ていますが、寄宿舎時代から受け継がれてきた家庭的な温かさが、今も思春期真っ只中の生徒たちをやさしく包み込む雰囲気があります。
校長の島名恭子先生は同校の卒業生ですが、「これまでの人生を振り返ると、自分を理解していく多感な時期に、安心して心を解放できる女子校で過ごしたことはものすごく大きかった。生涯の友や、自分で選択をする軸を授かった」と話します。
島名先生:本校には中高合わせて約900名の生徒がいます。1学年4クラスで、6年間、毎年クラス替えを行います。進学先等によるコース分けもあえて行っていません。そのため、クラスのお友だちというより学年全体のつながりが非常に強くなっていきます。 そのつながりは大人になっても変わることはありません。いつ顔を合わせても、10代の頃のようにおしゃべりが弾みます。私がそうだったように、時には励まされて、友人たちも"一人ではない"という心強さを感じながら、それぞれの人生を力強く生きているように思います。
取材に訪れたこの日は高校3年生の一人が生徒たちの前で自身の話をする全校礼拝でした。そこでのある「ことば」が島名先生の心に響いたそうです。
島名先生:その生徒は「自分のマイナスの部分も隠すことなくありのままを話していいという安心感がある」と表現したのです。ありのままの自分を出せる、安心感の中で人間関係が育っている学校なのだということを、改めて実感し、うれしい気持ちになりました。
創立時は、日本では女子教育が軽んじられていた時代でした。「女子に教育の機会を」という切なる願いから生まれた学校ですが、今はもう、そういう時代ではありません。必要な学力を身につけるだけでなく、ボーダレスな社会で生きるために欠かせない、人間関係の土台を築くことを目的として現在の教育活動が行われています。
島名先生:人間関係を学んでゆく時期ですから、日々いろいろな問題がありますし、大変なこともあります。女子校に入ったからといって、すぐさま自己開示できるかというとそうではありません。正直に申し上げると、周囲の目がとても気になる中1、中2あたりの人間関係の難しさは、共学も別学も変わりないと思いますが、徐々に「私は私でいいんだ」という自己肯定感が芽生えていきます。共学よりも別学(女子校)のほうが少し早めに醸成されるのではないかと、感じています。
島名先生はキリスト教教育をしている共学校に勤務した経験があり、礼拝での話を比較してもやはり違いを感じると言います。
島名先生:内面的というのでしょうか。心の少し深いところを「ことば」で伝えて、周囲に受け入れられる。それによって自分はこのままでいいんだと思えること。自分の価値を信じられること。それが女子校の良さではないかと思っています。
個別に学校見学される方を生徒がご案内している時に、よく耳にする捜真の良いところは「先生と生徒の距離が近い」ことです。それも女の子同士という共感しやすい、つながりやすい土壌があってのことだと思います。
女子は自分を開くことが得意です。一方で、開いた相手を受け止める、受け入れることもしやすい特性があるように思います。ですから、考え方が多少違っていたり、趣味が違っていたりしても、 つながる部分を見つけ出せるのです。そうして徐々にできたつながりの中で、「これがやりたい」という声があがった時に、「いいんじゃない」という感じで受け入れて、一緒に行動し始めます。本校にはそれをサポートできるチームワークが教員側にもあるので、生徒の「やりたい」という思いが形になるケースは多いように思います。
中高一貫校なので、6年間成長を見られるという良さもあります。 本校では中学、高校の担当分けなどを行わず、中学から持ち上がったり、高校から、あるいは、途中から学年に入ったりする教員もいます。長く付き合える信頼できる教員がいることも、一方でいろいろなタイミングで教員と関わることができることも大きなメリットです。教員との強いつながりも捜真の特徴の一つです。
本物に触れる機会が日常の中にあふれている。
無意識であっても、シャワーのように浴びることが大事。
「捜真」という校名には、「真理を捜す」という意味があります。
島名先生:例えば、教科学習も含めて体験的に学んでいくなかで、生徒たちの中に価値判断をする時のモノサシ、あるいは軸が作られていく......。それも本校が目指す教育の一つです。
