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学校特集

桐朋女子中学校・高等学校2022

生徒一人ひとりの個性を尊重し、物事に取り組む姿勢を丁寧に培う
多彩な学校行事や「本物に触れる」経験を通して、「自分を育てる」ことができる女性を育成

掲載日:2022年6月1日(水)

 創立80余年の桐朋女子は自由な校風で知られ、アメリカの教育学者ジョン・デューイが提唱した「実践や経験からも学び、自分の体を通して肌で感じ、知識を高め、感情を深める」教育を実践しています。中高6年間を通して多彩な学校行事を生徒主体で行うなど、学校生活のあらゆる場面で生徒たちは自らの経験に照らしながら「こころの健康、からだの健康」を育んでいます。「桐朋女子で、物事に取り組む姿勢はどのように育まれていくのか」をテーマに、校長の今野淳一先生と卒業生の平田夏海さん、石川映夏さんにお話を伺いました。

●今野淳一校長:1988年、桐朋女子中学校・高等学校に数学科教員として勤務。放送部顧問、生徒会指導部、副校長などを歴任。2019年より現職。
●平田夏海(なつみ)さん(2018年卒業=74期・学年色は緑):国際基督教大学(ICU)卒。今春よりチーズ専門商社株式会社オーダーチーズに勤務。
●石川映夏(はるか)さん(2019年卒業=75期・学年色は黄):聖心女子大学4年在学中。アナウンサー志望で、テレビ朝日(ABEMA)の学生キャスターとして活躍中。

多彩な学校行事で「主体性」と「創造性」を育む

■桐朋祭で初めて実現したこと

桐朋女子_校長の今野淳一先生を挟んで、左が平川夏海さん、右が石川映夏さん
校長の今野淳一先生を挟んで、左が平田夏海さん、右が石川映夏さん

 桐朋女子では、年間を通して主体性・協働性を育むさまざまな行事が行われています。春の体育祭、秋の桐朋祭、冬のミュージックフェスティバル(合唱祭)、修学旅行や研修旅行など、どの行事も生徒たちが主体的に企画・運営に取り組み、仲間たちと一緒にハードワークさえも楽しみながら充実した学校生活を送っています。

 中高合同6学年対抗で行われる体育祭は、中1から高3までハンディキャップなしで競いあう全員参加の行事。また、毎年延べ5000人以上もの見学客が訪れて盛り上がる桐朋祭は、中学はクラスやクラブの発表、高校では有志グループによる発表など約100団体が参加する一大イベントです。

 平田夏海さんは4月から新社会人として、大学4年の石川映夏さんは就職活動に忙しい日々を過ごしていますが、桐朋女子時代の「物事に取り組む姿勢を育んだ経験」といえば、何を思い浮かべるのでしょうか。

桐朋女子_平田さんが部長を務めた、ダンス部の集合写真
平田さんが部長を務めた、ダンス部の集合写真

平田さん:高2でダンス部部長(中高合同)を務めたことです。当時70名くらいいた部員をまとめるだけでなく、桐朋祭・体育祭・新入生歓迎会などたくさんの行事があり、同時進行でいろいろなことを考えなければなりませんでした。大会出場や行事ごとに先生方とやりとりすることも多く、また、トラブルが起きた時の対処法なども常に考えていました。クラブ活動で養われた計画性や交渉力、危機管理力などが大学生活や就職活動に役立ったことも多く、その経験は大きかったと思います。

桐朋女子_石川さんが所属していた、放送部の夏合宿の様子
石川さんが所属していた、放送部の夏合宿の様子

石川さん:私は中高6年間、放送部に所属し、同時に桐朋祭の実行委員を務めました。高2の時は幹部として、桐朋祭に参加する各団体への説明会の日程調整や企画書作成などを行いました。代々受け継いできた厚さ1cm以上の文化祭運営細則(ルールブック)には、展示ブースの大きさや使用テープ、異装規定など細かい決まりがたくさんあるのです。参加団体の時間調整をして資料をまとめて、本当に教室にいる時間がないほど忙しくしていました。

今野校長:その細則の土台は、実は僕が作ったのです。生徒会顧問をしていた60期の時に(笑)。

平田さん・石川さん:え〜っっ!!  そうだったんですか!?

今野校長:石川さんは6年間実行委員を務めて、どんな時に成長を感じましたか?

石川さん:企画書作成が上手くなったこと、先生方の大変さを理解できたことは成長だと思います。学年が上がっていくうちに、自分たちでやりたいことや変えたいことが出てきて、一番達成感を感じたのは、高2の時にウェルカム演奏を初めて実現させたこと。ディズニーランドのオープニング音楽のように、桐朋祭でも始まりの合図に生演奏を入れたいと企画しました。最初はさまざまな事情から、最初は「ムリ! 却下!」という先生方の反応でしたが、実行委員長以下みんなで頑張って交渉して、最終的に実現まで漕ぎ着けました。交渉相手だった先生が、「遊園地みたいだね」と楽しそうにしてくださっていたので、内心「やった!」と嬉しかったですね。

