学校特集
桜丘中学・高等学校2022
高校のコース制で希望の進路を叶える
掲載日:2022年8月8日(月)
1924(大正13)年に創立された桜丘中学・高等学校は、まもなく100周年を迎える伝統校です。「勤労」「創造」という校訓を掲げ、学び続ける人材を育てるため、変化に柔軟に対応しながら生徒たちと真摯に向き合っています。2021年度からスタートした高校4コース制が2年目を迎え、海外大学への推薦制度加盟などさらなるチャレンジに踏み出している同校。多彩な取り組みや着実な成果で人気が高まり、今年度の中1は約200人(7クラス)と入学者も急増しています。探究科教科長・中野優先生と進路指導部・内野佑紀先生に、中学・高校の教育内容や高校4コース制の取り組みについて伺いました。
個々に合わせた指導で自主的に学ぶ力を培う
桜丘は、生徒の好奇心や能力に合わせた手厚い指導を行うことで定評があります。中学生の学習サポートツールとして全員が活用しているのが「Self-Study Notes(通称・SSノート)」と「家庭学習帳(通称・カテガク)」。SSノートはPDCA(計画、実行、評価、改善)のサイクルを回し、自分で計画を立ててスケジュール管理をする習慣作りに役立ちます。カテガクは宿題以外に自分が勉強したいことに毎日取り組むもので、足りない部分や苦手な単元を自主的に学び、学習の土台を築いていきます。
「カテガクは、以前は中1は1ページなど、学年ごとに書く分量を決めていました。しかし学習習慣の定着度合いは個人差があるため、学習習慣がついていない生徒は提出すること自体を評価し、既に習慣が身についている生徒には"この内容をもっと深めるといいよ"と内容にアプローチするなど、生徒一人ひとりを見ながらきめ細かく対応しています」と中野優先生は話します。
同校では極端な先取り学習をせず、中学のうちはしっかりと学習の土台を作ることを重視しています。さらにカテガクによるプラスアルファの学習で知的好奇心を満たし、学習習慣の確立と同時に視野も広げます。学ぶ楽しさを経験した生徒たちは、盤石な基礎学力という武器を備えて高校で大きく花開くのです。
同校には中高一貫コースと高校からのコースがありますが、今年3月に卒業した一貫コース生は46人中7人が国公立大進学という実績を残しました。生徒の能力と個性を伸ばす指導と実績が注目を集め、受験生は年を追うごとに右肩上がり。今年入学した中1生は200人弱で、7クラス編成になりました。
能力と個性を伸ばす高校4コース制
多くの受験生から注目を集めている理由の一つが、桜丘高等学校の魅力あふれるコース制です。 一貫生も高入生も、高校では希望や特性を元に次の4つのコースに分かれます。
●難関選抜「スーパーアカデミックコース」
●文理特進「アカデミックコース」
●グローバル探究「グローバルスタディーズコース」
●キャリア探究「キャリアデザインコース」
最難関の国立大学や早慶上理を目指す「スーパーアカデミックコース(Sコース)」は、最上位層がさらに上を目指すことを目指して創設されました。高2(1期生)は48人、高1(2期生)は40人の少数精鋭コースです。
カリキュラムの中で特筆すべきは、早稲田大学の樋口清秀名誉教授による探究ゼミです。高1では樋口教授の専門であるゲーム理論を軸にした授業を10人ほどの少人数で行います。「Sコースは学びの意欲が高い生徒が多く、樋口先生の大学レベルの授業にも必死で食らいついています」と内野先生は話します。
高1では答えのない課題に向き合うための考え方や情報収集など基礎的な手法を学び、高2では各自がテーマを決めて探究に取り組みます。SDGsや脱炭素といった環境問題のほか、個人的に興味のあるユニークなテーマを探究する生徒もいます。最終的にはコンテストなどへの応募も視野に入れて各自が探究に向き合っています。
この授業で刺激を受けた生徒たちは、東京都立大学や電気通信大学などの高校生向けプログラムに応募し、自主的な活動も行っています。「大学が公募している高校生の育成プログラムなどを紹介すると生徒たちから参加希望があり、一緒に必要書類を準備して応募します。長期休暇を使うもので、現在は5人程度が研究施設や大学で研究活動やプログラミングなどを行っています」(内野先生)