先ほど、高3生の話をしましたが、さまざまな形で行われる毎日の礼拝では必ず誰かが話をします。先生や生徒だけでなく、学外の方にお話いただくこともあります。わずかな時間ですが、その「ことば」に耳を傾け、自分の心にも耳を傾ける、ということを、6年間積み重ねることによって生徒たちはゆっくりと心を開いていきます。
そこで語られる「ことば」にうそがない、ということが重要なのだと思います。それぞれの話者が、うそのない本当の自分を語り、聞き手に受け入れられていく。そんな礼拝の時間は、本物の体験といえます。
歴史を物語るチャペルには本物のパイプオルガンがあります。その音であるとか、校舎のあちこちに飾られている絵画であるとか。日常生活の中にさりげなく本物に触れる機会が散りばめられているのも同校の魅力です。
女子校だからこそできること
島名先生:生徒たちは10代の心が柔らかいうちに、本物をたくさん見ています。それを自覚的に見ている生徒は少ないかもしれませんが、無自覚のうちにシャワーのようにたくさん浴びているという状態、これが非常に大きいと思っています。「何のために学ぶの」「何のために生きているの」「 何をするために生まれてきたの」......。それを探るにはまず、本物を体験することに尽きると思うのです。
女子校だからおとなしい生徒ばかりに違いない、というのは大きな間違いです。女子校だからこそ、生徒会、実行委員会、クラブ活動......、ありとあらゆることを、女子だけの手でやらなければいけません。それも本物の体験です。
島名先生:重たいものも自分たちで運ばなければならないなど、物理的なたくましさもありますが、粘り強く計画を立てて、取りまとめて、調整して......、という作業の中でメンタルも鍛えられ、たくましさを身につけていきます。
大変なことがあっても投げ出さず、最後までやり遂げる先輩の姿を見て、おそらく共学校であれば誰かに任せてしまったであろう子が、自ら手を挙げてリーダー職を引き受け、しっかりとやり遂げる姿を数多く見て来ました。自信はないけれどやってみようかな、と思える土台も、本校ならではのものだと思います。
その土台は授業にも生かされています。主要科目はもちろんですが、特に音楽、美術、技術・家庭などの副教科も、本物の体験にこだわりをもって授業を行っています。
島名先生:体育も本気です。器械体操では本物の高い平均台の上で前転をします。そこから見える景色や感覚を実際に体験している人と、体験していない人とでは必ず違いがあるはず、と信じているからです。先生方がそういう意識をもってそれぞれの授業を行っているので、生徒も一生懸命取り組んでいます。
新井先生:女子校はよく「穏やか」、場合によっては「緩やか」というイメージを持たれていることもあります。しかし、穏やかだから生徒に対して甘くなるというわけではありません。先ほどのたくましさを身につけていくという話や、今の体育の話のように、本物を体験させれば、当然厳しいことも出てきます。それを超える関係性があるからこそできることですし、全員が積極的に取り組むのです。
たしかにそうです。本物の平均台は高さが1m25cmあります。幅は10cmです。その台の上で前転をすることに恐さを感じる生徒もいると思います。わかっていながら、あえて挑戦させる。安全に留意して丁寧に導いていく、それは信頼関係なくしてできることではありません。人との関係を土台に難しい課題を達成できた時の喜びは、大人になっても心に残るはずです。
島名先生:学習方法についても中高生の女の子たちに適した学び方を取り入れられるのも女子校の良さの一つです。例えば、小さな宿題を積み上げたり、小テストを繰り返して覚えていったり、ということをよくやるのですが、それも根底に安心感があるからできることだと思います。教員側が提示するものに対して、生徒たちが概ね素直に受け取り、行動する関係性ができているからこそ、成果が出ているのだろうと思います。
他校の先生とお会いした時に「捜真の生徒は書くことや話すことが上手ですね」と言われることがあります。確かにそうだと思います。大学入試でも総合型選抜などでそういった能力を活かして、合格をいただける生徒がたくさんいます。日々積み重ねたものが、「合格」という形で実を結ぶことが多いのです。
「ことば」で表現することについて、初めは多くの生徒が苦手意識を持っています。しかし捜真での多くの体験、そして自分の思いを受け入れてもらえるという安心感が捜真生を「ことば」で表現できる人へと変えてゆくのだと思います。
みんなと違っていても恐くない!