■生徒も先生も、一体となって楽しむ体育祭

桐朋女子_体育祭で披露される、一糸乱れぬ見事応援交歓は同校の伝統の一つ。写真は平田さんが振付統括を担当した時のもの
体育祭で披露される、一糸乱れぬ見事な応援交歓は同校の伝統の一つ

 平田さんは、高3の時に体育祭で応援交歓(74期・緑)の振付統括を担当したことも大きかったと言います。

平田さん:ダンス部の大人数をまとめていたからできるだろうと思ったのですが、私たちの学年は約270人と人数が多かったのです。なかにはダンス経験がない人もいるし、みんなで動くとワチャワチャになってしまって(笑)。約6分半の構成をまとめていくのは本当に大変でした。でも、音楽や垂れ幕作成などチームで役割分担しながら、苦労の甲斐あって優勝できました!

桐朋女子_体育祭では、6学年が6色に分かれて白熱した戦いが繰り広げられる
体育祭では、6学年が6色に分かれて白熱した戦いが繰り広げられる

今野校長:体育祭では、各学年の先生方もチームカラーのTシャツを着るのが暗黙の了解で、別の色を着ていようものなら生徒に口も聞いてもらえない(笑)。2019年に校長になった時は、アメリカ研修旅行に同行した先で6学年の色である6色入りのTシャツを見つけて買ってきました。コロナ禍の体育祭は中学と高校で開催時間が分かれてしまったので、3色ずつのTシャツを特注して、午前と午後に着替えて参加していました。それくらい教員も生徒と一体となって学校行事を楽しんでいますし、生徒と一緒に成長もしているのです。

 一つのことを実現することがなぜ「ムリ」なのか。何が問題なのか。ハードルを越えるにはどうすればいいのか。生徒たちは知恵を絞って、想像と現実の境にある一つひとつの問題をクリアする方法を考え、視野を広げながら前に進めていきます。このように、実行力・創造力・協働力・コミュニケーション力を総動員してさまざまな行事を成し遂げた経験は、生徒たちを確実に成長させていくのです。 

生徒一人ひとりに寄り添い、「個性」を大切にする桐朋女子の教育

■先生と生徒を結ぶ強い信頼関係

桐朋女子_図書館で、熱心に調べ学習をする生徒たち
図書館で、熱心に調べ学習をする生徒たち

 桐朋祭も体育祭も、生徒たちがひたむきに取り組む姿勢は「探究活動そのもの」と、今野校長は話します。たとえ失敗しても、チャレンジの軌跡は残ります。対話を通してチャレンジの過程に寄り添う「桐朋女子ism」を大切に、生徒一人ひとりの個性を尊重する。それが、桐朋女子の教育方針です。
 自由度の高い校風から先生と生徒の距離感も近く、生徒たちは職員室に自由に出入りして、先生をあだ名で呼ぶことも日常風景になっています。ちなみに、石川さんは放送部顧問だった今野校長と友達口調で話していたのだとか。

石川さん:そうですね。「コンピー」とあだ名で呼んでいたこともありました(笑)。

今野校長:先輩の教員が「最近の生徒は先生にあだ名をつけるのが下手になった」と嘆いていましたが、以前は生徒が教員にあだ名をつけるよくあることでした。あだ名は、生徒と教員の信頼関係の表れだと思います。職員室の一つは校長室の隣にあるため、生徒たちが教員をあだ名で呼ぶ声が時々聞こえてきますよ(笑)。もう担任をすることのない私は内心、こういう人間関係は羨ましいとさえ思ってしまいます。

平田さん・石川さん:(苦笑)

今野校長:そういえば、二人が桐朋女子に入学した理由は何ですか?

桐朋女子_生徒と先生は厚い信頼関係で結ばれ、日常的に距離が近いことが同校の魅力の一つ
生徒と先生は厚い信頼関係で結ばれ、日常的に距離が近いことが同校の魅力の一つ

石川さん:私は母と姉が桐朋女子出身だったので、ごく自然に。ギター部だった姉と同じステージに立ちたいと思って、放送部に入りました。母からは、自由な学校で「職員室で先生の椅子に座っても怒られなかった」と聞かされていました。学校見学に来た時に、先生が母の名前を呼んで懐かしそうに話しかけてくださって、こういう雰囲気はいいなと思ったことを覚えています。

今野校長:石川さんのお母さんのことはよく覚えていますよ。私は担任ではなかったけれど、自由闊達な生徒さんでした。

平田さん:石川さんと違って、私は桐朋女子への入学はまったく考えていませんでした。大手塾に通っていて、偏差値重視の中学受験しか頭になかったのです。実は第1志望校にも合格していたのですが、両親に説得されてイヤイヤ入学(笑)。でも、中学1年間を過ごすうちに行事やイベントが多いこの学校が大好きになって、どんどん桐朋女子の色に染まっていきました。元気に動くことが好きな自分に合っている学校だと思えたのです。中3の校長面談でその話をしたらびっくりされましたけれど(笑)。母は、個性を大事にする校風やリーダー気質の私の性格を考え、成績で分けるような学校には合わないと思ったようです。