英語教育にも力を入れており、週3回は朝のHRの時間を使って各自のレベルに合わせたオンライン英会話に取り組みます。英作文は授業だけでなく自宅でも演習し、外部機関と提携した添削も受けられます。上位大学では記述を求められる入試も多いので、テーマを決めて自分の意見を書いて添削を受けるなど、大学入試を見据えた内容です。
「英検ウィーク」(英検前1~2週間)は、検定の内容を取り入れた授業を行い、希望すればオンライン英会話の受講や受検級に合わせたアドバイスも受けられます。現在の高1は入学時は英検未取得と3級取得者が半数を占めていましたが、1年後には8割以上の生徒が2級以上を取得し、準1級の取得者も出てきました。
また、模擬試験などの偏差値の推移を分析すると、最難関大学に合格できる偏差値の保持者は入学時点の13人から1年後には20人まで増加。教育の成果が着実に、数字に現れています。「Sコースを作ったことで、毎年最難関大学に10人以上を合格させるのが目標」と内野先生は話します。そのために強化しているのが大学入試データの収集と分析と、それに基づいた指導です。内野先生は前職では民間企業で全国模試に携わっていたため、データ分析は得意分野です。「合否判定と実際の合否には誤差があります。そこで私は全国模試のデータを数年分収集し、前職での知識や経験を活かしてオリジナルの合否判定を作り、先生方に共有しています。模試では厳しい判定でも『実際にはその層からもこのくらい合格者が出ている』と生徒の目線を上げるデータ活用を心がけています(内野先生)。
生徒のモチベーションを上げ、能力を引き出す様々なカリキュラムと、先生方の情報収集や分析などの取り組みの両輪で、Sコースは生徒たちの夢を力強く応援しているのです。
国公立大学や早慶上理、GMARCHなどの難関大学を目指す「アカデミックコース(A コース)」は4コースの中でメインのコースです。昨年度の高1は5クラスでしたが、今年は470人12クラスと入学者も急増しています。
リクルートのアプリ「スタディサプリENGLISH」や、河合塾と協業して作成した個別最適化授業なども活用して、個々の能力を伸ばします。また、進学合宿や大学教授による17学問系統講演46大学合同説明会などを実施し、具体的な進学先を考える機会を数多く設けています。
たとえば高1の全員参加の夏期講習では、各業界のトップランナー15人による「社会人キャリア講演」を実施。就職・転職のリアルを話すエージェント、薬学部出身ではなく創薬事業に携わる研究者の講演を始め、臨床心理士やJR社員、ウェディングプランナーや起業家など、多彩な人選が魅力です。
さらにNECと協業して、興味関心のある業界の人と1対1でオンラインインタビューをする場も設けています。憧れの業界で働く人から中長期計画を元にした業界の将来性について話を聞いたり、やりがいだけでなく苦労や収入などの実情も聞くことができ、具体的な働き方を考えるきっかけにもなっています。
進路をしっかり見極めるために、生徒の視野を広げることにも力を注ぎます。先生方は世の中の流れや経済の情勢などをもとに生徒にアドバイスをするので、常に情報収集に努めています。「たとえば車が好きで将来は車に関わる仕事に就きたいと思った時、自動車やエンジンのメーカーを思い浮かべる生徒がほとんどです。でもエンジンは今後は電池に変わる可能性があるし、環境問題や法律と関わる部分もあるから文系でも車に関わる仕事はあります。裾野を広げることで自分の得意分野を活かした職業を考えることができ、行きたい大学や学部学科の選択肢が広がります」(内野先生)。
こうしたキャリアの話を最初にするのは、高1の5月に行う進学合宿です。早い時期からキャリアを見据えることで、生徒たちは自分の希望に合った進路を選択することができるのです。
グローバル社会で活躍するために必要な思考力や判断力、表現力などを育てるのが「グローバルスタディーズコース(Gコース)で、高2は24人、高1は約60人が在籍しています。