その気持ちが自分らしい進路を拓く第一歩!
同校では自分を見つける「捜真Vプロジェクト」という、独自の総合探究プログラムを実施しています。「V」は「Value(=価値)」。中1から高3まで、段階的にプログラムが設けられ、テーマと目的に応じた探究活動により、自分に何ができるのかを考えていきます。
島名先生:この探究活動においても「自分はこれが好きだ」と臆さず言える別学の環境が大切です。「仕事」をテーマにしている中3は、興味のある職業を1つ選んで自分でアポイントを取り、インタビューをして「職業レポート」にまとめます。それを見ると、この子はこんなことに興味をもっているんだ、と気づかされることがあります。人の反応をあまり気にせずに「自分の好き」を表現できる環境だからこそできることだと思います。
集大成となる高2では、自分の「好き」という気持ちや「興味」「関心」を手がかりに社会問題を探して探究し、ポスターにまとめて、同級生や下級生、大学教授の前で「ポスターセッション」を行います。授業参観日に実施するため、保護者の方も見ることができます。
島名先生:学習を閉じ込めてしまうのではなく、中高の間に社会とつながり、関心を持つとともに、実際に行動する。そういったことにつなげられたらいいなという狙いがあります。
捜真女学校では、礼拝の時間に先生や生徒がいろいろな話をします。その機会は生徒全員に回ってきます。生徒たちは先輩や先生の話を聞いて、自分の番が来たら何を話そうか、とアンテナを立てていることでしょう。ですから、「いいことだけでなく、よくないことも含めて、包み隠さずに話すことを心がけている」と話す島名先生と新井先生。生徒が感じている先生との距離は、私たちが想像しているよりもずっと近いのかもしれません。
学校選びは肌感覚がとても重要です。ぜひ学校に足を運んで、あたたかい校風や、本物の教育にふれてみてください。女子校のイメージが変わるかもしれません。
島名先生:世界情勢が不確かで、 未来が見えにくい時代だと思います。そうした世の中でも捜真の生徒たちは、自分が認められている存在であることを認識しながら、友だちとつながり、そのつながりの中で自分ができることにチャレンジしています。捜真は安心して過ごせる学校です。ここでは、生徒一人ひとりが「より良い未来をつくるための一人である」という自覚をもって、自分自身を磨き続けることができます。私たち教員は生徒たちを良い市民に育てることに力を尽くす一方、「未来はより良いものへ変えていける」ことを発信していきたいと考えています。未来を生きる女の子たちに、根拠のあるしっかりとした希望を託して育てています。そういうところに賛同してくださるご家庭に、ぜひ一度お訪ねいただきたいと思います。
【内容】
〇国・算・社・理の内容を口頭で尋ね、答える面接を行います。文章の音読や簡単な実験などを含みます。
〇いわゆる筆記試験は行いません。
〇出題例
・文中にある「給食」という言葉の「給(きゅう)」の漢字はどう書きますか。言葉で教えてください。
・1分間で50m動く台車があります。3分間では何km動きましたか。言葉で教えてください。
・文中に日本付近の「海流」についての説明がありますが、あなたが知っている「海流」があれば教えてください。
・こちらの生き物のカードをグループに分け、どうしてそのように分けたのかを教えてください。
〇ことばを用いてのコミュニケーション力が高い受験生に向いている入試です。
※詳細は学校へお問い合せください。