学校特集
聖セシリア女子中学校2022
掲載日:2022年6月18日(土)
大切な我が子を私学に通わせるべきか否か。迷っている方にぜひ知っていただきたいのが、聖セシリア女子の教育です。申し分のないキャンパスで、揺るぎない信念に基づいた教育を長年にわたり実践しているからです。創立から93年。時代の波にもまれながらも、一貫して生徒をいつくしみ、幸せに生きるための教えを説いてきました。卒業生が母親になり、娘の受験のために母校を訪れて、やっぱりこの学校しかない、と思うのは、変わらぬ『あたたかい校風』であり、『自分の適性を活かして社会に貢献することが自分の幸せにもなるし、人を幸せにする』という教えであるといいます。 「本校の教育の根幹にあるのは"愛"」、そう話すのは2020年度より学校長に就任した森永浩司先生です。「その解釈はいろいろありますが、私は相手のためにちょっと損をすることだと思います」と語る森永先生に、聖セシリア女子の教育について伺いました。
この数年の進路先は、4年制大学が約90%になっています。特に2020年度は卒業生115名で、国公立・難関私大の合格者数が64名まで伸びました。合格者の多くが、学校での学習を中心にしながら学力を伸ばし、志望校合格にむけてあきらめずに挑戦した生徒たちでした。
2020~2022年(3年間:抜粋)
I.Yさん 早稲田大学 文化構想学部
私が第一志望校に合格できたのは、聖セシリアという素晴らしい環境で学べたこと、先生方のサポートと友人との絆のおかげです。中学1年生からレコーディングスタディを活用し、学習計画を立て、内容を記録する習慣を身につけていたことが、受験勉強でも大変役に立ちました。また、先生方が私に合った学習方法を考えて、細かくアドバイスをしてくださったので、6年間、一度も通塾することなく合格できました。精神面では、先生方の温かい応援に加え、友人同士で励まし合ったことがモチベーションになり、辛い時も乗り切ることができました。
林間都市の文教の中心としてつくられた学校
教育理念は「幸せな人」づくり
本校はカトリック校ですが、女子修道会が母体ではありません。創立者の伊東静江先生が学生時代にキリスト教と出会い、キリスト教の教えの中に新しいタイプの女子教育を見出されて、なんとしても理想の教育を実践できる学校をつくりたいというご自身の熱意と、ご家庭の支援があって開校に至りました。伊東先生のお父様は小田急電鉄の創業者で、小田急江ノ島線を通した時に、林間都市計画の文教の中心として、この学校は創られたのです。
当時(昭和初期)の教育は「三従の教え」(幼きときは親に従え、嫁しては夫に従え、老いては子に従え)が主流でしたが、伊東先生は、やがて女性も男性と対等な立場に立って、自分の手で自分の人生を切り拓き、幸せをつかむ日が来ると考え、その時に幸せをつかめる女性を育てる「幸せな人づくりの学校」を目指しました。
現在も学校にシスターはいません。教職員もほとんどが信者ではありません。学校長の私もそうです。ですから、あまりカトリック色を感じない学校かもしれませんが、カトリックの精神が93年もの間、しっかりと受け継がれてきました。教職員全員が本校の大切にしてきたものを共有しているため、同じ方向を向いて協力し合えるのだと思います。「本校の財産は一に素直な生徒たち。次に協力し合える先生方。職員室で先生方が仲睦まじく話している姿を見て、生徒たちも安心している様子が伺えます。
本校の存在価値は、
「心」と「力」がバランスよく育つこと
21世紀を生きる我々は、その「幸せな人」を「心と力の教育により、バランスのとれた人」と解釈して、幸せな人づくりに取り組んでいます。「力」は学力、知力です。これらは人生を切り拓くために有効な武器になりますが、学んだことを、何のために使うのかを知らなければ、幸せにはなれません。自分は何のために生きるのか。何のために知識を活かすのか。それを知ることが、心の教育の主体であると考えています。
そうした本校の考え方や学習の意味を理解し、今後の学校生活に活かすために、中1の5月に「オリエンテーション」を実施しています。「聖セシリアはどのような学校なのか」「中高6年間に心と体はどう成長するのか」「学習にはどういう意味があるのか 」これらを柱に話をして、生徒たちはカトリックの精神に触れるとともに心構えを持ちます。
「力」をつけるためのカリキュラムにも、
「幸せな人づくり」の学校らしさが表現されている。
カリキュラムにも校風が表現されています。初期にあたるAブロック(中1・中2)の学習目標は「スロースタディ」です。私学の中高一貫校はどちらかといえば「スピードスタディ」。急いで進めて、高3では大学受験の演習を繰り返し行うのがパターンですが、本校では学習習慣を身につけることを主体とし、自分から家庭学習に取り組めるように丁寧に指導しています。また、嫌いな科目を作らないよう、中1、中2を担当する教員には、授業の動機づけを最重要視して、興味関心を引き出す授業をしてほしいとお願いしています。
中期にあたるBブロック (中3・高1)の学習目標は「リピートスタディ」です。この時期でも、先に進むより反復することを大事にしています。何度も何度も解くうちに、解けるようになります。解けると、やればできるという自信がつきます。ですから先に進むよりも、時間があれば前に戻って、何度も繰り返しています。
後期にあたるCブロック (高2、高3) の学習目標は「チャレンジスタディ」です。大学入試にチャレンジし、希望の進路を拓ける学力をつけていきます。基礎的な重要語句は高1までにほぼ出てきます。ただ、それを覚えるだけでは、大学入試は突破できません。基礎学力に加えて、知識と知識を統合する力と推理する力が必要です。それを高2、高3で身につけさせたいと考えています。また、受験勉強だけでなく、社会に出た時に必要な教養も身につけさせたいと考え、最終学年には「教養選択」という形で、「平和学習」「女性史」「詩を読む」「アンサンブル」などの授業をあえて入れています。
表現力を育む英語教育。
中1・中2では英語でミュージカルに挑戦!
