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学校特集

開智日本橋学園中学・高等学校2022

主体的で創造的な学びをより深める、IB認定校の矜持

掲載日:2022年11月12日(土)

2015年の開校時より「世界中の人々や文化を理解・尊重し、平和で豊かな国際社会の実現に貢献するリーダーの育成」という教育目標を掲げる、開智日本橋学園中学・高等学校。2018年から国際バカロレア(IB)の認定校となりましたが、IBの「多様な文化の理解と尊重の精神を通じて、より良い、より平和な世界を築くことに貢献する、探究心、知識、思いやりに富んだ若者の育成」という理念と高い親和性をもっています。学園全体で推し進める探究活動など、同校の学びと学校生活、IBについて、広報部長の井田貴之先生に伺いました。

主体性を育み、伸ばす
開智日本橋の学校生活

開智日本橋_現在は中1の学年団に所属する、広報部長の井田貴之先生
現在は中1の学年団に所属する、広報部長の井田貴之先生

「生徒たちが自ら考え、判断し、主体的に行動すること」を重視する開智日本橋学園中学・高等学校。能動的な探究型の学びを柱に据えた教育を実践しており、一生使える本物の学力と一生学び続けられる姿勢を育んでいます。
 広報部長の井田貴之先生は、IBと融合した同校の教育についてこう話します。
「IB教育の特徴は、単なる知識の習得ではなく、自ら進んで考え、探究し、表現することを目指していることです。
 本校ではIBのシステムに則り、例えばMYPの中で『パーソナルプロジェクト(PP)』という個人探究のプログラムを行う際には、"探究"のみならず、"学びの方法"をあわせて学習し活用しています。また『サービス アンド アクション(S&A)』という課外活動でも、これまで授業などで学んだ知識とスキルを身の回りの実生活で活かせるように取り組んでいます」

 開智日本橋学園では学習だけではなく、すべての学校生活において、IBの考え方を基準とできるようになっているのです。

■国際バカロレア(IB)とは■

スイス・ジュネーブに本部を置く、国際バカロレア機構による国際的な教育プログラム。世界およそ160の国・地域において、約5,500校、うち日本では全国で59校が認定校となっている。
都内の私立中高一貫校で中高ともに認定されているのは、開智日本橋学園と玉川学園の2校のみ。
11〜16歳を対象としたミドル・イヤーズ・プログラム(MYP)は、これまでの学習と社会のつながりを学ばせるプログラム。16〜19歳で学ぶディプロマ・プログラム(DP)では、所定のカリキュラムを2年間履修し、最終試験を経て所定の成績を収めると、国際的に認められる大学入学資格(国際バカロレア資格)が取得できる。

●IBの学習者像●
探究する人 知識のある人 考える人 コミュニケーションができる人 信念をもつ人 心を開く人 思いやりのある人 挑戦する人 バランスのとれた人 振り返りができる人

上記はIB認定校が価値を置く人間性を表しており、IBの使命を具体化したもの。「国際的な視野をもつとはどういうことか」という問いに対するIBの答えを担っている。

キーワードから話し合いを進め、
身近な日常から地続きで発展する生きた学び

開智日本橋_友人たちと共に思考を深めることで大きな気づきを得られます
友人たちと共に思考を深めることで大きな気づきを得られます

 同校の授業は具体的にどのように行われているのでしょうか。
「授業は基本的に、生徒たちが主体的に参加する展開になるので、教員は教えるというよりも、問いを投げかける形になります。通常の授業とは異なり、周りと相談したり、世の中のことと結びつけて考えていくので、生徒たちにとって楽しいはずです」(以下、井田先生)

