学校特集
共立女子第二中学校高等学校2022
掲載日:2022年9月3日(土)
136年前に、「女性の社会的自立」を建学の精神に掲げて創立された共立女子学園。共立女子第二は、東京ドーム5個分という自然に恵まれた環境のなか、体験重視の多彩なリベラルアーツ教育を展開してきました。そして、高校の新コース制がスタートした今年度から、新たなスクールミッションである「セルフリーダーシップを発揮し、広く社会に貢献できる自立した女性」の育成を目指しています。激動するグローバル時代の中で発揮される「セルフリーダーシップ」とは何か。それを支える同校ならではの伝統的な女子教育や時代に即応する図書館教育について、入試広報部主任の戸口義也先生、同副主任で司書教諭の松田寿(ひさし)先生、家庭科の湊理香先生にお話を伺いました。
社会で求められる「セルフリーダーシップ」の育成
新たに打ち出したスクールミッション「セルフリーダーシップ」とは、仕事に限らず、地域や家庭などそれぞれの場所で活躍の場所を見つけ、自分らしさを発揮して周りに貢献することです。「セルフ」という枕詞には、自分の人生を主体的に生きる意味も込められています。
戸口先生:「学校では、クラスや部活、生徒主体で運営される文化祭・体育大会といった行事など、あらゆる場面で集団生活を学んでいきます。そのなかで、自分はどのような役割を発揮できるのか。求められるのは、『◯○長』という統率型リーダーだけではありません。参謀型、調整型、ムードメーカー、癒し系などさまざまな個性が集うからこそ、誰にでも果たすべき役割があるのです。それぞれが自分らしい個性を発揮する術を身につけていくことは、自分の個性を自覚し、確立するプロセスでもあります。この言葉には、自らが人生の主人公であることを知り、自分で人生を切り開いていく力を育んでほしいという願いが込められています」
トライ&エラーを繰り返すことができる学校という空間だからこそ、そして、ジェンダーバイアスがかからず男子の視線を気にすることのない女子校だからこそ、自分らしさを発揮しながらセルフリーダーシップを培い、身につけていくことができるのです。
人生100年と言われる現代社会において、女性の生き方はますます多様になっています。結婚、出産など複線型の選択を迫られる女性にとって、自分軸を見極めるセルフリーダーシップの獲得はとりわけ重要だと戸口先生は話します。
戸口先生:「自分らしく社会に貢献できる自立した女性の育成は、建学以来、不変の理念です。セルフリーダーシップを発揮して、さまざまな価値観を持つ人々と協働し、共に生きることができる力強さとしなやかさを育んでほしいと願っています」
セルフリーダーシップを確立するうえで重要なことの一つに、体験重視のキャリア教育があります。
同校のキャリア教育は、中3秋の職場体験を中軸として、3年間で「自分を知る・社会を知る・職業を知る」と段階的に視野を広げていきます。同校では、中学からの入学生も高校受験を体験しますが、これも進路選択を考える契機になると考えるからです。
そして高校では、キャリアを実現するためにより具体的に進路指導を行っていきます。
同校では、中高6年間を通して行う進路指導を「針路プログラム」と名づけています。
「針路」とは、大学選びでも職業選びででもなく、自分の生き方を選んでいくこと。人生の航路は一つではありません。セルフリーダーシップを以って、自ら針路を決定していくのです。
体験重視の教育を展開する同校ですが、その一つである伝統的な「礼法」も大きな魅力です。
中学3年間、道徳の一環として「礼法」を学びます。武家の作法を今に伝える小笠原流礼法を基本とし、「座礼・立礼の基本」「食事の作法」など、TPOに合わせた正しい礼儀作法や美しい立ち居振る舞いを身につけていきます。
高校では「マナー講座」として、高2で「華道・茶道・装道」を学ぶ「和躾(なごみ)の日」を設けています。生徒たちの人気が高い「装道」は、浴衣の着付けから帯結びまで一人で着られるようになることを目標としていますが、これは、1クラス分の浴衣&帯(約35セット)を揃えている同校だからこそできること。講師の先生方が同校OGというのも、歴史と伝統のある学校ならではです。