こうした「学校設定科目」(学校が独自に設定できるオリジナル科目)が非常に多いのも、本校のカリキュラムの特色です。実は、創立者が校長の頃からオリジナル科目が豊富でした。学校の中に滑走路があった時代に、日本で最初の女子グライダー部を創ったり、神奈川に自動車がまだ十数台しかない時代にアメリカから自動車を輸入し、学校の中にテストコースを造って、国内初となる自動車技術をマスターさせようとしたり。独創性に優れた方だったので、昔からオリジナルの科目が多く、その意思を継いで今も学校設定科目を多めに入れています。
例えば中2の「イングリッシュエクスプレス」では、1 年間、英語でミュージカルをします。英語芸術学校「マーブルズ」から先生に来ていただき、歌、踊り、台詞がすべて英語、演技指導もすべて英語という環境で授業を行い、年2回、ミュージカルを上演して保護者の皆さんに見てもらっています。
高2の「スピードリーディング」では、ひたすら英語の長文と格闘します。長文を頭から翻訳し、1分間に何語翻訳できるかを競い合うのです。帰国子女や英語ができる子を見ていると、どれが主語か、どれが熟語かなど考えません。言葉として理解するので、そういう力の習得を目指しています。
芸術教育で感性と思考力を磨く!
校内あらゆる場所に見られる生徒作品。
本校のカリキュラムの特色に芸術教育があります。校名にもなっている「聖セシリア」とはキリスト教でも有名な音楽の聖人です。そのため本校では、音楽や美術、そして書道に至るまで、授業だけでなく、行事や部活動でも活発に芸術教育が行われています。校内には授業やクラブ活動で制作した絵画や工芸作品が多数展示されていますが、どの作品からも生徒たちの感性を感じ取っていただけるのではないでしょうか。
芸術教育は中学3年間で音楽と美術の基礎を学びます。中学美術では創造することの楽しさを感じながら基礎的な技能・能力を育てます。なかには技法を習得し、表現の幅を広げることが得意な生徒もいれば、感性や想像力を自由に働かせ、イメージをカタチにする力に長けている生徒もいます。授業では一人ひとりに多様な課題を用意し、頭を働かせながら作品を完成させていくのが、本校の芸術科目の特徴となっています。
高1ではその経験をもとに自分の興味関心に合わせて音楽・美術・工芸・書道から1つを選択します。高2からは、より深く芸術も学ぶために、美術ゼミナールやソルフェージュなど、よりハイレベルな技法を学ぶ機会もあり、美大や音大志望の生徒には個別指導も実施しています。
きめ細かい補習で全体を一定レベルに引き上げる。
合わせて、上位の生徒を退屈させない講座も開講。
学習すれば、難なく理解できる子と、理解に時間のかかる子が出てきます。放っておいたら個人差は開くばかり。大学や社会に出てから困らない基礎的な知識は全員にもっていてほしいので、理解できる子を退屈させず、理解に時間のかかる子には理解させていく「カリキュラムサポート」という仕組みを設けています。定期テスト後の補習、土曜講座、夏・春の講習会などで、全体を一定レベルに引き上げるとともに、上位の生徒を退屈させない工夫をしています。
中学ではテストごとに補習者が決まり、家庭に通知して、例えば数学と英語をマンツーマンで教わる補習が入ります。次のテストまではクラブ活動よりも補習が優先です。余裕のある生徒には、放課後に英語ゼミ、数学ゼミを開講し、授業よりもワンランク上の内容にトライできるようにしています。
また、土曜日は休校日ですが、何も入らない土曜日が年間28週あるので、それを「土曜講座」(1限〜4限)に当てています。講座は学力段階別で、自分の実力に合う講座で学ぶことができるため、しっかり力が身につきます。
学年の約半数が皆勤、精勤の表象対象に。
出席率の高さは、居心地のいい学校である証だ。