■レポート作成や作文コンクールで「ことばの力」を育む

桐朋女子_本物に触れる「地学巡検」にて
本物に触れる「地学巡検」にて

 桐朋女子の教育の要は、多くの経験を通して「物事に取り組む姿勢を培う」こと、そして自ら考え実行できるように「自分を育てる」ことです。とくに見学や実習、実験、制作などさまざまな体験学習を通して「本物」に触れる機会を数多く提供し、その経験をレポートでまとめる「ことばの力」を育んでいますが、そうした「ことばの力」を土台にして論理的思考力を育て、創造力を養っていくのです。

今野校長:中1から各教科でレポート指導を行っています。自分で調べ、考え、まとめて書くトレーニングを繰り返すことで「ことばの力」を身につけ、レポートの書き方や参考文献の扱い方などを学びながら論理的思考力を養っていきます。中2の社会では郷土史を取り上げますが、日本の鉄道史を紐解きながら「なぜ世田谷区に国鉄が通らなかったのか」というレポートを書き上げた生徒がいました。自分の視点で疑問を見つけ出す問題発見力が育っていたのだと思います。その生徒は歯学部に進みました。また、中3と高2の夏に行う作文コンクール「桐華賞」は1969(昭和44)年から始まったものですが、「ことばの力」の土台づくりには本校の長年の伝統があるのです。

 平田さんも石川さんも、在校時代は「なんでこんなに書かなくちゃいけないの?」と思っていたそうですが、平田さんは、卒業後にレポート作成の重要性に気づいたと言います。「大学入学後に、周りで『章立てって何?』『参考文献って何?』と言う学生が意外に多くて、逆に驚きました」
 中3と高2の時に「桐華賞」で第2席に入賞した石川さんも、「企画書やレポートなど、文章を書く作業は就職活動でとても役立っています」と話します。

■経験や体験を通して学ぶ 「Learning by Doing」

 桐朋女子の教育ならではの特色として、通知表を採用せず、前期・後期の学期末に教員面談を行うことや、高2・高3になると自分で時間割を作ることが挙げられます。面談を重視するのは、学習成果を単に数字で測るのではなく、対話の中から生徒が理解できた点、理解できなかった点を確認し、改善点を見つけることが学校の役目だと考えているため。また、自分で時間割を作ることは自分の指向や進路を考え、判断する自主性を育むことに繋がっています。いずれも、先生方が生徒一人ひとりとしっかりと向き合い、対話を通じて「過程に寄り添う」ことを大切にしているからこそ可能なことです。

■個人面談

桐朋女子_1対1で行われる「面談」の様子
1対1で行われる「面談」の様子

 通知表を採用せず、前期・後期の終了時に担任の先生が生徒一人ずつと個人面談を行い、評価を伝える。一人の生徒につき約20〜30分の時間をかけながら、学習状況や部活動、日常生活についても話し合います。

石川さん:勉強の評価を点数で判断するのではなく、「ここを改善したほうが良い」など具体的な課題を言ってもらえます。生活態度や部活動やいろいろな面から見てもらっている安心感、信頼感がありました。

平田さん:進路の相談や悩みを話せる時間でもありました。


■自分で作る時間割

桐朋女子_カリキュラム説明会で熱心にメモを取る生徒
カリキュラム説明会で熱心にメモを取る生徒

 高2・高3は、単位数の範囲内で自ら受講する教科を選択。興味のある科目を中心に選ぶ人もいれば、進路に必要な科目を中心に選ぶ人もいるなど、生徒が自由に好きな科目を選択できる仕組みです。

平田さん:好きな科目を選択できるのは、大学生みたいだなと思いました。自分の得意・不得意な科目を意識しながら、時間割を作っていました。

石川さん:ブランク(空き時間)を作ることもできるので、私は高3の夏まで目一杯放送部の活動をする時間に充てていました。

今野校長:経験や体験も混ぜながら学ぶ桐朋女子の教育は、アメリカの教育学者ジョン・デューイが提唱した「Learning by Doing」と同じものです。単なる知識ではなく五感を使って、こころで、からだで発見・実感を得ることを、本校では何より大切にしています。多くの経験を通して物事に取り組む姿勢を培い、表現力や論理的思考力を重視した学びから、主体的に自分を育てる教育を行っています。


 コロナ禍も3年目の春を迎えましたが、そのような状況下でも「桐朋女子で物事に取り組む姿勢」を培った卒業生のお二人は、前向きにアクティブに行動していました。

平田さん:大学のサンバのサークル活動やアルバイトが中止になり、何もできない時間が増えてしまいました。でも、逆にその時間を使ってサークルのオンライン活動を推進したり、早めに就職活動を始めたりしましたね。常に動いていないと落ち着かないのは、桐朋女子で身につけた習性だと思います(笑)。

石川さん:コロナ禍になって始めたことのほうが多いかもしれません。Abemaの学生キャスターに応募したり、桐朋祭実行委員だった仲間3人でYouTubeチャンネルを立ち上げたり。3人で居ると「できないことはない!」と思えるのは、桐朋祭の大変さを一緒に乗り越えた経験があったからこそです。

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