 授業の特性は、各単元を勉強する時にも表れます。重視しているのは、必要性を感じた上で学べるようにしていること。例えば英語の授業で最初に行われる「自己紹介」のケースを井田先生が教えてくれました。
「『効果的な自己紹介をしよう』と投げかけることで、『効果的』とは何かという方向に話が広がります。例えば自己紹介をする相手が仮にインド人だったら、食べ物に触れたほうがより親しみが湧きやすいのでは、と生徒たちは話し合いと試行錯誤を重ねます。その『効果的な』というフレーズと合わせて、次は『変化』をキーワードに自己紹介を考えます」

 この「変化」という言葉を投げかけられたことで、生徒たちは以前と今の自分を比べてどうなっているかを伝えるために、自己紹介の表現も変えざるを得ないことに気づきます。

「今から過去形を勉強します!というのではなく、自分自身の『変化』について伝えるために必要なことは何か、そのためにはどんなスキルを身につければいいかという流れで学習を行います。
 これらは『逆向き設計』といわれますが、生徒たちに何を理解させたいのか、どんなことができるようになってもらいたいのかということにつながるように、この『効果的な』や『変化』といった投げかけを考えるのが我々の役目です」

 こうした授業は各教科で実践されています。例えば世界地理と家庭科を組み合わせて、世界の国々の料理の調理レポートと共にその国のことを考えるといったように教科横断的に行われます。

 井田先生が担当する数学でも、例えば中1の最初の単元は「正負の数」で、プラスとマイナスを使った数は生活の中のどんなところで出てくるのか、それはなぜなのかをみんなでディスカッションするところから授業が始まります。

開智日本橋_中1は入学後すぐに行われる行事「TBC」で、開智日本橋学園の学びについて中2からレクチャーを受けます
中1は入学後すぐに行われる行事「TBC」で、開智日本橋学園の学びについて中2からレクチャーを受けます

 得点計算や気温といった、自分たちの日常に即した身近な例を上げていく中で、それがなぜ使われているのかという理由なども、みんなでワイワイとディスカッションしながら楽しく考えます。

「こうした話し合いを通じて正負の仕組みを理解して、正負の足し算や引き算などを活用することができます。
 単に教員が身近な例を紹介して終わることもできますが、それを生徒たちが話し合い、自分の中にあるものを出して、内発的な動機づけをすることに効果があると、本校もIBも考えています」

 試験などでも記述を豊富に用いて理路整然とした思考内容をしっかりと表現できる力を磨いている同校。例えば数学のレポートでも、宝探しのヒントとして、角の二等分線や垂直二等分線に知識を必要とする場面を設定するなど、楽しみながら学べる工夫が随所に凝らされています。

 時間はかかるけれども、こうした授業を通じて学びは生きた知識として、生徒たちの中に生き生きと根づいていきます。ゆくゆくは自ら考えられるように、自分で気づきを得られるようになってほしい、という先生方の思いが詰まっています。

連綿と受け継がれる
主体的に取り組む文化

開智日本橋_千葉県鴨川市で行われる「磯のFW」。自分自身の頭で考えることを大切にするので、まずは観察、考察、検証をします
千葉県鴨川市で行われる「磯のFW」。自分自身の頭で考えることを大切にするので、まずは観察、考察、検証をします

 こうした学びを通じて、同校で大切にされている考え方があります。

「子どもたちによく言うのは、あくまでその角度の計算や図形の証明は一例として使い練習しているということです。証明という単元があるから数学として捉えられているだけであって、仮説を立て、複数パターンの検証を行い、その検証結果から考察して答えを導き出すこと、それに伴う読解力や論理的な考え方は全教科で共通して必要だと思っています」

 さらにこうした授業と並行して行われている探究活動では、さらに同校らしさが発揮されます。

「先日中1が行った宿泊行事の『磯のフィールドワーク(FW)』という探究活動では、現地で磯の生物を探究して発表します。東京海洋大学の方々がいつも協力してくださるのですが、学生さんが生徒たちに、この学校外で行われるFWだけを探究活動にするのではなく、日常において探究の姿勢をもつことの重要性を伝えてくださったことが印象的でした」