卒業式に皆勤賞(無遅刻、無欠勤、無早退)、精勤賞(遅刻、欠勤、早退が合わせて3日以内)の表彰をすると、毎年多くの卒業生が表彰されます。本校の子どもたちはほとんど学校を休みません。そう言うと、学校生活が順調で、何事もなく過ぎていくように思われますが、決してそうではありません。一番心が揺れ動く時期ですから、友達との関係がうまくいかない、先生との相性が悪い、部活で先輩に怒られたなど、さまざまな悩みを抱えていると思います。それでも休もうとしないのです。それは、彼女たちにとって学校が居心地のいい場所だからだと思います。つまずいたら、誰かがそばに寄ってきて、支えてくれると思うから学校へ来る。それがこの学校の校風です。その中に身を置いて、辛い時に支えられた経験のある生徒は、将来、誰かを支えることが躊躇なくできるでしょう。本校に在籍している間に、そうしたことを何度も味わわせていくことが、この学校ができる最大の心の教育なのではないかと思います。
コロナ禍を経験し、思春期の子どもたちの心を育てることは学校でしかできないと強く感じました。毎日登校し、顔を合わせているうちにいつもの表情が戻ってきました。「ソーシャルディスタンス」と言いながら、友だちと楽しそうに話をしています。学習についても、ICTを使えばある程度学習機会を与えることはできます。その可能性は広げていかなければいけないと考えていますが、理解度を深めることについては対面の授業に勝るものはありません。
そうした実感から、これまで以上に体験学習を充実させたいと考えています。その1つが海外留学です。1年くらいはグローバルな環境の中に身を置いて、英語を使って意思表示をしながら人と交流する、自力で生活をする。そうした体験をして、初めて身につくのではないでしょうか。本校も英語教育に力を入れています。校内の学びにとどまらず、「イングリッシュキャンプ」(中2/必修/2泊3日)、「TOKYO GLOBAL GATEWAY 研修」(中2〜高1/希望者/日帰り)、カナダ語学研修(中3〜高2/希望者/3週間)などを実施しており、カナダ語学研修には毎年40〜60名の生徒が参加します。国の留学を支援する奨学金制度を活用して、長期留学したいという生徒もいて、学校としても復学の支援をしたいと考えていました。2021年度は残念ながら海外へ行くことはできませんでしたが、そういう体験をすれば子どもたちの視点も変わると思います。こうしたきっかけをたくさん学校の中に準備して、子どもたちに提供してあげたいと思っています。
部活動が一つの居場所に。
トップダンサーが指導するセシリアバレエも人気
この学校でしかできないこと、ここにいる仲間としかできないことを思う存分やらせてあげたい、という教員の思いは部活動にも表れています。本校の部活動は人間関係づくりに主眼を置いています。そのため部活動は自由参加ですが、参加を推奨して中学生はほぼ100%、高校生は約95%の参加率。1学年100名前後の学校としてはたくさんのクラブがあり、一生懸命取り組んでいるため、教室とは違う居場所になっていると思います。
本校の部活動は吹奏楽、演劇、バレーボール、バスケットボール、ギター、マンドリンなど20種あり、土日だけ、昼休みだけ、と、部活動により活動日が週1~4日間と異なるので、昼休みはコーラス部に参加し、月曜の放課後は茶道部、土曜日は「テレサ会」(ボランティア)で施設訪問をしている生徒もいます。いろいろなことに興味・関心があるのはいいことなので、スケジュール管理は生徒に任せています。また、全国でも珍しいクラシックバレエ部があります。「(公財)井上バレエ団」と連携して本格的なレッスンを行っています。学校でトップダンサーから指導を受けられる、非常に恵まれた環境。学校行事と発表会が重なる心配もないため、興味を持ってくださるご家庭が多く、本校の特色の一つになっています。現在、幼稚園から高校まで85人(中高生は55人/1学年10人前後)が参加し、レッスンに励んでいます。中には、先生の声かけにより井上バレエ学園の一員になる生徒も。公演を観に行くと、約2000人収容のホールで堂々と大役をこなしていました。
学内でバレエができる数少ない学校として、日本全国から多くの問い合わせをいただいています。学業との両立に魅力を感じていただき、現在、受験生の約2割がバレエを目的として入学してきます。希望者が参加するもので、レッスンは週1~4日、部活動の時間帯と、部活動が終わった午後6時からの2回行っています。週1日から曜日も選べるため、吹奏楽や演劇などで活動した後にバレエのレッスンを受けている生徒もいます。特にコーラス部とバレエのかけ持ちは人気があります。発表会も、2年に1度行っています。バレエに参加している生徒は、学校生活のさまざまな場面でその力を発揮。例えばミュージカルに取り組む中2の「イングリッシュエクスプレス」では、踊りはもちろん、演出にもかかわるなどリーダーシップが光っています。(大橋貴之先生/教頭(入試広報部長)・バレエ部担当)