湊先生:「実施して良かったと思う授業の一つに、『手紙の書き方』があります。SNSが発達して便利な通信手段を獲得している今、一度も手紙を書いたことがないという生徒も少なくありません。宛名の書き方や敬語の使い方などを含めて知らないことも多く、中3の職場体験後にお礼状を書く際にとても役立っています。こうした、忘れてはいけない日本人としてのマナーを学校生活の中で学ぶことは、とても大切な時間だと感じています」
また、家庭科の「和裁」の授業(高2)では全員が白生地で法被を製作し、「染色」の授業でそれぞれのクラスカラーに染めるのも同校の伝統です。
黄・黄緑・青・ピンク・緑・水色の6色に染められた法被は、体育大会で高3生のみが着ることができるもの。法被を着て繰り広げられる応援合戦は、体育大会の大きな見どころの一つですが、その姿は後輩の憧れであり、団結力を示すシンボルにもなっています。
湊先生:「こうした伝統的な女子教育が、10年後、20年後の社会生活で役立つことは言うまでもありません。美しい所作と礼儀を備えた日本女性を育てる教育が、本校の学びを支える土台の一つになっています」
「礼法」のほか、「食育」(年2回)や芸術鑑賞も伝統教育の一つ。
「食育」では、専属の管理栄養士の先生が食にまつわるさまざまな知識や「箸の使い方」「配膳の仕方」などのマナー教育を行っています。おせちの由来や行事ごとの料理の知識も、「忘れてはならない」和のマナー。
新鮮な魚の見分け方と調理法を学ぶため、中学の「調理実習」では「一尾鰯の手開き」を欠かさず取り入れています。
情操教育の一環として行っている芸術鑑賞会(年1回)では、今年は、東儀秀樹さんを迎えて雅楽の公演を大講堂で行いました。バレエ、ミュージカル、能・狂言など、本物に触れる芸術鑑賞が生徒の興味・関心を引き起こし、将来の進路にも影響する契機の一つになっています。
中学3年間の独自教育を、高校の新コース制につなげる
中学3年間は、共通カリキュラムによるクラス編成をとる同校。中1・2は基礎学力の理解と定着を図り、中3では英・数・国3教科の一部で習熟度別授業を実施しています。
また、8年前から実践しているオリジナルの英語教育「4技能統合型&レイヤードメソッド」が実を結び、高3の英検準1級取得者が昨年から倍増し、8名(内1名は高2で取得)になるなど、実績を重ねています。
英検準1級取得生にもターム留学経験者が多いのですが、役に立った勉強法として挙げたのが「音読・多読」でした。
同校の英語教育は、4技能すべてを活用してバランスの取れた英語力を育てる「4技能統合型&レイヤードメソッド」で行われています。中1〜3の全学年で、音読を中心に教科書を繰り返し何度も使い込んで習得する「レイヤードメソッド」が特徴で、中学3年間で中学英語を100%マスターさせることを目標にしています。
さまざまな音読トレーニング、ディクテーション、リプロダクションをはじめとしたアクティビティや練習を通して、授業50分のうち45分は生徒が能動的に英語を使った活動をしています。
このように、中学では個別最適化した学びで学力の底上げを図りながら、生徒一人ひとりの進路に寄り添った「多様な学び」を実現する高校のコース制につなげています。
高校は4コース制となりますが、主要5教科に重点を置いて難関大学合格を目指す「特別進学コース」、多様な進路に対応できる総合的学力の向上を目指す「総合進学コース」、英語力強化に特化した「英語コース」、そして併設校である共立女子大学を第一志望とする生徒を対象に高2から始まる「共立進学コース」です。
今年から新設された「英語コース」は、3年間クラス替えなしで「英語で思考する力」を習得。「思考力と行動力を兼ね備えた私らしいリーダーシップ」をキャッチフレーズに、国内外で自分らしく活躍できる英語力とマインドを育成します。
英語コースの主な特徴は、次の通りです。
❶ 卒業時にCEFR B2(英検準1級レベル)が到達目標
❷ 3年間の英語授業数は31単位(特進コースに比べて6年間で9単位多い)
❸ クラス全員のニュージーランドへのターム留学(1年次3学期に約3カ月間)が必須
❹ ターム留学で培った英語力を落とさないように、ベルリッツと連携した「インテンシブ・イングリッシュ」を実施
❺ 4技能統合型のPBL授業の実施
❻ 海外指定校を含めた、独自の進学サポート