開智日本橋_中3の「関西FW」は開催日程や宿泊ホテル、行き先も全て生徒たちで考え、手配します
中3の「関西FW」は、探究テーマに沿って訪問先を決め、アポをとることなど、全て生徒たちで考え、手配します

 同校ではFWをはじめ、すべての行事は実行委員長を中心に実行委員である生徒たちが取り仕切ります。生徒には先生に言われる前に自分たちで考え、行動するという文化が涵養されています。

「中1では教員がヒントを投げかける場面もありますが、より良いFWにするためにどうするかを子どもたち自らが考えます。まず教員だけでなく、先輩にも話を聞きにいこうと動き始め、今までどういう風にやってきたか、去年の良かった点、悪かった点を聞いてきて、自分たちの代の具体的な話に落とし込みます。こうした経験はリーダーとしての素養にもつながりますし、主体的に動く姿勢を培っていると思います」

 すべての活動を自ら考え判断し、話し合い、検証し、主体的に行動することで進む同校の生活。IBのプログラムはその一連が明確に言語化されているに過ぎないのです。

自分の興味関心から、
夢や進路につながる探究活動

開智日本橋_開橋祭(文化祭)では探究発表を行い、日頃の学習成果を披露します
開橋祭(文化祭)では探究発表を行い、日頃の学習成果を披露します

 同校の生徒たちはこうしたFWや個人探究であるPP、課外活動のS&Aなど日々の生活を通じて、自分自身の探究テーマを見つけ、深堀りしていくことになります。
 井田先生がこの春まで学年主任を務めていた卒業生たちのエピソードを教えてくれました。

「祖父が福島で農業に従事している卒業生は『風評被害で多大な被害を受けた福島の食品事情を改善したい』と考え、現地・福島の農家の方々に取材を行い、自分にどんな貢献できるかをPPで探究しました。各方面への働きかけを行う中で、最終的には作物の簡単な調理方法などをポストカードにイラスト付きで描いて、日本橋のアンテナショップに置いていただき、生産者さんたちの思いを伝えていました」

 この生徒は立教大学の経営学部・国際経営学科に総合選抜で進学し、視野を国際的に広げながら、現在も探究する姿勢をより一層加速させています。

 またデュアルランゲージクラス(DLC)のS&Aの活動では、学校からほど近いタイ料理レストランでメニューを作り直す活動を行いました。

開智日本橋_プレゼンやレポートなど、表現力は日々磨いています
プレゼンやレポートなど、表現力は日々磨いています

「お店の方にインタビューし、お店の売りは何かを伺った上で、英語と日本語に加え、オーナーの方に教えていただきながらタイ語を記したメニューを作成しました。自分たちが作ったものが実際に貢献できているという気持ちが芽生えると、やはり楽しいですし、我々教員やみんなに宣伝していました。ありがたいことに今でも使ってくださっているようで、こうした具体的な活動もS&Aの醍醐味です」
 この取り組みも基本的には、生徒たちがレストランへの交渉からメニュー作りまでを行いました。

「いまの中1もPPにつながる探究活動に励んでいますが、大学の先生にオンラインでインタビューする子や、渋谷や原宿などのショップに行き店員さんに取材する子がいて、中1からここまで動けるのは素晴らしいことだと思っています」

 同校では生徒一人ひとりが自分の課題に向き合い、次に向けてどうするかということを繰り返し考えながら、トライアンドエラーを重ねて行動し、成長していきます。
 それは、勉強やPP、S&Aだけでなく、部活動や委員会活動でも同様です。例えば部活でも練習方法などを考え、みんなで話し合い、各自が努力を積み重ねた結果、大会などでも成果を出しています。
 こうした活動の一つひとつを明文化して、形として記録に残していくのがIBのひとつの学びです。記録することで意識しやすくなり、成長の証として生徒たちの実感にもつなげ、後輩たちはさらに先輩方を超える活躍を見せているのです。