宮嵜万央里先生(井上バレエ団/プリンシパル)に聞きました。
宮嵜先生:私が聖セシリア女子の指導を担当して以来、レッスンで大切にしていることは、踊る楽しさを感じてもらうということです。最初は同じことの繰り返しです。1回のレッスンの中でそんなに上達を実感できるものではありませんが、繰り返して練習するうちに身についてきます。レッスンを通して、積み重ねの大切さやできなかったことがある時できるようになる達成感を味わいながら、自信をつけて、自由に踊れるようになっていってほしいと思っています。また、バレエを通して礼儀ただしさや美しい立ち居振る舞い、まわりの方々への気配りや思いやりの心も一緒に育んでいってほしいと思っています。
(生徒の前で)踊って見せるととても喜んでくれます。中学1、2年生は2年に1度、芸術鑑賞教室で井上バレエ団の舞台を見に来てくれるので、そこでも舞台に対する憧れをもち、踊るだけでなく、いろいろな舞台を見に行きたいと思ってもらえるように頑張ります。
中1・中2はエンカウンター主体で関係づくり。
キャリアプログラムにもカトリックの教えが生きている。
本校のもう一つの特色として、キャリアプログラムがあります。Aブロック(中1・中2)ではキャリアプログラム的な要素は2、3時間で、生徒の人間関係づくりを援助する構成的エンカウンターを主体としています。近年、いじめの問題などがクローズアップされ、自分と違うものを排除する傾向が高まっているような気がします。そのため、人はいろいろな人がいるからおもしろいということを、ゲームや体験の中から悟れるよう、中学1年生には年間10時間あまりを費やして、計画的に実施しています。 中学3年生になるとエンカウンターからキャリアプログラムに移行し、高3までの4年間で約80時間、キャリアプログラムに取り組みます。本校の進路指導は、進学指導とは少し違います。生徒はキャリアプログラムのさまざまな取り組みを通して、自身の適性や能力を模索し、伸ばしながら、意欲的にどう生きるべきかを考えていきます。
毎年、多くの生徒が進学を希望しますが、教科指導で「力」を伸ばし、キャリアプログラムを軸に、日々の生活における「心」の成長が一体となることで、希望の進路を切り拓いています。
森永浩司先生から保護者の皆様へ
2020年度より学校長に就任した森永浩司です。校長に就任と同時に、新型コロナウイルスの影響でこれまでに経験したことのない状況になりましたが、先生方の協力により大事には至らず、学校に活気が戻っています。そうした日々を過ごす中で、改めて学校のために骨身を削ってくださる先生が多いことを実感し、心強さを感じています。管理職としてその気持ちに甘えてばかりはいられませんが、本校は我が子をあたたかく育ててほしい、と願うご家庭に選んでいただいております。歴代の校長が語り継いできた「一人ひとりの生徒を大事にしなさい」という言葉を胸に刻んで、先生方とともにこのあたたかい校風を守っていきたいと思っています。
学校生活に活気が戻ってきたといっても、まだまだ完全ではありません。そういう毎日だからこそ、生徒も先生も自由に、自分らしさを出して、活気ある日々を過ごそうというのが私のポリシーです。私らしさといえば、今も授業(数学)を担当し、生徒との距離が近いことです。変化を敏感に察しながら、愛情いっぱいの環境を整えて、生徒が幸せに生きるための"心と力"の教育に努めてまいります。
小田急線で江ノ島方面へ向かう途中の大和市「南林間駅」から徒歩5分、東急田園都市線も乗り入れる「中央林間駅」から徒歩10分と、アクセスがいい上に、校門をくぐると、草木や花々が迎えてくれる、心落ち着くキャンパスに、幼・小・中・高がともに学ぶ。カトリックの精神に基づき、「信じ 希望し 愛深く」を心の糧とし、知育・徳育・体育の調和のとれた総合教育をめざしています。