戸口先生:「英語コースで学ぶには、英検準2級以上または評定4以上の英語力が必要です。約3カ月間のターム留学では、現地校に原則1〜2人の生徒が学び、ホームステイをしながら英語づけの日々を送ります。海外大学の進学を目指す海外大学進学協定校推薦制度も導入して、卒業後の進路もサポートしています。もちろん、すべての生徒が海外指向である必要はありません。英語力を活かして、国内大学でグローバルビジネスや国際関係論を学ぶのも良いですし、セルフリーダーシップを発揮して、自ら人生を切り開く力を蓄えてほしいと思っています」
2022年3月、同校の現役大学合格率は98%に達しています。併設の共立女子大学・短大との高大連携プログラムや推薦制度の充実とともに、外部大学との併願が可能な「挑戦と安心の進学システム」によって、生徒たちの進路はさらに多彩なものとなっています。
図書館と連携した「3-100運動」も、伝統教育の一つと言えるでしょう。
3年間で100冊の本を読む「3-100運動」は、あらゆる学びの基礎となる読解力強化のために、10年以上も続けられています。
約6万冊の蔵書を誇る同校図書館は、ブラウジングコーナー、文芸図書館、学習閲覧室の3つの顔をもっています。入口近くにはテーマによって選定された「おすすめ本」のコーナーがあり、試験前には大きな丸テーブルが生徒たちで埋め尽くされることも。
長年にわたって司書教諭を務める松田先生は、「調べ物をする場所という従来のイメージからどんどん変わり、図書館の使い方も過渡期の時代に入っています」と話します。
時代の変化に即応するため、昨年から図書館のHPを作成し、電子図書館を運営するなど電子化を推進。共立のIDとパスワードを入力して入る電子図書館には、紀伊國屋書店と提携した蔵書が並んでいます。小説や占い本、マンガで見る歴史や参考書など、電子画面で見やすい書籍を中心に選定されていて、リアル図書館とはまったく違った蔵書となっています。
松田先生:「図書館の電子化は、いつでもどこでも閲覧可能で、情報を検索しやすいメリットがある一方で、テーマごとに深い知識を得るには、まだまだリアル図書館の質・量にかなわないというデメリットもあります。長短両方の特性を念頭に、試行錯誤しながら運営しています。SNSで入手する受動的な情報に接するだけでなく、自ら情報を探す能動的な行為につながってこそ、読書の意味を見出すことができると思うので、ひと昔前に比べると読書離れの傾向にある生徒たちを、図書館にどうやって誘導するかが一番難しいところです。国語科の先生にお願いして、授業中に図書館に連れてきてもらうこともあります」
とはいえ、毎日のように図書館に来る常連の中には、高1ですでに800冊を読んでいる生徒も。「学校説明会で図書館が気に入って入学した」という、元来本好きな生徒だそうです。
松田先生:「本を読むきっかけ作りも重要です。図書館HPで作った『先生が薦める一冊』コーナーは案外と好評で、教員の推薦コメントは影響力がありますね。図書館の位置づけが変わりつつあるなか、教員側にも今までとは違ったスキルや情報発信が求められているのかもしれません。今後は、テーマごとのブックリストの作成や生徒が本を推薦するポップアップカードの作成など、生徒たちを巻き込んだ活動も具体化していきたいと考えています」
136年の歴史をもつ同校では、「社会に貢献する自立した女性」を輩出しています。地元のラーメン屋さんのトップランナーとなっている人から、ハーバード大学でガン撲滅の研究をしている人まで、多彩な卒業生たちがいることが同校最大の財産です。
戸口先生:「本校の魅力について、『第1希望入学者が多いこと』と答えた卒業生がいました。そうした生徒たちに共通するのは、自己肯定感が高いことです。そして、親子二代、三代で共立の卒業生という家庭も多いことから保護者が協力的で、明るく前向きな生徒が多いですね。学校に魅力を感じて入ってくる生徒が多いことは、本校の大きな強みとなっています。そうした生徒たちの発案で、昨年から生徒会とは別組織で「PR委員会(有志)」が立ち上がりました。自分たちの言葉で愛する学校の良さを伝えようとする試みは、セルフリーダーシップの獲得につながる行動です。これからも、生徒がいろいろな人と触れ合っていく機会をたくさん作っていきたいと思っています」
生徒たちの発案で結成された有志団体で、オープンキャンパスや学校説明会で、生徒による学校紹介を実施しています。受験生や保護者に見てほしいところを生徒たち自身が選び、説明文を作って、案内をする。イベント後のアンケートで「先輩たちが優しかった」と好評価を獲得。まさに、セルフリーダーシップを発揮する場面の一つとなっています。