本質的をついた
グローバルな学びとは

開智日本橋_コロナ禍で生まれた4〜5人のグループで留学生と共に学ぶプログラムは、今後高2の企画として残る予定です
コロナ禍で生まれた4〜5人のグループで留学生と共に学ぶプログラムは、今後高2の企画として残る予定です

 IBのDPでは、最終試験を経て所定の成績を収めると、国際的に認められる大学入学資格(国際バカロレア資格)を取得できます。今春卒業した2期生たちは、DPの評価で高い成果を収めました。世界のDP生の平均スコアは45点満点中で32.4点のところ、同校の平均スコアは37点、最高得点43点を出した生徒も2名いました。これらはMYPからDPへとつながる、探究する学びの過程から得られたものと先生方も手応えを感じており、生徒たちの努力をたたえています。

 井田先生はIBを学んだ2期生の生徒に「国際やグローバルってどういうことだと思う?」と尋ねたところ、「さまざまな国の人とコミュニケーションして、いろいろな国の人のことを理解できる状況になること」という答えがすぐに返ってきたそうです。
「この生徒は自分がやりたいことを主体的に見つけてメルボルン大学に進学しましたが、本校の教育目標を体現してくれていると思いますし、IBの理念や本質を理解していると感心しましたね」

開智日本橋_さまざまな出身地や母語をもつ先生や生徒が在籍し、国際色豊かな環境です
さまざまな出身地や母語をもつ先生や生徒が在籍し、国際色豊かな環境です

 同校には、アメリカ、カナダ、オーストラリア、スペイン、インド、シンガポール、南アフリカなど出身のネイティブの教員がいます。帰国生メインのグローバルリーディングクラス(GLC)がありますが、このGLCの生徒はもちろん、リーディングクラス(LC)やDLCの生徒たちも、英語で授業が行われる教科もありますし、こうした環境下のため、海外の方々と話をすることへの抵抗感は少ないのでしょう。

 なお、上記の2期生たちは新型コロナウイルス感染症の影響で、高2で実施されるはずの海外FWを経験できなかった代でもあります。しかし、国内の留学生などとのグループワークなどを通して、国際感覚を養ってきました。

 IBの評価を取り入れている同校では、成績(通知表)は絶対評価を採用しています。例えば数学では、「知識」、「パターン探究」、「コミュニケーション」「実生活」のそれぞれの項目を評価します。知識面は定期テストのほか日々行われる小テスト、コミュニケーションはプレゼンやレポートの執筆、実生活については実際の生活と習ったことが結びつけられているかなどを、さまざまな形式での評価を積み重ねて、トータルで算出します。
 その際に先生方は必ず行っているのが「標準化」です。これは教員個人の主観が入らないようにサンプルなどで、別の教員にも同じように評価してもらいすり合わせをすること。

開智日本橋_行事は自分たちで企画するから、積極的に参加したくなります
行事は自分たちで企画するから、積極的に参加したくなります

「成績が優秀な子というのは、テストの点数などをはじめ、どの基準においても評価は高くなります。逆に中堅より下のゾーンになると、例えばレポートはものすごくいいけれど、素点は赤点だった場合に評価をどうするかという議論は教員の中で出てきます。でも苦手なことがあっても挽回が可能である、得意をより伸ばせるという考え方もできます。
 従来の日本の教育の中での評価の仕方とどうバランスをとるかという視点も必要ですが、IBの特徴でもある多角的な見方というのは1つのキーワードになってくるのだと思います」

「順位も出さないので、生徒たちには『比べるのは昨日の自分だよ』と、格好よく言っています」と井田先生は笑います。

 思考し行動することで、最高の自分を毎日更新しながら突き進む生徒たちを育てている同校。もちろん停滞したときでも、それをありのまま受け入れる土壌はありますし、何より本音で語り合える仲間や頼りになる先生方もいます。
 身近なところから世界まで、多様な視野と価値観、成長したいと努力を続けられる人間としての器を大きく育む、開智日本橋学園の教育に触れてみませんか。

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