ネイティブ教員が副担任となり、3年間の中で16単位の英語の授業はネイティブが行います。HRなどで常に英語を使う環境にあり、Sコースと同様に朝のHRの時間に週3回、オンラインのマンツーマン英会話も行っています。日常的に英語を使う機会が多いので「英語で話すのが楽しいと思える生徒に向いています」と中野先生は話します。
フィリピン・セブ島での10週間の英語研修は、平日1日8時間の英語のレッスンを受けるプログラムです。街灯がなく夜は真っ暗闇になったり、水をそのまま飲めないことなど、調べれば分かることでも経験することが本当の学びになり、その後の探究活動にもつながります。
また、昨年度から海外大学推薦制度に加盟したため、海外大学への進学者も増えています。昨年度は世界大学ランキング50位のマンチェスター大学をはじめ、海外大学に6人が合格。海外大学の合格を得たうえで国内大学を受験し、最終的に上智大学に進学した生徒もいます。これらの実績が評価されてマレーシアの大学からオファーがあり、来年から同大学への学校指定推薦枠も獲得しました。海外大学という選択肢も増え、生徒たちの進学先やキャリアの幅も大きく広がっています。
夢を叶える個性的なキャリア教育を実践しているのが「キャリアデザインコース(Cコース)」。高2が25人、高1が29人在籍し、大学入試の推薦入試に対応できる個性豊かで芯のある生徒を育てます。
「今や大学入学者の半数は推薦入試で決まっています。でも、学校の勉強や行事、部活などで忙しいと、推薦に必要な取り組みに時間を割けない生徒が多いのが事実。そこでCコースは、通常の授業を受けて入れば推薦型の入試でアピールできるような得がたい経験ができるカリキュラムを組んでいます」(中野先生)。
千葉県のピーナッツバターの会社と連携し、高1は落花生の種まきから収穫、加工から販売までを1年かけて経験します。「農家の後継者不足問題、渋皮をむく作業の大変さ、販売の難しさなど、どれも日常では知ることのできない貴重な体験です。商品パッケージの企画でデザイナーと打ち合わせをする場面では、ふだんは目立たない美術が得意な生徒が力を発揮します。工場のペンキ塗りを手伝った時は建設業者に講演してもらい、建築の仕事についても学ぶことができました」(中野先生)。また、販売時にも最初は「買ってください」しか言えず全く売れなかったものの、販売までの経緯やデザインに込めた思いをしっかり伝えることで、1600円のピーナッツバター200個を売り切ることができました。学力ではなく得意なことやポテンシャルを軸に活躍できることを体感できたのです。
こうした体験やインターンを経験することが、大学の志望理由書で自己アピールする際の強力な武器になります。実際、高1の時点でも志望理由書を書き、「まだ足りない」「何が得意で、何をめざしたいか分からない」と感じた部分を補うために新たな活動に取り組みます。その繰り返しを経て、自分の希望する仕事に就くための大学・学部学科を決めたり、志望理由書作成や面接対策につなげていきます。
他のコースと同様、Cコースでも早い時期から大学入試に向けた指導を始めます。高1の4月のガイダンスで「君たちの大学入試は、もう始まっています」と伝えて、生徒たちの意識を高めます。「このコースは人前でのプレゼンが多いため、自分から動く力があり、いろいろなことに挑戦したい生徒に来てほしい」と中野先生は話します。好奇心旺盛でいろいろなことに主体的に取り組みたい生徒を、自走できる人財に育てるコースなのです。
現在、桜丘の教員の約半分は30歳以下で、職員室は常にエネルギーにあふれています。「生徒の希望を叶え、進学実績をさらに伸ばしたい」という思いで先生方が一丸となり、さまざまな取り組みを推進している同校。4コース制の結果が出るのはまだ少し先ですが、さらなる飛躍を目指す同校には今まで以上に期待と注目が集まりそうです。
今まで以上に生徒たちの希望を力強く支える体制が整った桜丘は、今後も進化を続けていきます。歩みを停めずにさらなる飛躍を目指す同校に、今後ますます注目が集まりそうです。